【完結】 種(CE)世界に00(西暦)要素をぶち込んで、死亡フラグを圧し折りながらイージーモードにしてみた   作:種再燃祭

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第5章のエンドエピソードです。
今回はプラントからの視点、ちょっと珍しい人がメインかな?





第81話 勝利を渇望する独裁者と憂う補佐、そして同じく憂う学者に愉悦するイノベイドと巻き込まれ事故案件?

 

 

 

「何がテロリストだっ!! コーディネーターの力でのし上がった成金国家の似非人道主義者風情がっ!!」

 

 随分と人が減ってしまったプラント最高評議会で、テロリストの親玉が吠えていた。

 無論、そうなった理由は最高評議長兼国防委員長の強権発動である。

 政敵を物理的に排除できたと考えるパトリック・ザラは、そういう意味では気分よく仕事が出来ていた。

 

 だが、彼の機嫌を急下降させたのは、今や副官(議長補佐)の地位に居るイザークママことザラ派の最高評議員エザリア・ジュールが持って来た情報だ。

 しかし、その態度に内心、エザリアは溜息を突きたくなった。

 

(「一人の死は悲劇だが数百万人の死は統計上の数字でしかない」と古の独裁者は言ったというけれど……)

 

 ザフト総兵力の1/5以上をつぎ込んで行われた一大作戦”オペレーション・スピットブレイク”の歴史的大失敗・大敗北に関して、パトリックは「通常の戦闘ではオーブ攻略は不可能」という結論を出した。

 そう、それだけしか出していないのだ。

 

(つまり、通常の方法「以外」ならオーブ攻略が可能と考えてるってこと……ザラ議長は、オーブ攻略を諦めていない)

 

 それはパトリックの態度から手に取るように分かった。

 そして、それがロクでもない方法であることも……

 ふと、エザリアの脳裏にある日のタッド・エルスマン評議員との会話がリフレインされた。

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

 タッド・エルスマン。エザリアと同じく最高評議員。

 息子のディアッカ・エルスマンがエザリアの息子であるイザークと親友同士である為、そこで縁ができた。

 ただ、疑問だったのは元々は同じザラ派、つまり強硬派(急進派)の議員だったタッドが、ある日……そう、ヘリオポリス襲撃を境に強硬派から中立派に転じてしまったことが疑問だったのだ。

 その為、”オペレーション・スピットブレイク”発動に合わせて行われた「パトリック・ザラとザフトによる事実上のクーデター」のあおりを受け、自宅軟禁状態になってしまっていた。

 そして先日、その疑問を解消すべく訪問したのだが……

 

「ザフト、いやプラントはどのような理由があれ、オーブに手を出すべきではなかったのだよ」

 

 議員ではなく、かつての学者としての出で立ちでタッドは切り出した。

 

「ジュール、オーブの発祥元……起源となった”日本”という国の性質を知ってるかね?」

 

「いいえ」

 

「積極的に多文化を取り込み、自己に適合するように改変・改竄・変質させることを得意とするカオティックな国家・民族性だったそうだよ」

 

「……それが何か?」

 

「オーブの建国以来の異常な発展、そして本来は不俱戴天の敵であるコーディネーターとナチュラルの矛盾なき共存共栄、あるいは共生……何かおかしいとは思わないか? プラントを含め他の国が成しえない事をまるで呼吸でもするかのように自然と、平然と成し遂げているのだ」

 

「……言ってる意味が解らないのだけど?」

 

「分からないか? オーブと言う国にとっては、コーディネーターという新たなる人種も、所詮は”取り込むべき文化”の一つに過ぎないと言ってるんだ」

 

「ば、バカなこと言わないでっ!? そんなことあり得る訳……」

 

 タッドは溜息を突き、

 

「オーブとて多数派(マジョリティ)はナチュラルだ。人口比率で言えば疑う事なきナチュラルの国家さ。だが、彼らは遺伝子操作を受けたコーディネーターを人種とは見做していない」

 

「な、何を……」

 

「事実さ。彼らにとっての人種とは、敵対する、あるいは味方になる”異民族”に関する事が多い。○○人とかのアレだな。知ってるか? ナチュラルであれ、コーディネーターであれオーブに住むと、そのような”区分”よりも『オーブ人』という意識の方が強くなると」

 

 まるで”日本化”のような現象が起きるとタッドは告げた。

 

