『信長の庶兄として頑張る』   作:零戦

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第二十二話

 

 

「……織田が大和をほぼ攻略した。残るは久秀の信貴山城だ」

 

 河内国の飯盛山城で三好長慶達は評定をしていた。

 

「当の松永本人はどうしたんだ?」

「弟長頼によれば病に伏していると言っています」

「ふん、本当に病なのか?」

 

 三好長逸の言葉に長慶の弟である十河一存は怪しそうな表情をしている。

 

「本当は裏切って織田に与してるんじゃないか?」

「一存、そんな言い方は良くないぞ」

「けど姉さん!!」

「一存」

「……分かったよ」

 

 長慶の言葉に一存は渋々と従う。

 

「私は信貴山城に赴こう」

「姉さん!?」

「心配するな一存。久秀は裏切らない」

 

 多分此処に信広がいたら「裏切ってるよ。オンドゥルルラギッタンディスカー!!」と言っているかもしれない。

 

「一存、私がいない間の政務は任せたぞ」

「げ」

「フフ」

 

 嫌そうな表情をする一存に笑う長慶だった。そして長慶は僅かな供を連れて信貴山城に向かうのであった。

 一方、信貴山城には城主である松永久秀の他に信広がいた。

 

「これが平蜘蛛か……割ったら駄目だよな?」

「割ったら貴方の四肢を生きながら切り落とすわよ」

「デスヨネー」

 

 二人はそんな事を言いながら話をしていた。普通は二人は敵同士なのであるが久秀は既に織田に頭を下げて降伏をしており実質大和国は織田家の物になっていた。

 

「ふむ美味いな。やはり茶器が変わると美味くなるものなのか……」

「貴方も茶器の気狂いになる?」

「ははは、勘弁してくれ。信長が怒りそうだ」

 

 久秀の言葉に信広は苦笑する。

 

「それで……次はどうするのかしら?」

「……信貴山城を攻める」

「フフ、私を殺すのかしら?」

「表向きはな。そうしないと大和国を攻略した事にならない」

 

 裏では大和を攻略しても表で攻略しないと三好に怪しまれるのは必須だった。そのために信貴山城を攻める必要があったのだ。

 

「それで表向きは降伏してほしい久秀」

「勿論よ」

 

 久秀はそう言って笑い茶を飲む。そこへ長頼が部屋に入室した。

 

「姉上」

「どうしたの長頼?」

「今、長慶様が姉上に見舞いに来ました」

「……何でやねん……」

 

 思わずそう呟いた信広である。しかし久秀は何食わぬ顔で告げた。

 

「通しなさい」

「……おいおい」

「大丈夫よ。私の言葉に上手く合わせなさい」

「はいはい」

 

 そして長慶が現れた。

 

「久しいな久秀」

「これはこれは長慶様、このようなところにわざわざ……」

「なに、少し大和の情勢が気になったから来たまでだ。病に伏せていると聞いたが大丈夫か?」

「えぇ。今日は具合も良いので」

「そうか……貴殿は……」

 

 そして信広に長慶が視線を向ける。

 

「此方、織田信長の庶兄信広殿ですわ」

「(ちょ、おま……)織田二郎三郎信広でございまする」

「三好孫次郎長慶だ」

 

 信広が長慶に頭を下げ、長慶も信広に頭を下げたが両者とも雰囲気は固かった。

 

「久秀……何故織田家の者がこの信貴山城にいる?」

「フフ、簡単な事ですわ長慶様。私はそこの織田信広から調略を受けていたのです」

「ほぅ……」

(ちょ、おま……俺の人生オワタか……)

 

 色々と暴露している久秀に信広は内心人生を諦めていた。

 

「それで裏切るのか久秀?」

「いえいえ。私は長慶様に恩義がありますので裏切りませんよ」

 

 長慶の言葉に久秀はクスクスと笑う。

 

「流石に手ぶらで帰って頂くのもあれなので茶会をしていたのですよ」

「そうなのか?」

「え、えぇ」

 

 いきなり長慶が信広に視線を向けてきたので信広は少し驚きながらもそう答えた。

 

「なら私も同席しても構わないか? 一度久秀の茶を飲みたいからな」

「構いませんわ。信広殿も構いませんこと?」

「ア、ハイ」

 

 何故か逆らえないと思った信広はそう頷いた。そして三人での茶会が始まった。

 

「……どうぞ」

 

 久秀から差し出された茶碗を長慶は洗練され、一切無駄のない所作と完璧な作法で茶を飲む。

 

「………(綺麗だ……)」

 

 ただ茶を飲むだけの長慶の姿に信広はそのように思っていた。

 

(俺の中でも信長に並ぶヒロインに連ねているだけでもあるな)

 

 ……よく分からない考えの信広だった。

 

「結構なお手前でした」

(アカン)

 

 完全に負けていた信広だった。

 

「……信広殿」

「……何か?」

「織田家は何を目指すのか?」

「……天下」

 

