三角関係な朝8時半   作:カードは慎重に選ぶ男

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あらすじ

赤い魔法少女の変身の上から、怨念の力を纏って漆黒の人狼へと変身した犬飼アカネ。
そんな犬飼アカネに、サルシスターとキジシスターの協力浄化技を打ち込めば倒すことは出来る。
しかしそれは同時に、犬飼アカネを魔法少女チームから追放する三行半(みくだりはん)でもあったのだ。
猿渡ハッサクは途方に暮れながらも腹を決め、自らの正体をソラへと明かしつつ相談するが……。


「逆に考えましょう。デュアルセラピーを使っちゃっても良いや、と」




第20話:魔法少女トリオの戦いはこれからだ!

黒い人狼の姿のまま、私は猿渡君達を待ち続けた。

もう随分長く待ったような気がしたけど、まだ日が昇り切ってもいなかった。

日没まで、っていうのは気が長すぎたかもしれない。

 

猿渡君の身近な人達に危害を加えるっていう脅しをかけたから、日をまたいで放置されることは無いと思うけど。

あの二人が出会い頭にデュアルセラピーを使ってくるかと考えたら、たぶん使ってこないよね。

ソラお姉ちゃんも猿渡君も、優しすぎるから。

きっと、私に手を差し伸べてくる。

漆黒の爪に覆われた私の醜い手でも、掴もうとしてくるに決まってる。

 

でも、それじゃダメなんだ。

あの綺麗な二人と私自身を、この先もどうしても比べちゃうだろうし……きっとその度に惨めになる。

だから、今が引き際なんだと思う。

 

私は、怪物としてあの二人と戦うつもり。

ソラお姉ちゃんが傷ついたら猿渡君も覚悟を決めるだろうし、逆もそう。

あの二人は、愛し合っているから。

私のことを救いたいっていうのもウソじゃないと思うけど……最愛の人と私が両天秤に載ったら、私の方は選ばないよ。

 

 

……もしかして私、心のどこかで「私の方を選んでほしい」って思ってたのかな。

すでに最悪な気分が、ひときわ悪くなった気がした。

自分の意地汚い部分を、また一つ自覚してしまったからだ。

サイアクだ。

 

やっぱり、あの二人とは縁を切らなきゃ。

自分の嫌なところが、どんどん見えちゃう。

そんな痛みに、この先も耐え続けて生きていける気がしない。

 

 

――最後にはオッちゃんが自分の心に整理つけるしかないっちゅう話やし、それが出来るのはオッちゃん自身でしかないやろ。

 

ミカンちゃんが飛田さんに言った言葉、正しいと思うよ。

私も最後には自分自身の心の整理をつけるしかないんだ。

そして……魔法少女をやめて二人と距離をとるのが、私が選んだ答えだよ。

 

 

 

 

 

決意を新たにしている私の耳に……砂利を踏みしめる音が届いた。

黄と青、二人の魔法少女が歩いてくるのが見えた。

二人とも真剣な顔をして、漆黒の化物を見据えている。

 

どうせ説得するつもりでしょ、なんて予想をつけたうえで私は初手から突撃を敢行した。

問答無用だ。

赤い魔法少女に怨念の力を上乗せした黒人狼は、単純なスペックなら二人を圧倒できるハズなんだけど……。

そういう油断が出来る相手じゃないのは私が一番よく知ってる。

 

案の定、私がトップスピードで振り抜いた爪はソラお姉ちゃんには掠りもしなかった。

攻撃が見切られてるし、速いだけの攻撃は通らないかも。

やっぱり厄介だ。

しかも、回避重視で時々殴り返してくる二人には……私を追放する意思が無さそうに見える。

もし追放の意思があるならデュアルセラピーを撃ってくるだろうし、そうしてくれたら私も回避なんてしないで受け入れるつもりだけど。

何か秘策でもあるのかな?

 

 

「ホイップ・テールっ!」

 

サルシスターが渾身の力で尻尾を叩きつけてきたけど、黒狼の爪で問題なくガード出来た。

こっちは怨念で作った鎧をまとってる訳だし、たぶんデュアルセラピー以外の攻撃は決定打にならないよ?

