【完結】 種(CE)世界に00(西暦)要素をぶち込んで、死亡フラグを圧し折りながらイージーモードにしてみた 作:種再燃祭
このエピソードより最終章のスタートになります。
TVシリーズでは描かれなかったヤキン・ドゥーエ戦からユニウス条約締結までの物語、最低でも10話以上の章になりそうですが、お付き合い下されば幸いです。
第171話 ラウム・クルゼーロ 【挿絵入り】
ここから先は、あくまで余談。あるいは蛇足。
原作ガンダム・SEEDでも詳しく語られなかった、本当の意味での停戦……”ユニウス条約”締結までの余剰な時期の物語。
原作世界ではあの世に渡ってしまったが、この世界では生き残ってしまった者達が織りなす与太話。
あるいは、原作とは異なる相手と、異なる運命を生きる生者のどうという事のない日常譚。
そんなエピソードの集まりでも良いというのであれば、さほど長くはないエピローグ。付き合って下さるのであれば望外の喜び。。
オーブ、オノゴロ島沖
ジャンク屋組合拠点、”ギガフロート”
「”ユン”、そろそろ帰るぞ」
「わわっ、待ってくださいよ~。”キョージュ”ぅ~」
もう物語も終わりだというのに新しいキャラを登場させるなど心苦しいが、だが少々重要人物なので紹介しておきたい。
二十歳ぐらいと思われる、茶色の髪をサイドポニーで纏めてどこか眠そうな印象なたれ目の女性は、”ユン・セファン”。
原作外伝では、連合の侵攻によるオーブ脱出行で置いてけぼりをくらい、ジャンク屋組合に拾われるという数奇な運命をたどるモルゲンレーテ社の技術者だ。
そして教授と呼ばれた四十絡みの痩身の鋭利な印象を持つ”キョージュ”と呼ばれた男の名は、”ジャン・キャリー”。
原作外伝に登場する、紆余曲折あり地球からプラントに移り住み、ザフトに入隊したが連合に鞍替えして『煌めく凶星「J」』の二つ名を持つに至ったコーディネーターのエースパイロットである。
だが、原作の話はこの世界線ではあまりアテにならないかもしれない。
まずは説明が簡単なユン・セファンから話そう。
というか、彼女の場合はオーブ脱出行などこの世界に有り得ないのだから、優秀な技術者としてそのままモルゲンレーテ社に在籍したいる。
問題なのはジャン・キャリー”
実際、仇名としての”キョージュ”ではなく、本当にジャンは教授だった。
原作世界において、ジャン・キャリーがプラントに移住しザフトに入隊することになったきっかけは若い頃の両親の死であり、それがどうにも反コーディネーター運動が原因・死因のようだ。
だが、この世界のジャンの両親は、原作より少しだけ賢明だった。
反コーディネーター運動が勢いを増すユーラシア連邦を離れ、ナチュラルとコーディネーターの共存を国是に掲げるオーブへとまだ幼かった一人息子のジャンを連れて移住したのだ。
これも一人息子の身と将来を案じての行動だったらしい。
その後、ジャンは少年時代、青年時代とそのままオーブで過ごし、勉学に励み国立工科大学・大学院と終えて工学博士となり、今は機械工学の研究者であると同時に、古巣のオーブ国立工科大学で教授として教鞭をとっていた……少し前までは。
悪い話ではない。
きっかけは、国策……戦後世界を見越した戦力の再整備、特にモビルスーツ関連のそれでGNドライブのスペシャリストであるエイフマン教授がモルゲンレーテ社からソレスタルビーイングへのラボ丸ごと移籍が決まったことだ。
本格的な疑似太陽炉(GN-T)の生産と改良、そしてそれを搭載するモビルスーツなどの機動兵器の開発を本格化させる処置だった。
だが、モルゲンレーテ社も国防を支える国策企業であり、開発力を衰えさせないために穴埋めは必須。
そこで白羽の矢が立ったのが、機械工学……特に人型機械の動力部の権威として名が知られていたジャン・キャリー教授だったという訳だ。
ちなみにユンものんびりしてそうな外見とは裏腹に、今の日本ならようやくランドセルから卒業できる年齢で飛び級して国立工科大学に合格した才媛であり、実はジャンの教え子であると同時に最終的には助手を務めるまでになっていた。
ここだけの話……年齢に倍以上の開きがあるが、この二人は男と女の関係にある……というか結婚しており、夫婦別姓を申請してそれが受理されたのでこうなっているだけだ。
結婚したのはユンが16歳になったその日でもう4年も前。蛇足ながら教え子と教師の結婚は、オーブではそう珍しい話ではない。
ただ、夫婦そろって仕事が忙しいので、子作りは先延ばしにしているらしい。
ユンは未だに結婚して四年も経つのにジャンを”キョージュ”と呼んでいるのはご愛嬌だが、何が言いたいかというと、この世界線において『凶星が煌めく事は無い』ということだ。
