三角関係な朝8時半   作:カードは慎重に選ぶ男

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猿渡君に恋愛相談するアカネちゃん。
ソラ姐さんに恋愛相談するミカンちゃん。

構図としては、この二つは近いものがあるかもしれません。
マトリョーシカと書いて地獄と読むヤツですね。




第14話:魔法少女トリオとトラブルの火種

「ミカンちゃん、少し歩きませんか?」

「エエで」

 

仲良し結婚式もお開きとなり、日没間際の道をミカンちゃんと二人で歩き始めました。

すっかり目に優しい色に染まった桜並木の道を歩きながら。

まだ少しだけ気まずそうにしているミカンちゃんへと、話を切り出しました。

 

 

「先程は、すみませんでした。途中からミカンちゃんが嫌がっていると気づいていたのに、式を続けてしまって……」

 

アカネちゃんのメンタルが心配だったので、そちらを優先してしまったんですよね。

失恋の直後ということで、アカネちゃんの方ばかり気を遣ってしまいました。

でも、ミカンちゃんはあまり感心しないみたいでしたし、気分を害しているかもしれません。

前に恋人の人物像を言及された時にも拒否感を示していたのを鑑みるに、そもそも交際に関して突っ込まれたくないのでしょうか……?

 

――ジブンかて、ワイの方には恋愛経験聞かんかったやんけ??

 

ただ、恋愛経験を聞いてほしいみたいな言い方をしている時もあったんですよね。

コイバナ全般がダメというわけではない様子です。

 

 

「構へんで。アカネはんを励ますためにやっとるんは承知しとるし。しゃーなし」

 

ミカンちゃんとしては、アカネちゃんとの関係自体を秘密にしたかったみたいなんですよね。

アカネちゃんのカミングアウトの時に驚いていましたし。

そして、なぜ秘密にしたかったのかと考えると……私に対する配慮、でしょうか?

以前の協力技の話でもギクシャクした時がありましたから、二の舞を恐れて私に気を遣っているというのがありそうな線です。

何だかんだで気遣いは出来る子なんですよね、ミカンちゃん。

 

おや、お馴染みのベンチが見えてきましたね。

2人で座ると絶妙に間が空いてしまう、いつものベンチです。

ちょうど空いているので、座ってしまいましょう。

 

 

「元々ミカンちゃんとアカネちゃんは仲良しだとは思っていましたけれど……どういった経緯でそこまでの関係になったんですか?」

「失恋したアカネはんを励ましとったハズなんやけどな。気付いた時にはベロベロに酔わされて、押し倒されとった」

 

「おや……??」

「アカネはんがオオカミに見えたで」

 

もっと牧歌的な経緯かと思っていました。

でも何だかバイオレンスでノクターンな感じですね……??

お互いに同意のうえであれば愛は美しいと思いますけれど、一方的かつ暴力的となると話は別です。

 

 

「もしかして、ですけれども。仲裁が必要であれば私も力を尽くしますよ?」

 

アカネちゃんを救いたいという想い自体は素晴らしいと思います。

しかし、だからといってミカンちゃんが暴力行為の被害者になって良い訳ではありません。

場合によっては、多少強引にでも私が介入するべきでしょうか?

訝しむ私の目を察して、ミカンちゃんが慌てて言葉を継ぎ足しました。

 

 

「や、アカネはんの手口自体に不満がある訳やないで? ちょい最初だけ痛かったんやけどな。

すぐに、こういう強引なのもエエもんやなんて気持ちよく……って、ちゃうねん。ちゃうんや……」

 

何度か言葉を訂正したり継ぎ足したりしているミカンちゃん……。

どうやら、アカネちゃんが強引だったこと自体はそこまで問題ではないみたいですね。

酔わされて襲われるのって結構ショッキングな事件のような気がするんですけれど……?

ミカンちゃん、潜在的にマゾ気質を抱えているのかもしれません。

きっと、自覚していなかった性的嗜好に覚醒してしまい、戸惑っているのでしょう。

 

 

「ミカンちゃん。被虐趣味と加虐趣味は、程度問題ですが大体の人間が持っているものです。恥じることはありませんよ」

「マゾちゃうわ!? って、そこはエエねん。問題はそこやなくてな……」

 

むむ……?

