珍獣枠は強い(確信)
今回結構セクハラな発言がありますが、絶対にマネをしないでください。
とある土曜の昼下がり。
俺は……年下の女子2名と一緒にファミレスで屯していたりする。
何故こうなったかというと……?(ドンブラ感)
まぁ勿体つける程でも無いんだが、人気のない路地裏で変身解除するイヌシスターとサルシスターを見かけただけなんだ。
身バレしたことに気づいて慌てている二人を宥めて、とりあえず最寄りのファミレスに3人で席をとった訳だ。
しかし、怪物が出た訳でもないのに二人は一体何をしていたんだろうな……?
犬飼は学校で俺と頻繁に会っているが、もう一人からしたら俺は初対面の人間な訳だし、とりあえず名乗っておくか。
「俺は鳥山カイセイ。犬飼と同じ中学校の3年生だ」
「ワイは松本ミカンやで。アカネはんと同い年や」
「ミカンちゃんの苗字、初めて聞いた気がする……。なんかアイドル感あるかも」
俺もフルネームは初めて聞いたが、言われてみるとアイドル感は分かる気がするな。
アイドルアニメなんかに居そうだ。
……変身後の金髪をベースに考えると、更にそれっぽくなるな。
「鳥山先輩。その、私達のことは……」
「他言無用、だろう? その点は安心してくれていい」
「おーきに」
胸をなでおろしている犬飼。
それとは対照的に、相変わらず軽い調子で笑っている松本。
松本からしたら、鳥山カイセイは初対面の人間のはずなんだけどな?
良く言えば気さくだが、悪く言うと警戒心が皆無な感じだ。
「しかし、怪物が現れた訳でもないのに、二人はどうして変身していたんだ?」
「実は、前に二人で戦っていたときに、近くの保育園の子供たちが応援してくれたことがあったんです」
「その時の縁で、たまにワイらでガキンチョらに会いに行っとるんや」
なるほど。
イヌシスターとサルシスター、そんな地道な営業活動をしていたのか。
……やはりアイドルでは??
「キミ達、3人組じゃなかったか? 後の一人は?」
ソラとして二人と会った時には、その話は一度も聞いたことがないんだけどな。
まぁ悪気があって隠している子たちでは無いだろう。
何となく言う機会を逃した感じかな。
「あんなお色気ムンムンでデカパイの姉ちゃんおったら、園児らの性癖歪むやろ。精通したらどないすんねん」
「そんな訳ないでしょ!? ……無いでしょ? あれ? 無いよね……??」
「さすがに6歳以下は無いと思って大丈夫だろうな。冗談で言っているだけだろう」
ちょっと犬飼が自信無さそうな感じだったので、真面目に補足を入れておこう。
精通は大体11歳前後だし、さすがに未就学児が精通するのは相当なレアケースだぞ。
そうだよね、なんて呟きながらストローでミルクティーを啜っている犬飼は、あんまりこの手の知識は無い感じだな。
「ちな、
「8歳だな」
「げほげほっ!!? ミカンちゃん、初対面の人にナニ聞いてるの!!? 鳥山先輩も真面目に答えないで!!?」
「おっと、スマン。堪忍やで、
「絶対ウソだ!! 女の子が精通する訳ないでしょ!!」
「ん? 精通はしないと思うが、文脈的に松本の方は初潮の意味で言っているんじゃないか?」
「冷静に考えたら確かにその通りだけど! それはそれで軽々しく言うことじゃないよ!!?」
ぜぇぜぇ、なんてツッコミ疲れて肩で息をしている犬飼……。
そんな犬飼の姿を見て、軽々しく笑っている松本。
本当に良いコンビだなぁ、キミら。
「くっはっは! アカネはんの、そういう打てば響くみたいなトコ、好きやで♡ ほんで、アカネはんは何歳だったん?」
(何かがブチ切れる音)
(殴る音)
(無言の腹パン)
「グエーッ!!?」
松本ミカンは、ビクンビクンなんて音を立てながらファミレスのテーブルに突っ伏している……。
何があったかは、まぁ深くは語るまい。
関西人の周囲ではリアリティラインが低いらしいし、すぐに復活するだろう。
まぁ松本の方も、そういうツッコミを覚悟で犬飼を揶揄っているところはあるだろうし本望だろうな。
「はぁ……。まったく、どうしてこんなのが私よりモテるんだろ……」
まだダウンしている松本を見下ろしながら、ぽつんと犬飼が言葉を零した。
どうした急に。
ツッコミも熟せて妹感のある犬飼も十分可愛いと思うけどな。
「ファンアートの数もだけど、幼稚園で『僕と結婚して!』っていう子は大体ミカンちゃんの方に行くんですよね……。ドウシテ、ドウシテ……」
何だかちょっと闇が噴き出してない??
