美津子の碁   作:としより

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第4.5局 『ヒカル、怪しむ』

かーさんが怪しい

 

不審者とかそういった怪しさでは決してないけど……。

最近かーさんがやたら碁の話題を振ってくる。前までは対局票が届いた時と出張の時くらいしか碁の話なんかしなかったし、勝敗についても気にしている様子は無かった。他だとせいぜい収入の話くらいだ。

 

(絶対に怪しい、なんか隠してるよなァ)

 

こないだなんか交友関係とかまで聞いてきたし、何探ってんだ?

気になりだしたら全ッ然囲碁に集中できない。そのせいでココ最近でやらかしたポカの数は尋常じゃない。何とか本因坊リーグは落としてないけど、名人・棋聖はリーグ落ちだ。

塔矢にも散々に言われる始末。暫くはオレとは打たねぇとか言いやがって。

収入なんて気にしてるんだったら碁に集中させてくれよなァ!

 

「……ねぇかーさん、最近何してんの?なんか隠してない?」

「え!?何言ってるの?何も隠してなんかないわよ!」

 

普段と違って声が大きい、目も泳いでいる感じだ。

碁で培ったヨミと勘が黒だと判断する。

 

「今日も碁の勉強するんでしょ?早く食べて勉強してらっしゃい」

「最近やたら碁の話するじゃん、前までそんな事無かったのにさ」

「あのねぇ、ヒカル?確かに前までは囲碁なんて〜、とか思ってたわよ?でも息子がその世界で生きていくって決めたんだから、母さんだって少しくらいは向き合うわよ」

 

さっきと違ってどっしりと構えている。これは嘘じゃないな。

とはいえ何か探ってるのは確かだから落ち着かない。あ〜あ、こんな時佐為が居たらかーさん見張ってもらって、逆に何してるのか探れるのになァ。

っといけない、佐為に怒られる。アイツ怒らせるとめんどくさいからなァ、気を付けないと。……もう居ないけど。

 

「それにしたって、誰と付き合いあるかなんて聞く必要ないだろ!」

「そんな事ないわよ。和谷さんだって色々とお世話になってるし、ヒカルが迷惑かけてないか心配なのよ」

「そんな子供じゃねーよ!もういい、部屋行く!」

 

……

………

 

もう17だし社会人もやってるから子供扱いに腹が立って、つい勢いで会話を打ち切っちまった。やっちまったなァ……。

モヤモヤするし、結局気になってること聞けずじまいだ。困ったなァ、明日も対局あるのに集中出来ねーかも……。

 

こんな時、佐為が居たら……

佐為が居てくれたら、オレのこと落ち着かせてくれて、かーさんとの喧嘩もすぐに謝れるんだけどなァ。

アイツ囲碁の幽霊だったから、オレの囲碁の中にしか居ねーんだよな……。

こんな時、また夢に出てきて、また笑いかけて欲しいな……。




美津子「何とか話題すり替えからのヒカルの癇癪まで行けたわ、危ない……」

今のヒカルはちょっと落ち込むとすぐに佐為を求めて、居なくてさらに落ちるを繰り返してます。
塔矢は対局中、あまりに酷い碁に怒りよりも呆れと心配が上回ったため、落ち着くまでは打たない方がいいと判断した模様。
どっちも美津子は知りませんけどね、本作の主人公なのに
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