「理解できないわ……コーディネーターというのは、根本的なアイデンティティじゃない」

 

「それがプラントに住むコーディネーターの一般論だな。私とてそれは同じだ。だが、オーブではナチュラル、コーディネーターは人種未満の”ただの個性”扱いなんだそうだ」

 

「それは流石に軽すぎないかしら……?」

 

 だが、タッドは首を横に振り、

 

「私はかの国の情報を文化人類学的な側面から精査した事があるが……そのような結論しか出なかったのだよ。あの国は、プラントを含めた”世界の特異点”なのだよ」

 

 その評価……やはり、日本という国家名が歴史用語となって久しい今でも、オーブは少なくともこの世界線では正しく”日本人の末裔”なのだろう。

 表面的にはその性質が変質しているように見えたとしても、内包する本質はどうやら変わらないらしい。

 

「それがあなたが中立派に鞍替えした理由?」

 

 タッドは頷き、

 

「繰り返すが、我々はオーブに手を出すべきでは無かった。あの国はコーディネーターとナチュラルという垣根すら飲み込み、己が望む姿へと変えていっている。わかるか? アレは、プラントすら吞み込もうとするぞ?」

 

「でも、だって、私たち(プラント)の半数にも届かない国家じゃないっ!?」

 

「それがどうした? 我々は100倍以上の人口差を持つ地球に独立戦争を仕掛けた。オーブと我々の人口差など、それに比べれば微々たる物だ」

 

「それは私たちがナチュラルを遥かに凌駕するコーディネーターだから可能だったのであって……」

 

「繰り返すが、()()()()()()()() ナチュラルが多数派と言ってもかの国の人口の1/3近くがもはやコーディネーターだ。そして、ラクス・クラインですら”()()()()()”取り込まれにいったのだぞ? ”終わらない雨事変”などただの前触れに過ぎない。今後はもっと増えるだろうな……まあ、あの国の価値観に適合できない者は、戦後にでもプラントに戻されるだろうが」

 

「エルスマン、あなたもしかして……」

 

「ああ。戦後を見越しての中立派への鞍替えだ。私の思想や今までの言動、所業を考えれば、穏健派入りは難しい。ならば少しでもパトリック・ザラと距離を取り、政治的に身綺麗にしておきたい」

 

 そして悲痛な表情で、

 

「オーブ本国を攻めた以上、プラントに戦後があるのかわからん。だが、戦後も政治総体、社会として残った場合を考え、行動する者も必要だ」

 

「エルスマン、ザフトが負けると思ってる……?」

 

 タッドは少し考え、

 

「違うな。最初から我々に勝ち筋なんて物は用意されてなかったんだ」

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

「エザリア、腹立たしいがオーブは一先ず捨て置く。あの国を討つには相応の準備が必要だ」

 

「御意に」

 

「だが、我々には早急に勝利が必要となる。緩んだ国民感情を再度引き締めるべく、圧倒的な勝利が」

 

「はい、閣下」

 

「まずは、オーブの手が届かぬところで”確実な勝利”をつかみ、この戦争を盤石な物とする」

 

(こんな戦争、いつまで続くのかしら……)

 

 できれば息子(イザーク)は巻き込まれないで欲しいと願うが、それが難しいことも理解していた。

 

(カナーバと話したいわね……)

 

 意見が対立することも多かった彼女だが、今は無性に話したい気分だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

 

 

 

 

 

 

 

 

 一方その頃、イノベイド(※ココ重要)のカナーバさんはと言えば、

 

「まあ、そんな訳で事態が”本格化”すれば、パトリック・ザラも子飼いとシンパと腰巾着連れて、巨大原子レンジ付きのヤキン・ドゥーエに引きこもる事になるんじゃない? オーブが本格的に宇宙侵攻軍化すれば、流石にプラントにいられないでしょうし」

 

「”あなた方”が『居られないようにする』の間違いでしょ? 市民を扇動して」

 

 と吞気にクルーゼと談笑していた。

 ちなみにカナーバが軟禁されている部屋にはバッチリ盗聴器も盗撮カメラも仕掛けてあるが、そこは情報戦、特に電子情報や量子情報に人類じゃ太刀打ちできない程の優位性を誇るイノベイド勢力。

 カナーバとクルーゼの会話は、常にリアルタイムで「ザフトに都合が良いように」AI生成されます。

 

「そうとも言うわね♪ ”次のザフト”を担う英傑英俊達の試金石にもなるんじゃないかしら?」

 

