【完結】 種(CE)世界に00(西暦)要素をぶち込んで、死亡フラグを圧し折りながらイージーモードにしてみた   作:種再燃祭

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たかが軍艦1隻とモビルスーツ数機といえど、国民の了解と了承を得て戦地へ飛ばそうと思うと、例え正規軍はない比較的フリーハンドな戦力だったとしてもそれなりに手順を踏まねばならないという話ですw






第91話 国民主権を重んじる今生のオーブにとり、政治はとても面倒臭く、されど大事な物だという実例

 

 

 

(とき)は来た、だな」

 

 ザフトがパナマへの降下作戦を開始する頃には残務を全て終わらせアークエンジェルのブリッジに詰めていたカガリは、アズラエルから発せられただろう「オーブ・大西洋連邦の安全保障条約」に基づく緊急出動要請の文章を読みながらそう呟いた。

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

 既に必要物資を積み終えいつでも発艦可能な状況にあった”アークエンジェル”ではあるが、当然のように独断で出撃できるわけでは無い。

 ザフトの降下作戦が始まり、陸戦が発生して程なく、”秘密兵器”の影響だろう。

 パナマのマスドライバーがへしゃげて崩れ落ちた。

 その瞬間の画像は駆け付けた第8艦隊が展開した偵察衛星で撮影されていた。

 そして、その後に続く「ザフトによる正気を失ったような大虐殺」も……

 

 第8艦隊→オーブ軍でリアルタイムで齎せた虐殺動画は、

 

「余すことなく、今はありのままを流すべきでしょう。編集など後でいくらでもできる。今、重要なのは”現在進行形で起きてる真実”を伝えることですよ」

 

 元々、オーブ国家代表のウズミと外交トップのウナト、そしてアズラエルとの「有事の際のコンセンサス」は出来ていたのだ。

 そして、アークエンジェルのブリッジから代表官邸に繋いだ通信の向こう側で、

 

『うむ。国民には真実を知る権利がある』

 

『存分にやるといい』

 

 オーブ重鎮二人の承諾と合意を得て、「パナマでのザフトの所業」はありとあらゆるニュースチャンネルで”緊急速報”として全面配信されることとなった。

 無論、ネットワークだけでなく、他のあらゆるメディアを通じてもだ。

 

 当然のように1ヵ月前にザフトより襲撃を受けたばかりのオーブの国民世論はそりゃあ熱く熱く沸騰する。

 当然だ。”同病相憐れむ”ではないが……ザフトに襲撃されたという共通項で身につまされるだけでなく、「もし防衛に失敗していたらオーブもこうなっていた」という実例を見せつけられたのだ。

 そして、それは”ウズミの慈悲深き断罪”で語られた「ザフト=テロ組織」という図式を完全肯定するショッキングな物だったのだ。

 少なくとも「投降してきた無抵抗な降伏者を纏めて皆殺し」にするような輩をオーブ国民は軍隊とはみなせないし、みなさないだろう。

 

”大西洋連邦との安全保障条約に従い、直ちに悪逆非道のテロリストを討つべしっ!!”

 

 と自然発生的に虐殺への義憤にかられた声がオーブ国民から発生するのは当然だった。

 そして、世論を味方につけた事を確信したウズミは

 

『安保理を招集して緊急閣議を開き、大西洋連邦からの救援要請があり次第、パナマへの派遣部隊を編成する』

 

 だが、その声に国民は……

 

”それでは遅すぎる! 本当に皆殺しになってしまう!!”

 

 と反発した。

 実はここまでオーブ国民が劇症反応をしたのは、「パナマの守備に就いていたのが(オーブの未だ仮想敵国から外れていない)ユーラシア連邦や東アジア共和国からの派兵部隊」であることを知らなかったせいもある。

 パナマが大西洋連邦の管轄である以上、国民の大半は「パナマで犠牲になっているのは友好国であり、最近ますます良好な関係を築けている大西洋連邦の将兵」だと思い込んでいたのだ。

 

”オーブ防衛戦で駆けつけてきてくれた恩義を、今こそ返すとき!!”

