ゲヘナ生「ミカさんと友達になりたいんです!!」   作:あめざり

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胸に秘めた思惑と共に眠る

目が覚めると真っ先に目に入ったのは見知らぬ天井だった。

私の片腕には点滴が撃たれており、血管に入ってくるのが分かるほどに体が無気力でだるい。頭も回らず、視界もぼやけ、しばらくぼーっとしていると、唐突に疑問符が浮かんだ。

 

   「なんで私は病院に居るんだろう」

 

何故かを考えるが何も思い出せない。

だが一つだけ、一つだけ覚えているものがあった。

涙をこらえたようなかすれた声を発する一人の女の子、そしてその子が去っていくときの後ろ姿。

 

そんなことを考えていると、扉がゆっくりと開き、トリニティの制服を着た子が入ってくる。その顔はどこかで見たことがある……あ、私を慕ってくれてるパテル派の子だ。

 

「……!ミカ様!!目を覚ましたんですか!!」

 

その子は私の方を見るなり大きな声を上げ駆け寄ってきた。

 

「あ~うん、大丈夫だから……」

「それならいいんですが……」

 

その子の顔は不安や心配の感情と同じ程、怒りの感情があるように見える。

 

「……ミカ様、起きて早々申し訳ないのですが……あの『魔女』の処遇を決めていただきたく……」

「ごめん……その『魔女』って誰?ちょっと記憶が飛んじゃってるみたいでさ☆」

 

 

「……『魔女』の名前は鏡裂アユタ……ミカ様とナギサ様を拘束し、シスターフッドと正義実現委員会を半壊させた張本人。別の呼び方をするのであれば……」

 

「トリニティの裏切り者です」

 

 

 

ようやく思い出した記憶、その一つの名前で忘れていた全てがフラッシュバックする。

 

「今は監獄内に収容されていますが……ってミカ様!?」

 

点滴を抜き立ち上がる。思い出したアユタちゃんの最後の言葉、そして私がやろうとしていた傲慢が頭によぎる。

 

「…………ナギちゃんに会わないと」

(それで『ごめん』って一言だけでも伝えなきゃ……)

 

私は病室から飛び出し、ナギちゃんを探し病院中を駆け回る。

今思い返すと分かる、私がやろうとしてたことはホントに最低な事なんだって……多分、アユタちゃんが言ってた『仲直り』ってそういう意味だ……私の十字架を代わりに背負って、私の代わりに悪役を演じて、私が裏切り者にならないようにしてくれた。

だから私がやらなきゃいけないのは、ナギちゃんに謝って、アユタちゃんの罪を軽くする事。

 

「ナギちゃん!!!」

「……どうしたのですかミカさん……?そんな大声を上げて……?」

 

たまたま見つけたナギちゃんに抱き付く。

謝罪の言葉すらも掠れて出せない、喉の奥と目の奥が熱くてじんじんする、どんどんと視界が歪んで前が見えなくなる。

 

その後私は、小1時間泣き続けながら後悔と謝罪を口にし続けた。

 

 

 

「やっぱり監獄って言うには綺麗だよね〜あ、お茶もう一杯」

「……舐めてるよな?」

「はい、それはもうペロペロと」

 

私は『トリニティ転覆の疑い』でめでたく監獄にぶち込まれながら、スイーツ片手に紅茶を嗜んでいた。

 

「いや……お前、自分の立場分かってるんだよな?」

「『一夜でトリニティを半壊させた犯人の疑い(ほぼ確定)』で停学処分にされ、ティーパーティーの最終決定まで学内監獄に監禁されているだけですが?」

「……なぜそこまで理解していて余裕ぶっていられるんだ……?」

「開き直ってるだけですよ」

 

実際どうしようもないだろう。たとえここから脱獄したとしても、待っているのはトリニティとの全面戦争だ。実際戦ってみて分かったが、テンションが最高潮でかつアリウス兵との共闘という条件下でさえトリニティの全戦力とぶつかるのは結構キツイ。

それに即打ち首にされていない時点であくまで『トリニティ生』として扱われているんだろうな。ゲヘナ生バレはしていないと考えていい……そこは言い出しっぺのナギサ様がなんとか言いくるめてくれたんだろう。

 

「……ただ、囚人とはいえ人権くらいはある。何か要望はあるか?」

「それなら……ミカさんとの面会は断ってもらってもいいですかね?合わせる顔が無いので。あと私の愛銃とゲーム機を……」

「"前者だけ"聞き入れておこう」

 

そう言って看守係の人は監獄から出て行って……と思ったら入れ違いで補習授業部のみんなと先生が入って来た。

 

「あ〜おはよう……今日は天気も良いし、こんな所じゃ無くて散歩でもして来たらどうかなぁ……?」

 

私は露骨に目を逸らしながら会話する。第三次試験の時補習授業部のみんなや先生に伝えたのは『黒幕は恐らくミカさんで、私が黒幕を叩きに行く』と言うところまで。その後ミカさんに変わってアリウスを指揮するなんて誰にも言って無い事だ。もし言っていたら、こんな作戦止められるに決まってるであろう……特に先生、あの人は文字通り死んでも私を止めにくる。だから私の独断で動いた訳だが……補習授業部からのイメージは最悪そのものだろう。

