・前回までのおさらい
鳥山アニキに、角が立たない告白の断り方を相談したんや!
やっぱ鳥山アニキは頼りになるで!
告白って言うたら、アカネはんも来月の学祭でアタックする予定の相手がおるんやったな!
上手くいくことを祈っとるで!
いつも通りに騒がしい学食の一角で。
ワイと二人で飯を食っとったアカネはんが、ふとコロッケパンを片手に聞いてきよった。
「その……深い意味じゃないんだけどね。男の子が恋愛対象に期待するものって何だと思う? 一般論! そう、一般論として!」
オッパイやな。
……と、ソラ姐さんに告白した頃は思っとったんやけどな。
ちょい天然入っとるところも、茶目っ気があるところも魅力的なんや。
好奇心が強くてワイの話を楽しそうに聞いてくれるトコも好きになってしもた。
この間の歌声にも心を掴まれたわ。
しかも、ワイの告白をOKしたのが奇跡みたいなハイスペック彼女やのに、他所では幸せそうに惚気とるんやで?
告白した後からも何度も惚れ直しとるで、ワイ。
いやいや、ソラ姐さんのことはエエんや。
今は、一緒に昼飯を食っとるアカネはんの相談事やな。
アカネはん、片想い中の相手が居るっちゅう話やったし、そのための恋愛相談やろ。
――格好良いお兄さんに励ましてもらったんだ。
やっぱ、アカネはんが立ち直った原因でもある「格好良いお兄さん」って鳥山アニキのことやろなぁ。
あの日の昼にアカネはんと鳥山アニキが話し込んどって、そこで励まされたって流れやろ。
育ちが良さそうな割に下ネタや性癖談義を振っても全く嫌がらずに気さくに乗ってくれるし、真顔でオモロいこと
まぁ鳥山アニキに惚れるっちゅう気持ちも分かるわ。
この間のファミレスの時も、ちょい鳥山アニキと二人きりにしたら、すぐにアカネはん機嫌直しよったしな。
鳥山アニキに直接聞けんから、ワイから情報を引き出したいっちゅう腹やろ?
安心したれ。
ちゃんとワイは、アカネはんの言いたいコト分かっとるで!
しっかし、鳥山アニキってそんな特定の性癖を拗らせてる訳やないで。
尊厳破壊が好きって言っとったことはあったけど、アレは自分の彼女に求めるものではないやろしな。
オッパイなら大きいのも小さいのも好きやし、年上も年下も好きみたいや。
……そもそも鳥山アニキなら、アカネはんが告白したら快く応じてくれる気がするで。
もし断られるとしたら、他の誰かに先を越されとる時ぐらいやろ。
そないな奴がいるなんて、聞いたことあらへん。
「新ジャンルなんて開拓しなくても、犬飼さんは今のままでも十分可愛いっスよ」
「むぐっ!!? ごほっ、げほげほっ!!?」
アカネはん、また
顔を真っ赤にしながら苦しんどるわ。
おいたわしや、アカネはん……。
とりあえず落ち着かせたろ。
こうして背中さすっとると、やっぱ年の近い妹感あるわ。
妹なんておらんから、知らんけど。
ほれ、水やで。
ゆっくり飲んで落ち着くんや。
そうそう、急がずに少しずつ飲んで……。
「お待たせ。なんだ、犬飼また咽込んだのか。そうやって介抱している感じ、なんか家族感あるな」
あ、御無沙汰やで。鳥山アニキ。
鳥山アニキもアカネはんの妹感が分かるんやな。
「げほぉっ!!?」
……ってアカネはん、水でさらに咽せ込んどる!?
苦しいからって、急いで飲んだらアカンで!
愛しい鳥山アニキの前で、鼻から冷水を流しとる姿を見られることになるなんて不憫な子やで……。
まぁでも、鳥山アニキならそういうトコも可愛いって言ってくれそうやし、別にエエか。
「ふー、ふぅ……。あのさ、猿渡君。他の女の子にも『可愛い』って頻繁に言ってたりする……?」
おん……?
どういう質問やねん……?
んー、あ、分かったわ。
ワイが女子に対してテキトーに「可愛い」って言って会話を流しとる奴だったら、さっきの回答の信頼度が変わってくるっちゅう話やろ?
ま、そもそも同級生からは大体敬遠されとるし、そんなん言う相手なんておらんのやけどな。
ソラ姐さんにも……言ったこと無いかもしれん。
そもそも知的で美人な年上カノジョに「可愛い」って使う機会、そんなに無いやろ。
ワイが「可愛い年下カレシ君」から「頼れるカレシ君」にランクアップしたら、使う機会あるかもしれんけど。
「そう言われてみると、犬飼さん以外に言ったこと無い気がするっス」
「そ、そっかー? ふーん……そっか。そっかぁ……」
アカネはん、いつもの調子に戻りよったな。
幸せそうな顔して食事再開しとるわ。
相変わらず、美味そうに飯を食う子やな。
鳥山アニキの方も、相変わらず育ちの良さそうな食い方しとる。
漠然とした勘やけど、この二人って相性は良さそうに感じるんや。
この二人がくっついたら……全力で祝福したるで!
