織田家が天下統一を着々と進める中、他家ではどうだったであろうか。
南の九州では島津貴久は薩摩を統一後大隅にその手を伸ばしていた。島津にしてみればかの源頼朝より薩摩、大隅、日向の守護職に補任された経緯があるので旧領三州を取り戻すのは悲願である。
そんな貴久だが居城である清水城で駄々を捏ねていた。
「嫌だ嫌だ嫌だ!! 政務多すぎる、俺も皆と遊びたい!!」
「……お父さん、あまり皆を困らせないで下さい」
駄々を捏ねる貴久に歳久が溜め息を吐いてそう告げる。他の姉妹も貴久の駄々に少々飽きていた。
「仕方ないでしょお父さん。お父さんが島津の家督を継いでるんだから仕事が多いのは当たり前でしょ」
「それでも皆と遊びたい!!」
他国から怪力と称されるが内心はそう呼ばれるのを嫌がる義弘は貴久にそう言う。しかし貴久はそう言い返す。
「もうお父さんったら。あまり言うと私怒るわよ~」
「そうだよお父様。あたしも怒るよ」
長女義久と四女家久は貴久に最後通告をする。
「うん、俺が悪かった」
怒られると思った貴久は直ぐに機嫌を治して政務に取り掛かるのである。四姉妹はそれを離れたところから見て溜め息を吐く。
「お父さんも、もう少しちゃんとしてほしいなぁ」
「あらぁ、今のお父さんも良いけどね」
「……でも毎回駄々を捏ねるのは困ります」
「それはそうだね歳ちゃん」
四姉妹はそのように話していた。
「早く三州を戻して普通にしたいね」
「そう上手くいくかは分かりませんが……」
「義久姉様は何か案とかないの?」
「そうねぇ……」
家久からの問いに義久は幾分かは悩んだ。
「……やはり三州を取れる大義名分が必要でしょう」
「結局はそこに行き着くのよねぇ。でも今の幕府に力は無いわよ」
「いえ、幕府は最後の将軍義輝が返上しています」
「えェ!? 幕府無くなったの?」
「元から力無いから無くなっても良いんじゃない?」
何気に毒舌な家久である。
「そして今、中央にいるのは三好を撃ち破り吸収した織田家です」
「織田家?」
「はい、本拠地は尾張ですが駿河の今川を撃ち破ってからは調子が良いようです」
「ん~、ならその織田家に後ろ楯をしてもらおうかしら?」
義久は三人にそう告げる。
「でもその織田家って役に立つの?」
「織田家は対等な同盟として三河、越前としています。臣下のとして今川がいますし三好の大部分も吸収していますからかなりの大国は間違いないです」
「それなら良いんじゃないないかな?」
「そうしましょう」
こうして島津は織田家に後ろ楯としてもらうよう使者を送る。なお、見返りは砂糖とか珍しい物である。
そして肥前では龍造寺隆信がかつての主家である少弐氏を攻めてこれを滅ぼしていた。
「これで宿願とも言える肥前統一は出来たわね」
龍造寺隆信は居城佐賀龍造寺城(別名村中城)で家臣の龍造寺四天王と話していた。
「今は内政をして国力を整えるべきでしょう」
「そうですね~軽率に動けば身を滅ぼしかねないですね~」
龍造寺の知恵袋と称される鍋島直茂は隆信にそう具申する。同じく円城寺胤も慎重論を唱える。
「ま、それが妥当ね。それと龍造寺の肥前所有を正当化したいけど……」
「幕府が無くなったのが辛いですね」
「もー、足利の将軍も肥前を統一するまで待っててほしかったのに!! 織田家許すまじだわ!!」
「あいや暫く」
そう怒る隆信だが直茂が諫める。
「どうしたの直茂? 何か案でもあるの?」
「幕府が存在しない以上、龍造寺の正当化を出来るのは朝廷しかありません」
「朝廷……ねぇ」
「朝廷に力はありませんが権威はあります。此方から朝廷に献金をして殿の肥前守を認めてもらうのです」
「……その手があったわね。直茂、朝廷に使者の用意を頼むわ」
「御意。直ぐに取り掛かります」
「献金も此方が重すぎず軽すぎないように頼むわ」
「御意(織田家にも要請してもらうか)」
龍造寺も動き始めた。そして――。
「この九州の地に楽園を築きましょう」
豊後国の臼杵城で大友宗麟はそう宣言していた。大友氏は豊後は元より肥後の北部、豊前、筑前まで支配下としており九州統一は大友宗麟が一歩進んでいたに等しい。
そんな宗麟は端から溜め息を吐いているのが車椅子に座る立花道雪と高橋紹運である。
「……宗麟様には困ったものです」
「うむ……しかし気にしすぎては気が参るぞ道雪」
