【完結】 種(CE)世界に00(西暦)要素をぶち込んで、死亡フラグを圧し折りながらイージーモードにしてみた 作:種再燃祭
「わかっていたこととはいえ、自国の醜態をまざまざと見せつけられるのは、こうやはり辛いものがありますわね……」
カガリがまだブリッジから帰ってこない為、今や”二人の居場所”となったアークエンジェルの一室で、ラクスはそう溜息を突いた。
驚くべきことにというべきか、あるいは当然というか……ラクスは”ビクトリアの暴虐”に関するザフトの蛮行を、大きな感慨も衝撃もなく受け入れていた。
彼女は、その本質において聡い娘だ。
コーディネーターがいかに優秀さをアピールしようと、プラントの評議会はどう足搔こうと労働組合や団体の幹部会どまりで政府としての機能は十全とは言い難く、またザフトは装備こそ軍隊並みに強力だが、結局は自警団……まともな軍人教育を受けていない
そもそも、プラントには元から高級職である政治家やプロフェッショナルである軍人などは少なく、またそのような「実力のある職業」にコーディネーターが就くことが地球各所で嫌われ、それらの技能を持つ者の多くがプラントの少数派たるナチュラルであり、言うなればプラントが「健全な宇宙工場」だった時代の残り火に過ぎない指導者階級だ。
そして、お決まりの「ナチュラルの教えなんて、優秀な我々が受ける必要はない」と、知識も経験も蓄積も中途半端なまま現在に至る。
結果、問題の解決に「武力を用いた力押し」という捻りのない前時代的な方法に頼る……それがプラントやザフトの現状だった。
「コレの何処が”進化した人類”なんでしょう? 対話や交渉の手順を踏まず戦争に踏み切る……これではむしろ退化でしょうに」
もっとも。「コーディネーターの優れた能力を見せつける」ことにご執心なプラントの強硬派やザフトに、それに気付くコーディネーターは何人いるだろうか?
「帰ったぞ」
「お帰りなさい♪」
戦闘後、関係各所に根回ししたのかややお疲れな感じでリビングセットのソファにドカッと座るカガリに、甲斐甲斐しく紅茶を淹れるラクス。
仕事に疲れて帰ってきた旦那とそれを労う新妻という構図に見えなくもない。
「諸々の物理的な後始末は、訓練がてらに第8艦隊が代行してくれることになってな。避難船団とアークエンジェルを除く護衛艦は”アメノミハシラ”の宇宙港へ、アークエンジェルは直接、オーブへ降りることになった」
「では、”宇宙の旅”ももうすぐおしまいですわね?」
「そこまでロマンチックな物じゃなかった気もするが……まあ、そういうことだ。ところでラクス、”上司”と相談したんだが……」
するとラクスはきょとんとして、
「上司? カガリは、ソレスタルビーイングのトップなんじゃないのですの? それに扱いは公社なので……御父上ですか?」
「ああ、いや」
カガリは少し困った顔で、
「いや、公表されてないだけで私の”上”がいるんだよ。ソレスタルビーイングの実質的なオーナーともよべる人(?)が。私の”師匠”でもあるんだが……まあ、私は表看板、雇われ代表みたいなもんさ」
ちなみにその上司兼師匠は性別がないらしい。
何というかカガリが何となく性別に無頓着、性差を大して気にしてる様子がないのは、そのあたりがどうも影響してるっぽい。
「それはともかくだ、お前、暇ならばネット配信とかやってみる気はあるか?」
「えっ?」
状況が分からないと表情に出すラクスに、
「ニュートロンジャマ―の影響で、一時的に地球上のネット環境が壊滅状態だったが、最近になって大分復旧してきていてな。まあ、ソレスタルビーイングでも有名動画サイトに枠をもってコンテンツ配信してるんだが、ラクスもそこにチャンネルを作ってみないかっていう……お誘いになるのか?」
「えっと……それはプロパガンダ的な、ですか?」
カガリは頷き、
「建前的にはな。実際は適当に雑談配信してもいいし、好きな歌を歌って”歌ってみた”配信してもいい。内容はお前に任せるよ。好きなことやって、面倒事はソレスタルビーイングに任せてくれていい。コッチには専門家がそろってるしな」
「えっ? えっ? でも、それってプロパガンダにならないんじゃ?」
「んにゃ。そんなことはないぞ? ”師匠”曰く『ラクス・クラインが健在であることをアピールしつつ、笑顔でニコニコ手を振ってる姿を流すだけの耐久配信でも、十分にプラントとザフトを煽り散らかせる』そうだ」
「煽るって……」
ちょっと呆れたような顔をするラクスだったが、カガリは不意に真面目な顔で、