なんとなく、”クルト・タンク博士とTa152H-0”みたいなエピソードなら起こしそうな気がするが。
それはさておき……
ジャンもユンも好待遇が約束されたモルゲンレーテ社への移籍を断る理由もなかったし、この二人もまた生まれ育ったオーブへの愛国心というより愛着があったため二つ返事で了承。
そして今、早速”ギガフロート”へはモルゲンレーテ社の工学博士とその助手として出張して来ていた。
ちなみに案件その物は、ジャンが大学時代に基礎理論を構築した人工筋肉の構造を参照した強化型駆動システム「パワー・シリンダー」に関する技術講習だ。
現在、大型の物は開発されているが、最近のジャンの目標はモビルスーツに無理なく組み込めるサイズまで小型化すること。
ジャンク屋組合を訪れた理由は、ジャンク屋組合の1人、ロウ・ギュールが現行のパワーシリンダーのモニターを引き受けるという話があったからだ。
データ採取の協力者はいくらいても困ることもないし、特にジャンク屋にしては珍しく評判の良い機械屋なら猶更だ。
メタな発言が許されるなら、おそらくこの世界線独自の”パワードレッド”開発フラグだろう。
一応、祖語の無いように言っておくが、ロウが”リジェネレイト”と交戦して死にかけるという状況は、「物理的にありえない(第164話参照)」ので安心して欲しい。
むしろ、今はロウがオーブより譲渡されたプロト・アストレイ”レッドフレーム”をベースに、ジャンク屋組合の出資とモルゲンレーテ社の技術提供で、宇宙での無重力作業から戦闘までなんでもござれ(ただし名目は民生機)の汎用モビルスーツを共同開発しようという話も一緒に持ち上がっている。
後にこれがモルゲンレーテ社の輸出用モビルスーツ”シビリアン・アストレイ”、ジャンク屋組合のドル箱ヒット商品”レイスタ”へと発展し、特にユンは後にレイスタ開発主任としてギガフロートに出向することになるのだが……まあ、それは機会があった時にでも。
とにもかくにもジェネシスとヤキン・ドゥーエの戦いが終わったのは、既に昨日の話だ。。
確かにその第一報が流れ、大勝利にオーブ国民たちは多いに沸き返り、ジャンク屋組合でも熱量と種類は違うがその話題で持ちきりだった。
ジャンは地球滅亡が阻止できたことは大変喜ばしいし慶事だと思うが、それはそれとして自分の仕事は仕事と割り切っている。その地球人類の存亡をかけた歴史的戦闘とやらに勝利して人類の存続が確定した以上、世界は回るし経済も回る。
さて、ジャンとユンが自然と寄り添って事務局の廊下を歩いていると……
「ん? ”ブリング”じゃないか? しばらくぶりだな」
「あっ、ブリングさんだ」
ジャンとユンが気づいた見覚えのある赤毛の男”ブリング・スタビリティ”は、
「ああ、教授にユンか。なに、ちょっと目ぼしいジャンクが出そうな気配があったんで遠出してたのさ」
いかにもジャンク屋らしい言い回しで返してくる。
どうやらこの三人、旧知の間柄であるらしい。
特にジャンは、「バラの栽培が趣味」というジャンク屋にしては珍しい気質の
「遠出?」
ブリングは頷き、
「少々ヤキン・ドゥーエ周辺宙域までな」
ブリングの表の職業はジャンク屋組合に登録しているジャンク屋であり、”宇宙ハイエナ”呼ばわりされるジャンク屋が、大量のジャンクに溢れる戦場に足を運ぶことは当然と言えた。
実際、戦いが終わった今も、ジェネシスの砲撃で壊滅した元はユーラシア連邦・東アジア共和国の艦隊だった真新しいデブリゾーンや、元は基地だった月のクレーターでは、ジャンク屋たちの争奪戦が勃発している。
おそらく、勢揃いしているオーブ・大西洋連邦の艦隊が帰投すれば、ヤキン・ドゥーエの残骸でも同じような情景になるだろう。
デブリ除去には大いに役立つが、ジャンク屋が”
だが、目の前の赤毛がもう地球に戻ってきてるってことは、どうやらタイミング的に戦闘中に廃品回収していたということだ。
「……大丈夫だったのか? いや、五体満足なのは見ればわかるが、かなりの激戦だったと聞いていたのでな」
この世界線のジャン教授、モビルスーツの操縦経験はあるが実際に戦場に立ったことはないため、ふんわりと見聞きした情報をイメージするしかない。
なるほど。確かにオーブ政府広報が、第一報として戦闘終了から数時間後に編集して流した各艦隊/モビルスーツ隊の奮戦、ジェネシスが破壊される様やNイージス・アサルトのガンカメラが捉えたヴェサリウスの撃沈シーン、ヤキン・ドゥーエの自爆などを総合すれば、確かに激戦に見えるだろう。
実際は、戦闘と分類して良い物か悩む程度には一方的に殴りつけただけのような気もするが……それを言いだすのは無粋という物だ。