 

……と思うんだけど、油断は禁物だ。

私なんかじゃ考えつかないような作戦を用意してるかもしれない。

そういうことが出来ちゃう人なんだ、ソラお姉ちゃんは。

 

今のサルシスターの大技に合わせて、キジシスターも私に接近してきた。

やっぱり、来るよね。

大技の同時攻撃でゴリ押すか、波状攻撃で畳みかけるか……私でも想定できた作戦だ。

 

右腕の爪でキジシスターを迎撃しようとして……その腕が動かないことに気づいた。

サルシスターが尻尾を伸ばして、黒人狼の右腕に巻き付けてる!

手足4本を全部使って接地しながら、尻尾で私の右腕の動きを封じてるんだ!

人狼の右腕で綱引きのバランスゲームをしながら、近づいてくるキジシスターも迎撃しなくちゃ……!

 

とっさの判断で雑に振りかぶった黒人狼の左腕を……キジシスターは両腕で掴んだ。

そこで私は、一瞬だけ漆黒の左腕をどう動かすか迷ってしまった。

捕まれた状態から下手に力任せに動くと、投げ技をかけられるって思っちゃったんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「デュアルセラピー!!」

 

けど、眩い光で視界が完全に遮られて……私は状況への理解が追い付かなかった。

強烈な浄化の光で、怨念の黒鎧が焼き払われていく。

特にキジシスターに捕まれたままだった左腕はダメージが大きくて、イヌシスターとしての左腕が露出しちゃってる。

 

 

なんで?

どうやって??

デュアルセラピーを、キジシスターは一人で発動したの??

本当に信頼しあっている二人が、手を繋いだ時だけ使える技じゃなかったの??

 

混乱の境地に陥っている私の視界に……私に急接近してきているサルシスターの姿が見えた。

黒人狼の右腕に巻き付けていた尻尾を収縮させて、瞬く間にサルシスターは私に掴みかかった。

 

 

 

「デュアルセラピー!!」

 

そして……二発目の特大浄化光線が、辛うじて残っていた黒人狼の外装を根こそぎ焼き払った。

キジシスターだけならまだしも、サルシスターまでそんな無法なことをやっちゃうの……!?

 

強烈な浄化の光を2回も連続で受けて。

私は……黒人狼の外装を完璧に失ってしまった。

ボロボロのイヌシスターの姿で倒れ込んだ私を、二人が優しく抱き留めてくれた。

もう、何が何だか分からない。

 

 

……あれ? 私、追放されてないの……?

二人に抱き留めてもらった私の姿は、ボロボロだけど赤い魔法少女のままだった。

なんでだろう。

デュアルセラピーを打ち込まれたら、追放されるハズじゃないの?

 

って思ったけど、よく思い出してみたらルール的には問題ないんだ。

特定の二人がデュアルセラピーを他一人に当てると追放って話だったけど、サルシスターとキジシスターの組み合わせで撃った訳じゃないからね。

だから私を追放せずに浄化できてしまったんだ。

この二人は、いつもそうだ。

私がいくら背伸びしても出来ないことを、簡単にやっちゃうんだ。

 

 

「手を繋いでなくても上位技が使えるなんて、ズルいよ」

「手なら、繋いでいましたよ」

 

私を抱き留めているソラお姉ちゃんの声は、相変わらず穏やかで優しかった。

そしてその言葉の意味を考えて……気付いた。

私の左手は、黒人狼の爪があった時からずっと、キジシスターに握られていたんだ。

サルシスターが急接近してきたときも、同じように私の右手を握っていたんだ。

 

 

「アカネちゃんが苦しんでいるのも、自分自身を責めたのも、デュアルセラピーが使えたのも……全部、アカネちゃんが私達のことを大好きで居てくれたからです」

 

……そっか。

私、ちゃんとソラお姉ちゃんや猿渡君のことを好きになってたんだ。

こんな私でも、誰かを本気で好きになることが出来てたんだ。

そして、そんな私の気持ちを二人が本気で信じていたから、この作戦は成功したんだよね。

 

悔しいな。

せっかく二人のことを、ちゃんと好きになれたのに。

愛し合う二人の間には私が入り込む隙が、全く無いなんて。

こんなに嬉しいのに、胸の奥は苦しいまま。

 

