『信長の庶兄として頑張る』   作:零戦

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遅くなりました


第三十一話

 さてさて、織田家ではその占領地域を拡げていた。三好三人衆は四万の兵力で阿波に上陸してあっという間に三好長治を駆逐して讃岐に追いやった。阿波は元々三好の勢力なので阿波の国人達はたちまちのうちに織田家に降伏したのである。

 また北の方角では丹波の波多野氏が織田家に降伏していた。光秀の調略によるおかげである。しかし丹後の一色は無視していたので波多野晴通を案内人として三万の軍勢が丹後を蹂躙した。

 

「軍律はしっかりと守るように。人を殺せば私自らはねます」

 

 総大将の光秀はそう言って軍律を徹底させた。そのおかげで丹後の人々が織田家に臣従する速度が早まる事になる。

 なお、一色義道は捕らわれたが近衛の口添えによる京に逃れた。これにより戦国大名としての一色氏は滅びたのである。

 

「一色の後は誰にするか……」

「現地では光秀の声が高いぞ」

「馬鹿を言うな兄様。光秀にそう簡単に国持ちには出来ん」

「………」

 

 信長の言葉に光秀は残念そうにするが信広は口添えをする。

 

「そういう意味ではないぞ光秀。信長にしてみたら小飼いのお前を遠い地に行かすのは嫌なんだよ」

「む、むぅ……」

 

 そう指摘された信長は光秀から目線をそらすが頬は赤かった。

 

「……ありがとうございます信長様」

「……うむ」

(……全く)

 

 微妙な立ち位置の信広だった。結局、話し合いの結果は柴田勝家を丹後の大名にする事だった。

 

「有り難き幸せ!!」

「あくまでも仮だ。粗方片付ければ別の場所を用意する」

「はは!!」

 

 信長の言葉に頭を下げる勝家だった。

 

 

 

 

「最近の織田は調子が良いようですね」

 

 甲斐国の躑躅ヶ崎館、甲斐を治める戦国大名である武田信玄は京から来た書状に微笑む。

 

「しかし殿、何故京の貴族が武田の書状を……」

「此処に連ねている貴族の者は織田を憎む者ばかりです」

「……まさか京の貴族どもは……」

「……どうやら私に信長を討てとの事です」

 

 山県昌景の言葉に信玄はそう言うと軍儀に参加している者達に緊張が走る。

 

「信長は悪政を敷いていると?」

「乱破の報告ではそのような事はないです。私に書状を送ったのは織田の支配を拒む者からですよ。どうやらこの人達は日ノ本が変わる事を良しとしないようです」

「……如何なさいますか?」

「……一度だけ貴族の思惑に乗りましょう。私としても計算外な事は起きていますから」

 

 桶狭間の後、信玄は義元亡き駿河を攻略しようとした。しかし、今川氏真が織田に降伏――臣下入り――した事により今川は兵力を武田に回す事が出来た。

 

「要注意は織田信広……ですね」

「何か言いましたか殿?」

「いえ、何でもありません」

 

 昌景の問いにそう答える信玄だった。さて、信玄にも目を付けられた信広であるが……。

 

「はぁ……」

 

 自室の部屋で裸になっていた。自室に敷かれた寝床には道三が信広と同じく裸で寝ている。二、三回戦程していた模様であった。

 

(最近、道三のアプローチが増えてるなぁ)

 

 初めて道三と夜を共にして以降は一週間に一回だったが最近は二日に一回と信広を求める道三だった。

 

(まぁ問題は無いかなぁ……)

 

 そう思う信広だったが足音が聞こえてきた。

 

「信広様、義輝様が稽古をしないかとの事です」

「な、直虎?」

 

 部屋の前に直虎が来た。

 

「?? どうかされましたか信広様? も、もしや敵の忍びが――」

「あ、馬鹿――」

 

 直虎は信広の言葉を遮り、勢いよく障子を開けた瞬間、信広を見て一瞬唖然とした後、急激に頬を赤めて悲鳴をあげようとしたが咄嗟に信広が手で口元を塞いで悲鳴は出なかった。

 

「……済まん、気を付けておけばよかった」

 

 信広の言葉に直虎はコクコクと頷いた。なお、急いで着替えたようである。

 

「……まぁ、内緒にしといてくれ」

「は、はい……」

「そんで義輝様か。行くか」

「………(背中、大きかった……)」

 

 信広は直虎と共に鍛練所に行くのであった。なお、直虎は終始無言だった。

 

 

 

「兄様、伊予の河野から伊予一国を条件で臣従したいと来た」

「……讃岐と土佐を攻略するからその兵を出したら認めるだな」

「それが妥当だろうな。四国を抑えれば九州や中国を牽制出来る」

「うむ。河野にはそう言おう」

 

 信長からの返書に河野通直は顔をほっこりとさせた。

 

「よし、これで河野は生き残れるわ」

「讃岐と土佐を攻めないとな」

「まぁそれくらいなら問題ないわね」

「後はお嬢の嫁入りだな」

「な――!?」

 

 村上の言葉に通直が顔を赤くする。

 

「な、何を言ってるのよ!! 私はまだ嫁にはいかないわよ!!」

「そう言うけど、そんなのあっという間に過ぎちまうよ。さっさと嫁入りするのが手だ」

「――もう!!」

 

 通直は顔を更に赤くしながらプンスカと怒るのであった。

 

(全くお嬢も強情だねぇ、先の一手を読まないと)

 

 通康は溜め息を吐いて南蛮人から貰った海賊船の船長が被る帽子を脱いでパタパタと扇ぐ。

 

(河野が生き残る事は確定したんだ。後は河野の血筋を引く子どもをお嬢が産んでもらわにゃあ困るんだ)

 

 通康は内心そう思う。

 

(出来れば織田家の誰かでもいい。信長を裏から支える信広でもな。やり方は少々あれだが信長を支えているのはそれだけ忠誠心があるからだ)

 

 四国にいる通康でも信広の事は耳に入っていた。

 

(お嬢を信広の正室でも側室にして織田家の中にジワジワと河野の影響力を増しらせるのも手だがやり過ぎるのは禁物だものなぁ。だが案外とお嬢と信広はお似合いかもしれんなぁ)

 

 通康はそんな事を思いながら思案するのであった。そんな事を思案させられていた信広はというと……。

 

「申し訳ありません信広様。雑賀の皆を止められなくて……」

「いや重秀が気にする事じゃない」

 

 信広は紀伊攻略の総大将として孝子峠を移動していた。そもそもの発端は雑賀衆の内部分裂だった。重秀が織田家に与したが雑賀衆の内部では反織田の者も多く、遂には土橋守重を筆頭に信長に反旗を翻して本願寺側に付いたのである。

 

「兄様、三万の軍を出すから雑賀衆とのけりをつけろ。他の者から援軍を出しても構わぬ」

「……御意」

 

 信広にしてみれば信広が雑賀衆を織田に与させたのでその責任を取れと信長の意思表示だった。信広は大和にいた筒井や島達にも兵七千を率いれ、更に河内飯盛山城にいた長慶ら兵六千も率いれて紀伊に進軍したのである。

 

「さて…… 頑張るか」

 

 信広はそう呟いた。

 

 

 




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