【完結】 種(CE)世界に00(西暦)要素をぶち込んで、死亡フラグを圧し折りながらイージーモードにしてみた 作:種再燃祭
C.E.72年2月1日、いよいよプラントと地球連合の本格的な停戦交渉が始まった。
無論、”プラントを国家として認めておらず、故に戦争状態にもない”オーブは、
「戦争もしてないのに停戦などできるはずもない」
という理由で停戦会議に不参加だ。
後にこの世界線においても”ユニウス条約”と呼ばれる事になるだろう停戦合意の話をする前に、「原作におけるユニウス条約」を確認してみよう。
【1.リンデマン・プランの遵守】
【2.賠償金放棄】
【3.戦争犯罪者は各国それぞれで裁くものとし、国際裁判は開かない】
【4.旧プラント理事国への関税優遇】
【5.リンデマン・プランに関する査察の無条件・無期限受け入れ】
【6.ニュートロンジャマーキャンセラーの軍事利用禁止】
【7.ミラージュコロイドステルスの使用禁止】
【8.プラントのジブラルタル・カーペンタリア基地・在地球公館の設置】
【9.地球軍監視団基地・在プラント公館の設置】
【10.月の中立地帯化・両軍に同数の月面基地設置許可】
【11.(開戦以前への)国境線の復旧】
と見出しだけ大雑把にまとめるとこんなところだろうか?
特に説明が必要なのは”リンデマン・プラン”だろう。
これは兵器の保有制限の話であり、”MS、MA、宇宙戦艦の数は人口、GDP、失業率等のパラメーターにより算出される数値を上限値とする”というもので、ある種の軍縮である。
賠償金放棄は「第二次世界大戦の戦後処理」と同じ理由で納得できる。下手に締め上げて”第二のパトリック・ザラ”を生み出したいとは交渉権を持つ当事者は国籍を問わず誰も思わないだろう。
さて、この世界線でも基本方針は同じだ。
同じだが、細部と理由が異なる部分が相応に存在する。
例えば、【3.戦争犯罪者は各国それぞれで裁くものとし、国際裁判は開かない】なのだが……
原作では端的に言えば、「際限ない捕虜の処刑合戦になり禍根しか残さない」のでこういう方針になったのだが、この世界線では理由が異なる。
戦争犯罪が大量発生した有名どころと言えば、アラスカとパナマだが……この世界線ではどうなったか覚えていらっしゃるだろうか?
アラスカを狙ったオペレーション・スピットブレイクは標的がオーブに変更され、事実上、全滅した。
パナマはアークエンジェルが強襲をかけて当時のバルトフェルド麾下部隊以外、プラントに帰りつけた降下ザフト・コーディネーターは確認されていない。
アフリカ、特にヴィクトリア湖で虐殺を行ったザフトの多くは撤退し、当時のカーペンタリア基地と未だにザフトが占拠している台湾島に撤退したが……カーペンタリアは宇宙ゴミの質量爆撃とその後の攻撃で跡形もなく破壊された。
そして、最も多くの捕虜(降伏者)が出たのがボアズ攻略戦だが、それはオーブの単独作戦で、地球連合は大西洋連邦も関与していない。
記憶に新しいヤキン・ドゥーエ攻略に関しては……という具合だ。
つまり、この世界線においては「戦争犯罪者として処罰できる捕虜が地球連合、プラント双方とも少ないため
何しろ現時点で一番ザフトの捕虜を抱えていたのがオーブであり、その肝心のオーブが戦争犯罪者ではなく「ただの
ニュートロンジャマー・キャンセラーやミラージュコロイドの条項は原作と大差ないが、興味深いのは【地球軍監視団基地・在プラント公館の設置】だ。
何しろこの世界線ではジブラルタルは連合の手に落ち、カーペンタリア基地は物理的に消滅し、ザフトの維持されている地上拠点は台湾島のみだから前提がかなり違う。
それゆえか……なんとこの世界線では、プラントにジブラルタル基地とカーペンタリア基地の再建が許されただけでなく、ザフトの台湾島への駐留が追加で許可されたのだ!
