【完結】 種(CE)世界に00(西暦)要素をぶち込んで、死亡フラグを圧し折りながらイージーモードにしてみた   作:種再燃祭

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クルゼーロ氏の誕生秘話とその由来、そして割と「うっかり者」のお話など。





第172話 南十字星とオーブは今日も快晴、そしてある親子の別離 【挿絵入り】

 

 

 

 時間は、地球帰投中の”トレーズ号(ブリング所有の輸送船)”に戻る。

 

”ラウム・クルゼーロ”? それが私、いや()の新しい名前か?」

 

 対面で座るブリングは頷き、

 

「なるべく今の名に近い発音の偽名を選んだと聞いている。あまり離れた発音だと、いざ名を呼ばれた時に不自然な反応になりかねんということらしいな。異なる地域の言葉でラウムは空間、クルゼーロは南十字星由来とのことだ」

 

 ※ラウムはドイツ語、クルゼーロはポルトガル語で、C.E.ではどちらもユーラシア連邦なので、「ユーラシア連邦内の方言」という認識でも間違いではない。

 

「なるほど……納得はするが、皮肉が利いてるな」

 

「? 何がだ?」

 

「クルゼーロは”十字架”って意味もある。直訳すれば”十字架のある空間”……つまりは『教会』、俺には縁遠い。それに南十字星は幸運の象徴ではなかったか?」

 

「なら、お前にはぴったりだな」

 

「どうしてそうなる?」

 

 怪訝な表情をするクルーゼ、いやクルゼーロにブリングは真顔で、

 

「この戦争で生き残れた。それ以上の幸運はあるか?」

 

「なるほどな」

 

 呵呵大笑する元クルーゼだった男改めてラウム・クルゼーロ。

 

「着替えは用意してある。俺の予備で悪いが、幸いさほどサイズは違わんだろう。着こなしの組合せと微調整は自分でやってくれ」

 

「心得た」

 

 

 

 

 

⌚⌚⌚

 

 

 

 

 

 時間は、再び現在へ。

 そしてかつてクルーゼだった男、ラウム・クルゼーロはオーブ本土に初上陸を果たし、見慣れぬ街を歩いてみることにしたようだ。

 流石に暑かったので上着は脱いだ。

 

 

【挿絵表示】

「存外に、見知らぬ街を仮面を外し歩くというのは、開放的で心躍るものだな……」

 

 それは、クルゼーロ(元クルーゼ)が久しく忘れていた、あるいは初めての感覚なのかもしれない。

 既にジャンク屋組合には登録を済ませ、同時にオーブへの移民申請も済ませた。

 元の身分は”大西洋連邦出身”以外はでっち上げもいいとこだが、クルゼーロがナチュラルなのはどんな検査を受けても証明できるし、何より後見人にブリング・スタビリティがついている以上、程なく申請は通りオーブ国籍は得られるだろう。

 ユーラシア連邦や東アジア共和国、現在は国家扱いではないがプラント出身でもなければ、職と身分と理由ががしっかりしていれば、移民審査はそこまで厳しいものでは無い。

 加えて特定の人間には難関な「レイシズム・チェック(ナチュラル蔑視、コーディネーター蔑視有無の思想チェック)」も、ついこの間までコーディネーターに囲まれていたこの男なら問題ないだろう。

 第一尻を叩かれて悦ぶ惚れた銀髪の女はコーディネーターだ。

 

「さて、エザリアを迎える為に色々準備しないとな」

 

 その青い瞳に虚無や影は無く、頭上にはどこまでも広がる、この男の瞳と同じ色の南国の空が広がっていた。

 オーブは今日も快晴である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 さて、一方その頃、ジェネシスとヤキン・ドゥーエにまつわる情報量が多過ぎて混乱するプラントでは……

 

 

【挿絵表示】

「イザーク、程なく母は失踪しようと思います」

 

「……は?」

 

 カナーバ一派に身柄を拘束され軟禁状態だった母に面会が許されたと思ったら、開口一番そう聞かされたイザークの心情とは?

 

「あのね、もうパトリック・ザラはこの世にいないでしょ? お母さん、ザラ派のNo2って認識されてるから、このままプラントにいるとちょっと不味いことになりそうなの」

 

 なんかいきなり口調が砕けた母に困惑しながら、

 

「そ、それは理解できますが……失踪して、どうするんですか?」

 

「ちょっとアテがある……というか、コネができたの。しばらく、そこでお世話になると思うわ」

 

 イザークは「隠れザラ派の協力者か?」と思いもしたが、母が言葉を濁す以上、深く詮索すべきではないと判断した。

 

「多分、そこで新しい身分と名前を得ることになると思うの」

 

「……そうですか」

 

 息子として一抹の寂しさを感じないといえば噓になるが、

 

(それでも、母が生存できるならばマシと思わねばな……)

 

 現在、プラントにおけるザラ派に対する風当たりは厳しい……なんてもんじゃない。

 実際、カナーバ議長をはじめとする暫定政権が治安回復を図っているが、ザラ派と特定、あるいは言動からそうだと認定された人間に対するリンチが横行しているのだ。

 

 ジェネシスとヤキン・ドゥーエを陥落させパトリック・ザラを討ったオーブと大西洋連邦の連合軍がプラント制圧に動き出せばそれどころじゃないのだろうが、情報によればまだ両軍はヤキン・ドゥーエ周辺にとどまり戦闘の後処理をやっているらしい。

 

 その報告を持って死地から帰還したのが、元FAITHの総隊長で自分達の教官でもあったレイ・ユウキなのだから、その信憑性は高い。

 

(ヤキン・ドゥーエの敗残兵、ザラ派と特定された者はプラントに帰還と同時に身柄の拘束とザフトの身分剝奪が確定してると言うしな……)