 

 ”恩”という概念を重んじる旧日本から受け継いだ価値観がまさに発露した形だ。

 だが、これは致し方無い面がある。

 そもそも大西洋連邦自身が「軍事機密につき」ということでパナマへの配備兵力の撃ち分けや詳細を発表してなかったのだから仕方ない。戦時下であれば当然の判断だった。

 公式で明らかにしてない内容を、まさかオーブが公表するわけにはいかないのも道理である。

 これに対して、

 

『しかし、オーブには海外派兵に即時対応できる緊急展開部隊は常設しておらず、またそれに関する法整備もなされていない』

 

 とウズミは釈明。そして、

 

『今回の反省を生かし、私の在任期間中、必ず常設の緊急展開即応部隊の常設に必要な法整備を行う』

 

 と国民に宣言してから、

 

『国際テロリストによる大規模な正規軍人の虐殺という非常事態を踏まえ、即時出撃可能な部隊のとりあえずの派兵を検討したい。その候補となるのは……』

 

 そこで発表されたのが、少し前から編成され実働状態にあった、

 

 ”実験予定のアークエンジェルとGAT-Xシリーズ合同性能評価部隊”

 

 だった。

 おかしな話ではない。軍事マニアなら最近になって「オーブで大規模改修された第1期GAT-Xシリーズと純大西洋連邦製の第2期GAT-Xシリーズの性能評価を兼ねた合同訓練」を行っていることは誰でも知っていたのだ。

 いや、むしろオーブ防衛戦で活躍した機体や秘密のベールに包まれた最新鋭モビルスーツが見れるとあって、多くのマニアがモルゲンレーテ本社のあるオノゴロ島に押しかけており、宿泊関係をはじめとした地場の観光産業に少なからぬ恩恵と潤いを齎せていた。

 都市部にほとんど被害が無かったとはいえ、本土攻撃から1ヵ月も経たずに観光に勤しむとはオーブ人も中々に逞しい。

 ちなみにアスカ兄妹もオノゴロ島地元民のメリットを活かしてよく見に来ていたようだ。

 

 ただ、やはり意外と鋭い……というか優れた洞察力を発揮したのはシンで、一目で「見た目は大きな変化はなく(この時点ではカラーリングを含め大きな外観的変更はない)装備変変更だけ行われたストライクカスタム」を見て、他者が”新装備の実験”と思っていたところで一人だけ、

 

「あれ? 動かしてるのキラさんじゃない……?」

 

 と気づいたようである。どうやら後にキラと違う意味で”天才”と呼ばれる片鱗を既に見せ始めてるようにも見える。

 ちょうどその部隊が、「実戦を想定した大規模演習」の準備に入っていたので、即応部隊として機能できるというのだ。

 しかも、面子の内4人はちょうど大西洋連邦から出向扱いになっている”正規軍人(オルガ、クロト、シャニの三人は原作同様に大西洋連邦少尉の資格を持っていた)”であり、残るメンツもモルゲンレーテやソレスタルビーイングの社員だったり、PMC”カタロン”のメンバーだったりと、「オーブ国軍の海外派兵に関する手続きを省略できる面々」が揃っていた。

 これも、このモビルスーツの性能評価実験部隊その物が軍ではなくモルゲンレーテ社が主体となって行われた物と公表されれば、国民は納得しかなかった。

 というかモルゲンレーテ社やソレスタルビーイングのパイロットが大暴れしたのが、先のオーブ防衛戦なのだ。

 そして、駄目押しとなったのが圧倒的と言っていい国民認知度と人気を誇るカガリ・ユラ・アスハで、

 

