【完結】 種(CE)世界に00(西暦)要素をぶち込んで、死亡フラグを圧し折りながらイージーモードにしてみた   作:種再燃祭

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結論:大体、カガリが悪い





第24話 Lily Seed ~開かなかったはずの扉が開く刻~

 

 

 

 さて、これはオーブの軌道エレベーター”アメノミハシラ”の天辺にある宇宙港の軍事区画を母港とするイズモ級宇宙戦艦1番艦”イズモ”が大小合計9隻の戦闘艦を引き連れ出航し、アークエンジェルに合流するまでの間のちょっとした小話だ。

 

 

 

 避難船団有志一同による献花がユニウスセブンの残骸に向け行われ(これもガッツリ映像記録として残された)、唐突に国際オープンチャンネルで流れた生ラクスの追悼の歌声が、大きなサプライズとなった。

 また、ラクスはその放送の中で自分の無事を伝える。

 そして、プラント本国が紛糾したのはラクスが(無論、カガリの許可を取り)「オーブのヘリオポリス避難船団に救助された」ことを公表したからだ。

 無論、アークエンジェル、それもカガリの部屋に居候している事やアスランの存在は一切告げていない。

 箝口令が敷かれていた為、アークエンジェルでもラクスが居ることを知ってる者の方がこの時点では少なく、例えば事情により乗艦している(そして、キラやカガリと絡まない為に出番がない)フレイ・アルスターなどもこの時に初めて知ったくらいだ。

 これも当然だろう。フレイは来賓扱いなので、カガリの指示で専属の女性従兵(当然、ナチュラル)がメイドのごとく手厚く世話をしているので、あまり他のクルーと関わる機会自体が少ないのだ。

 (彼女がブルーコスモスのシンパだと予想されたので)予想される面倒事を避けるための方便ともいえる。

 現在のアークエンジェルはオーブ側のスタッフ、モルゲンレーテや一部ソレスタルビーイングの人間も乗っている為、当然のように原作よりずっとコーディネーター比率が高い(例えば、モビルスーツオペレーターのアニューもコーディネーターと()()()()())ため、賢明な判断と言えるだろう。

 

 

 

 さて、それらのイベントが終わりここはカガリの私室。時間は健康維持のために設定されている”就寝時間”。

 宇宙には昼も夜もないので、こういう時間設定は重要だ。

 特に24時間勤務が基本の軍艦では、当直やローテーションは意味が重い。

 睡眠不足や体調不良で「本領発揮できずに死にました」では洒落にならないのだ。

 

 蛇足ながら、ヘリオポリスではオーブ本土の時間に合わせて標準時と光の明暗で昼夜を区分していた。

 

「カガリ、わたくしこのままオーブへ連れて行かれるのですよね?」

 

「まあ、そうなるな。プラントとの外交チャンネルは事実上、凍結されてるし」

 

 ”宣戦布告なき領土攻撃”の意味は強い。

 民間人に犠牲者が出て”民間人の全島避難”を余儀なくされたオーブは烈火のごとく抗議し、逆にオーブにあったプラント領事館(に該当する施設)は、「オーブが大西洋連邦との兵器開発をだんまりでする方が悪い」と繰り返すだけだ。

 ”アスラン・インタビュー”の余波がまだ収まっておらず、プラント本国からまともな指示が来てない現状では、彼らは従来の主張を繰り返すしかなかった。

 その為、損害賠償など交渉以前に外交交渉は決裂状態で、埒が明かないとオーブ外交部はプラント側より提言があるまで外交案件を全て凍結、外交使節を全て24時間監視下に置くことを決定した。

 

「プラントの致命的な欠点の一つは、外交能力の脆弱さですわね」

 

「仕方ないんじゃないか? プラントには”低俗なナチュラルと話すことなぞない”って意見が血のバレンタイン以降増えたって言うしな。そもそもクライン最高評議長はともかくザラ国防委員長はまんまそんな感じだろ?」

 

「うっ……よくご存じですわ」

 

 表情を曇らせるラクスに、

 

「お前じゃないが、私も仕事柄各国重鎮のプロファイリングは欠かしてないからな。必然的にそうなるさ」

 

 そしてカガリはラクスが言わんとすることを察して、

 

「ラクスの身分や扱いが公にどうなるかはまだ確定してないが……まあ、悪いようにはせんよ。少なくともオーブ預かりは確定だ。他国からの干渉もあったが、それは跳ね除けた。友好国の大西洋連邦や他の中立国には根回ししたし、今のところ問題はないだろう」

 

 ちなみにラクスの身柄を(アスランと一緒に)よこせと横柄に言ってきたのは、いつものユーラシア連邦と東アジア共和国だ。

 オーブ外交部は、

 

『対プラントの外交切り札を何故、お前らごときにくれてやらねばならん』

 

 と突っぱねた。

 同じく反コーディネーター色が強いはずの大西洋連邦は、上記の二国が文句をつけてくる前にアズラエルへの「アルスター父娘(おやこ)に対する処遇の対価」を切り口に、追加で少々鼻薬を嗅がせることで対処。

 アズラエルに言わせれば、

 

『大西洋連邦には”確実に扱いが面倒になる火中の栗を拾うよりはマシ”という方向で話を進めておきますよ。オーブに厄介ごとを押し付けるといえば、煩い連中も黙るでしょうし』

 

