『信長の庶兄として頑張る』   作:零戦

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宗滴は責任感有りまくるだろうなあと思ってたらこうなっていた(白目


第二十八話

 

 

「側面を突かれたな久政め」

 

 浅井の状況を見ていた朝倉景健はそう呟いた。

 

「如何なさいますか殿?」

「如何も何も引き上げる。浅井に義理は無い、宗滴様も浅井が崩れたら逃げろと仰っていたからな」

「景健様、景紀様が参られました」

「通せ」

 

 程なくして宗滴の義弟の朝倉景紀がやってきた。(戦災孤児を宗滴が拾って育てていた)

 

「景健様、陣払いは完了しています」

「流石は宗滴様の義弟だな」

「いや、宗滴様には敵いませんよ。新八郎殿は?」

「先程撤退の伝令を出した。間もなく動くであろう」

 

 そして朝倉軍は対峙していた織田の別動隊である筒井順慶の部隊から離れていくのである。

 

「引きましたわね」

「ほんまですな」

 

 順慶の他に島左近もいたが、別動隊は五千しかいなかった。

 

「うちらはどうします?」

「朝倉軍の離脱を見届けてから本陣に加勢しますわ」

 

 万が一、朝倉に加勢されては困るからだ。そして朝倉軍の離脱を確認した順慶は信長隊と合流して浅井軍を攻撃するのである。

 

「織田軍の側面による攻撃で戦線が持ちませぬ!!」

「ぬぬぬ!?」

 

 伝令からの報告に久政は怒髪衝天する勢いだった。更に伝令から新たなる報告が舞い降りる。

 

「朝倉勢離脱していきます!!」

「な、何じゃと!?」

 

 朝倉軍の離脱に久政は茫然としていた。頼みではないが流れを変えれるとまでは思っていた朝倉軍がまさかの戦線離脱である。

 

「全軍に通達!! 直ちに小谷城へ引き上げるよ!!」

 

 茫然とする久政を尻目に長政は撤退の指示を出していた。久政は直ぐに我に返る。

 

「な、長政……」

「お父様、残念だけどこれまでだよ。小谷城へ撤退します」

「……分かった」

 

 長政の言葉に久政は渋々と頷き、浅井軍は敗走して小谷城へ目指す。しかし、小谷城の門は固く閉ざされていた。

 

「こ、これはどういう事じゃ継潤!!」

「見ての通りですよ久政様。某は既に織田へ降伏しています」

「な、内通していたと言うのか!?」

「その通りでございます。某の他にも朽木元綱殿、磯野員昌殿も降伏してございます」

「何じゃと!?」

 

 継潤が櫓を通して語る言葉に目を見開く久政。

 

「えぇい裏切り者めが!!」

「お父様、もうこれまでだよ。素直に織田に降伏しよう」

 

 怒り狂う久政に長政はそう告げる。しかし久政は拒絶した。

 

「黙れ長政!! 御主は儂の言う事を聞いておればよい!!」

「………」

 

 そう叫ぶ久政に長政は遂に決断した。

 

「皆、お父様を取り押さえて」

『御意』

「こ、これ!? 何をする貴様ら!!」

 

 久政は近習達に馬上から引き摺り降ろされた。

 

「長政!! 貴様……」

「黙れ浅井久政!! 貴方は浅井家当主ではない、浅井家当主はこのあたしだ!!」

「長政……」

 

 決断した長政に久政は何も言えなかった。それを見た継潤は素早く門を開けた。

 

「御無礼しました殿」

「良いよ継潤。それと悪いけど織田への使者を御願い。浅井家は織田家に降伏すると伝えて」

「御意」

 

 継潤は直ぐに信長の本陣の赴いた。

 

「そうか、浅井は降伏するか。なら横山城の攻撃も取り止めよう」

「は、ありがとうございます」

 

 この時、織田軍は丹羽長秀を総大将にした横山城攻略の部隊が横山城を包囲していたのだ。

 横山城も使者が赴き、城主の三田村国定、野村直隆、大野木秀俊らは降伏して開城するのであった。それを見届けた信長は小谷城へ入城した。

 

「浅井親子か」

「は」

「………」

 

 信長の問い掛けに長政は答えるが久政は無言だった。

 

「久政、貴様は竹生島で隠居していろ。長政、貴様の沙汰は追って知らせる佐和山城にて謹慎していろ」

「はは」

「……は」

 

 信長の言葉に両人は頭を下げた。その後、久政は長きに渡り竹生島で隠居生活を送る事になる。小谷城の浅井が降伏した事により朽木等も織田に降伏を打診して織田は北近江を完全に攻略したのである。

 

「浅井は降伏したみたいだね」

「えぇ」

「なら私達も降伏しよっか」

「……そんな簡単に言わないで下さい義景様」

 

 朝倉の居城である一乗谷城で義景は宗滴達重臣とそう話していた。

 

「でも宗滴は戦わないでしょ?」

「それはそうですが、家臣達の前でそうとやかく言うのはやめて下さい」

「うん、分かった」

 

 兎も角、朝倉は織田に頭を下げる事が決まり、使者として朝倉景紀が派遣されたのである。

 

「兄様、いつ朝倉と繋がりが?」

「アホ。流石に朝倉家との繋がりはない」

 

 信広は苦笑しながらそう返した。

 