少し話を聞いてみると、客層としてはイヌシスターの方への園児は女子が多めらしい。
男子も居るには居るけど、たまに犬尻尾を触りに来る程度なんだってさ。
一方、サルシスターの方は男女問わず園児たちが寄っていくんだと。
最大10メートルぐらいにまで伸びる猿尻尾を惜しみなく使って、アスレチック人間みたいになっているんだとか。
確かにそれは子供たちは喜びそうだな……。
サルシスターの尻尾は相当器用に動かせるし、何か事故が起こりそうになってもフォロー能力も高そうだ。
あと本人の陽気な関西人っていうキャラが取っつきやすいのもあるかもしれない。
たぶん3人娘の中で一番ジェンダーレスなのよな。
今だって俺にも犬飼にも、異性という壁を感じさせない態度で話しているしな。
大阪のオバちゃんが、「今だけ男やで!」って言いながら男子トイレに入ってくるみたいなものなんだろう。たぶん。
まぁ……セクハラ発言に関しては一考の余地があるとは思うが。
「ガキンチョらの結婚宣言なんてその場だけのハナシやろ。ま、一応毎度断っとるけど」
「断ってないじゃん! いつも『考えとくわー』って期待を持たせる言い方してるでしょ!」
「せやから、断っとるやろ?」
「……?」
「おん……?」
松本が復活したのは良いけど、なんか二人して首を捻っているな。
これは俺から補足説明を入れた方が良さそうだ。
なんていうか、コレも文化の差ってやつなんだろうな。
「関西の人が言う『考えとく』と『行けたら行く』は基本的にNOという意味らしいぞ」
「えっ? そうなの??」
「そらそうやけど……? ありゃ、まさかそれってYESの意味で受け取られるんか?」
それらの慣用句的な使い方を知らない人間が聞いたら、どちらかというとYES寄りのニュアンスで受け取ると思うぞ。
松本、それを聞いて少し渋い顔になったな。
園児たちに悪いことしたかも、なんて思っている感じか。
「まぁ『考えとく』も、どちらかといえばYES寄りという程度だからな。取り立てて問題だと言うほどでも無いだろう」
「ほっ……。ま、そんならエエか……」
適当に見えて、妙なところで義理堅いな。*1
ただ、犬飼の方は納得がいかないという顔だ。
胡乱なものを見る目で松本を見ている。
「そうかな……。私は、不誠実に感じるよ。ハッキリ断った方が良いと思う」
何だか、犬飼の言い方は真に迫っていたというか。
茶化すような雰囲気では決して無かった。
そして、犬飼がそう発言した背景にあるものも分かる気がした。
1年前の二股事件が、かなり心の奥まで残る傷になっているんだろう。
「確かに、八方美人も行き過ぎると刺されるというのは一理あるな」
最近見たアニメでそんなのあったな……。
いや、やめよう。
俺と犬飼が急死して松本の子供として転生したりしたらギャグじゃ済まなくなる。
「ムズいもんやな……。なんや、こう、やんわり上手い具合に断る決まり文句とか知らへん?
そういう事こそ、親友の犬飼に相談するべきだと思うぞ。
なんで今日初めて会った俺の方へ質問するんだ、松本ミカン??
なんかキミ、妙に俺に対する信頼度高くない……?
まぁ初めて会った気がしないみたいなことを言っていたし、よく似た知り合いでも居るのかもしれない。
まさか、ソラの正体に気づいているか?
……と一瞬だけ思ったが、ほぼ無いだろうな。
さっき松本は俺に変身解除を見られて、犬飼と一緒に慌てていた訳だし。
「断った時点で大なり小なり相手は傷つくとは思うが……既に恋人が居ることを告げるのが一番後腐れないと思うぞ」
「そう言われたら、その通りやなぁ。ワイも、もしそう返されとったら多分諦めとったやろし……」
「……えっ?」
……犬飼が、今世紀最大の衝撃でも受けたような顔をしている。
手に持っていたコップを落としそうになって、松本に支えて貰っているな。
一体どうした?
ファミレスの窓の向こうにUFOでも見えたか?
「ミ、ミカンちゃん、彼氏いるの……!?」
犬飼が動揺の底から捻り出した質問を聞いて、俺と松本は顔を見合わせた。
確かに松本の直近の発言は、告白に成功した人間の言葉にしか聞こえないけどな。
そこ、驚くところか?