1学期末テストの後の学祭で、アカネはんが告白計画を立てとるらしいし、その時が楽しみやな!
あと、ワイも学祭にソラ姐さんを呼んで一緒に回れたら最高や。
「鳥山アニキ、学祭って恋愛的な定番ネタとか無いっスかね?」
「昔は後夜祭の時の打上花火を見ながら告白が定番だったらしいぞ。
今は色々厳しくなったから、打上花火の企画自体が無くなったみたいだけどな」
「一緒に花火かぁ。良いなぁ……。ロマンチックだよね」
聞いたワイが言うのもなんやけど、なんで鳥山アニキそんなん知っとるん?
っちゅーか、今は無いんやな……。
アカネはん的にはストライクゾーンだったみたいやけど、残念やな。
ワイも、ソラ姐さんを誘って一緒に見たかったわ。
「ちなみに今年からもっと厳しくなって、部外者は教員か学生の家族しか来訪できなくなったらしい。
もし誘いたい相手が居るなら、そこだけは気をつけておけ」
「はーい」
「な、なんやて……!?」
ソラ姐さん、そもそも来られんやんけ!!?
ワイの学祭早くも終わったわ……。
その日の放課後、出現した怪物を3人がかりで危なげなくボコボコに殴り倒して。
アカネはんの家で、いつもの魔法少女集会や。
Tシャツと短パンのミカンちゃんスタイルで、ソラ姐さんと一緒に犬飼家に上がり込んで。
お茶とジュースで乾杯や。
「ぷはーっ!」
「アカネちゃん、何だか御機嫌ですね?」
アカネはん、妙に景気が良さそうな顔しとるな?
ソラ姐さんも、その雰囲気に言及しとる。
ワイの方は学祭の希望が無くなって不景気ドン底なんやけどな……。
「私も! ついに私も、学祭でオトナの階段昇っちゃうかも!!」
昼間にワイが励ましたんが、結構効いとる感じか?
あと、鳥山アニキから花火の話を聞いて、何か妙案でも閃いたんかも?
何にしても、めでたい話やで。
アカネはんに関しては、ホンマに明るい未来しか見えへん。
「ふふ。アカネちゃんなら、きっと大丈夫ですよ」
「ワイも、なんか今回は上手くいく気がしとるで」
「ありがとー♡」
ワイも、ソラ姐さんと一緒に学祭デートしたかったんやけどなぁ……。
ま、出来んモンは未練持っとってもエエこと無いわな。
しゃーなし。
切り替えてくわ。
ワイの話、聞いたってや。ソラ姐さん。
「せや、ちょい聞いてみたいんやけど。ソラ姐さんって、カレシ君から『可愛い』って言われることあるん?」
昼間アカネはんから聞かれた時に思ったんやんけどな。
言われてみたら、ワイってソラ姐さんに「可愛い」って言ったことない気がするんや。
ワイが忘れとるだけかと思って、一応確認やな。
「おそらく、無いと思います」
「えっ、そうなの? なんか意外……?」
これは、ワイの記憶違いや無さそうやな。
ソラ姐さんが無いって言ったら、ホンマに無いって思った方がええやろ。
「綺麗とか、大人っぽいとか、包容力があるとか……その辺りは言われたことはありますね」
「そのへんは、
「ミカンちゃん? 今、さらっと私も含めなかった? ねえ? お外でオハナシする??」
「これはナチュラル蛮族ムーブですわ。そういうトコやで?」
アカネはん、ホンマに打てば響く子やなぁ。
そういうトコ、ホンマ好きやで?
ワイは男子として過ごしとる日常生活やと、そないな関係の友達なんて全然おらんからな。
鳥山アニキは真顔でオモロいこと言う人なんやけど、先輩で大恩人やし畏れ多すぎて揶揄うなんて考えられん。
アカネはん、唸ってこっちを威嚇しとるわ。
なにガルガルしとんねん。
とりあえず鼻で笑っといたろ。
本人的には本気で睨んどるんやろけど、何だか愛嬌があるっちゅう感じなんやな。
アリクイが二本足で立って威嚇行動しとっても、人間からしたら全く怖くないのと同じ感じや。
まったく、可愛い奴やで。
「ソラ姐さん、カレシ君に『可愛い』って言わせたいって思っとる? 言われたら、やっぱ嬉しいやろか?」
「むむ……それは意識していませんでした。言ってもらえたら、嬉しいとは思います」
話をソラ姐さんの方に戻すで。
そんなん考えとらんかった、ちゅうのはホンマみたいやったな。
そういうリアクションやった。
一応、言われたら嬉しいには違いないみたいやけど。
「でも……そういう感想や褒め言葉は、その人が生きてきた経験や人生観の中から、その人自身の心で選んで贈ってくれるから嬉しいんだと思います」
優しく微笑んだまま、ソラ姐さんは話を結んでくれよった。
なるほどなぁ……。
そう言われたら、確かにその通りかもしれん。
せやから、積極的に言わせようとかは思っとらんワケやな。
「えへへ♡ それ、すっごく分かる! そういう言葉を好きな人から貰うと、ホントに幸せな気持ちになるよね!」
ほー?