「それなりにな。だが、リスクを踏むだけの成果はあった。新鮮な宝の山だったぞ?」
どうもブリングとジャン、鉄面皮同士のせいか波長が合うようで、どちらかと言えば不愛想なキャラであるはずのブリングが珍しく立ち話を興じることにしたようだ。
というか、ブリング・スタビリティがこの手の腹芸ができるのは、軽く驚きだ。
「具体的には?」
「半壊していたが、ザフトの未確認機、最新の試作機と思えあれるモビルスーツを確保した」
無論、どこぞの仮面の男が乗っていた機体の事である。
「それは凄いな。運が良かったと言うべきか? 乗っていたパイロットは?」
ブリングは小さく首を横に振った。
「そうか。まあ、それが戦争という物なのだろう。ところで、」
ジャンは視線をブリングの横にずらし、
「ところでその美丈夫は? 見ない顔のようだが……」
「ああ、彼は”
どうやらそういうカバーストーリーらしい。
確かにそこかしこでドンパチやって、絶え間なくスクラップが生み出されるようなこんなご時世だ。組合に登録していないジャンク屋などごまんといるだろう。
「どうも」
微かに微笑むクルゼーロ(?)と呼ばれた青年。
「彼は中々の逸材でね。ナチュラルにも関わらず、見よう見まねでザフトのモビルスーツの操縦をマスターしていた」
「……それは、大したものだ。実に驚いたな」
軽く感心するジャン。
職業柄、彼は鹵獲されたザフトのモビルスーツを操縦する機会があったが……「無駄に手動操作や反射神経が要求されるシビアな機体」は、コーディネーターである彼からしても、お世辞にも操縦しやすい機体とは思えなかった。
やはり機械とは、人型であろうとなんだろうと、ユーザーフレンドリーな設計であるべきとジャンはその時改めて感じたものだ。
「それほどのものでもないがね」
と返してくるクルゼーロ。どうやら自分やブリングほど不愛想な性分ではないらしいとジャンは判断する。
「改めてジャン・キャリーだ。モルゲンレーテで研究者をしている」
「ユン・セファンで~す。”キョージュ”のお嫁さん兼助手ですぅ」
ちょっと歳の差に面を食らったような顔をするクルゼーロだったが、
「教授? たしかブリングもそう言っていたが?」
「前職だ。少し前まで、国立大のな」
「なるほど」
納得するクルゼーロの言葉をブリングが次いで、
「行き掛けの駄賃という訳ではないが、その技量を見込んでジャンク屋組合にスカウトしたんだ」
どうやら、かつてラウ・ル・クルーゼと呼ばれた男は、ジャンク屋として組合に登録し、その後にオーブへ移民申請を出すようだ。
今日、ジャンク屋組合本部を訪れたのは、早速、登録を行うからだったらしい。
ブリングは付き添いがてら施設を案内していた……そんなところだろう。
どれほど世間の荒波にもまれたらそうなるのかわからないが、この世界線のブリング・スタビリティは、愛想がある方じゃなくても面倒見は良い方らしい。
無論、それはイノベイド的な「与えられた役割を完全にこなそう」とするある種のプロ意識の高さからかもしれないが、繰り返すがここは驚いて良いところだろう。
という訳で、新章(最終章)なのにいきなり新キャラの登場回w
「凶星は輝かない」キョージュ(教授)ことジャン・キャリー、何故か特徴的な細目のタレ目がビジュアル再現できなかった(AIパイセンェ……)ゆるふわ人妻のユン・セファン、そして謎の男(?)のラウム・クルゼーロというラインナップでした。
クルゼーロの旦那、しばらくジャンク屋やるみたいですね~。
もしかしたら薔薇の栽培が趣味らしい赤毛の人と、当分はコンビを組むかもしれません。
まあ、「嫁さん」をオーブに迎えるなら、生活基盤はしっかり作らないとねw
そして、何気にオーブに移住してて平穏な生活送ってて若い嫁さんゲットしてたジャン・キャリー教授。まあ、ユンも幸せそうなのでヨシッw
何気にこの二人の登場はパワー・シリンダーのモビルスーツ搭載フラグ(パワードレッド開発フラグ)と”レイスタ”開発フラグだったりして。
次回は元仮面さんがラウム・クルゼーロになった
エピローグでは、こんな感じで少しずつ「生き延びたキャラ達」の足跡を追ってみようかと思っています。
高評価やご感想での応援、本当にありがとうございました。
おかげで何とか完結させようという意欲が湧いてきました。
正直、昨日の精神状態ではあんまり「おめでたいエピソード」を描ける気分ではなく、執筆が止まってたので大変助かりました!
この先は完全に余剰の物語、ユニウス条約締結までの悲喜こもごもなエピソード集となりますが、最後まで応援してくださるととても嬉しいです。
どうかろしくお願いいたします。