三角関係な朝8時半   作:カードは慎重に選ぶ男

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イヌサルキジの当番回は、別にローテーションするとは限らないのだ……。



第5話:をかしな魔法少女トリオ

騒がしい昼休みの学食で。

昼食と時化込みながら、ふと思ったんや。

ソラ姐さんに告白したのはエエけど、カップルって具体的に何すんねん?

何となくデートとかでイチャイチャしとるイメージは漠然とあるんやけどな。

 

ワイの正面の席では、ごっつ美味そうにアカネはんがツナマヨパンを頬張っとるな。

幸せそうに食事する子やで。

鳥山アニキはおらんな。

 

んー、アカネはんに恋愛相談するかぁ……?

なんや、その時点で人選ミスな気がするんやけどな。

鳥山アニキが見当たらんから、しゃーなし。

あんまり期待せんで聞いとこ。

 

 

「ちょい聞いてみたいんスけど。

付き合いはじめて間もない恋人からデートに誘われるとしたら、犬飼さんならどんな感じを想像するっスか?」

「むぐっ!? げほげほっ!!?」

 

しもた。

いきなり話しかけたせいで、ツナマヨパンが変なところに入っとるな。

堪忍やで、アカネはん。

ほれ、水やで。

コレ飲んで落ち着いてから話すんや。

お、落ち着いたみたいやな。

 

 

「うううーん……」

 

アカネはん、考え込んどるな。

昼食を食べる手が止まっとるままや。

別にそこまで真剣に考えんでも、食べながらでええんやで?

そこまでガチな回答を期待しとる訳やないし。

 

 

「もっと大人になってからならオシャレなバーとか飲食店になるかもだけど。

中学生(わたしたち)のお財布事情を考えたら、ウィンドウショッピングとかゲーセンとか……あとは、宅デート?」

 

なんや、想像以上に地に足のついた回答が返って来よったな。

ウィンドウショッピングは……女モンの服とかアクセサリーとかは全然分からんけど、ソラ姐さんならその辺りの蘊蓄も一通り揃えてそうや。

 

ゲーセンは、どうなんやろ。

ソラ姐さんをゲーセンに連れ込んだら、あんなオットリしとって可愛くてオッパイ大きいお姉さん、ワイが目を少しでも離した瞬間にナンパされるやろな。

ナンパは別にしても、頼れるカレシ君としてワイが活躍できる可能性が無さそうなのが辛いトコやで。

コテコテな想定として、彼女がクレーンゲームで苦戦しとるトコで彼氏が代わりにゲットする場面を想像してまうけど……相手がソラ姐さんだと多分そのシチュは成り立たんのよな。

あの人ナチュラルに超人肌やから、例えガチ初見からでも2~3回見たら「理解しました!」とか言いそうなんや。

その後は目当ての景品全部一発で掻っ攫って、最終的には店長から土下座されてゲーセン出禁になる姿が想像できてまう……。

 

宅デートは……ま、コレが一番現実的なんやろな。

懐も痛まんし。

ワイの秘蔵のエロ本を見られたりしたらショックやけど……。

そういう時には鳥山アニキにでも事前にエロ本を預かってもらえば完璧やな。

 

 

「そういえば宅デートで思い出したけど。この間見た私の部屋って、どうだった? 猿渡君はどんな感じだって思った?」

 

アカネはんが、期待半分&不安半分っちゅう雰囲気で聞いて来よった。

昼食を食べるペースも、気持ち遅めや。

せや、アカネはんって片想い中の相手がおるんやったな。

その相手にアカネはんの部屋を見せる前に、男子(ワイ)に見せた反応を聞きたいっちゅう腹やろな。

ワイがソラ姐さんとのデートを想定しながらアカネはんに相談しとるのと同じ構図や。

 

部屋を見れば人柄が分かるなんていう話もあるで。

アカネはんのためにも、ここは真面目に答えた方がええやろな。

猿渡ハッサクとして行ったことは一度しかないんやけど、ミカンちゃんとして何度も行っとるから容易に思い出せるで。

 

 

「ヌイグルミとか一杯あって、可愛い『女子の部屋』だって思ったっス。

淡い感じの色のカーペットとかベッドとかも、いかにも女の子の部屋って感じだったっス」

「えへへ♡ 『可愛い女子』の部屋かぁ、そうだよね、そうでしょ♡」

 

アカネはん、めっちゃ嬉しそうやな。

見えへん尻尾をブンブン振っとる。

その片想い中の相手にも、そう言ってもらえる事を祈っとるで。

そんな返事をしながら、ふと思ったんやけど……なんでか、ソラ姐さんの部屋ってあんま想像できひんな。

 

