プランA:アカネちゃんのメンタルがドン底の時に、更なる曇らせ展開!
プランB:アカネちゃんがメンタルを立て直した後で、次なる曇らせ展開!
さすがにプランAを選ぶのは鬼畜の所業かなって思ったんです。
やっぱり人間には優しさと温もりが必要だと思うんですよ。
2日間の学際も終わって、後片付け日やな。
午後に控えとる終業式が終わったら、お待ちかねの夏休みやで。
夏といえば海や!
あのソラ姐さんの水着姿が拝めると思うと色々捗るで!
……っちゅう願望はあるんやけどな。
実際問題、女子を水場に誘うんはハードル高めな気がするわ。
身支度とか化粧とかの問題もあるやろし。
他の選択肢としては、何がエエんやろなぁ?
そんなん考えとったら、クラスの出し物の片づけも終わってしもた。
まぁ紙コップで豚汁を売るだけの手抜きカフェやったし、片付けの作業量なんて高が知れとるっちゅう話や。
カフェってより休憩所やな。
料理関係の機材は洗って家庭科室に返すだけやし。
カフェに使っとった教室の机や椅子を並べ直して終いやで。
……終業式まで、絶妙に時間が余っとるな。
つい習慣で学食に来てしもたけど、今日は学食は営業しとらん。
飲食スペースは解放されとって自由に座れるんやけど、調理場にはシャッターが降りとる。
普段は混雑しとる学食も、今日ばっかしはガラガラや。
そもそも営業日外やし、午後の終業式だけ参加する生徒も多いから、まぁそうなるわな。
「「あっ……」」
そんな閑散とした学食で、アカネはんとバッタリ遭遇してしもた。
何とも言えん、絶妙な距離感やな。
険悪な感じやないけど、どう接したら良いか分からんってアカネはんの顔に書いてあるわ。
ワイの方も、正直どういう態度で居たら良いのかなんて分からん。
けど、いつも通りでエエんとちゃうか?
「終業式まで暇なら、お茶でも飲みながらグダグダしていかないっスか?」
「……うん」
学食のお茶サーバーが年中無休で動いとるんは、幸いやな。
ガラガラの学食の一角で、アカネはんと一緒に卓を囲んで向かい合ったんやけど。
やっぱ、アカネはんの方は何を話したら良いか分からんって雰囲気や。
ま、ワイの方は悩みがあるんで、折角やから相談に乗ってもらうわ。
「ちょい今悩んでるんスけど。夏休みに女の子を誘う定番イベントって何をイメージするっスかね?」
「それ、ソラお姉ちゃんとデートするって話だよね?
さすがに昨日の今日でそれを私に相談するのはデリカシー無さすぎない??」
恨みがましい目で返されてしもた……。
堪忍やで。
まぁアカネはんも、本気でイラついとる訳や無さそうやけど。
普段からの妹感のせいなんか、ちょい不機嫌そうでも愛嬌があるままなんは、一種の才能やって思うで。
あとワイが告白されたんは昨日やなくて一昨日なんやけど、その辺りは慣用表現っちゅうヤツやな。
「面目ないっス……」
「まぁ良いけど。私が想定してたデートプランの中だと……動物園とか、どう?」
動物園は考えとらんかったな。
へー、さすが大都会やな。
電車一本で、デッカい動物園に到着できるんか。
かなり良さそうやな、それ。
……アカネはん、フクザツそうな顔しとるわ。
それ、夏休みにワイと一緒に行くことを想定しとったんやろな。
そういうんを何やかんやで教えてくれるトコ、ホンマに御人好しやな。
「犬飼さん、動物好きなんスか?」
「そうじゃないけど、そういうの好きな女の子って可愛いイメージあるでしょ」
「自分が可愛いって言われるのを期待してアピールしてるって話っスね。……それ男子に聞かせたら不味いヤツでは?」
「だって猿渡君は私に靡かないって知ってるし。ライバルがソラお姉ちゃんじゃ、略奪愛が無理なことぐらい分かってるよ」
やっぱアカネはん、可愛い女の子になるために色々考えて生きてきた人間なんやな。
あのヌイグルミやらパステルカラーのカーペットやらがある部屋も、そうやって築いてきたモンなんやろ。
ソラ姐さんも、そういうのってあるんやろか?