「煽って煽って、煽り倒して正気に戻す」
「……へっ?」
あえて正解は言わないカガリ。いや、彼女自身もそれが正解なのかは判断できないのかもしれない。
「お前にはそれだけの力があるのさ。誰かのためでもない、誰かに望まれてでもない。ただ、お前の鮮烈な歌が、姿が人を惹きつける。古来よりそれが”
「カガリ……」
「戦争を終わらそうなんて事は考えなくていい。それは別の職業の仕事だ。こうしなくちゃいけないなんてものは、何も無い。お前はただお前の思う、こうでありたいと思うラクスであれば十分だ」
「わたくし、歌っていいんですよね? 好きな歌を、歌いたい歌を」
カガリはニカッと笑い、
「勿論だ。それこそが私にとってのラクス・クラインさ」
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その後、アークエンジェルは大きな波乱もないままにオーブへと降下する。
懸念されていたザフト、カーペンタリア基地からの襲撃や妨害もなかった。
”またしてもオーブに大敗した”事を考えれば、迂闊に手を出してこないことも一応は納得できる。
そして、
「パパッ!」
「お帰り、フレイ……!!」
オーブの港にて、降り立った娘は走り出し、父親の胸に飛び込む。
娘をしっかり抱き留め、再会の喜びを隠そうともしない父親。
感涙にむせぶ親子の構図……実に美しい構図だった。
(なるほど。良いプロパガンダになりそうだ。差し詰め、オーブと大西洋連邦の友好と友誼のアピール材料にはなるな。この先、関係・連携強化が必須となる以上、政治材料が多いに越したことはない)
「アルスター外務次官は、しっかり自分の仕事をこなしたわけだ」
「カガリ、何か言いまして?」
「いんや。魂の奥底まで穢れた人間の戯言だ」
「???」
「私もお前も、ああいう”演出”はできんだろうと思っただけだ。立場と父親の性格を考えればな」
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ザフト北アフリカ駐留軍司令部、旗艦陸上戦艦”レセップス”
「やれやれ。おっかないねぇ」
そう司令官室で独り言ちるのは、ザフトの中でも”砂漠の虎”と恐れられる”アンドリュー・バルトフェルド”だった。
彼がモニターを並べて観ているのは、おそらくは戦意高揚を目的とした大西洋連邦のプロパガンダ動画”第8艦隊の凱旋”と、オーブ政府広報の”アメノミハシラ沖会戦”と名付けられたドキュメント動画だ。
無様を晒しまくって、世界中の嘲笑を買った舌戦の模様や同じアフリカで起きた”ビクトリアの惨劇”にも言いたいことはあるが、彼が注視していたのはそこではない。
「僕の担当エリアに落ちてこなかった事が不幸中の幸いと言うべきか?」
大西洋連邦とオーブ、特に後者のモビルスーツの戦闘の様子、本当に機密指定の部分はそれと無く省かれているだろうが、公開されている情報だけで並々ならぬ性能とパイロットの技量がうかがい知れる。
実際、バルトフェルド自身もモビルスーツを駆るパイロットであるだけに、冷徹な目をもって見れる。
「本国の連中はちゃんと状況を理解しているのかねぇ?」
(クルーゼの奴がG兵器とやらを分捕ってきて浮かれてるようだが……この映像に誇張された加工が為されていないとするならば、)
「この戦争、勝ち抜くのは……いや、」
バルトフェルドは認識を改め、
「プラントやザフトが”生き残る”のは至難の業になるぞ。おそらくは、な」
この世界線のラクス、何となく「見るべきものは見て、知るべきことは知る」タイプなんじゃないかな~と。
いや、カガリとのやり取りが、「旦那の帰りを待っていた新妻」なのはさておきw
そしてカガリ、伏線であると同時に対プラント特効がありそうな仕込みを始めたような……だってソレスタルビーイングがバックに付いたプラントの歌姫の配信って、ねえ?w
そして、アルスター
フレイパパもフレイ自身も死亡フラグを圧し折ったようですが、故に悲劇のヒロインフラグも消滅した模様。
まあ、同じ避難船団の別の船でミリアリア達と無事にオーブ本国へと到着したサイとかと、平凡だけど普通の日々を送って欲しいものです。
そして、最後に”幸運の虎”さん。
死亡フラグが寄り道せずにオーブへの行ったために難を逃れました。
まあ、お荷物×2も未だプラント本国で足止めされてるしね~。
この人の動向もちょっと気になるところ。
次回より帰国篇とも言える割と日常パート中心の章になります。
これからもどうかよろしくお願いします。