想像すんのが全く不可能って訳やないけど、どないな部屋が出てきても不思議やないっちゅう感じや。

難しい本が仰山(ぎょうさん)ある気もするし、アカネはんみたいなヌイグルミが山盛りの部屋かもしれん。

ミニマリストみたいに何もない部屋が出てくるかもしれんし、ワイが全然知らん趣味に関する品が飾ってある可能性もあるで。

さすがにベッドの下にエロ本があったり、汚部屋だったりみたいなのは無いやろけど。

 

…………もしかしてワイ、ソラ姐さんのこと全然知らんのでは?

 

外見をはじめ、知っとることも多いハズなんやけどな。

ソラ姐さんは腰まで届く黒髪が綺麗で、オッパイ大きくて色気がある育ちの良さそうなお姉さんや。

オットリしとって、頭良くて、母性溢れとって、ちょい天然入っとる女性やな。

魔法少女トリオの一人として影から人々を守っとる人でもある。

 

せやけど。

せやけど……なんでやろな。

なんで、ソラ姐さんの部屋っちゅうモンが想像できひんのやろ?

もっとソラ姐さんのことを知れば、分かるんやろか。

 

 

「そんな私のお部屋に、またソラお姉ちゃんが家庭教師に来てくれるんだけど、猿渡君も来る?」

「喜んで行かせてもらうっス」

 

アカネはん、ホンマに最高のタイミングで最高の話題を出してくれよったな!

恋のキューピッドの才能あるで!

さすがワイらの可愛い妹分やな!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ほんでもって、放課後はアカネはんと二人で犬飼家に直行して。

ソラ姐さんが到着してからが御勉強タイムやな。

 

頭から煙吹きそうな顔しとるアカネはんが、ソラ姐さんに励まされながら授業の復習をしとるな……。

まぁワイはアカネはんほど極端にピンチな訳やないけど。

正直、ソラ姐さんに会うのがメインで勉強会に参加したみたいなトコはあるで。

 

 

「ふと思ったんスけど、古文の『をかし』って、なんであんなに沢山意味があるんスかね?」

 

古文の教材を開きながら、ふと思ったんや。

1つの単語に対して5個も6個も訳語があるんは、単純に覚えるのが面倒やで。

しかも、思いっきりテストに出そうな雰囲気あるねんな。

語呂合わせとか丸暗記しか無いんか?

 

 

「古くは、『愚かだ』という意味の言葉だったみたいですね。それが段々変容していったようです」

 

大本の意味は『愚かだ』なんか。

しっかし、古文の教材に載っとる意味は、大体褒める感じの訳語なんやけどな。

なんか、逆の感じになっとらん?

元は悪口なんやろ?

 

 

「教科書的には良い意味の方が多いのに、なんか妙な話っスね」

「そうですねぇ。現代の感覚で言うと、『ヤバい』が近いかもしれないです」

 

「ヤバい……っスか?」

「ヤバいですね☆」

 

確かに「ヤバい」って、褒める時に使うことの方が多いんやけど、危険って意味で使うこともある言葉やな。

アレも元が悪い意味だった言葉が、だんだん褒め言葉になっていった例なんか。

んー……「ヤバい」を念頭において「をかし」の意味一覧を見ると、確かに「ヤバい」と大体一致しとる気がしてきたわ。

 

 

「比較的新しい例だと『メッチャ』辺りも褒める意味で使う人は多くなってきたかもしれないですね」

「あー……確かにあれも『滅茶苦茶』が元だと考えると、同じ変化をしてるっスね」

 

「更に新しいものだと『無理』も同様の兆候が見られます」

「そうなんスか……? それは褒める意味で使ったこと無いっス」

 

自分で使ったことは無いんやけど。

確かにSNSとかだと、「無理」を褒める意味で使っとる人を見かけたことあるわ。

1000年後の人らは、「ヤバい」や「無理」の意味が多すぎるせいで、古文のテスト勉強で愚痴っとるかもしれんな。

 

 

「実は日本語に限ったことでは無く、英語の『ナイス』も同様の経歴を持つ言葉ですよ」

「それは現代だとマジで良い意味でしか使わないっスね……」

 

それ、元々は悪口だったん?