 

"散歩なんかしてる暇無いよ。大事な生徒が捕まったんだから"

「でも私は当然の罰を受けただけ、悪が正当に裁かれた結果でしょ?」

「……私達は、貴方の言っている『悪』の真意を知っています。今日は、それについて話に来たのですから」

 

私は彼女達から話された。私が行った事の目的と、言っていなかった作戦の予想……ここまで見抜かれるのはいくらなんでも可笑しな話だ。ほとんど妄想で片付けられるレベルだ。どこかにこんな出鱈目を確信できるキッカケがあるはずと考えるのが至極当然。

そしてそのキッカケは……

 

「……この話は全て、ミカ様から聞いたものです」

"ミカが病院を抜け出して、私に相談して来たんだ。『アユタちゃんを救ってあげて。これは本来私が受けるべき罰だから』だって"

「ナギサ様だってその話を聞いて、『ティーパーティーの問題と責任を一般の生徒に負わせるわけにはいかない』と言っていますし……」

 

まあこのまま事が進めば私の罪はどんどん軽くなって、代わりにミカさんの罪がどんどん重くなっていく。

ミカさんがアリウスと共謀していたことなんて、アリウス生を尋問するか、依頼した時の契約書でも持ってくれば一発でバレる。

 

「良い提案だと思う。これで私の罪は無くなって、ミカさんが代わりに監獄行きだろうね」

"ミカは自分の罪と向き合うつもりでいるよ"

「でも私がそれを許さない」

 

私にとってミカさんは唯一の大切な人だ。キヴォトス全土とミカさんだったら迷わずミカさんを取るし、やれと命令されたらなんだってする。

それくらい大切な人に罪を負わせるのは私が単純に納得出来ない。

 

「私はね、0.1%でもミカさんに飛び火するのが嫌なんだ。あそこまで暴れ倒したのも、ミカさんに焦点が会わない様にするため……本当にただそれだけの事だ」

「私は……罪は本人が向き合わないと意味がないものだと思う」

「そうよ!正義実現委員会として、そんな屁理屈も感情論も認められ無いわ!!」

「……良いよ別に、先生が今隠れて録音してるその音声を公開しようが、ミカさんの罪を公にしようが……そっちの勝手ではあるからね。ただ……もし本当にそんな事したら、私の罪に『殺害数5人』の項目が追加される事になる」

 

「それが嫌なら黙って帰って、今すぐに」

 

 

 

補習授業部のみんなと先生との面談が終わって少し経った後、相変わらず私は獄中のテレビを見ながらスイーツを頬張っていた。

 

(このシフォンケーキおいしい……)

 

ここに居たらいずれ太りそうだな。

ただ、そんなティータイムも終わりなようで……新たな来客が居る様だ。

 

「聞こえてるでしょ?監獄って入り口から入ってくるものなんだけど……君たちに常識を当てはめるのも無意味か」

「クックック……そうですね、私達は"ゲマトリア"ですから……」

 

黒いスーツに身を包んだ、とても人とは呼べない形相のナニカが現れる。さっきの会話も盗み聞きされていたようだ。

 

「数年ぶりですね鏡裂アユタさん……会えて光栄です」

「その数年前に私の神秘を奪った奴がなんの様?『黒服』?」

「クックック……さっそく本題に触れましょうか。本日来たのは、貴方の神秘を用いた実験の副産物……私達はそれをこう呼んでいます」

 

「『大人のカード』とね」

 

「言っとくけど私まだ未成年のピチピチJKなんだけど……何そのクレカ」

「……これは貴方から取り出した膨大な量の神秘を詰め込んだ、言うなれば"媒体"です。その用途は多岐に渡りますが……最も適した使い方は"神秘の解放"でしょう」

「じゃあ何?この真っ黒なカードを使えば、私の暴走気味な力を元に戻せるって事?」

 

私はカードを手に取り、いろんな角度から眺める。

どこから見てもただのクレカにしか見えないが……こんな物が神秘の受け皿なのか?

 

「おそらくですが……貴方が使うことはできないでしょう」

「え?じゃあ誰が使えるのこんなカード……」

「……私達にはある程度の未来を予測する力が有ります……単刀直入に言うと、まもなく大きな災いが貴方の身に降り注ぐ事でしょう。その時、貴方が最も大人だと思う方にお渡し下さい」

「……その災いはミカさんにも関わる物?」

「私達が未来を予測できたのは、貴方に対する実験で貴方の事を深く理解できているからです。それ以外の方の事は予測できません……」

「……あっそ、じゃあありがたく受け取っておくよ」

 

そう言って私は黒服との別れを済ませ、疲れを取るためソファーに寝転がる。だんだんと目が閉じていき、意識も薄くなって来た。

そうして私は眠りにつく。

 

最悪の事件が待ち受けてるとも知らずに

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