「既に人選も終わってるでしょうに」

 

「そりゃまあ、人事は要だしね。それとクルーゼ君もどのタイミングでザフトを離脱するか考えておきなさいよ? 下準備とか言ってくれたら手伝うし」

 

「その時は、お願いしますよ。ただ、個人的な願望ですが”最終決戦”までは居残っていようと思います」

 

「物好きねぇ~。なんで?」

 

「行く末を見届けたいのですよ。誰かが始めたこの物語のね」

 

「結末は決まってるわよ? 筋書きの変更は、もう無理な段階だわ。ザフトがオーブを攻めた以上は、ね」

 

「だとしてもですよ」

 

 クルーゼはククッと笑い、

 

「私は”結末に至るその過程”を見たいんですよ。『次に繋がる者達』の為にも」

 

「ああ、デュラ君とレイくんね……でも、彼らが台頭するのはもうちょっと先よ?」

 

「だからこそ、結末を見届けるのでしょう? 彼らにそれは今はできない故に」

 

「クルーゼ君、語り部にでもなるつもり?」

 

「必要とあらば」

 

 すると、カナーバはふと気づいたように、

 

「あっ、時間だわ。そろそろエザリアが来そうね」

 

「エザリア?」

 

「君の部下だったイザーク君のママよ」

 

「どんな繋がりでそんなことに?」

 

「女同士でしか話せない事ってあるのよ。いい男になりたいのなら、覚えておきなさいね。あっ、それとエザリア、君に感謝してたわよ?」

 

「なぜ?」

 

 本当にわからないという顔をするクルーゼに、

 

「君がイザーク君とディアッカ君をアフリカ戦線に推薦した真意、こっそり伝えちゃった♪」

 

「なんてことをしてくれるんですか」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 後日、ザラ派の間で「議長の美人懐刀が、落ち目の隊長と昵懇」という噂が持ちきりになった。

 まあ、エザリアは未亡人だしイザークを生んだのは10代の頃だから、今はまだ女盛りと言われればそうで、信憑性はそれなりにあった。

 まあ、実際にどんな関係なのかは皆さんのご想像にお任せするが……

 これが、ありがたいのか迷惑なのか微妙だが、「パトリック・ザラのクルーゼに対する信頼度の回復」の要因、つまり……

 

『エザリアの愛人になったのなら、裏切らんだろう。裏切れば、エザリアもろとも身の破滅だ』

 

 となり、最新鋭のモビルスーツのパイロットの座が回ってくるのだから、人生何がきっかけで流転するかわかったもんじゃない。

 ”人生万事塞翁が馬”とはよく言ったものである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




という訳でメインはイザークママことエザリア・ジュールさんでした。
なんか彼女も「つきあってらんねー」状態になりつつあるような?

まあ、ここまで負けが込んでしまえばねぇ。
ドラマCDとか息子の嫁探しをしてしまう愉快な人なんですがw

そして、原作でも二次創作でもあまり触れられることはないディアッカパパ、タッド・エルスマンもまさかの登場です。
そして、彼が語る「オーブと戦ってはいけなかった理由」と「オーブの姿」……

この世界線ではシーゲル・クライン辞任後すぐにパトリック・ザラが議長になってしまいましたが、原作ではパトリック・ザラ以前にプラント最高評議会議長を務めていただけあり、どうやら中々に鋭い人物のようですね~。

それにしても……パトリック・ザラは名実共に独裁者となってしまったために視野狭窄(独裁者の職業病のような物です)に陥りかけており周囲が見えておらず、そして愉悦するカナーバさんと巻き込まれるクルーゼという図式w

この世界線だと、クルーゼもバルトフェルドと同じ苦労人枠のような……

クルーゼ:「上の者が無茶をすれば、下の者にそのしわ寄せが行くのは世の常だな」

いや、あなたからそのセリフが出るとは(泣
人並みの寿命を手に入れた対価は存外に大きい模様(イザークママの愛人疑惑とかw)

いずれにせよ、パナマが事実上の最後の地上ステージ(EXステージはあるかもしれませんが、基本短いです)その後はラストのボアズ、ヤキンドゥーエという宇宙ステージに入ります。



当初、100話程度で終わらせる予定でしたが、どうやらもう少し長く続きそうです。
ここまでのご愛読ありがとうございました。
新章もどうかよろしくお願いします。

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