ソラ姐さんの追加説明によると、「ナイス」はバカって意味だったらしいで。

確かに、日本語の「ヤバい」や「をかし」と通ずるモンがあるかもしれん。

 

まぁでも、考えてみたら言葉の使われ方って変わるのが自然なような気もするわ。

ワイらの喋っとる言葉も古文とは大分違っとるし。

違い過ぎて、古文の教材ですら現代日本人が読むのはムズいで。

 

 

「正しい日本語って、一体何なんスかね?」

 

言葉が時代とともにどんどん変化しよるモンなら。

正しい日本語って一体なんやねん。

現文や古文のテストには一応「正解」は用意されとるんやろけどな。

言語が変化し続けよるモンだっちゅう前提の古文と、正しい日本語を説く現文って、そもそも存在自体が矛盾しとらん?

 

ソラ姐さんは、これにも解答を既に用意しとるんかな?

雰囲気的に、即興で今考えて答えを出しとる訳やなさそうに感じるわ。

 

 

「正しい日本語、というものは存在しないと思った方が良いですね。

同じく、『従来の日本語』はあっても、『本来の日本語』は無いと思った方が良いでしょう」

 

本来と従来……?

それって何の違いがあるんやろ、って一瞬思ったんやけど。

たぶん、「従来」の方は単純に古くからあるっちゅう意味や。

一方で「本来」にはそれが正統やっちゅう含みがありそうやな。

 

 

「文学やエンタメ分野では新しい用法や単語が日夜生まれ続けているみたいな所はありますし、それが一概に悪い訳ではないと思います。

ラグビーでハットトリックを決めてもいいですし、卓球でホームランを打っても良いんです」

「卓球でホームランって、それただのノーコンっスよね??」

 

ラグビーでハットトリックは普通に使うやろ……?

3回ゴール決めるって意味やないんか?

へー、元はクリケットやったけど、段々サッカーや他のスポーツにも使われるようになったんか。

まぁ卓球でホームランは初めて聞いた使い方やけど、意味は想像できるで。

 

 

「その人にとっての既知の単語が未知の意味で使われた時、あるいは全く未知の単語を聞いた時に、その意味を推測する能力を『国語力』と呼ぶと思います」

「ウンチクのある人の言葉っスね」

 

「それは文脈的に、教養や知識を褒める意図で言っていると考えられますね。従来の言葉で言うところの含蓄(ガンチク)だと推測します」

「これが国語力っスね……」

 

まぁでも、ワイもそれは思い当たる経験あるわ。

うちのオカンが最近の流行りのアニメを見たらしいんやけど、どうも話が噛みあわんと思ったんや。

その時に推測したのが、たぶんウチのオカンは「転生」って言葉を「異世界に行くこと」って意味で使っとるんやろな、ってコトやった。

自分にとって既知の単語が未知の意味で使われるってシチュ、案外日常でもあるかもしれんで。

 

 

「しっかし、正しい日本語なんて無いって話になってくると、なんで国語の授業なんてあるんスかね?」

 

正しい日本語なんて無いなら、現文の教科書って一体何なんや?

なんでそんな授業があんねん?

 

 

「むむ……。確かに、ハッサクくんの言う通りですね」

 

お……?

ソラ姐さん、顎に指をあてて考え込む素振りを見せよったな。

これは、ソラ姐さんも考えたことが無かったみたいや。

さすがに何でも事前に知っとるわけやないんやな。

 

 

「思いつきですけれど、推測で宜しければ話せますよ。言葉の意味を一定に管理することのメリットを」

 

……おん?

考え込んどった時間、5秒ぐらいやねんけど??

この間の「可愛い」の時にも思ったんやけど、やっぱソラ姐さんの脳はインテル入っとるやろ……。

 

 

「極端な例を出しますけれども……。洪水が起きた時に『高いところに逃げろ』と避難指示を出したとするじゃないですか。

そういう時に『高い』という言葉の意味を逆に認識している人ばかりだと、大惨事になりますよね」

 

……そう言われたら、その通りやな。

挙げられた例は、ソラ姐さんも自分で言っとる通り極端やけど。

あんまり言葉が無秩序に進化すると、そういう悲劇も起こり得るっちゅう訳や。

言葉の意味を一定に管理することがメリットに繋がるケースって、案外あるんかも?