「分かっています。それと北部九州の動向ですが……」
「……爆発する可能性は大だ」
「……そうですか」
道雪は視線を誰かと話している宗麟に向ける。宗麟の前には一人の宣教師がいた。
「フロイス様、共に楽園を作りましょう」
「はいソーリン様」
ニコニコと頭を下げる宣教師ルイス・フロイスは誰にも気付かれないように口をうっすらと笑みを浮かべるのであった。
さて、九州はこのように九州三国志が着々と進む。対して四国も入り乱れていた。(中国地方は前回したので無い)
「んー」
「何してんだお嬢?」
伊予国の湯築城で河野氏の河野通直は唸っていた。
「ん? 伊予をどうするか悩んでるのよ」
「おいおい、お嬢が伊予を治めてるだろ?」
村上通康は悩んでいる通直に首を傾げる。
「今の現状じゃあ謀反が相次いでいるでしょ。何処かの勢力に保護をしてもらうか臣従するしかないわよ」
「それはそうだが……保護してもらうなら毛利か?」
「毛利は中国と博多以外に興味は無いわよ」
「じゃあ大友か?」
「私としては織田ね」
「ほぅ織田か……」
通直の言葉に通康は成る程と頷いた。
「三好の兵力も吸収しているし丁度良いと思うわ」
「成る程ねぇ。ま、俺はお嬢に従うだけだ」
通康はそう言うのであった。他の地域では関東だと一大勢力の北条早雲と常陸の佐竹義重、安房の里見義堯による三つ巴が展開されていた。
奥州では中陸奥にて伊達政宗が出てきたが相変わらずの合戦(プロレス)である。
「……なぁ兄様、九州の島津等から同盟や援助してほしいと要請来ているが……」
「ブッ!?」
岐阜城で久秀、長慶らと茶をしていた信広だったが信長の言葉に思わず茶を吹き出していた。
「汚いじゃない」
「おま、そんな事言って……いや、何か拭く物を……」
とりあえず畳を拭く信広である。そして場を整えると改めて信長に問う。
「それで九州の大名が支援を要請と?」
「最南端の島津、龍造寺だな」
「……島津は支援だな。龍造寺は……官位か」
「肥前所有の正当化を朝廷に認めてもらいたいのだろう」
「関白様に申し上げておく。それと島津の支援だが交易もするのだろう?」
「勿論だが……何かあるのか?」
「……島津に唐芋があれば欲しいと言ってくれ」
「カライモ? 何だそれは?」
「唐の食物だが美味しいとは聞いている。荒れた畑でもある程度の育てで収穫出来る代物だ」
「ふむ……それは凄いな」
信広の言葉に長慶は感心したように頷いた。
「でもそう簡単にくれるかしら?」
久秀がフフッと笑う。
「まぁ大丈夫だろう。無理なら商人経由からでも手に入れられると思うしな」
島津も了承して交易が始まり唐芋は苗の他に現物が唐経由で信広の元に届けられたのである。
「ほぅ、十もあるのか」
「それでどう食べるのだ?」
「焚き火が一番だな。とりあえず作るから」
信広は長秀らと共に枯れ枝や葉を集めて焚き火をして灰の中に芋を入れて葉っぱを乗せて更に焚き火を続ける。
「信広様、火攻めでもするのですか?」
「いや違うから」
鍛練から帰ってきた直虎にそう勘違いされる信広だったが何とか焼き芋が出来上がる。
「……ん。久しぶりに食べる焼き芋は格別だな」
信広は焼き芋を半分に折り、皮を剥いて一口食べる。口の中に甘い味が広がる。
「ほれ信長。熱いから気を付けてな」
「う、うむ……」
信広から焼き芋を貰った信長は息を飲むと焼き芋にかぶりつく。
「……美味い」
「な?」
「なら私も……」
「……私もね」
長慶や久秀達が次々と焼き芋にかぶりついていく。
「あ、あんまり食べ――」
信広が何かを言う前に焼き芋は全て信長達がペロリと食べてしまった。
「ん? 何か言ったか兄様?」
「……あまり食べ過ぎると太るんだが……」
『―――!?』
信広の言葉に信長達が驚愕の表情をすると信広や長秀を放っておいて話し合う。
「信長、何個食べた?」
「……三つだ。長慶は?」
「……二つ。美味しかったものだから……」
「とりあえず鍛練して余計な物を落とすべきね」
「そのようですね。私、もう一度鍛練しないと……」
そして信長達は武具を持って鍛練所に行くのであった。
「……女って行動が早いな」
「そのようですな」
後片付けをする信広と長秀であった。
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