 

「やっぱり、敵わないなぁ……。でも二人とも、ありがとう。

ちょっとだけでも、自信を持って生きていける気がするよ」

 

ちゃんと人を好きになることが出来て。

そんな自分自身のことを、ちょっとだけでも認めることが出来た。

それだけでも、私にとっては大きな一歩だったよ。

 

だから……ね。

 

 

「二人とも、最後のお願いだよ。やっぱり……私のことは追放して。

私の大好きな二人の邪魔者になりたくないから、お願い」

 

きっと、私は二人と一緒にいたら、お邪魔者になっちゃうよ。

二人が愛しあっているのを感じるたびに苦しくなる。

何も知らなかった頃になんて、戻れない。

魔法少女3人で仲良く集会なんて、きっと出来ない。

 

 

「……ソラ姐さん、人生で最後の不義理や。堪忍やで」

 

けど、覚悟を決めたのは私だけじゃなかった。

サルシスター……猿渡君も、腹を括った顔を見せていた。

私とキジシスターの顔を一度ずつ見て、深呼吸して。

黄色い魔法少女は、真剣な顔で口を開いた。

 

 

「ソラ姐さん、アカネはん! やっぱワイ、二人の片方なんて選べんわ! 二股させてください!!

 

渾身の土下座を見せられて。

私は、驚愕に固まってしまった。

だって……そんなの、アリなの?

ソラお姉ちゃんだって、そんなのイヤでしょ??

 

 

「恋愛というものに勝敗があるのだとしたら……引き分けだってあっていいと、私は思いますよ」

 

…………えっ???

ソラお姉ちゃん、本当にそれで良いの?

ハーレム許容だなんて、そんなところまで大らかで本当に大丈夫?

私ってシャレにならないレベルの「やらかし」をしてると思うし、追放ENDでも正直かなり有情かなって思ったけど??

 

 

でも。

いつも通り優しく微笑んでいるキジシスターの言葉に嘘は無いって思った。

サルシスターも土下座したまま。

私の言葉を、二人とも待ってくれているんだ。

 

 

「私、これからも失敗したり自分のことが情けなくなったりして、立ち止まるかもしれない」

 

だから、今の私の精一杯の言葉を紡ぎだすんだ。

胸の奥が温かくて……今までの人生で一番幸せな気持ちを。

 

 

「それでも……二人が私のことを受け入れてくれて、嬉しかった!

やっぱり私、猿渡君のこともソラお姉ちゃんのことも、大好きだよ!!」

 

安心して胸をなでおろしながら顔をあげたサルシスターに近寄って。

そっと、頬にキスをしてあげた。

いつかの力任せのキスじゃなくて、頬に触れるだけのキスをして、すぐに顔を離した。

 

ビックリして固まっているサルシスターを尻目に、キジシスターに目配せしたら。

私の言いたい事を瞬時に察してくれたキジシスターも……サルシスターのもう片方の頬にキスを落としてくれた。

サルシスター、二連続のビックリで顔を真っ赤にしたまま右往左往してる。

可愛い……。

 

自分より彼氏の方が可愛いっていうのも何だか複雑な気分ではあるけど、それはそれで楽しいような気もしてきちゃった。

そうだ、良いこと思い付いちゃった。

少女趣味が過ぎてさすがに着られないって思ってタンスの奥に眠らせちゃってる衣類を、こんどミカンちゃんに着てもらっちゃお♡

 

 

 

「この後、また3人で魔法少女集会しようよ! いつもみたいに!」

 

ソラお姉ちゃんと手を繋いで。

あたふたしているミカンちゃんを置いて、先に歩き出しちゃおう。

ぼーっとしてると、私の方がソラお姉ちゃんをお嫁さんにしちゃうかもしれないよ?

 

まぁでも、やっぱりすぐにミカンちゃんも追いついてきて、結局いつもの3人組に戻るんだ。

 

 

 

 

 

 

だから……これからも、よろしくね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  

 

 

 

 

 

 

 






御愛読ありがとうございました!!


何の憂いも残ってないな! ヨシ!!!
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