 

 

「あとは裁判をするときですかね。

過失や錯誤の範囲を判断するために、ある程度は模範的な日本語というものを想定する必要は出てくると思います」

「なるべく裁判所とは縁を持ちたく無いっスね。忌憚のない意見ってヤツっス……」

 

……確かに、どこかで言葉の新しい用法が生まれるたびに法律を書き直す訳にもいかんやろしなぁ。

まぁでも、社会科見学以外では裁判所なんて行きたくないモンやな。

そういうの、ホンマは知っとった方がええんやろけどな。

叶うなら、訴訟なんて一生縁が無い人生を送りたいモンやで。

 

でも、ソラ姐さんの言う通りやな。

確かに言葉の意味や用法の変化を(完璧にとは言わんけど)コントロールするのも大事ではあるんや。

将来的にその手のトラブルに直面する時のためにも、国語はキチンと頭に入れといた方がええっちゅう訳やな。

 

 

 

 

ここまでの話を聞いて思ったんやけど。

ソラ姐さんは、正しい日本語なんて無いって言いながら、言葉の意味を一定に管理することのメリットも語れるんやな。

複数の視点を持つことに全く抵抗が無いんや、この人。

まぁ程度問題で人間誰でも多少の矛盾は抱えて生きとるモンなのかもしれんけど……。

ワイかて目玉焼きにソースか醤油か迷うぐらいのスケールの「複数の視点」は持っとるんやけど、ソラ姐さんのはその凄いバージョンみたいな感じや。

 

この間の陰陽術の話で言うたら、そういう面でソラ姐さんは「混沌」なのかもしれん。

ソラ姐さん自身も混沌属性を酉に振り分けとったし、本人もそういう自覚はあるんやろな。

……ワイがソラ姐さんの部屋を想像できんって思ってまう理由も、そこに繋がるのかもしれん。

猿渡ハッサクを可愛くて格好良い彼氏と言ってくれとるソラ姐さんは、無数にある顔の中のホンの一面でしかないんやろか?

 

薄々思っとったけど、ソラ姐さんのもっと深いトコを知るためには、何かが足りひん。

ワイの方からのアプローチを何かしら変えんと、いつまでたってもソラ姐さんを深く知ることなんて出来ひん気がするんや。

 

 

 

休憩なんて言いながらアカネはんにポッキーを食わせとるソラ姐さんの姿は、やっぱりいつものオットリした優しいお姉さんやった。

大人びとる、オッパイ大きくて、美人だけどチョイ天然入っとる、そんなソラ姐さんに惚れ込んだワイの気持ちにウソは無いって思うんやけどな。

一歩踏み込むために何が足らんのか、ワイ自身も分からん……。

 

なんやけど。

必要な時には必ず一歩を踏み出せる奴や、ってワイのことを評価してくれとる人もおる訳やしな。

小さい一歩で終わるかもしれんけど、踏み出した方がええんやろな。

……せやろ、鳥山アニキ。

 

 

 

「全然脈絡ない話なんスけど……昼間に犬飼さんにこの部屋の感想を聞かれた時に、ふと思ったんスよね。

ソラさんの部屋って全然想像できないな、って。……どんな感じなんスか?」

 

部屋は持ち主の心を写す鏡、なんて言葉がどこまで信用できるか分からんけど。

ジャブとしては、案外悪くないかもしれん。

お、ソラ姐さん、ちょい考え込んどるわ。

たぶん、自分自身の部屋が「どんな部屋」なのか考えたこと無かったんやろな。

 

 

「ソラお姉ちゃんの、お部屋? 可愛いものが一杯あるお部屋かなって思ってたけど……違うの?」

 

アカネはんは、ワイの質問の意図自体があんまり分かっとらんみたいや。

おやつを頬張りながら不思議そうにソラ姐さんを見上げとるな。

アカネはんの解釈としては、漠然と自分自身と同じ系統の部屋を想像しとるんやろな。

 

 

「……結論を言ってしまいますと、生家には私の部屋と呼べるものはありません」

 

……なんやて?

思わず、アカネはんと顔を見合わせてしもたわ。

まぁ実家が狭くて大兄弟とかやったら、そういうコトもあるかもしれんけど……。

 

 

「実は私、年の離れた兄さんと姉さんがいる3人兄弟の末っ子でして。

兄さんと姉さんは昔から自室を持っていたんですけれど、私は小さいころからその両方の部屋に入り浸るのが当たり前になってしまっていたんですよね」

「そういわれると納得かも。ソラお姉ちゃんって、なんか例えに出てくる少年漫画が古いのばっかりだもんね」

 

ソラ姐さんが言うには、兄姉の持っとった漫画やらゲームやらを小さい頃から借りとる子供だったそうや。

確かにアカネはんの疑問は、ワイも若干思っとったわ。

この間のリアリティラインの時の話でも、「ボーボボ」とか「スラムダンク」とかは明らかに世代が違うって思っとったしな。

電子書籍なんかで気軽に読めるといえばその通りやし、そこまで気にしとらんかったけど……そういう経緯があったんやなぁ。

 

 

「今は兄さんも姉さんも実家には住んでいないので、兄さんの使っていた部屋を私が使っているんですけれども……。

兄さんの私物が結構残っているせいもあって、どうにも『私の部屋』という感覚が薄いんですよね」

 

間借りしているだけという感覚が強くて私自身の所持品は全然置いていないです、なんてソラ姐さんは続けよった。

これは……どうなんやろ。

部屋の在り方からソラ姐さんの人柄を知りたい、って目標から切り出した話なんやけど。

 

このエピソードから導き出される人物像って、どないやねん??