……ナチュラルメイクぐらいはしとるんやろけど、あんまソラ姐さんはそういうイメージあらへんな。
自分の興味や面白いと思ったことにガンガン突っ込んでいくタイプに思えるんや。
天性の素質で人を惹きつけとる感じやな。
頭がハイスペックなだけでも御釣りがくるレベルなのに、アレだけオッパイ大きくて美人ときたモンや。
アカネはんみたいな鈍足型からしたら、頭が痛くなる存在なんやろな……。
「近くで支えてくれる親友って子と一緒に行ったりはしないんスか?」
ひょっとして、ミカンちゃんが誘われることがあるんやろか?
そう思っての質問やったんやけど。
「ミカンちゃんに可愛い女子のアピールをするのは何か違う気がするんだよね……」
おん……?
何やそれ?
ミカンちゃんに期待するものは全然別な感じなんか?
「むしろ私の方がミカンちゃんを可愛がりたいっていうか、頼られたいっていうか……」
んー……?
アカネはんの言っとること、なんや似た発想に覚えがあんねんな。
もしかしてのハナシなんやけど。
ワイがソラ姐さんに対して、「可愛いカレシ君」から「頼れるカレシ君」になりたいって思っとるのと同種の悩みでは?
「犬飼さんにとって……そのミカンちゃんっていうのは、どんな人なんスか?」
ちょい、興味が湧いてしもた。
ワイとしては、ミカンちゃんとしてアカネはんと接しとるときは「同性の友達」と接するみたいな距離感でやってきたつもりなんやけどな。
実はアカネはんの方からしたら結構感覚が違うなんてコトもあるかもしれんで。
他の人には言わないでね、なんて前置きしながらアカネはんは少しずつ喋り始めてくれよった。
「初めて会った時はね、正直に言って私の嫌いなタイプの子だって思ったんだ」
「……おりょ?」
アカン。
予想外過ぎる秘話を聞かされて、変な声が出てしもた。
え?
ウソやろ、アカネはん?
ミカンちゃんのこと嫌っとったんか?
そんな素振り見せたこと無かったやろ??
えーと、ミカンちゃんとして初めて会った時って、どんなシチュやったかな。
確か赤い魔法少女が負けそうになっとるトコをたまたま見かけたんや。
ほんで、助けなアカンって思って怪物に殴りかかったんやけど、いつの間にかワイは黄色い魔法少女に変身しとったんや。
「なけなしの勇気を振り絞って必死に私が挑むような問題に、何でも無いみたいな顔で踏み込んで成功させてさ」
そう言われたら、ワイそういうトコあるねんな。
ちょい鳥山アニキにも似たようなこと言われたことあるわ。
もちろんワイも、自分の身の危険なんかは頭の片隅で理解しとるんやけどな。
見通しが甘いだけかもしれんけど、やっぱ踏み込まずには居られん場面ってあるで。
「しかも、太陽みたいに心から笑うんだ。
座り込んで動けない私に手を差し伸べてきた笑顔が、打算も何も無いって分かるぐらい綺麗で……なんだか自分が惨めになった」
初戦闘の時はホンマに無我夢中やったな。
アカネはんの言う通り、打算とか作戦とかなんて考えとる余裕なんて無かったで。
ガムシャラに怪物を殴り倒したんや。
その後で、赤い魔法少女を助けられて良かったって思って声をかけたんやけどな。
赤い魔法少女は「ありがとう」って言いながら笑顔を返してくれた……っちゅうんがワイの記憶の中の一場面やな。
……作り笑顔やったんか、アレ。
二面性があるってアカネはんが自分で言うとったし、今アカネはんが口にしとることの方が本音なんやろな。たぶん。
「この子は鏡の前で笑顔の練習だなんて考えもしないタイプだ、ってすぐに分かった。
人から愛されたくて可愛い自分になろうとしている私なんかとは……何もかもが違って、眩しくて、嫌いな子だって思った」
それを口にも態度にも全く出さなかったんは、魔法少女が二人しか
内心気に食わんと思っとっても、表面上は笑顔で取り繕って協力関係を敷こうって腹だったんか。
普通に気の良い戦友とばかり思っとったわ……。
特にワイの場合、学校の同級生で気兼ねなくフザけあえる関係のヤツが全然居らん状況やったからな。
同性の友達とフザけあうみたいなノリで絡んだ気がするわ。
アカネはんもすぐに順応して、ボケたらツッコんでくれるようになったんや
「私の部屋に上がり込んだ時も、靴下脱ぐし、あぐらかいて座るし、勝手にマンガ読み始めるし、隙あらば揶揄ってくるし、自由すぎるって思ったよ?