マスドライバーが維持されている台湾島の事実上の移管など、本来ならば東アジア共和国が絶対に受け入れ無さそうな案だが……当然、裏はある。
平たく言ってしまえば「ユーラシア連邦と東アジア共和国による、戦後に勢力を拡大するだろうオーブに対する対抗策」だ。
オーブは停戦合意に参加しない。そしてプラントを国家として認めない以上は、当面は「プラントとの関係は現状維持」が確定している。
即ちプラントはオーブの「敵対的集団」のまま戦後を迎える。
であるならば、カーペンタリア基地の再建と絡めて「ザフトを利用して南北からオーブを抑え込み牽制する」というのは戦略的には間違っていない。
加えて、南にはニューギニア島東部の係争問題で伝統的にオーブと敵対している大洋州連合が居るのだからより効果的だろう。
大洋州連合は戦力的にさほどあてにできないし、パトリック・ザラに味方した大洋州連合を表立って支援することは当分はできないが、親プラントの姿勢を是正しきれていない現状ならオーブの牽制に加えるには十分という判断だった。
さて、ユーラシア連邦と東アジア共和国、いや厳密には東アジア共和国がこの様な提案にのった背景には、根本的には「オーブの本格的な海洋進出を恐れた」からだ。
21世紀の「某国の海洋進出」が大きな国際安全保障上の問題となっている世界情勢を考えれば実に皮肉が効いてるが……
その前提として、少なくともプラントとの開戦前までは大雑把に言って日付変更線を挟んだ東太平洋の大部分がユーラシア連邦と東アジア共和国の領域(領海ではない)で、西太平洋が大西洋連邦の領分だと暗黙の了解ができていたことをあげるべきだろう。
日本列島が東アジア共和国に取り込まれたせいで、ハワイ・ミッドウェー・グァムのラインまで大西洋連邦(旧アメリカ)が太平洋の前線を下げたと考えてもいい。
しかし、プラント、あるいはザラ派ザフトとの闘争で、ユーラシア連邦と東アジア共和国は大きく力を削がれ、その前提が崩れた。
「風が吹けば桶屋が儲かる」ではないが……その根本はパナマをはじめとする度重なる地球上での大敗と、”ジェネシス”の二度のガンマ線レーザー砲撃で、事実上、宇宙軍が壊滅した事により大きく状況が変わってしまった。
確かに究極的には「人口=兵力」というロジックができる両国ではあるが、それで数的には補えるかもしれないが高度技能を持つプロフェッショナルな軍人というのは一朝一夕で育成できるものではない。
例えば、喪失した陸上軍の一般兵科は予備役動員と徴兵で補填できたが、より専門性の高いモビルスーツ・パイロットと宇宙戦闘艦の乗組員や基地要員の補いは簡単につくものではなかった。
元々、モビルスーツの配備数はオーブや大西洋連邦、ザフトに比べても少なかったため、パイロット適性の評価基準を下げて間口を広げて訓練生を確保するという策で対応する事にした。(これが後に両国のモビルアーマーの大量導入の遠因の一つになった)
プトレマイオス・クレーター基地は吹き飛んで使い物にならないから良いとしても、予備や修理中だったために作戦未参加の宇宙艦、更には大西洋連邦の予備宇宙艦の購入などで最低限の船を確保して宇宙軍を再建しようにも、それらを動かす人員が致命的に足りなかった。
そこでユーラシア連邦と東アジア共和国は、宇宙と海の違いはあれど同じ戦闘艦乗組員という共通項から訓練期間が短くなるという理由から海軍から人員を宇宙軍の再建要員として引っ張ったのだ。
当然、結果として起きたのは、人員不足・練度不足による一時的な”海軍の弱体化”だ。
そして、まるでそのタイミングを待っていたように発表されたのが、「オーブのパッシブ・ディフェンスからアクティブ・ディフェンスへのドクトリン変更」だった。
故に東アジア共和国は「自分達の海洋兵力の弱体化を補うために、台湾島をオーブと敵対するザフトを駐留させて利用する」という苦肉の策を選択したのだ。
南に再建されるカーペンタリア基地のザフトと大洋州連合、北に台湾島のザフト地上駐留軍と南北に挟まれればオーブも迂闊に海洋進出できないとユーラシア連邦と東アジア共和国は踏んだ。
特に長年オーブと冷戦状態にあると言ってよい両国は、「よほどドラスティックな関係改善」でも起きない限り、かの国が敵対判定を外さないことは自らの経験則から知っていた。
またジブラルタル基地の再建に関しては、共同体としては戦争の影響で崩壊し群雄割拠になりつつある”アフリカ共同体”や地球連合に敵対的な”汎ムスリム会議”の牽制に役立つと(特にユーラシア連邦に)判断されたようだ。
ただし、大西洋連邦、ユーラシア連邦、東アジア共和国の領土内にザフトの軍事基地・地上拠点を設置することは禁止され、その分、それ以外の国に個別交渉による新規の基地建設に関しては黙認するとされた。
具体的な名前をあげると大西洋連邦領土内のサンディエゴ基地の設営は不可能だが、汎ムスリム会議と交渉が成功すればディオキア基地やマルマラ海基地などは設営可能という事になる。
無論、アフリカ共同体の残党や汎ムスリム会議と手を組みユーラシア連邦に敵対行動を取る可能性はあるが、そうなった場合は逆に侵攻する大義名分になるとユーラシア連邦では考えられていた。
さて、ここまで読んでいただけたら、各国の思惑が絡み合った”魑魅魍魎が跋扈する地獄絵図”が見えてきたのではないだろうか?
