世界には科学的根拠の無いものは存在しない
日常的にそう思っている訳では無い、がUFOやUMA・心霊現象の特番がある度に小馬鹿にして観ていた。
存在しないものとして頭の中には置いていたが、もし仮に幽霊が存在しているのであれば事故で亡くした旧友や私の祖父母など会えたらいいのにな、などと考えたりもしていた。
「ん……?」
『あ!ヒカルのお母さん、起きました?』
どうやら数分程度意識を失っていたようだ。まだ家事も終わっていないからそれほど時間が経過してないことに少し安堵する。
(まだ幻聴がするわ……。一体どうしてしまったのかしら……)
『幻聴じゃないです!私はちゃーんとここに居ますよ!』
(ハイハイ、居ます居ます。でも少しだけ大人しくしてて下さいね。)
この歳になってまさかイマジナリーフレンドを作り出してしまうとは思わなかった。囲碁が学べないばかりに精神的に不安定になっているようだ。
『いま、じなり……?よく分かりませんが今は地鳴りはしてないですよ?』
レベルは低いが冗談も言うらしい。イマジナリーフレンドにこんな事を言わせる私の潜在意識がどうなっているのか少し気になる。
とはいえ貴重な体験ではあるので、どうせなら姿も見えたら良かったのだが。
『ヒカルのお母さん!私は目の前に居ますよ!ほら!みえますかー!』
目の前にいるらしいが何も見あたらない。
声はすれども姿は見えず、とはまさにこの事か。見えないなら見えないでいい、意識しなければ日常生活に大きな支障を来すことはない。
『ヒカルのお母さ〜ん?』
『あの〜?聞こえてますか〜!』
『ヒカルはどこにいますか〜!』
『き、こ、え、ま、す、かーーーー!!!』
極力相手をしないように出来るだけ思考を止めていたらどんどん煩くなる。一体なんの罰ゲームだと言うのだ。
「うるさいわねぇ、少し静かにしてもらえるかしら?」
『ひぅ!ご、ごめんなさい……。あ、そうだ!では1局打ちましょ!先程の様子からヒカルのお母さんも囲碁をするのでしょう?』
あぁ、やはり囲碁だったか。ここ最近の私は囲碁に取り憑かれていた、だから囲碁のイマジナリーフレンドを作り出したのだ。
もう囲碁はやめよう。ほとんど学ぶことは出来なかったけれど、息子の仕事について学ぼうと動いたこと自体は意味はあったはずだ。きっかけとタイミングが上手く合えば、次はきっと学べるだろう。
『あ、あのですね……?ヒカルのお母さん……』
私が怒ったのを察したのか、少し控えめに話しかけてくる。
取り合うつもりは無いので家事を黙々とこなす。
『私、幽霊なんです。平安時代の……』
言うに事欠いて幽霊とは……、相手をするつもりは無いがポツポツと語る自称幽霊の話を聞いていた。
要約するとこうだ。
1.平安時代の碁打ちで帝の指南役をしていた
2.もう1人指南役が居て、2人もいらないから対局して正式な指南役を決めることになったが、卑怯な手で心を乱し負けた
3.神の一手とやらを極めたいがために現世に残り続け、江戸時代に後に本因坊秀策と呼ばれた子供に取り憑いた
4.数年前に息子にも取り憑き、囲碁を目覚めさせた
5.そこから数年して成仏した
成仏したのに何故今ここにいるのか、それは本人にもわからないらしいが……。
息子の話が細かに語られたことで、少しだけ興味を惹かれたので相手をする事にした。
自称幽霊の言う【息子と別れた日】以降の私の知る息子の話を、自称幽霊に聞かせてあげることになったが、深夜になっても『早く早く!続きを聞かせてください!』とせがまれ寝不足になるのであった。
囲碁にはまだ目覚めてません
投稿が滞ってしまい申し訳ありません。
実は2月中旬から体調を著しく崩してしまい、咳のために夜もまともに寝られない日々を過ごしておりました。
現在全国的に風邪薬が足りていない状況にあるらしいので、こちらをお読みいただいている皆様はくれぐれも体調にお気をつけ頂きますよう。
書き溜めの中身が気に食わなくてちょこちょこ手直しを入れているのも遅い原因の一つではあります、ごめんなさい