何だか話が見えてきませんね。

無理矢理襲われたのを問題視している訳ではないんですよね?

それなら、何が心に引っかかっているのでしょう?

 

 

「あんま突っ込まれたくない話なんやけどな。ワイ、交際中の相手がおるんや。その相手に不義理やって思ってしもてな……」

「なるほど。話が見えてきましたよ」

 

破局の危機ですね。

その恋人にNTRの事実を知られたら、いわゆる「脳が破壊される」という場面を見ることになるかもしれません。

まるで昼ドラです。

当事者ではないので冷静に聞いていられますけれども。*1

 

というか、ミカンちゃんって現在進行形で恋人は居るんですね?

学祭前の魔法少女集会の時の反応的には、フラれたのかと思っていました。

……単に痴話喧嘩の最中だった、なんて可能性も?

 

どうしましょう。

正直なところ、フィクションでなら好みの展開だったりします。

信じていた恋人が実は寝取られていたなんて展開は、ベタベタです。

その被害者が尊厳やら情緒やらを破壊される表情を見せてくれると思うと、なかなかに興奮するものがあります。

まぁでも、身近な人間が辛い目に遭うのは嫌だという思いの方が強いので、実現させるモノではないですね。

 

 

「恋人にバレた時の反応なんて怖すぎて考えたくもないで……」

「アカネちゃんの方にもバレたらマズい案件ですね」

 

アカネちゃん、誰かの愛人になる宿命でも背負っているんでしょうか?

1年前の暴力事件のときも、二股をかけられていましたし。

学祭で告白を受けたという猿渡君の回答次第でも、やはり愛人枠に収まっていた可能性があります。

嫌な星の元に生まれましたね……。

 

もしミカンちゃんの恋人にバレようものなら、1年前の修羅場の焼き直しですね。

またしても「痴情のもつれ」でアカネちゃんが討ち入りにあう危険だって否めません。

まぁ魔法少女の力を持っている今のアカネちゃんなら、そうそう不覚をとることも無い気もしますけれども。*2

 

 

――私は、不誠実に感じるよ。ハッキリ断った方が良いと思う。

 

アカネちゃん自身がハーレムに対して拒否感を示していますし、皆で仲良くという結論に落ち着くのも難しいでしょう。

そこがネックでなければ、まだ選べるルートもあったと思いますけどね。

私としては、ハッサク君のハーレムでも全然問題なかったのですけれど……ままならないものです。

 

……アカネちゃんの今の恋愛対象はミカンちゃんなので、ハッサク君の事は考えても仕方ないですね。

仲良し結婚式の時の躊躇いのないキスや、昨晩のベッド事情を聞く限り、これからもミカンちゃんと恋人関係を続けていく気がありそうですし。

 

 

「結局、バレないように立ち回るしかないでしょうね……。私もアカネちゃんたちの関係を言いふらしたりはしませんよ」

 

おーきに、なんて覇気がない笑い方をしているミカンちゃん。

元々の恋人への不義理が、心に重く圧し掛かっているのでしょうか?

逆に、不義理だからイイという可能性も?

 

……かなり気になるところですね。

こういう事件の当事者と実際に話すことなんて、そうそう無いでしょうし。

不快がられる気もしますけれど、聞いておきたいところですね。

背徳感って、クセになるスパイスなんでしょうか?

 

 

「興味本位の質問ですけれども、昨晩はどんな気持ちでしたか? やっぱり……背徳感とか、あったりするんでしょうか?」

「……………………ちょっとだけ」

 

「興味深いですね」

 

ミカンちゃん、こちらに目を合わせずに迷いながらの回答でしたね。

自分自身の気持ちに迷ったというよりは、正直に答えるべきかどうか迷った感じでしょう。

私の反応が怖いという悩みを頭の中で検討した顔だったと推測します。

そんなにイイんでしょうかね……?

 

 

「ちゃ、ちゃうんや!! 背徳感を求めた訳やないんやで! 結果的に! 結果的にそうなったんや!」

「……? それは分かっていますよ?」

 

なんだか、弁解に必死さが垣間見えたような……?

まるで、自分の恋人に不貞がバレた後みたいな匂いが一瞬だけ漂った気がします。

恋人に不貞を責められる場面でも想像したのでしょうか?