大西洋連邦は、「一刻も早い停戦と巨万の富が動く戦後復興の着手」を。
ユーラシア連邦と東アジア共和国は、「停戦の後の”戦後世界”における、次の戦いにむけた優位性の確保」を。
プラントは、「旧プラント理事国からの独立国としての承認と国家の存続」をそれぞれ意図としていた。
オーブ? オーブは会議に参加しないだけで十分だが、「プラントとの個別交渉を早く始めたい」がために、その前提条件として停戦を必要としているために大西洋連邦と利害を一致させていた。
”国家間に真の友人はいない”とはドゴール、”国家に真の友人はいない”はキッシンジャーそれぞれの言葉だが、なるほど的を射ていると言えるだろう。
結局、停戦というのは妥協に過ぎない事がよくわかる。
そして、原作のユニウス条約から明確に削られた部分がある。
【11.国境線の復旧】
これは地球連合もプラントもついでにオーブも望まず、「停戦合意後の線引きこそが”
即ち……停戦交渉が開始されたその瞬間から、もはや”次の戦いは避けられない運命だった”……そう結論付けるしかないのが、今の世界だったのだ。
これでもまだ、現実の政治よりはまだ綺麗な物だと断言できる絶望(挨拶
いえ、原作のユニウス条約って「なんでミラクル・カナーバって呼ばれるくらいプラント有利な停戦条約通ったんかな?」と常々思っていまして。
監督と脚本家夫妻のご都合主義とか、戦争の内容的には痛み分けだったとかありますが、この世界では「地球連合の三大国家の立ち位置の違いによる要求の違い」にスポットを当ててみました。
めっちゃダメージ入ってるのにそれでも停戦は一時停戦と認識し、次の戦争を踏まえて枯渇した戦力を復元して有利に戦いたい(そして今度こそ勝利したい)ユーラシア連邦と東アジア共和国。
対してさっさと戦争終わらせて「戦後復興というビッグビジネス」に傾注したい大西洋連邦。
これに加えて「独立を承認させて、現状維持できれば勝ち」のプラントと、「とりあえずこれ以上、戦争に関わる気はないのでさっさと終わらせてくれ」って態度を隠そうともしないオーブ……
自分で書いててなんですが、こりゃまた見事に不健全な精神の塊ですことw
恐ろしい事に、このエピソードでは誰も「平和」なんて口にしていない。
当事者の誰もがこの停戦が「ただの停戦に過ぎない」って事を理解しているって感じです。
ユーラシア連邦と東アジア共和国はともかく、資本こそ正義の大西洋連邦としては金もうけに勤しむためにできれば恒久的和平に繋がって欲しいと思ってるのでしょうが……まあ、そうもいかない程度には停戦が成立しても世界が不安定なのは理解してます。
それにプラントとの停戦条約にかこつけて、ユーラシア連邦と東アジア共和国は自分の戦力を使わずザフトと大洋州連合でプラントをサンドイッチしようなんて画策するんですから、そりゃあオーブも次の戦争の準備に勤しむわけです。
さて、ユニウス条約締結に向けた会談が開始され、いよいよラストスパートに入ってまいりました。
ちょっと次回はまだ執筆できていないので未定ですが、どうか最後まで応援よろしくお願いいたします。