【完結】 種(CE)世界に00(西暦)要素をぶち込んで、死亡フラグを圧し折りながらイージーモードにしてみた 作:種再燃祭
アンドリュー・バルトフェルドは苦労人だけあり、慎重な男だった。
パナマ沖の浅瀬、待機位置に着くなりイザークとディアッカ、グゥルに乗せた二人のモビルスーツと”レセップス”に搭載していたディン隊を空中哨戒にだし、高機動ではあるが地上機であるバクゥを「回収(撤退)支援に必要」として艦内に残した。
実に賢明な判断だった。
そして、始まる本国からの部隊の降下と、続いての”グングニール”の使用、連鎖的に起きたマスドライバーの崩壊……ここまでは良かった。
だが、
「あいつらっ!!」
バルトフェルドの頭は一瞬で沸騰したようになる。
映像通信として挙がってきたのは、『投降した地球連合の降伏者を遊びで虐殺するザフト』の姿だ。
「た、隊長! 大変ですっ!!」
携帯端末片手に駆け寄ってきたのは、副官のダコスタで、
「虐殺の模様が、世界中にリアルタイム配信されていますっ!?」
「なんだとっ!?」
バルトフェルドは賢明であった。
故に作戦が始まってから、ダコスタに特命で一般のネットを見張らせていたのだ。
情報戦に長けたオーブが「ラクスの歌唱戦術」をはじめ、どんな情報戦を仕掛けてくるか未知数だったからだ。
だが、それが最悪の形で結実したのだった。
☆☆☆
ザフトのパナマ攻略艦隊は、パナマ上空宙域を守っていたユーラシア連邦や東アジア共和国所属の艦隊を中核とする地球連合の守備艦隊を壊滅させると、すぐに後退してしまった。
艦隊戦力の保全を考えれば、それは賢明な判断だろう。
彼らの最大の任務は降下ポッドの投下であったし、地上に降りた部隊の回収は地上軍の仕事なのだ。
だからこそ、応援として駆け付けた普段はオーブ上空周辺宙域から太平洋東部を縄張りとする地球連合第8艦隊は、苦も無くパナマ上空に辿り着くことが出来た。
ザフトは安心していた。
確かに第8艦隊は地球連合の最精鋭艦隊、オーブ製のモビルスーツを多く持ち、同数のザフト艦隊と”渡り合える”恐るべき相手だが、彼らのモビルスーツは宇宙戦特化型で、またザフト艦の降下ポッドのような機能を有してないことは確認済みだった。
それは事実であり、だからこそザフト艦隊の司令官は、
『もう追撃しようとしても届かぬ我々に歯噛みしているが良い』
という空気だった。
では、本当に第8艦隊の「宇宙戦後の到着は無意味」だったのか?
断じて否である。
まずは生存者の救難。
一応は友軍でもあるし、それ以前に船乗りの責務だった。
このあたりのモラルの有無こそが正規軍たる大西洋連邦軍と、市民軍からテロリストに成り下がったザフトの明確な格差として現れる。
そして、第8艦隊を率いるハルバートン提督は、
「では、高感度偵察カメラの準備と偵察ポッドを射出したまえ」
と次の作戦に入る。
皆さんは、スパイ衛星で知られる偵察衛星の画像解像度をご存知だろうか?