 

 

「落ち着いてください。まだミカンちゃんの恋人にバレた訳ではありませんよ?」

「……アカン、結構ワイも平常心失っとるかもしれん」

 

ミカンちゃんがそんなにショックを受けていないと思って突っ込み過ぎましたかね……?

本人の自覚が無いだけで、結構なストレスを感じていたのかも?

いつも通り飄々としているように見えるのは、過度なストレスから精神を守るための自衛本能が働いた結果だという可能性もあります。

表面上ミカンちゃんが落ち込んでいないからといって、あまり突っ込み過ぎるのも良くないのかもしれませんね。

 

 

「ちな、ソラ姐さん的にはカレシ君とそういう事をしたいって思っとるん?」

「不貞の予定は無いですね」

 

「不貞の方やなくて、カップルの二人でっちゅうハナシや」

「むむ……?」

 

コレは思いがけない質問でした。

カップル……つまり、ハッサク君と私で性交渉をするという話ですね。

夜にベッドでじっくり考えてみた時の感想で言ったら、おそらく二人で幸せな営みを築けそうではあるんですよね。

年上としてリードしてあげたいところです。

ただ、お互いにまだ中学生ですから、急ぐ話でもないと思います。

 

 

「想像してみたら幸せそうに思えますけれども、まだ先のことだと思っていました」

「ほ、ほーん……?」

 

ミカンちゃん、口元を押さえていますね。

目が泳いでいます。

自分自身が恋人と性交渉をする場面を想像しているのでしょうか。

 

しかし、今まで私には聞いてこなかった内容ですね。

もしかして、アカネちゃんの強引なアプローチのせいで性に目覚めたとか……?

その体験を経て、恋人とも性交渉をしてみたいという興味が湧いたのでしょうか?

そうなると、やはり昨晩が初体験だったのかもしれません。

1号さんとの性交渉経験が無いうちに、アカネちゃんに襲われてしまったのかも?

 

ミカンちゃんの内面にどこまで踏み込んでいいのか、少し悩ましいところです。

先日は、踏み込み過ぎて困らせてしまった訳ですし。

でも、この話題はミカンちゃんの方から振ってきた訳ですから、延長しても問題ないと推測します。

 

 

「ひょっとして、アカネちゃんではない方の恋人とも性交渉をしてみたいけれど、どう切り出したら良いか悩んでいるんですか?」

「!!!??」

 

声にならないぐらいに動揺していますね、ミカンちゃん。

図星だった様子です。

 

 

「そら、興味はあるんやけどな……。未成年のうちからハメ外しすぎるんもアカンって思っとるで」

「身持ちが硬いですね。好ましい心掛けだと思いますよ」

 

ミカンちゃん、適当なように見えて案外しっかりしているんですよね。

おそらく、昨晩の一件は本当に不測の事態が重なったのでしょう。

泥酔していなければ、アカネちゃんの暴走に流されるようなことは無かったと思うんです。

普段なら少なくとも避妊を心がけるぐらいの貞操観念はある様子ですし、交際中の相手との仲も順調のように聞こえます。

 

 

けれど、それゆえの波乱もありそうなんですよね……。

交際相手とアカネちゃんが両天秤に載ったら、たぶんミカンちゃんは前者をとります。

前者への義理という言葉も口にしていましたし。

アカネちゃんとの関係は、アカネちゃんが次の恋を見つけるまでのモラトリアムだと思っていそうなんです。

 

しかし私から見ると、結婚式なんて言い出したアカネちゃんは、かなり本気のように見えるんですよね……。

そんな二人の温度差が悪い方向に露見しなければ良いのですけれど。

 

私の杞憂であってくれれば、言うことは無いんですけれどもね。

アカネちゃんもミカンちゃんも、私にとっては可愛い後輩ですから。

なんとか……血を見ずに全員が笑って迎えられる落としどころを見極めたいものです。

 

 

 

 

 

 

……大丈夫ですよね、ミカンちゃん?

 

*1
※がっつり当事者です。

*2
その当事者が魔法少女同士だから猿渡ハッサク君は途方に暮れてるんだよなぁ……。





あとがき

まだアカネちゃんが知らない不発弾が残っているから、話は終わらないのだ……。

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