【完結】 種(CE)世界に00(西暦)要素をぶち込んで、死亡フラグを圧し折りながらイージーモードにしてみた   作:種再燃祭

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さて、(ある意味)コズミック・ホラーの開幕です。








第129話 ”誰よりも、尊い貴女” 【挿絵入り】

 

 

 

 その日、宇宙要塞”ボアズ”では、通信機器やセンサーなどの一斉不調が起こった。

 無論、さしものハンも敵が電子戦を仕掛けてきたのかと訝しんだが、どうも原因がはっきりしない。

 そう、この時代のザフトは、オーブ軍並びにソレスタルビーイングが一切、GN粒子の情報を一切開示していなかったために、その存在すらよく知らず。

 そうであるが故にそのジャミング効果に関しても無知識だった。

 

 しかし、やがて……更なる未知がボアズを襲う。

 

 

 

 

ma ha shutai e tuby e tuby e(地に緑、空に花の香)

tu shuutei a no en tuby(海を魚で満たす者よ)

 

「えっ……何この歌……?」

 

ma ha shutai e tuby e tuby e(地に緑、空に花の香)

tu shuutei a no en tuby(海を魚で満たす者よ)

 

 

【挿絵表示】

「えっ……ラクス様……? 祈ってるの? 何、に?」

 

 その映像はありとあらゆる画面に映り、その歌はありとあらゆるスピーカーから流れた……

 唐突に訪れた、現実とは思えない風景……

 神秘的な音の調べと人の理から外れたような聖女(ラクス)……

 実に皮肉であった。

 プラント人、特にラクスに理想を見る者達が最も望んだラクスが、そこには居たのだ。

 

 

A sai, do mi no steikun halish di zi e

【挿絵表示】

『誰よりも、尊い貴女よ』

 

 

a di shuta dia la dia zhan who(どうか、柔らかな光で満たしてください)

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

 ボアズに訪れたのは静寂という名の混乱。

 この要塞の誰もが、状況を把握出来ていなかった。

 まるで集団幻覚、それも白昼夢でも見たかのような事態……ハン司令官から下っ端の兵士まで、”ごく一部の例外”を除いて、誰もが頭が痺れるような鈍痛と共に、今この時に何をすべきかを見失っていた。

 

 だが、ボアズに立てこもるテロリスト(ザフト)の復旧を、仕掛けた側が待つ必要はない。

 

「”投弾”、開始」

 

 カガリの号令の元、マネキン准将率いるアマギ隊が遥々”ヘリオポリス”付近より運んできた、戦闘艦サイズのジャンク屋謹製デブリ塊の核パルスエンジンが最大推力を発生させ、万が一人が乗っていたらひとたまりもない加速度で、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()ボアズに目掛けて飛んで行く。

 

 実は、この”弾丸”の数はそう多くなく、二桁に届いていない。

 素材の大半が第一次・第二次ヘリオポリス防衛戦で沈んだザフト艦やモビルスーツなので当然だろう。

 

 だからこそ、オーブ軍工兵隊は一計を案じた。

 ミラージュコロイドのステルス皮膜展開機能を核パルスエンジンと熱交換式発電機を介して連結する事は勿論だが、目標に命中した瞬間に残存の推進剤・武器弾薬、そして核パルスエンジンその物を起爆するように設定したのだ。

 無論、起爆した途端にミラージュコロイドは剝がれ落ち、残骸がばら撒かれる事になる。

 

 核パルスエンジンの自爆が核兵器に該当するのでは?(つまり、ザフトに口実を与える)と思う方も居るかもしれないが、それを言ってしまったら、レーザー核融合を用いている宇宙船のエンジンも核動力モビルスーツも全て核兵器になってしまう。

 原作にはナスカ級などの動力炉に関する記載はないが、仮にも高速戦闘艦と銘打ちアークエンジェルと追いかけっこができるのだから常識的に考えて同種の動力炉だろう。

 そして、これらの動力炉も”生きていた”物は同時起爆させている。

 