ニュース映像やネットなどで見られる衛星画像は、実は大分精度を落としてあるらしい。
正確な情報は軍事機密だが……道端でタバコに火を点けるライターの炎を1ドットとして捉え、衛星軌道上から上を見上げる人間の顔を鮮明にとらえ、個人を特定できる精度・解像度であるらしいのだ。
そして再構築戦争(第三次世界大戦)の惨禍とその後の”ミッシングリンク”という暗黒の空白期で大きな技術的衰退を人口減少と共に招いたが、それでも200年以上未来であるC.E.71は現代の最新鋭のそれらの技術に勝るそれを艦載カメラや偵察ポッドは持っていた。
故に”惨劇の犯行模様”は、ザフトには不幸なことにパナマ上空が快晴だったせいもあり、この上なく克明に動画として記録された。
更にザフトが不幸になる話をしよう。
”オペレーション・スピットブレイク”以降、オーブと大西洋連邦との安全保障条約はより強化され、なんと第8艦隊は”アメノミハシラ”の軌道ステーションに設けられた軍港区画を母港として使用できる権限を得たのだ。
裏で明らかにカガリとアズラエルの暗躍があったのだろうが……オーブ防衛戦後に行われた「ウズミ・コープランド会談」で締結されたそれにより、第8艦隊とオーブ軍との通信網はより一層強化された。(海上自衛隊と横須賀を母港とする米国第7艦隊をイメージしてもらえると分かりやすいかもしれない)
故に第8艦隊の偵察衛星が捉えた動画はすぐさま軍用秘匿回線を通じてオーブ軍へリンクされ、オーブ国家代表のウズミ、外交長官のウナト、カガリ(ここにカガリが入っている事に着目してほしい)の三人の合意をもって、オーブ国内のみならず世界中へ配信することが決定した。
そう、正規の大西洋連邦との外交的了解はウナトが、大西洋連邦の(本質的な意味で)盟主王たるアズラエルの了解はカガリが事前にとっていたのだ。
こうして、地球全域、そして”ターミナル”(?)を通じてプラントにまでその模様は届いたようだ。
だからこそ、バルトフェルドの決断は早かった。
「イザーク、ディアッカ! 直ちに降伏者を嬲り殺しにしてる阿呆共を止めろっ! 力づくで構わん! 全ての武器の使用を許可するっ!!」
『『バルトフェルド隊長っ!?』』
「猶予はない! 虐殺の模様がネットを通じて全世界にリアルタイム配信されてるんだっ!! 早急に止めなければザフト、いやプラントは終わるぞ……!!」
『なんと……』
絶句するイザークに、
「画像が流れた以上、もはや手遅れかもしれん。だが、ここで『同胞だから』という理由で虐殺を見過ごせば、ザフト全員ががテロ組織であることを自ら認めてしまうことになる! ザフト全員が『ああではない』と示さねばならん!!」
『お、俺達はテロリストなんかじゃ……』
『ディアッカ、征くぞ……! ここで反論したところで始まらん!』
『イザーク?』
『この際、俺たちが誰にテロリスト呼ばわりされようが知った事ではない! だが、俺はこの光景はひどく気に食わんっ!』
イザークなりの矜持と正義感の発露……原作と異なり、今回は良い方向に出たようだ。
『……ああ、そうだな。確かに愉快な気分にゃなれんしな』
それに大義名分もある。
『今はそれで十分! ディアッカ、ついてこい!』
『あいよ、相棒!』
覚悟決まったように飛び去る二人に、
「若いってのはいいもんだ」
そう呟くバルトフェルド。
(アイシャを連れてこなくて正解だったな……こんな馬鹿げた戦場には)
「隊長も言うほどの歳じゃないでしょうに」
「いんや。俺はもう立派なオジサンさ。ダコスタ君、内々に撤収準備を初めておいてくれ」
「よろしいので?」
「今回の”オペレーション・スレッジハンマー”の作戦先任指揮権は、降下部隊にあるのさ。俺達はあくまでサポート戦力扱いだからねぇ」
その言葉で何が起こるか察したダコスタは、
「了解しました」
とだけ短く返した。
☆☆☆
そのジンは追い掛け回していた連合兵をちょうど踏み潰そうとしていたところだった。
だが、
『この、痴れ者がぁっ!』
”ビュオン”
ビームライフルの一閃が、踏みつけようとしていた足の膝を撃ち抜き、その着弾の熱による溶断で膝からしたが滑落し、バランスを崩したジンはそのまま転倒する。
「なっ!? まだ生き残りがいたのかよっ!?……えっ?」
頭を向けるとモニターに映ったのは友軍を示すIFFマーカーを出すガンダム・タイプで、
「なぜ味方を撃ったぁっ!?」
激昂するそのパイロットにイザークは、
『味方だからこそ、”死なぬように”撃ったのだろうがっ! 貴様らのくだらん愚行を止めるためになっ!』
イザークは正義に目覚めたつもりはない。だが同時に悪徳に堕ちるつもりもなかった。
という訳で、今回はイザークとディアッカの覚醒回。
この大戦、ザフト陣営で損な役回りになることも多い二人ですが、たまには格好良くても良いかな?と。
意外に聞こえるかもしれませんが、イザークとディアッカは嫌いなキャラじゃないんですよ。
イザークに至っては、「原作の所業は赦せんけど、しかし、嫌いになり切れんキャラ」だったり。
そしてこの世界線だと「ザフト所属で、ヘリオポリスで強盗行為をした」以外は身綺麗ですしね。えっ? 割と致命的?
イザーク、ちょっと(中の人つながりで)ドモンとかソースケとかも混入してる気もしますがw
そして、「バルトフェルドの反抗」も「イザークとディアッカの義憤」もしっかり中継されます。
それがどのような結果を示すのか……それは今のところ”
まあ、そこまで悪い結果には……ならないといいなぁ。でもザフトだしなぁ~という感じです。
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