【完結】 種(CE)世界に00(西暦)要素をぶち込んで、死亡フラグを圧し折りながらイージーモードにしてみた   作:種再燃祭

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果たしてこの出会いは、ニコルにとり吉と出るか凶と出るか……






第46話 絶望のニコルと、何だか偽名っぽい同じ髪色の小悪魔系お姉さん(ひんぬー)

 

 

 

「駄目です……これは駄目ですよ。ラクス様……」

 

 オノゴロ島、モルゲンレーテ社の城下町でニコル・アマルフィは人目もはばからずがっくりと膝をつく。

 

 

 ”命に嫌われている。”

 

 これがラクスの歌声で紡がれた楽曲のタイトルだ。

 西暦時代末期の生々しく苛烈な生命讃歌(ロック)……

 それは、プラントにとり間違いなく劇薬、いや”猛毒”だった。

 曲がというより、「その曲をラクス・クラインが歌ってしまった」という事象がだ。

 

 ラクスの歌声だからこそ、プラントには”通って”しまう。

 プラントのコーディネーター一人一人が、嫌が上でもこの歌に出てくる「どうしようもない、価値観もエゴも自分の物ですらない、感化されてナイフを持って走り出した少年」だと自覚してしまう。

 

 ニコルは知っている。

 コーディネーター優越主義が閉鎖環境で煮詰まり選民思想が主体と成り果てたプラントでは、コーディネーターの多くが自覚無自覚を問わず「ナチュラルを同じ人間と、命と()()()()()()()」のだ。

 だが、ラクスは歌声で突き付けてしまった……

 

 ”誇り高きアイドル”では、自分もまた人間であると宣言してみせた。

 ”命に嫌われている”では、コーディネーターもナチュラルも何ら変わらない「命に嫌われている人間だ」と容赦なく告げてしまった。

 

 これはもう、どうしようもないのだ。

 

(同じ人間だと認識してしまえば、戦えなくなる人間も当然のように出てくるでしょう……)

 

 ”血のバレンタイン”はいつまでも効力のある万能薬ではない。

 あの時の犠牲者が肉親に居る者でもなければ、正直、プラントの住人とて記憶を風化させ、「そんなこともあった」で済ませてしまうだろう。

 無関係の人間(身内に犠牲者のいない人間)にとって、所詮は「画面の向こう側」の出来事だ。

 誰しもかれしも、主義主張や恨みや薄っぺらい正義に”騙されて”戦える訳じゃない。

 むしろ、そういう人間は全体的には少数派なのは、実はプラントでも変わらない。

 現状のプラントとは、「パトリック・ザラを首魁とするザフトと少数の過激派に扇動される哀れな衆愚政治の末路」に他ならない。

 この場合の衆愚とは、誰もが無意識で「コーディネーターはナチュラルより()()()()()()()()()()()」……教育でそう思い込まされていることだ。

 おそらくパトリック・ザラが少年時代の頃は「個人でそう思っていた」ものが、今は大衆に対する思想教育となっている。

 

(だから、”血のバレンタイン”が許せない、報復をなんて叫んでいる声も……その大半が「そういう雰囲気だから、空気だから」なんて上っ面なものに過ぎない……プロパガンダに踊らされているだけの気まぐれで移り気な、熱しやすく冷めやすい”大衆心理”だ)

 

「誰も彼もが、本気で戦争をしたいわけじゃない。むしろ、空気に雰囲気に流されているだけ……ラクス様は歌声でそれを突き付けてしまったんだ」

 

 ではその反面、ニコルはなぜその”悪影響”がこうも低いのかと言うと……彼がピアニストであることが大いに関係していた。

 ショパン、モーツァルト、ベートーヴェン、シューベルト、ブラームスにサティという偉大なピアノ楽曲の作曲家、ラフマニノフに代表される偉大なピアノ奏者……歴史に名を遺す巨匠や偉人は、その多くが「コーディネーターなど影も形もない時代に生きた」者たちが大半だ。

 

 そして、コーディネーターの中から、未だに彼らを超える作曲家や演奏者は生れていない。

 ニコルとて、「歴史上の奏者」を手本にしながらも「絶対に届かない」と自覚するピアノ演奏家の一人なのだ。

 