私の恋バナは失敗前提で聞き流すし! 鳥山先輩と会った時なんて初対面で下ネタを振り始めたんだよ!? ホントありえない!!」
「お、おう……」
アカネはん、お茶を飲み干してプラスチックのコップを卓に振り下ろしよった。
居酒屋で管を巻いとる酔っ払いみたいな動きやった。
いやまぁ居酒屋なんて行ったことないんで、想像やけどな。
ドラマか何かで似たようなシーン見た気がするで。
「化粧っ気もないしオシャレにも無頓着なのに……なんでかキラキラしてて、自然体で可愛くて、ズルいよ。
一生懸命に可愛い自分になろうとしてる私って何なんだろう、ってことあるごとに思ってた。
でも、一緒に過ごすうちに何でか段々嫌いじゃなくなっていったんだ」
自分でも理由はよく分かんない、なんてアカネはんは苦笑いと一緒に零しよった。
ソラ姐さんが加入する頃には、ミカンちゃんに対する苦手意識も殆ど無くなっとったそうや。
その言葉にウソはないって、ワイは思ったで。
まぁ作り笑顔にまんまと騙されとった訳やし、印象に頼りすぎるのも良くないんやけどな。
っちゅーか、そないな感じでミカンちゃんのことを可愛いって思っとったんかい。
言われてみたら、やたらとミカンちゃんと張り合おうとしとる時はあったんやけど、年の近い兄弟みたいな感覚なんやて思っとったわ。
「一昨日の告白に失敗した後でさ。ソラお姉ちゃんには頼れないって思ったし、会ったらきっと酷いことを言っちゃうって思った。
本当にドン底だった。そんな時に、最後の最後まで私の隣で励ましてくれたのが、ミカンちゃんだったんだ」
――アカネはんが苦しんどったら、ワイも胸の奥が苦しくなるんや。
――そう思っとるヤツが隣に一人でも居るんは、アカネはんにとって少しでも救いにならへんか?
