ゲヘナ生「ミカさんと友達になりたいんです!!」   作:あめざり

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戦争

目を覚ます。知らない天井……ここは病院だろうか。どうやらベッドに寝かされているようだ。

瞬間、手にぬくもりを感じた。顔を動かし手を見ると、先生が手を握っていることに気が付いた。先生の髪の隙から涙が見える。おそらく相当長い時間ここに居たのだろう。全く……私の手を握っていいのはミカさんだけだというのに……

暑苦しいし、何よりこれ以上心配させるのはなんか違う気がしたので、もう片方の手で握り返してあげることにしたのだが……

 

(……腕が動かない?)

 

動かないよりも感覚がないといった方が正しいだろうか。その上、こんな状態の腕に点滴が刺さってない。刺す必要がなかった?それとも治療の意味がないと判断しての切り捨て?いや……冷静に考えてそこまで治療器具が旧時代的なわけないだろ。ゲヘナは、トリニティは基本的にどんなケガも治せるキヴォトス最高峰の治療設備が揃ってる。それこそ、治療専門の部活があるくらいには……

 

こういう時は先生に聞くのが一番早いか。

 

「……ねぇ先生」

"……ああアユタ、起きたんだ"

 

先生は涙を拭き作り笑顔を張り付けながらそう答えた。

 

「この……私の手、動かないんだけど」

"…………"

 

あらま、先生が黙りこくってしまった。

まあ生徒が病院送りになったのだ、言いにくいことも当然あるか……

 

……

………ん?

私は何で病院に居るんだ?確か私は補習授業部を裏切って、ミカさんと戦って、檻に入れられて……その後……その…後……

 

「先生……私、何したの?」

「それに関しては私から説明する。先生は休んでて」

「あ……ヒナ委員長」

"……ごめんヒナ、お願い"

 

 

 

 

「アユタ、貴方は逆行性健忘……分かりやすく言うならば『記憶喪失』よ」

「……そんな気はしてましたよヒナ委員長。私の記憶の中のヒナ委員長はもっと……堅物というか、暗い感じだったと思うんですけど……今は……」

「……?」

 

記憶の無い間、何かが起こったのだろう。以前の印象とはかけ離れて見える。憑き物が落ちたと言うか、入れ替わったというか。

 

「楽しそうというか……」

「……そうね、おかげさまで」

「それで、この腕は?」

「ああ、それは義手よ。ミレニアムの『鏡裂アユタを喜ばせる会』さんが送ってくれた、ね」

 

ミレニアムでそんなふざけた名義で送ってくる奴……あぁ、『天才美少女病弱系美少女』さんか。ネトゲで知り合ったんだよな確か。オートエイムに透視に無敵に飛行に発砲時即死付与、これでもかというほどチートを詰め込んだバケモノみたいな人だったっけ?mod導入とか手伝ってもらったな。

本人曰く「ミレニアムの最天才」らしいが、いまだに本名知らないんだよな。

 

「いろんな機能が詰まってるらしいけど……詳しいことは自分で確認して」

「……それで記憶喪失の件は」

「これは私の予想だけど……"これ"を見れば思い出せると思う」

 

そうして見せられたのは一枚のカード。見た"瞬間"はこれが何だかわからず、ただそのほんの少し後、全てが流れ込んできて……

 

「……ミカさんは……どこに?」

 

喉元まで這いあがってきた吐しゃ物を飲み込んでそれを聞く。

絶対に隣に居ようという思いを成し遂げられなかった無力を感じながら…

 

「……実を言うと、隣の部屋に居る……けど、今は関わらない方がいい」

「どういう事ですかヒナ委員長」

「ティーパーティーのホスト、桐藤ナギサが爆発に巻きこまれた。今は何とか"生かされている"状況よ。たった10秒でも治療を怠ったらすぐに死んでしまうくらいにはね。原因はアリウス、だけれど『近くに居たのに守れなかった』自分自身にも責任を感じてる。復讐と自戒をどちらも背負っているけど、どちらも踏み切るには理由が足りない……そんなところかしら」

 

思わずベッドから立ち上がる。

自分でも分かる、到底動いていい容態ではない……が、脳内にあるのは復讐心と自責の念。ミカさんと比べたら大したことない感情だろうが、それでも銃を握り締めたくなるほどの苦痛だった。

 

「はぁ、貴方はそうするだろうと思ってた。その気持ちは痛いほど分かる……けど私は止めなければならない。ここで死なせるわけにはいかないもの」

「……別にいいですよ死んでも。でも、ミカさんは"そうじゃない"んですよ。ミカさんが殺せないなら私が殺しますし、ミカさんが背負えないものは私が全部背負いますよ。だから……お願いしますよヒナ委員長」

 

「私に……殺させてくださいよ……」

 

多分、私も限界なのだろう。

思えばあの日から、初めてトリニティに訪れたあの日から、ずっと忙しいままだった。

こんな我儘を吐いてしまうくらいには、疲れていたのだろう。

 

「その様子だと、しばらくは休んでおいた方がよさそうね。私は作戦会議があるから、そろそろ行かなきゃだけど……これだけは言っておく」

 

「……安心して、最後は譲ってあげるから」

 

そう一言だけ残して、ヒナ委員長は部屋を去った。

私は力が抜け、そのまま地面に倒れ込み……またしばらく、眠ることになるのだった。

 

 

 

「ハッハッハ、どうだね風紀委員長?うちの部員の様子は」

「……相当厳しい状況ね。行き過ぎた尊敬が全てアリウスと自分への恨みに向いてる……それと、今日は泣いて逃げないのね?カスミ?」

「部員が命をかけて戦ったんだ、私だけ逃げると言う事はできまい」

 

私はそんなカスミの言葉を強がりだと理解する。

なぜならカスミの手が、少し震えている様に見えたから……

 

「……分かっているな、風紀委員長。アリウスはもはや、ただの分校では無くなった。ゲヘナもトリニティも脅かす災禍の種……この戦いは今まで我々がやってきた『プライドの戦い』では無い。一種の『戦争』だ」

「ええ、もちろん分かっている。今考えると、エデン条約について考え込んでいる時が如何に平和だったのか……それを思い知らされる」

 

政治や対立、それは確かに最悪で……だが、人は死ななかった。アユタやミカの様に、壊れる者も出なかった。

目の前の彼女も、私を見るや否や、泣きながら逃走出来るはずだったのだ。

 

「まあそう言うことだ……私は少し仮眠を取る。必要になったら起こしてくれ」

「せめて良い夢を見れる事を祈っておくわ」

「……ああ、そうだと良いな。それじゃあまた」

 

"勝たなければならない"

そう決意し、私は何度も銃を握り、何度も前線に赴く。

今日も無限に湧く兵に対し弾を撃ち続け、意味の無い全線を保ち続けた。

 

 

 

 

 

 

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