 

 

「そっか。ソラお姉ちゃんは、お兄ちゃんやお姉ちゃん……皆から愛されて育ったんだね」

「ふふ……そうですね。それは間違いありません。大好きな、私の自慢の家族です」

 

兄姉のことを語るソラ姐さんは、本当に幸せそうやった。

彼氏の惚気話をするときに近い雰囲気やな。

 

ワイとしては、ソラ姐さんは年下を甘やかすのが上手い感じがあったから、弟妹でも居るんかと思っとったわ。

末っ子やっちゅうのは思いもせんかった。

なんやけど、兄姉のことを嬉しそうに語るソラ姐さんの姿を見たら、なんや納得させられたっちゅうか……。

たぶん、年の離れた兄姉に本当に愛されて、そんな人達に心の底から憧れながら成長したから、今の面倒見の良いソラ姐さんが出来上がったんやろな。

 

 

――幼児たちがプリキュアを『可愛い』と言う時って、大人びた素敵な女性だっていう視線で見ていますよね?

――一方、大人たちがプリキュアを『可愛い』と言う時は、幼いものを愛でる構造ですね。

 

ソラ姐さんが大人と子供の両方の視点を持っとるような雰囲気があったのも、年の離れた兄姉の影響なんやろか。

兄姉の言う『可愛い』と幼少期のソラ姐さん自身の思う『可愛い』の間にある違いに、幼い頃から気付いとったんやろ。たぶん。

 

ここまで考えて……ソラ姐さんへの理解を深めるっちゅう最初の目的を思い出してみると、想像以上の大収穫やったかもしれん。

部屋の物品から好みを推測するぐらいが精々やと思っとったけど、生い立ちまで語ってくれよったな。

おっかなビックリやったけど、一歩踏み込んで良かったで。鳥山アニキ。

 

 

「ここまでの答えは、ハッサク君の御期待に沿うものでしたか?」

「……ソラさんのそういう話、聞けて嬉しかったっス」

 

……敵わんなぁ。

ソラ姐さん、ワイが探りを入れとることまでバッチリ理解しとるやんけ。

どこまでいっても、やっぱワイはソラ姐さんの掌の上で右往左往しとるだけなんかもしれん……。

アカネはんは、イマイチ会話の意図が理解できなくて首を捻っとるな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そういえば、お兄さんの私物が沢山部屋に残ってるって話だったっスけど、見たらヤバいものとかあった感じっスか?」

「見たらヤバいもの、ですか……? それでしたら、とっておきのネタに心当たりがありますよ?」

 

やっぱ、あるんやな。

中学生(ワイら)が買いづらいエッチなブック的なサムシングや。

可愛がっとる年の離れた末っ子に、そういうのを見られたら……ショックやろなぁ。

おいたわしや、義兄上(あにうえ)……。

 

 

 

 

 

 

「なんと、本放送時の『でんのうせんしポリゴン』を録画したビデオテープがあったんです!」*1

 

「リアル特級呪物やんけ!??」

 

 

ワイが想定しとった「ヤバい」と大分方向性が違うモンが来よったな!?

やっぱ現代でも、「ヤバい」は意味多すぎて面倒やな!!

 

 

 

 

*1
1996年に放映された初代アニポケの、幻の第38話。

当時TVを見ていた多くの児童が、特殊な発光パターンのせいで体調不良を訴え、病院へ搬送される事態となった。

アニメ全般に「部屋を明るくして画面から離れて見てください」という警告が挿入される原因を作った、伝説のエピソードである。





作者からの重要なお知らせ

このSSの中では「でんのうせんしポリゴン」をコメディの一部に採用していますが、現実世界では本当に危険物です。
もし古いオタクの家で当時のビデオテープを見つけても、興味本位で再生してみるのは危険なので絶対にやめましょう。
個人差もありますが、冗談抜きで病院に搬送される羽目になるかもしれません。

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