アカネはん、それは幸先良いやんけ。
脈ありっちゅうか、かなり良い線行ってそうな雰囲気や。
ワイの見とらんトコでも、ちゃんと鳥山アニキにアプローチしとるんやな。
そのうえで何かしら愛の言葉を鳥山アニキから貰っとるんなら、勝ち確やんか。
学祭後は盛大に祝福したるで!!
「そういえば……結局、ミカンちゃんって彼氏いるの?」
「おらん……てゆーても、どうせ信じんのやろ? 想像に御任せやで」
「あー! ズルい! 一人だけ内緒にして!!」
頬っぺ膨らましとるな、アカネはん。
まぁ本気で怒っとるワケやなさそうやな。
ソラ姐さんは相変わらず、ワイらのやりあいを穏やかに微笑んで見守っとる。
「想像に任せるって聞いたよね、ソラお姉ちゃん! 名推理でミカンちゃんの彼氏がどんな人なのか当てて!!」
何言い出しとんねん!?
いくらソラ姐さん相手でも、それは無茶ぶりやろ!?
存在しないモンなんて、当てられんやろ!
これには流石のソラ姐さんも苦笑いやで!
「それは……さすがに情報が少なすぎて厳しいですね。しかし、なかなか胸が膨らむ議題でもありますね」
むむむむ、なんて言いながらソラ姐さん考え込んどるな。
そんなソラ姐さんの傍らで、ワクワクしながらアカネはんが待機しとる。
まるで餌を待っとる飼い犬みたいやな。
でも猿渡ハッサクならともかく、ミカンちゃんのコイバナなんてある訳ないやろ。
何を期待しとんねん……。
「……確証と呼ぶには程遠いですが、朧気な人物像は見えたかもしれません」
「さすがソラお姉ちゃん!!」
ウソやろ……??
そんなん存在しないっちゅうのに?
マジでソラ姐さんの頭、ホワイトホールにでも繋がっとるんか?
「年上で、カリスマか頼り甲斐があってリードしてくれる人……ですかね?」
……一瞬、それを聞いて心臓が止まったかと思ったわ。
だって。
それって、そのまま……
不快とか困惑とかの前に、まず感じたのは恐怖やった。
このままソラ姐さんに思考実験を続けさせたら、猿渡ハッサクまで行きつくかもしれん。
アカン!!
「それでそれで!?」
「その人の大人びたところを好きになったけれど、子ども扱いされるのも内心複雑だ、なんて思っていそうで……」
「待った! 降参! 降参やで! それ以上は勘弁や!!」
焦って裏返った声を出してしもた。
でも、ワイのそんな焦りが伝わったんか、二人ともビックリした顔でこっちを見とるわ。
茶化すような雰囲気やなくて良かったで。
「はぐらかすような言い方してもたワイも悪かったで。
でも、その先はホンマに踏み込んで欲しくないんや。堪忍したってや」
ここは、真剣に頼むのが吉やな。
下手に作り笑顔なんてして、本気やないと思われたら最悪や。
せやから、両手を合わせて二人に頼むことにするわ。
ちょい頭も下げるで。
「ごめんなさい。私も無神経でした……」
「私も、何だか辛い事を思い出させちゃったみたいで、ゴメンね……」
二人も、ワイの真剣さを察してくれたみたいや。
やっぱ根本的に、二人とも人並み外れた御人好しやからな。
幸い、女子会の雰囲気はすぐに普段通りに戻って、和やかなモンやった。
これで場が冷え切って解散みたいなコトになると気まずさが後を引くやろし、そうならなくて良かったで。
でも。
……この日、ワイは初めてソラ姐さんのことが怖いと思ってしもたんや。
あとがき
ソラ姐さんは本気になったらシャーロック・ホームズみたいな人物分析が出来るタイプの人です。
ただそれをやっても大抵相手を不快にさせてしまうことを知っているので、普段は極力やらないようにしている感じですね。
今回はちょっとその加減をミスった模様。