つい先程も松本がモテるって話をしたばっかりだし、こんな気さくで可愛い子なら、彼氏が居たって不思議じゃないと思うぞ。
「今のは……ま、言葉の綾っちゅうヤツや! 彼氏なんておらんで!」
その返しを聞いた犬飼の表情は……まさに「目は口ほどに物を言う」ってヤツだな。
松本ミカンを見る目が不信感MAXだ。
まぁ大体何が起こったかは推測できるけどな。
たぶんソラが加入する前の時期に二人きりでコイバナでもしたんだろう。
その時に、奥手な犬飼に遠慮して松本も「ワイも彼氏なんておらんで!」的な嘘を吐いてしまったんだろうなぁ。
どうも松本は、デリカシーがあるんだか無いんだか分からない奴だ。
恋愛関連だけはデリカシーの感覚が人並みにありそうな感じか?
犬飼の不信感に圧し負けた松本は、空のコップを片手にドリンクバーへと旅に出た。
「…………また、やっちゃった。やっぱりポジティブに生きるって難しいよぉ、鳥山先輩……」
どんより。
松本の姿が見えなくなってすぐに、犬飼はイジケはじめた……。
ソラお姉ちゃんやミカンちゃんの前では全然見せない弱音モードだな。
その態度をソラの前で見せれば、ソラならいつもみたいに抱きしめて撫でまわして慰めるところだ。
でも、犬飼の中で何らかの線引きがあって、その態度は魔法少女仲間には見せたくない感じなのか?
「自分でも上手く言えないんですけど、ミカンちゃんの話を聞いた時に『祝う』って発想よりもまず、暗い感情が一杯出てきちゃったんです……」
ソラの彼氏の話の時は普通に聞いていたように見えたけどな。
松本の彼氏の話になると嫉妬心とか劣等感とかが湧き出てくる感じか?
……前々から若干思っていたが、犬飼には群れの中の序列をつけるタイプの動物に近い気質があるのかもしれないな。
年長者であるソラのことは群れのボスみたいに思っているから、遠慮なく甘えてくる。
一方で、同い年の松本よりも自身の序列を上に置いておきたいみたいな感覚があるのかもしれない。
そして松本も無意識的に犬飼の気質を察しているから、犬飼を揶揄って遊ぶのを楽しんでいる節がある。
そうやってワチャワチャしている姿も可愛いと思って俺は見ているところはあるが……それって改善した方が良いのか?
なかなか悩ましい問題だな。
俺としては、個性や多様性の範囲内と言っていいレベルな気がするんだよなぁ。
本人が自主的に「自分を変えたい」と言ってきているので協力するのも吝かではないが、伝え方もなかなか難しい。
あまりストレートな言葉を使うと、「お前ってサルみたいだぞ」的な悪口のニュアンスで受け取られる危険性は否めない。
「犬飼はさ、もし魔法少女チームの青い子が恋人を紹介したら、素直に祝福できると思うか?」
「出来ると思います」*2
「なら次のステップだ。
この差がどこから出てくるのか、自分自身の心に聞いてみるんだ。すぐにじゃなくて良い。ゆっくりで大丈夫だ」
いわゆる自己分析ってヤツだな。
これが、人によっては一生できなかったりするんだけどな。
大体のケースで、人間が他人のことを嫌いになる理由は同族嫌悪なんだけど、それを認めるのは難しいみたいな話で。
自己分析っていうのは、ある一定進度までは進めば進むほど自分自身が嫌いになっていくものだ。
そのうえで、自己嫌悪の谷底にいる自分自身を嫌わなくなってくると、良い意味で「普通になった」と言われるタイプの人間が出来上がる。(ドンブラ感)
「う、うーん……」
犬飼、考え込んでいるな。
そしてそんな犬飼を少し離れたところから見守る松本。
ドリンクバーで汲んできたジュースをチビチビやりながら席に戻るタイミングを見ているみたいだ。
手招きで呼んでおこう。
お、来た来た。
「おーきに。
……キミの、俺に対する信頼って本当に何処からくるの?
松本にとっては、俺って初対面の人間のハズだよな??
明るい笑顔は素敵だけどさ。
あとがき
ミカンちゃんから見ると鳥山アニキは全幅の信頼を置ける人なのだ。
でも鳥山アニキから見る松山ミカンは、初対面なのに距離感バグってる「おもしれー女」に見える。
……というオハナシ。(ドンブラ感)