 信広は長慶を見据えてそう断言した。

 

「天下の先に何を求むのか?」

「……民の平和。そして外の海へ」

「外の海?」

「俺にとって天下統一は前半にしかない。後半は外の海へ進出する事だ」

「外の海に……」

「世界は広い。日ノ本の統一で満足していたら駄目だ。それにキリスト教の事もある」

「キリスト教? 彼等が何かあるのか?」

「……彼等の表の目的はキリスト教の布教だ。しかし裏の目的は違う」

「裏の……目的?」

「……日ノ本を南蛮の物にする事だ」

「……何?」

「奴等はキリスト教を布教させて国を取っていく。俺が仕入れた情報では既に外の国の多くが南蛮に占領されている。南蛮がよく漂着する九州ではよく人拐いがあるそうだ」

「人拐い……まさか!?」

「確信的な情報ではないがな」

「……信長はそれを知ってて天下を?」

「いや、あやつは知らんだろう。だが何れは知る」

「……怖いお人だ。何故そこまでして信長の裏になろうとする?」

「……今の世を治めるのは信長しかいない。三好だろうと足利だろうとな」

 

 信広はあえて長慶を挑発させる言葉を発するが、長慶は平然としていた。逆にクスクスと笑っている。

 

「近畿を治める三好に幕府の足利に喧嘩を売るとは……余程の馬鹿なのか」

「ククク、馬鹿で結構だ」

 

 信広はそう言って茶を飲む。

 

「……では戦は全力でやらねばならないな」

「元よりそのつもりだ。鬼十河やら松永がいるのは苦労する」

「フフ、その言葉はそっくり返そう。本多忠勝がいては一存も苦労するだろう」

 

 長慶はそう笑って立つ。

 

「行くのか?」

「今日は久秀の見舞いだ。長居をしていると久秀から病を貰うからな」

「あらあら」

「では信広殿。貴方と次に会うのは戦場になるだろう」

「あぁ。俺としては祝言の場で白無垢を着て俺の隣にいてほしいがな」

「な――!?」

 

 信広の言葉に長慶は急速に顔を赤く染める。

 

「ハッハッハ。してやったりとはこの事だな」

「~~失礼する」

 

 笑う信広に長慶は反論せずにその場を後にするのであった。

 

「……貴方って馬鹿?」

「馬鹿は余計だ」

 

 信広は久秀の言葉にそう言って茶菓子を口の中に放り込む。

 

「ま、私には関係ないわ」

 

 そう言って茶器を片付ける久秀。

 

「……南蛮の話は本当かしら?」

「俺の仕入れた情報が正しければな。だが人拐いは確かにあるらしい」

「……貴方ならどうする?」

「高札を出す。人身売買は我が領内において禁ずる。破る者は一族郎党なで斬りだ」

「織田家の領内に出てる高札じゃない」

「具申でもあるか?」

「無いわね。人拐い等は私の美に反するわ」

「お、おぅ」

「それで表向き降伏した私はどうなるのかしら?」

「……済まないんだが、三河に行ってほしい」

「三河に?」

「……三河で一向一揆が発生したんだ」

 

 三河の一向一揆は史実通り発生していた。(年数は違うが……)

 

「颯馬、数が多すぎるよ」

「落ち着いて下さい家康様。今は信長様に援軍を乞うのです」

 

 岡崎城では徳川家康(松平元康から改名)があたふたしているが、軍師の天城颯馬が冷静に指示を出していた。

 

「鎮圧のために家康が援軍を要請している。自由に動けるのは久秀しかいないんだ」

「……仕方ないわね。貸し一つよ」

「凄い貸し一つになりそうだ」

 

 信広は溜め息を吐いた。そして京に戻った信広は清水寺にてとある者と面会した。

 

「鈴木重秀です」

「織田二郎三郎信広だ。雑賀孫一とも聞いたが?」

「雑賀孫一は雑賀衆や雑賀党鈴木氏の棟梁や有力者が代々継承する名前です」

「そうか」

「書状にて内容を拝読しました。本願寺と手を切り織田と契約してほしいと……」

「雑賀の鉄砲の腕を見込んでの事だ。それに家臣にも取り立てる」

「!?」

 

 信広の家臣の言葉に重秀は目を見開いた。

 

「我々を家臣にして下さると!?」

「うむ。同じく根来衆もだが、それに家臣になってくれたらこの種子島をやろう」

「こ、これは……まさか!?」

 

 信広に渡された種子島を見て重秀は驚いた。織田軍が使用している魔改造されている種子島だったのだ。

 

「これを我々に……?」

「家臣になってくれればね」

「……他の者と話がしたい」

「良い返事を期待しています」

 

 紀伊国に戻った重秀は直ぐに他の有力者達と話し合い、織田家に仕官する事にした。また根来衆にも声をかけて根来衆も織田家に仕官する事になる。

 これにより本願寺の兵力は大幅に削れるのであった。

 

 

 




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