 とのこと。

 アズラエル自身は、別にラクスやアスランを自分で率先して使おうという意思は無かった。

 善意とかではない。ただ、目の前にビジネスチャンスが山積みで、今は少しでも繫忙期を凌ぐ時間が惜しいのだ。

 突き詰めてしまえばアズラエルがカガリとの会談を最優先するのは、多角的な意味で確実に利益につながる話を持ち込んでくるか、自分の負担が軽減になる話を持ち込んでくるからだ。今回の件は、どちらかと言えば後者だ。

 アズラエルは優秀な経営者である以上、一人の人間の限界も分業の重要性も良くわきまえていた。

 

 

 

「なんならソレスタルビーイングでお前の身柄を預かってもいいぞ? 無論、ラクスが望むならだが」

 

「よろしいんですの?」

 

「ああ。無論、メリットはある。お前さんの歌はどちらかと言えば、平和を願う歌だろ? ナチュラルとコーディネーターの共存共栄を看板に掲げるソレスタルビーイングの理念とも矛盾なく合致する」

 

「……プロパガンダですか?」

 

 するとカガリは苦笑して、

 

「そう捉えてもらってくれていい。今更、綺麗ごとはいわんさ。ただ、ラクスの名前は使わせてもらうが、別にお前さんに何かしろと命じる気もないよ。ぶっちゃけオーブに着いたら何もしなくてもよいし、やりたいなら歌ってくれても構わん」

 

 するとラクスは驚きの表情で……なんだかここ数日で表情が豊かになったような気もするが、

 

「歌ってよろしいのですの?」

 

「ああ。歌える場所はこれから考えるとして……なあ、ラクス。せっかくプラントって”()()”が無くなったんだ、今度は自分が歌ってみたい歌を歌ってみたらどうだ?」

 

「えっ?」

 

「いや、私みたいな芸術音痴が言うのもなんだが、お前さんは”ラクス・クラインって偶像に求められる歌”ばかり歌ってる気がしてな。あっ、別にこれまでの歌が嫌いって訳じゃないぞ? 前にも言ったが、”静かな夜”は割とヘビロテしてるし。だがな……」

 

 カガリは言葉を選ぶように、

 

「だが時折、お前は”他人が望むラクス・クライン”に縛られ、酷く窮屈に見える」

 

 

 

「……カガリ、それはいけない事でしょうか?」

 

「いんや。他人が望む自分を演じるのは誰もがやってることだ。そうして社会はできてるし、国は動いてる。だが、”過ぎたるは猶及ばざるが如し”と言うだろ?」

 

 カガリは政治家としての笑みではなく、等身大の……歳相応の飾り気のない笑みで、

 

「それが過ぎれば、自分を見失うぞ?」

 

「自分を……見失う……?」

 

「ああ。お前はまず自分で自分を肯定しろ。お前は他人が望むラクス・クラインって以前に、ラクス・クラインって”ただの一人の人間”だ。他人が居るからお前がいるんじゃない。最初にお前って人間が居て、それを軸に人が集まる……そうだろ? お前の感じる世界の中心は、おまえ自身でなければならん」

 

「それはとても素敵な考え方ですわ……とても、とても眩しくて……」

 

 カガリはベッドから立ち上がると、いつの間にか理由も定かでないまま流れていたラクスの涙を指でそっと拭った。

 

「カガリ、わたくしはわたくしを肯定できるでしょうか?」

 

「できるだろ? 短い付き合いだが、少なくとも私にとってお前は好ましい人間だぞ?」

 

 へへっとどこかそう少年っぽく屈託なく笑うカガリだった。

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

 自分のベッドに戻ったカガリは、いつの間にか安らかな寝息を立てていた。

 そして、ラクスは……

 

(わたくし、どうしてしまったんでしょう……)

 

 カガリの笑顔を見てからいつまでも熱が抜けない頬をそっと抑える。

 

(女の子同士なのに……なんで……)

 

 

 

 ラクス・クラインの心の奥底で、”本来は開かない筈の扉”が本人が気づかぬまま静かに開いた……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




Lily Seed=百合の種

GLタグがアップを開始し、キマシタワーの建造が始まりました。

正史にして王道のキララク推しの皆様、NL派の皆様には受け入れづらい内容でしょうし、実際に喰らったら凹みますが低評価も覚悟の上です。

それでも、書いて見たかった”百合の園(セカイ)”があるんだ!

それはともかくとして、最近のガンダム・ヒロインズの”子持ちの同性婚”や「私、女です」「お堅いのね」的なノリをやってみたかったというのは本当です。

それよりも大きな理由としては、ラクスの……
C.E.73のディスティニープランの否定
C.E.75の「定められた運命」の否定
この二つに、明確な理由を付けたかったというのがあります。
つまり、

ラクス『カガリと一緒になれない運命なんて、全身全霊全力全開で否定させていただきますわ!!』

そりゃあ、遺伝子的に決定した相手とか、オルフェとの番の未来には、カガリがいるわけないですしw
少なくともTVシリーズでは不明瞭とか消化不良と評されることもあったラクスの行動原理を示したかったって訳です。

それに劇場版が王道であり正道であるのなら、二次創作で邪道、あるいは”王道でない(ASTRAYな)”展開もありかな~と。

カガリとの出会いによって、ラクスは「あったはずの歴史」からキャラとしてもヒロインとしても大きく外れて行きます。
それを楽しみにしていただければ、幸いです。





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