【完結】 種(CE)世界に00(西暦)要素をぶち込んで、死亡フラグを圧し折りながらイージーモードにしてみた   作:種再燃祭

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虎が頭を使うのは、狩りの時だけとは限らない実例です。






第90話 嗤う盟主王と策士の虎

 

 

 

「フフフ……やってくれましたね? いやぁ、本当にやってくましたよっ! 流石はザフト! そこに痺れも憧れもしませんがねぇっ!!」

 

 そう”虐殺の現場”を観ながら上機嫌のアズラエル。

 そして、周囲の取り巻きの一人、大西洋連邦軍の最上層部に居る高官に、

 

「では予定通り、オーブに安全保障条約に基づく”支援出動の要請”を。ああ、勿論、アラスカからの援軍出動も忘れずにお願いしますよ」

 

 アズラエルはニヤリと笑い、

 

「ああ。勿論、準備は慌てずにでいいですよ? ”友軍のデビュー戦”を邪魔するのもアレですしね。それと……」

 

 何か思い出したように、

 

「待機命令を出していた”()()”部隊にも出動を。せっかく”オーブからの親愛を込めたプレゼント(ニュートロンジャマー・キャンセラー)”で復活したんです。ちまちまモビルスーツを撃つのは苦手でも、海に潜んだ”出来損ないのデカブツ”を的にするなら問題ないでしょう」

 

 どうやら、オーブから試作品として真っ先に供与されたニュートロンジャマー・キャンセラーは数隻の大西洋連邦海軍がエイプリルフール・クライシス前まで攻撃型原子力潜水艦の原子炉復活に充てられたらしい。

 ある意味、真っ当な使い方だ。

 オーブの正式名称不明の”7,000t級通常動力攻撃型潜水艦”がバッテリー駆動潜水艦の頂点とするなら、大西洋連邦の水中排水量15,500t、復活した核分裂型原子炉出力110,000馬力、海中速力40ノット以上、最大潜航深度1,000m以上を誇るこの”ノーチラス”級(アメリカ最初の原潜と同じ名前)こそが、原潜の現在の頂点と言えた。

 言ってしまえばこの船は、「C.E.の技術で蘇ったシーウルフ級、その拡大近代化版」であり、対潜戦闘で潜水艦としては欠陥だらけのボズゴロフ級に後れを取る可能性は低かった。

 潜水艦を待ち伏せして敵艦迎撃を行う「守勢兵器」として使うドクトリンをオーブは旧日本国海上自衛隊から引き継いだように、大西洋連邦もまた攻撃型原潜を「攻勢兵器」として積極的に扱う伝統を合衆国海軍より受け継いでいた。

 

「御意に」

 

 この言い回しの真意に気づかぬ程度の能力しか持たぬ側近は、既に排除されていた。

 

(それに、”紅海の鯱”が確認されてる以上、)

 

「”彼女”の本懐が果たされるかもしれませんねぇ」

 

(試作機のテストパイロット志願した貴女の心意気、これでも高く買ってるんですから)

 

「成果を出してくれる事を期待してますよ?」

 

「アズラエル理事長、何か?」

 

「いえ、ちょっとした”復讐劇”を思い出していただけですよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『バルトフェルド隊長、どういうつもりだっ!? 貴様の麾下の機体が我が軍を攻撃してるのだがっ!?』

 

 案の定、通信を繋いできた降下部隊指揮官に、

 

「攻撃? 冗談じゃない。ただ、”戦争犯罪”を止めさせているだけですよ」

 

 自慢のブレンドのコーヒー片手に、”レセップス”の艦橋から何食わぬ顔で返すバルトフェルド。

 

『”戦争犯罪”? 何を言って……』

 

 本当に意味が解ってないらしい降下部隊長に、

 

「”投降してきた無抵抗の降伏者に対する虐殺”は、この上ないほどの戦争犯罪ですよ? 知りませんでしたか?」

 

 そしてこの通信は、軍用の秘匿回線だけではなく”意図的に()()()()()()()()()()()にも繋いでいた。

 誰に傍受させる(聞かせる)為か、描く必要もないだろう。

 黙殺するならそれも良しだが、

 

(拾って流すだろうねぇ。間違いなく)

 

 バルトフェルドはそう思える確信があった。

 

(どうもオーブってのは、『ザフトやプラントの皆殺し』なんて七面倒臭いこと望んでないっぽいんだよなぁ)

 

 だからこその『()()()()()()()()()()』というデモンストレーション。

 それがイザークやディアッカにやらせている”始末”、その本当の理由だ。

 

(そうしておいた方が都合が良いだろうからな。見知らぬ”どこかの誰かさん”には、きっと)

 

『なぜ、我々が下賤なナチュラルが作ったルールに縛られねばならんっ!!』

 

 何かとんでもないことを言いだした降下部隊長にバルトフェルドは心底呆れながら、

 

(まさか、本当に戦時法の何たるかまで説明しなくちゃならんのか? 敵味方問わず際限のない殺し合いを抑制する為だろうがっ!)