 

 

(この先、プラント、そしてザフトはどうなってゆくんでしょうね……)

 

 どこか達観、いや諦観して他人事のように考えている自分がいた。

 

(どうしても戦争を継続したいとパトリック・ザラが考えるのなら……)

 

「より、ザフトは先鋭化してゆくのでしょうね……きっと。後戻りできないほどに」

 

 ザフト(ZAFT)は”Zodiac Alliance of Freedom Treat=自由条約黄道連盟”の略で、少なくとも建前上は義勇兵(志願兵)による市民軍だ。

 

(だけど、このままじゃあその建前がいつまで持つか……)

 

 嫌な想像と共に、暗鬱な気分が胸中を埋め尽くしてゆく……その時だ。

 

「ねえ君、道に座り込んでどうしたの?」

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

(えっ? 僕と同じ髪の色の……女の人?)

 

 特徴はニコルと同じ色の髪を同じくらいの長さに揃え、やや長身で胸は薄い。

 服装はオーブではありふれたパンツルックで、ちょっとマニッシュだろうか?

 その女性はひざを折るニコルを心配するように視線を合わせ、そっと耳元で、

 

「君、もしかして”ニコライ・アマンダ”君、かな?」

 

「!?」

 

 それは、ニコルが持つ偽のIDカードに書かれた名前で、

 

「貴女は?」

 

「ご同業よ♪」

 

 彼女はにっこり微笑み、

 

「私は”ヒリング・ケア”。まあ、”情報関係の仕事”に就いてるわ」

 

 いかにも()()()()()()()にニコルは逆に少し安心して、

 

(ああ、この人が潜入工作員の……)

 

 警戒は解くべきではないが、かと言って見ず知らずの他人が偽名を知るはずもない。

 

「ついてらっしゃい。”家”に案内するわ」

 

 おそらく活動拠点となる”セーフハウス”の事だろうと納得して、ニコルは後を追った。

 

 少しだけ補足させて欲しい。

 聡い子だと評されるはずのニコルが、なぜこうも初対面の人間にホイホイついて行ってしまったのか。

 一つは、ニコルが様々な状況的理由で追い詰められ、無自覚の心身薄弱状態だったということ。

 

 あとしいて言うなら……ヒリングの”()()()()”がある。

 何しろ彼女、「脳量子波の扱いに長けた種族」の一員なのだ。

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

 案内されたのは何の変哲もないマンションの一室。

 特別な感じはしない。

 だが……

 

「あれ?」

 

 ふと、ニコルは突然の眩暈に襲われる。

 ヒリング・ケアと名乗った女性は再び屈託のない笑顔で、

 

「ごめんね。無味無臭の遅効性睡眠ガスを予め充満させておいたのよ」

 

「な……ぜ……」

 

 ニコルの問いかけを「ガスが利いてない理由」だと捉えた女性、ヒリングは、

 

「”私たち”ってこういうの効きにくいのよ。毒性のある物が体内に入った場合、片っ端から分解する医療用ナノマシン・インプラントってのがあってね」

 

 そしてスッと目を細めて薄く微笑み、

 

「いわゆる”騙して悪いが”って奴なのよね。これ♪」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




残念ながら偽名じゃないんだな~。これが(挨拶

という訳で、自称小悪魔系お姉さんこと”ヒリング・ケア”華麗に登場です。

性別は女性固定で、「長身でスレンダー(または大人のひんぬーキャラ)」です。
サブタイから、ヒリングの登場を予想した方はいらっしゃったでしょうか?
まあ、彼女の正体や目的、その他諸々は次回に譲るとして……間違いなく、イノベイドであるこの世界線のご本人ですよ~。

まあ、それはともかく……なまじ頭が回り、音楽家ゆえの感性の鋭さや見識の広さから、ニコルが何だか可哀想なことに……
そりゃあ、「何となく近い気がする」お姉さんについて行きたくなりますよ。
もうこの時点で内心では、半分以上プラントを、ほぼ完全にザフトを見限ってるような物ですし。


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