美津子の碁   作:としより

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第6局 『美津子、悩む』

私は一般家庭の主婦だ

 

それこそ子供の頃は歌手になりたいとかそういった憧れはあった。しかし成長と同時にその気持ちは薄れていき、少し前まではごく普通の一般人を満喫していた。

……そう、息子がメディアに出るまでは。

 

息子が有名になればなるほど普通の暮らしから少しずつ乖離していく気配を感じる。ご近所付き合いや買い物、息子を取り巻くメディアの方々……。自慢の一人息子だけあって最初の頃は悪い気はしなかったがそれが続くとなると話は別だ。囲碁教室にもろくろく通えない。

先日の白川先生は、私と遭遇した事を息子に話したのではないかと、気が気では無い。数日経った今でも息子からそんな話は聞かないので、恐らくは話していないのでしょう、きっと……。

 

「おーい、美津子ー。飯はー?」

「もうすぐ出来ますよ、急かさないで」

 

リビングから旦那の声が届き、考え事と一緒にコンロの火を止める。

あれこれ悩んで変な動きをすれば、また息子が探りを入れてくるかもしれない。

 

「今日ヒカルは?」

「あの子は碁の仲間と泊まりで勉強会するんですって」

「熱心だなぁ」

「変な人たちでは無いことは知ってるけれど、やっぱり子供だけでの泊まりは心配だわ……」

「美津子は気にしすぎだよ、子供ったってもう17なんだから、良いこと悪いことの判断だって出来るよ」

「あなたってば、もう少し気にかけてもいいんじゃないの?」

「はは、そこは美津子がしっかりしてるからね」

 

相変わらずの放任主義である。

私がしっかり見ているから放任なのではなく、旦那が放任だから私がしっかり見ざるを得ないというのに、全くこの人は……。

 

「ところで、美津子は囲碁の勉強進んでる?」

「ヒカルに内緒で、ってなると難しいわね。本は読んでるのだけど」

「そこが引っかかってるならもう気にしなきゃ良いじゃないか」

「イヤよ、『進藤ヒカルの母です』なんて自慢してるみたいじゃない。あなたは知らないけど、ご近所付き合いだってヒカルの話題ばっかりで大変なんだから。」

「ん〜、事実なんだから自慢も何も無いと思うんだけどなァ」

 

旦那から振ってきたと言うのに、もうこの話はおしまいとばかりに食後の新聞タイムだ。片付けくらいやってくれてもいいのに。

 

(でも、そうよねぇ……内緒で学ぶのは難しいのかしら……)

 

動き始めた頃の自分の当初の予定では、もっとすんなり囲碁の勉強が出来て、息子とも軽く囲碁の会話をして驚かせるはずだったのだけど、現実はままならないものだ。

 

しかしメリット・デメリットを考えたら内緒で学ぶ方がやりやすそう、初動さえどうにかなればあとは流れで行けそうなものなのだが……。

その初動が1番のネックになっていることも理解している。

どうするべきか思考を巡らせるうちに夜は更けていった。




今回は囲碁には関わらない回です。
いつもより100文字も多い!
たまにはこんな日常もいいかな?なんて思ってます(本編で家族の話がほぼないもので、書いてて楽しいです)

ところで、新人なのでハーメルンの評価方式がどうなってるのかわからず調べて見ましたが、下記は地雷らしいですね
・1話辺り2500文字以下
・不定期更新タグ

おぉう……、バッチリ該当するではないか……。
まぁいいのですがね!!!!

あとは、
5人以上の評価でゲージが溜まり、20人の評価でゲージMAXになるそうですね。
赤ゲージは評価8以上との事で、何気に高く評価して貰えて驚いてます。
みんな美津子を求めていた……?
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