 巨大質量兵器……とは言っても、せいぜい戦闘艦サイズの榴弾として使われたそれらは、実際のところ核爆発込みでもボアズの内部まで破壊するような威力はない。

 ザフトのユニウスセブン・プロパガンダに騙されがちだが、実は宇宙空間における核爆発は殆どがプラズマ火球と無指向性電磁波に変換されるので、空気や水、地面などの熱や爆風の伝導物がある地上ほどの威力は出ない。

 また放射線や残留放射能だが、そもそも宇宙空間では恒星からの核兵器とは比べ物にならない放射線(太陽風や宇宙線)を日常的に浴びることになるので、問題にならない。

 だからこそ、原作のボアズ戦ではあそこまで核ミサイルをつるべ撃ちし、それでもボアズ自体は瓦解せず、ちゃっかり劇場版で再利用されてるのだ。

 実際、ユニウスセブンが1発の核弾頭あれほどの被害が出たのは、「水も空気もあるコロニー内部で爆発した」公算が大きい。

 というか、あんなガラス張りみたいな砂時計壊すなら、普通に内部爆発を狙うだろう。

 

 

 

 以上のような理由で、「物理的には」そこまで深刻なダメージをボアズには初撃で与えられてはいない。

 無論、ノーダメージという訳ではないが……だが、ちょっと考えてみてほしい。

 不可解な歌とラクスの不可思議な映像を予兆に、「見えない何か」が要塞に飛んできて、内部に振動が伝わる程度の威力で命中、爆散。

 そして、後に残るのは見覚えのある……友軍のなれの果てだ。

 

「ラクス様だ……ラクス様が、沈んだ船をあの世から蘇らせたんだっ!!」

 

 誰かがそう叫んだ。

 

「あの不思議な歌は歌じゃなくて、冥途の扉を開く呪文だったんだよっ!!」

 

 読者の皆様ならご存知の通り、無論、魔法などではなく純科学。

 ”クラークの三法則”に定義された『進み過ぎた科学技術は、魔法と見分けがつかない』ですらない。

 確かに一部は先端工学ではあるが、単純な既存技術の組み合わせだ。

 しかし、よく感情は理性や論理的思考を容易く凌駕する。

 特に恐怖という強い情動なら尚更だ。

 

「先にあの世に逝った連中、やっぱりラクス様と戦って死んだのが不満で……」

 

「だから、私達も仲間にしようと……?」

 

 だが、これが集団心理という物であろうか?

 この根も葉も根拠もない戯言は、『あたかも真実のように』伝播しボアズを混乱へと導いて行く。

 

「静まらぬかバカ者どもっ!! 魔法などこの世に存在せんっ!! きっと何かのからくりに決まっているっ!!」

 

 そうヒステリック気味に叫ぶハン。

 いや、発言としては正しいのだが、そのからくり……「魔法ではない根拠」を明確化しないのは減点対象だ。

 流石は何の根拠もなく世代を重ねるごとに深刻化するコーディネイター同士の少子化問題を「いずれ優れたコーディネイターの技術が何とかする」という男の信者だけの事はある。

 

 パトリック・ザラは知っているのだろうか?

 ある研究において、婚姻統制を行ってもコーディネイター同士では第四世代は絶望的(生まれること自体が奇跡)、第五世代は生まれないと予測されていることを。

 純血主義のプラントのコーディネイターには、その「いずれ」が来ない確率の方が高いのだ。

 

 

 

 だが、天はハンを見捨ててはいなかった。多分。

 

()()()、暗礁宙域内より出現! 数、10以上! 大型艦と思わしき物、複数確認!!」

 

 あやふやな怪現象ではなく、明確な「姿を持った敵の出現」は、とりあえず今は、此処は現実である事を思い出させてくれる。

 だが、救いが無かったのは肝心のその内容で、

 

「”艦隊”だとっ!? アークエンジェル単艦ではないのかっ!?」

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

(だから言わんこっちゃない)

 

 ウォーレン・レミントンには、こうなることが読めていた。

 こちらが索敵や哨戒に手を抜けば、当然敵はこれ幸いに戦力増強を図るだろう。

 誰だってそうする。自分だってそうする。

 