『アークエンジェルは広報でも発表したようにカグヤ島のマスドライバーで射出できない大きさ故に「マスドライバーに頼らない新理論の大気圏離脱方法」の実験を行う予定が入っていた。ぶっつけ本番になってしまうが、アークエンジェルに件のオーブに居るGAT-Xシリーズを搭載して大気圏を離脱し、弾道飛行でパナマを目指せば、ぎりぎり”()()()()()()()()”で到達可能だろう。元々、アークエンジェルはGAT-Xシリーズの母艦という側面で建造されていた船だから、今回の緊急展開部隊の母艦に打って付けと言えるしな』

 

 そして、

 

『以上のような理由から、即時出動できるアークエンジェルとGAT-Xチームで”義勇兵団”を編成するのが、最適解だと思う』

 

”ならば、そうするべきっ!!”

 

 国民の総意は決した。

 そして、タイミング良く届く、友好国である大西洋連邦からの緊急の”支援要請”。

 必要な要素は全て揃った!

 

『ああ、今回の作戦に限って私、カガリ・ユラ・アスハが臨時の団長を務めることになった。高度な政治的判断が必要な場合もあるし、そもそも私には今回の作戦指揮に必要な権限もあることだしな』

 

 

 

”………へっ?”

 

 ただ最後のオチにオーブ国民の目が点になったらしい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「アークエンジェル、発進せよっ!!」

 

 カガリの号令一下、アークエンジェルはオーブ上空にその巨体を浮かせる。

 そして、艦首を上空に向けて徐々に加速してゆく中で、

 

艦首陽電子砲(ローエングリン)、1番2番用意! 撃ちー方はじめっ!!」

 

 艦長のトダカの命令で艦首左右の2門の陽電子砲が放たれ、白雲を焼きつつ蒼空を貫く閃光の後、

 

「艦長、”ポジトロニック・インターファライアンス”の発生を確認!」

 

 システム統括オペレーターのアニューの言葉にトダカは頷き、

 

「進路そのまま。機関全速。プラズマブースター、点火用意」

 

 矢継ぎ早に出される命令に、

 

「ヨーソロー!」

 

 委細承知と短く操舵手のノイマンは短く返す。

 

「ローエングリン、メインチェンバーよりサブチェンバーに切り替えます。陽電子コンデンサよりメインチェンバーに供給開始。チェンバー充足次第、励起と加圧を開始します」

 

 アニューは陽電子チェンバーをメインからサブに切り替える瞬間、イアンとシェリリンが「実にイイ笑顔でサムズアップ!」する幻覚(?)を見た気がしたが、「疲れてるのかなぁ……」と小さく首を振ってそのイメージを追い出した。

 

「結構」

 

 トダカは帽子をかぶり直し、

 

「”アークエンジェル”、パナマへ向けて全速前進!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




基本、この世界線のウズミさんは人道主義の政治家(代表首長)だと国民に認知されていますが、実際には「理想主義の成れの果ての政治的マキャベリスト」で、本質的に中身は筋金入りのリアリストのウナトと大差ありませんw

むしろイメージから「オーブ最大最強の金権主義者」と思われているウナトがちょい損な役回りです。
でも、「外交トップの現実主義者」ってどう考えても金権主義者、言い方変えれば貿易と外交を武器に中立の看板掲げて外国と殴り合えるパワー・ポリティクスの権化じゃなければやってられないですよw
だからこの世界線のウズミとウナトってウマが合うんですよね。

資金と権力ってすごい武器ですから。
そして、ウナト以上に悪辣でタチの悪い金権主義なのが実はカガリというw
まあ、師匠が師匠なのでそれは致し方ないというか。


とりあえず、原作より国民主権の色合いやら濃度が強い故に割と政治的に面倒臭いオーブですが、アスハ親子の活躍(?)もあり、原作よりずっと安楽にアークエンジェルはオーブから飛び立てたようです。

もっとも、出航(出撃)目的は「(形的には)大西洋連邦の救援」と原作と真逆のシチュエーションなんですけどねw

さて、次回はパナマの映像を視聴するアークエンジェル一同の珍道中でもと。

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