 

「……それ、本気で言ってます?」

 

 なんだか無性にアイシャの顔が見たくなった。

 

『ただちに友軍の、いや同胞への攻撃を止めさせろっ!!』

 

「じゃあ、その前に降伏者を意味もなく殺すのを止めさせてくださいよ。そうすれば、こっちも撃つ必要がなくなる」

 

 

 

 ここでザフトの持つ”組織工学的な致命的欠陥”が浮き彫りになる。

 ザフトは”義勇市民軍”の建前と、規模を悟られないようにという戦前の配慮により階級制度を導入しておらず、そのために「明確な上下関係」が設定されていない。

 そして、そうであるが故に部隊を率いる部隊長(隊長)には大きな権限が与えられていた。

 ちなみに隊長は、「部隊規模がどれほど大きくても隊長」であるのがザフトだ。

 加えて、部隊ごとの独立性が高く、「階級を理由に出来ない為」に、バルトフェルド隊の隊員は隊長であるバルトフェルドにしか直接命令権はないし、その逆にバルトフェルドには降下部隊に対する命令権はない。そして、隊長同士は便宜上、同格だ。

 だからこそ、「力づくで止める」という非常手段を用いたのだが……

 

『バルトフェルド隊長、この作戦の先任指揮権は私にある』

 

 階級は無くとも、作戦事……複数の部隊が参加する作戦には、必ず責任者、つまり作戦の最上位現場権限者(先任指揮官)が抜擢される。

 そうでもしないと複数の部隊が連携を取らずにバラバラに隊長判断で動き、各個撃破されかねないことをさすがの個人主義蔓延るザフトでも学んだらしい。

 

「ええ。ですが私の部下への命令権も、隊長からの解任権も無いはずですが?」

 

 まあ、そんな権限があったら、戦闘訓練と軍事教練ばかりでまともな軍人(士官)教育を受けておらずモラルの低いザフトのことだ、「気に食わない」という理由で何人恣意的に解任されるかわかったもんじゃない。

 

『だが、作戦から君の部隊を外す権限はある。バルトフェルド隊長! 今すぐ味方撃ちをしている部下を引き連れ、本作戦よりの離脱を勧告する!!』

 

(その言葉を待っていたぞっ!!)

 

 この作戦に最初から気乗りしなかったバルトフェルドは、その一言が聞きたかったのだ。

 自分から不参加を表明すれば、今のザフトからは「何をされるかわからない」。その程度の不信感をバルトフェルドは今のザフトに持っていた。

 だからこそ、「よりパトリック・ザラに近い物」から言いだすのを待っていたのだ。

 

「ほう……私の部隊を外して、どうやって降下部隊を回収するおつもりで?」

 

 そしてしっかり論理的退路(いいわけ)を確保する。

 

『”紅海の鯱”、モラシム隊長の潜水艦部隊が来ているのだろう? なら、彼らにジブラルタルまでの往復回数を増やしてもらえば良いだけのことだ』

 

「いいでしょう」

 

 バルトフェルドは椅子から立ち上がり、いっそ憎々しいまでの完璧なザフト式の敬礼で、

 

「作戦先任指揮官殿の()()()()()、”バルトフェルド隊”は可能な限り早急にパナマより撤収いたします」

 

 バルトフェルドが拒否しないことを確認した降下部隊長は明らかに上がった機嫌と共に、

 

『許可する。作戦の邪魔だ。さっさと砂漠へ帰りたまえ』

 

 と告げるのだった。

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

(これで撤退の大義名分は得た)

 

 内心、スキップしたい気持ちにかられたが……バルトフェルドはそれをグッと抑えて、

 

「イザーク、ディアッカ、直ちに帰艦しろ。我々に作戦よりの離脱命令が出た」

 

 と今度はしっかりオープンチャンネルを閉じて軍用回線だけに切り替えて命じる。

 

『よろしいのですか? この状況を途中放置して?』

 

 どうやら状況の深刻さに気付き始めてるイザークの問いに、

 

「よろしいも何も、それが作戦先任指揮官様のご判断だしな。それに……」

 

『それに?』

 

 聞き返すディアッカに、

 

「な~んか、ぐずぐずしてると怖ーい怖ーい連中が来そうな気がするんだよ」

 

 天井を指さし、

 

「頭上からな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




純真な少年達は義憤だけでも動けますが、バルトフェルドは大人なので打算も駆け引きも保身も智謀も権謀術数も全部使いますw
そして、

『自分達は虐殺を止めようとしたアピールとパフォーマンス、だけど傲岸不遜の責任者に作戦を外されたというアリバイ工作』

というオーブに大西洋連邦、そしてザフトやプラントにもデモンストレーションするという方策。
しかもご丁寧なことにそれを全世界に放映してくれるのは、敵方なんですから至れり尽くせりですw

バルトフェルドは、恐ろしい敵だからこそオーブや大西洋連邦を研究して、「敵として信頼している」みたいですね~。

敵を上手く利用するコツは、「敵の望む行動をとること」……まあ、これもオーブがよく使う手口ですね~w

そして、盟主王がなんとなく存在を仄めかしていましたが……知っている方は知っている「外伝の白鯨」がどうやらパナマにも紛れ込んでる様子です。
ちなみに……大西洋連邦の攻撃型原潜部隊は、ニュートロンジャマー・キャンセラーのお陰で原子炉が動けば、マジに強いですよ?

なんせ米海軍潜水艦部隊の直系で、乗ってるのは「C.E.の技術で蘇ったグレードアップしたシーウルフ級」ですからw

リアル兵器に詳しい方ならこう書くと伝わりやすいかな~と。

「アルファ型の速度と深深度性能を上回りつつ、シーウルフ級以上の静粛性とソナー性能を矛盾なく合わせ持つのが、この”ノーチラス級”。攻撃型原潜の一つの完成形」

守勢のオーブの仮称7,000t級通常動力攻撃型潜水艦、攻勢のノーチラス級が、この世界線の地球海中戦力の双璧かもしれません。

さて、次回はオーブの情景でも……

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