――そっか。本当に大切なものって、こんなに近くにあったんだ。
その後は、ワイの知る通りやな。
ミカンちゃんを酔わせて押し倒して、人様に言えん感じの情事をやらかした訳や。
なんちゅーか、愛に飢えとるって言ったらエエんかな。
自分を愛してくれる誰かを必死で探しとった子なんやって、この3日間の話を聞いとったら思ったんや。
よくソラ姐さんに甘えとるんも、その一環なんやろ。
ワイが思っとった以上に、ミカンちゃんの正体バレたら地獄やなコレ。
結局ミカンちゃんの一番になるのも無理やったって話になるやろし。
今度は部屋を散らかすだけじゃ済まんかもしれん。
「なんか犬飼さんのそういう話を聞けて良かったっス。こういうのも、惚気話って言うんスかね」
「惚気話、なのかなぁ……? 殆ど悪口だった気がするけど」
まぁ半分以上悪口ではあったんやけどな。
なんかうまく言えんけど、ホンマに相手を嫌っとる人間の口調やない気がしたんや。
嫌いってより、自由気ままに生きとるミカンちゃんが羨ましくて妬ましいみたいな語り口やったし。
それにアカネはんの直感も割と当たっとるんよな。
関西弁で喋っとるところまで込みで、ミカンちゃんってワイの素の態度みたいなトコある訳やし。
「遊戯王やってる人が、コナミの悪口言ってるみたいなモンだと思うっス」
「言いたいコトは一応分かるけど、もっと良い例えは絶対あったと思うよ??」
ちょい白い目で見て来とるな、アカネはん。
……その顔、猿渡ハッサクとして見たのは今日が初めてかもしれん。
考えてみたら、そういう文句タラタラみたいな顔しとるの、今まではミカンちゃんの前だけだった気がするわ。
友達同士でも異性と同性やと距離感違うんやろなって思っとったけど、アカネはんなりに猿渡ハッサクの前では可愛くしようって気を張っとったんやろな。多分。
でも、猿渡ハッサクの前で気を張っとった姿よりも……ミカンちゃんとして見てきた犬飼アカネの方が、生き生きしとったように思うんや。
ワイがウザ絡みしたときに返ってくるパンチのキレも上がったし。
ボケたらしっかりツッコんでくれよるし。
今さっきみたいに白い目で見てくるみたいなトコもある。
そんなふうに次々に表情が変わって、いろんな顔を見せてくれるトコが可愛いって思うんや。
「犬飼さん。猫被るのをやめた後の方が、生き生きしてて可愛いと思うっス」
「え」
……アカネはん、固まりよったな。
目が泳いどるで。
ワイの言葉が予想外すぎて、反応に困っとるんやろな。
もっと素の自分に自信を持っても良いと思うで、アカネはん。
美味そうに飯を食っとるトコなんかは素の姿なんやろし。
ま、意図的に「可愛い」を作ろうとするんが悪い訳ではないんやけどな。
――私達に出来ることは……『愛』を示し続けることです。
アカネはんに自信を付けさせるために褒める、っていうソラ姐さんの方針がやっぱ一番効きそうなんや。
だから、アカネはんの良いところは思った時に言った方がエエ気がするで。
「さ、猿渡君……? もう彼女がいる男子が、無暗にそういうこと言っちゃダメだよ?」
「……? そういうもんっスかね?」
ソラ姐さんなら、別に気にしないと思うんやけどな。
ワイが他の女を褒めとったら、嫉妬してくれるんやろか?
あの人が嫉妬の炎に身を焦がしとる姿なんて、全然想像できひんな。
「そういうものなの! 勘違いした女の子にいつか刺されるよ!」
「お、おう……? 覚えとくっス」
なんや、圧を感じる言い方やな?
でもアカネはんに可愛いって言ったせいで誤解させた前科もあるんや。
アカネはんの言うことなら重めに受けとった方がエエかもしれん。
考えとくわ、って言ってオチョくるんも楽しそうやって思ってまうけど。
茶化したらアカン時の区別は大切やな。
ま、何にしても収穫はあった気がするで。
動物園デートっちゅう発想を聞けて良かったし、アカネはんの内心が聞けたんも収穫やった。
「期待しちゃうじゃん、バカ……」
おっと、予鈴や!
早よ行かな、終業式が始まってまうで!
おん?
アカネはん、予鈴が鳴った時に何か言おうとしとったか?
ワイの気のせいやて?
まぁ本人がそう言うとるなら、そうなんやろな。
ほんでもって、楽しい夏休みがワイらを待っとるんや!!
いやぁ、楽しみやなぁ、夏休み!!
アカネはんを褒めるのが大事ってソラ姐さんが言っとったから……。
ソラ姐さんが言うなら間違いないハズやな……?