「義景が来ないのはやはり一向衆か?」

「は、本来であれば義景様自ら上洛して信長様に面会すべきでありますが加賀国の一向衆がおります故……」

「……信広(人前では呼び捨て)、私の名代として越前に向かえ」

「御意(成る程、朝倉に恩を売るのか)」

「ありがとうございます(流石は信長か)」

 

 そして信広と朝倉景紀は越前へと向かうのである。無論、景紀は密かに宗滴に使者を出していた。

 

「……やられたな」

「どういう事宗滴?」

「本来、降伏するなら私と義景様が信長の元に赴くのです。ですが北には一向衆がいます。此方が動けば向こうも動く。そこで信長が我々に恩を売ったのです」

「恩?」

「来れない臣下の朝倉にわざわざ主君の信長が出向いたのです。素直に頭を下げるしかありません」

「良いんじゃない?」

 

 義景はあっけらかんにそう告げる。

 

「朝倉では織田には太刀打ち出来ない。まぁ加賀や若狭があっても負けは確定だけど、織田に痛撃を与えられたけどね」

「……その通りです(たまに鋭くなるのは良いが常にこうであってほしいものだ)」

 

 宗滴は内心、溜め息を吐くのである。そして一乗谷城に信広が訪れる。

 

「信広殿、越前までよくお越し下さった。私は朝倉太郎左衛門尉宗滴でございます」

「織田三郎五郎信広でございます」

 

 宗滴と信広が挨拶をする中、信広は宗滴が生きていた事に少々驚いていた。

 

(史実だと宗滴は桶狭間前に亡くなるけど、原作は女性だったな)

 

 そこへ義景が入室した。

 

「私が朝倉孫次郎義景です。信広殿、越前まで遠路遙々とお越し下さり感謝しています」

「いやいや、両家の発展のためなら何処へなりと某は参ります」

 

 そして和やかに会談をしていると義景がすくっと立ち上がる。

 

「信広殿、退屈してきたから蹴鞠でもしませんか?」

「……はぁ」

 

 にこやかに笑う義景に宗滴は溜め息を吐く。信広は義景の言葉に一瞬唖然とするが、苦笑した。

 

「分かりました義景殿。お付き合いしましょう」

 

 そして二人が庭で蹴鞠を始める。なお、蹴鞠とは簡単に言えば鹿皮製の鞠を一定の高さで蹴り続けてその回数を競う競技である。

 

「行きますよー信広殿!!」

 

 義景が鞠を蹴る。信広は鞠が地面に落ちる前に右足で鞠を蹴り、自分の目の高さまで上げるとそのまま五回ほどリフティングをして義景に向けて軽く蹴る。しかし、義景は信広の行為に唖然としていたため鞠が自身の胸に当たり地面に落ちた。

 

「義景殿……?」

「……凄いですよ信広殿!! まさか信広殿も蹴鞠を精通していたとは知りませんでしたよ!!」

「お、おぅ(前世でサッカーの授業時にリフティングの練習があったから出来たんだけどな)」

 

 義景が興奮しながら信広に歩み寄る。信広にしてみれば前世の学校でサッカーの授業時にリフティングの練習をしていたので言わば慣れていた。

 

「私も負けませんよー!!」

 

 そして義景が満足するまで信広達は蹴鞠をするのであった。

 

「信広殿、申し訳ありません」

「いやいや、気にしておりません。久しぶりに良い汗をかきました」

 

 夜、宛がわれた部屋で信広は宗滴から蹴鞠の件で謝罪を受けていた。

 

「(汗……そうだ)信広殿、汗をかいたのなら汗臭くなるでしょう。お風呂に入られては如何ですか?」

「そうですな」

 

 宗滴の言葉に信広は何も考えずにそう頷いた。なお、この時代の風呂は蒸し風呂(今で言うサウナであり、当時の風呂は蒸し風呂。当時の風呂は蒸し風呂と湯の二通りがあった)である。

 そして信広が蒸し風呂に入っていると笹の葉を手に持つ宗滴が入ってきた。

 

「そ、宗滴殿?」

「せ、せめての御詫びです……」

 

 風呂の湯気に当たったのかは分からないが顔を赤くする宗滴。なお、宗滴の状態は胸にサラシを巻いて褌を穿いていた。(信広は湯帷子を着用)信広は目のやり場に困りつつも風呂を楽しむ。

 しかし、宗滴は混乱していた。

 

(思わず朝倉の面目を潰すのはと思い行動したが……恥ずかしすぎる。それに信広殿の背中が大きく見える)

 

 宗滴はマジマジと信広の背中を見つめて頬が赤くなるのを感じる。既に室内の湯気で身体は熱くなっていたが更に熱くなる。宗滴は倒れそうになるが何とか踏ん張って笹の葉で垢を擦り落とすのであったが風呂を出た時点でのぼせており気を失ったのである。

 

「宗滴殿!? 誰かあるか!!」

 

 着替えた信広が一向に出てこない宗滴に不審に思い、中に入るとのぼせて倒れていた宗滴を発見した。信広は近習達を呼び、自身は手拭いを水に濡らして宗滴の首、脇の下、足を冷やす。そこへ近習達が何事かと駆けつけて宗滴を近習達に引き渡すのであった。

 

「申し訳ありませんでした」

 

 気が付いた宗滴は信広に再度謝るのであった。

 

 

 

 




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