美津子の碁   作:としより

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第9局 『美津子、ついに学ぶ』

幽霊の記憶領域はどこにあるのだろう

 

碁盤から謎の復活を果たした幽霊にせっつかれ、別離したと言う日からの息子の話をしてあげたのだが、この幽霊はどうやら記憶力が凄くいいらしい。

平安時代のこと、江戸時代のこと、そして現代で起こったことをしっかりと覚えているようで、私から語る息子の話を彼の記憶の中の息子と照らし合わせながら満足気に聞く。

 

記憶とは脳あっての物だと私は認識しているのだが、一体この幽霊はどこにどのように記憶しているのだろうか。

とてもこの幽霊がわかっているとは思わないが聞かずには居られなかった。

 

「貴方は幽霊なのでしょう?実体がないのにどうやって記憶しているのかしら?」

『確かに……言われてみれば私は一体どこに知識を蓄えているのでしょう?』

 

(ほら、やっぱり。この気の抜けた幽霊は自分のこともちゃんと理解していないわ)

 

『幽霊ですけど幽霊じゃありません!私にも藤原佐為という名前があるんですからミツコも名前で呼んでください!』

 

仕方が無いので名前で呼んであげることにしましょうかね……。

 

 

 

---------------

 

 

 

そうして佐為と会話をしながら日中の家事を終えた私は、彼の指導の元で囲碁を学ぶこととなった。

 

『正解です!簡単なものとはいえ、詰碁も出来るなんてヒカルより才能あるかもしれませんよ!』

「一応本で読んではいたからよ、貴方の言うヒカルは何も知らない時に貴方に囲碁を打たされたのでしょう?」

『ぅ……、確かにそうですけど……』

 

コトコトとゆっくり丁寧に石を並べる。

初めて触った時よりは随分スムーズに置けるようになったものだ、と内心喜んでいると、佐為がクスリと笑う。

 

「なにかしら?可笑しな所があったかしら?」

『いえ、石の持ち方が始めた頃のヒカルと全く同じなので少し懐かしさを覚えていただけです♪』

 

石の持ち方など知る由もない私は少し憤慨するが、佐為の懐かしむ声がそう……例えるのなら、独り立ちした我が子を想う親のような柔らかい声で、憤りもすっかりどこかへ行ってしまった。

本当にこの幽霊は息子と共に暮らし、何年もすぐ側で見守ってきたのだろう。今まで疑っていた気持ちが綺麗さっぱり晴れてしまうほどの慈愛に満ちた声だった。

なんとなく話題を変えたくなり、気になっていることを聞く。

 

「そういえば、ヒカルは週明けまで帰らないのだけど、時間は大丈夫なの?」

『えぇと、どうなんでしょう……。お話した通り、以前消えた時は取り憑いていた碁盤のシミが薄くなったことで分かったんですけど……』

 

確認しろ、という事ね。

 

(あら……?昨日見た時はこんなに薄かったかしら……?)




皆さんには佐為の声は再生されてますでしょうか
一応頭の中で「これなら言いそう」と思いながらセリフは決めていますが……
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