「報告! L3方向より有力な艦隊接近! 敵性艦隊と推定っ!!」

 

(恐らく、ハンのクソ野郎が言うオーブの”露払い艦隊”だろうよ。きっと索敵範囲外側でタイミングを見計らってたんだろうさ)

 

「だとしたら、イズモ級を中核とした2個艦隊だな……」

 

 レミントンはそう独りごちると、

 

「ハン司令、直ちに迎撃部隊を出した方がよろしいのでは?」

 

「う、うむ! そうだな! 出撃可能な全部隊・全艦艇は直ちに迎撃に迎えっ!!」

 

 しかし、その命令では誰が何処に向かえば良いかわからない。

 

「どのような振り分けで?」

 

「各部隊長に一任する! 高度な柔軟性を維持しつつ臨機応変な対処を各自の判断で行えっ! 最善を尽くすのだっ!!」

 

(馬鹿野郎!! 何のための方面軍司令官だっ!!)

 

 むしろ、口から音として出さなかったレミントンの忍耐力を褒めるべきだろう。

 ただ幸い、前にも述べたが元々ザフトは部隊長を現場長とした部隊単位の運用がドクトリンの組織であったため、この命令も実行できないわけではない。

 無論、それは「効率的な迎撃行動を行える」という意味ではない。

 

(それにしても、敵……オーブは、何故このタイミングでラクス様のプロパガンダを? どうせ録音と録画なら、もっと使うべきタイミングがありそうなものだが……)

 

 

 

 いくつか、レミントンでさえも失念してる事象があった。

 戦場で動揺した兵の立て直しはそう簡単ではない、特に新兵なら尚更だ。

 ボアズでは特に消耗の激しいモビルスーツ・パイロットに新兵率が顕著で、特にオーブが絡んだ戦いでの消耗が祟り、開戦前からザフトに従軍していたベテランの割合が、開戦まで訓練生だった者を含めても半数を大きく下回っていた。

 残りは開戦後に訓練生として入って、最近になり(情勢の悪化から)前線配置の実戦要員になった者で、全パイロットの3割強がこの戦いが初陣になるという状況だった。

 そして、レミントンもまた”ラクス・クラインが敵となり戦場に現れる”という事態を全く想定していなかったのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 皆さんは、もう気づいたのではないのだろうか?

 ”OPERATION APPLE SEED”、「リンゴの種作戦」とは変わった名称だが……APPLEは、第127話においてラクスがリスペクトされたという”シャロン・アップル”のこと。

 だからこそ、シャロン・アップルの代表曲”A Sai en”をラクスは歌ったのだ。

 だが、いくらフリーダム・ルージュとラクス、アークエンジェルとアニューがハイスペックでも、オリジナル同様にボアズ要塞全体の洗脳なんてできる訳はない。

 だが、”デブリ塊の弾丸”との組み合わせで、敵を大きく動揺させる事はできる。

 

 そう、ここまではあくまで布石、あるいは撒かれた(SEED)なのだ。

 

 士気の高低如何に関わらず、動揺が解消することもなく出撃した部隊がどうなるか?……もう察しが付くだろう。

 

 そして、その先にラクス・クラインが居るのだから……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 





「この精神状態で出走……じゃなかった出撃させるなんて、噓でしょ?(某スズカ風)」

噓でも冗談でもなく、マジです(真顔

え~、「突然、使ってるパソコンやスマホやカーナビなんかのあらゆる画面にラクスが映し出されて、”A Sai en”が流れ出したら怖くね?」という発想から生まれて作中ではシャロン・アップルへのリスペクトのはずなんですが……なんか絵面を想像すると、ちょっと”貴方はそこにいますか?(フェストゥム)”的でもあったりするというw

キラ:「映像詐欺ェ……」

127話でキラがぶー垂れていたのが、今回使われた画像の撮影だったってオチです。
しかも、普段のメスガキ臭漂うムーブをかますラクスを知ってると、「誰だ? お前」って言いたくなる画像残弾はまだあるという。

とりあえず、情緒がしっちゃかめっちゃかになってそうなザフトの皆さんに合掌をw

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