 

 最低でも公職追放になるのは間違いないと専らの噂だった。

 上手くいかないものだなとイザークは内心溜息を突きたくなる。

 

(この状況では、母の判断が一番、適切か……)

 

「わかりました。その……こう言うのも変かもしれませんが、どうかお元気で」

 

「ありがとう。状況が落ち着けば、連絡も出来ると思うの」

 

「くれぐれも無理はなさらぬように」

 

 不器用ながら互いを気遣う……ある意味、アスランとは対極にある親子関係だった。

 

「ねえ……イザークは、お母さんが居なくなっても、一人で本当に大丈夫?」

 

(この歳になって、母親に心配されるというのも少々気恥ずかしい物があるな)

 

「心配はいりません。もう成人して一人前です」

 

「そう……あのね、お母さんから一つお願いがあるの」

 

「なんです?」

 

「イザーク”も”、早くいい人を見つけなさい。お母さん、離れていてもイザークの『恋人ができました』って報告、待ってるから♡」

 

「はっ!?」

 

 

 

 エザリアの台詞が衝撃的だったせいでイザークは気づいてないが……エザリアは確かに「イザーク”も”」と言ったのだ。

 いや仮に気づいてもこの朴念仁の事だ。今は亡き父親の事だと思ったに違いない。

 

 今言える事は……知らないという事は幸せだという事だ。

 まさかイザークも、母親がオーブでの若い恋人との新生活に心ときめかせ、脳内真っピンクになっているなど思いもしないだろう。

 ましてやその意中のお相手が、元上官などとは。

 

 

 

 

 

 

⌚⌚⌚

 

 

 

 

 

 さて、イザークがエザリアの南京場所となっている邸宅から出ると……

 

 

【挿絵表示】

「イザーク隊長……」

 

「”シホ”、待たせたな」

 

 待っていたのは”プラント防衛主任務隊(第142話参照)”、パトリック・ザラの命に従いヤキン・ドゥーエに向かった一派ではなく、カナーバにつきプラント本国防衛という名目で残ったアカデミーの学生や教官などを含む部隊になってから出来た部下だ。

 名を”シホ・ハーネンフース”と言うらしい。

 イザークやディアッカは、プラント本国残留組の中でも貴重な赤服の実戦経験者として、かつてのクルーゼと同じく隊長職に抜擢されていた。

 

「いえ……その、どうでしたか?」

 

 本日の目的も、誰に会うのかも聞かされていたシホは、少しだけ表情を硬くする。

 

「元気そうだった……別れの挨拶を済ませてきたよ」

 

「!?」

 

 そのシホの表情変化を見たイザークは、

 

(し、しまったぁーーーっ! 言葉、間違えたぁっ!)

 

 内心、思い切り焦っていた。

 

「お労しいです……隊長……」

 

 今にも泣きだしそうなシホの表情に、

 

「い、いや、気にするな! これも母の選んだ道だ」

 

 ファンブル&ギルティ。

 その言葉が駄目押しとなり、もうシホは完全に”最後の挨拶(=親の死に目)”的なものだと勘違いしていた。

 

(いや、しかしまさか母が失踪予定だとは言えんし……)

 

 それを口外すればどうなるかくらい、イザークにだって想像はつく。

 

(しかたない、悪いがここは勘違いを利用させてもらう)

 

「親との別れは誰もがいつかは経験するものだ。それが俺には一足早く来たに過ぎん」

 

 

 

 この日以来、これまで以上に実に甲斐甲斐しくイザークの補佐をするシホの姿が散見されたという。

 今はあくまで仕事上の付き合いがメインだが、もしかしたらそう遠くない将来、「公私共に」になる日が来るかもしれない。

 

 端的に言えば……シホ・ハーネンフースが”シホ・ジュール”になる最初のフラグは、こうして僅かな勘違いと共に高々と掲げられたのである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




個人的に、ラウム・クルゼーロ氏が見知らぬオーブの街を歩き、ほんの少しだけ浮かれるシーンが何気にお気に入りです(挨拶

しっかり大人の恋愛していたクルゼーロ(元クルーゼ)と、何というかちょっとドラマCDの「息子の嫁探しをするマダム」的な部分を見せ始めたエザリアママと、うっかりイザーク(?)と勘違いシホ(初イラスト化)という流れでした。

割としっかり生活基盤を考えているクルゼーロ。
この調子ならしっかりジャンク屋としてもやっていけそうだし、いつエザリアが来ても大丈夫かなと。

そして、母親の事情から真相を勘違いを気づいても是正できないイザーク+絶対に勘違いを加速させそうなシホ=シホが副官としての役割を超えた世話焼きになりそうな予感w

ディアッカ:「えっ? 俺は?」

なんか君のポジション、シホになりそうな予感……
まあ、別に離反した訳でもないし赤服のままだから、2年後にはイザークと同格扱いではないかと。



最終章の副題"When This Lousy War Is Over(意訳:この酷い戦争が終わったら)"について
第一次世界大戦のおり、日本で賛美歌312番「いつくしみ深き」のメロディーに乗せて英国兵士の間で歌われた歌とされています。
原曲は「終戦に想いを馳せる歌」なんですが、このシリーズでは……

【NEUTRINO】戦いが過ぎて(When this lousy war is over) 日本語訳詞【東北ずん子】

という動画の日本語訳を参考にしていて、投稿者のКошка(Koshka)様が「戦争の日々は過ぎ去った」という感じの美しいオリジナル訳詞を載せています。
何となく、こっちの訳詞の方が、エピローグには合ってるかなって。

次回は、ちょっとオーブサイドの話を入れてみようかと。

思ったよりもエピローグが長くなりそう(10話以上確定)ですが、最後まで応援してくださると嬉しいです。


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