『信長の庶兄として頑張る』   作:零戦

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第四話(改訂)

 

 

 

 

 

「信広様、只今美濃より戻りました」

 

 夕餉の最中、美濃へ情報収集に行っていた飛龍が戻ってきた。

 

「うむ。飛龍は夕餉を食べたか? まだなら一緒に食べるか?」

「そ、そんな真に恐れ多き事です」

「そ、そうか? (未来のように普通に友人感覚で食事するのは難しいか。年が近いから良いと思ったが……まぁ無理に勧めるのは止めるか。信長達に衆道と思われるし……)なら報告を聞こう」

「は、美濃ですが日に日に斎藤道三と息子義龍との仲は悪くなっています。義龍側が兵を集めている情報もあり、恐らく戦が起きるかと……」

「近々か?」

「はい」

「……判った。一日の休みをやる。休み明けは再び美濃に行ってもらう」

「御意」

 

 そう言って飛龍が姿を消した。飛龍が姿を消すと信広は溜め息を吐いた。

 

「……長秀を呼べ」

「御意」

 

 控えていた近習にそう言って信広は急いで夕餉を済ませた。

 

「長秀、参りました」

「うむ。長秀、今から那古野に行くから支度しろ」

「い、今からですか?」

「あぁ、火急の件だ」

 

 驚く長秀を他所に信広は支度をして外に向かう。用意していた馬に乗り込み、長秀と共に那古野城へ向かった。

 

 

「信長はいるか!!」

「ちょ、ちょっと誰よあんた!!」

 

 那古野城に行き、城に入り信広が廊下で叫びながら歩いていると一人の女が叫んだ。足軽の鎧を着た女性だが、褌が見えている。

 

「信長は何処だ?」

「まずはあんたから名を言うべきじゃないかな?」

「こ、これ御主。此の方は……」

「構わん長秀。それは失礼した女。俺は織田信広だ」

「え、織田信広って……信長様の……」

「兄だ。庶兄だがな」

「ひえェ!? と、とんだ御無礼を!!」

「構わん。俺が先に名乗ってなかったのが良くない。長秀、今何かあったか?」

「さて、儂は何も見てませんぞ?」

「そういう事だ」

「は、はいぃ」

 

 ガタガタ震えている女性に信広はそう言った。

 

「兄様、サルに何をしているので?」

「ん、いたか信長」

 

 その時、騒ぎを聞き付けた信長が漸く来た。

 

「それよりも女子にサルというアダ名を付けるな。女でも可哀想だろ」

「私がどうしようと勝手だ。そいつはサルに似ておるしな」

「ふむ……」

 

 信広は視線をまだ震えている女性に向ける。

 

「……そんなにサルに似ているのか? 俺には綺麗な女にしか見えんがな」

「……へ?」

「ハハハ、そいつは私のお気に入りだからやれんぞ兄様」

「あのなぁ……まぁいい。信長、火急の件だ」

「……部屋に入れ」

 

 信長に促されて信広は一人で信長の部屋に入る。人払いのため部屋には二人しかいない。

 

「それで火急の件とは何か? まさか私に夜這いでもするのか?」

「ふん、俺からしてみれば信長もまだまだ子どもよ。それよりも……美濃で動乱が起きるかもしれん」

「……子細を」

「俺が雇った忍からの報告でな。斎藤道三と息子義龍の仲がここ最近悪いとの事だ。義龍側が兵を集めている情報もある」

「……蝮は勝てると思うか?」

「蝮に反感を持つ国人は多いと聞く。それに息子義龍はかつて美濃の守護大名土岐氏の血筋を組む者と噂がある。明日の光を見たいなら義龍側に手を貸すのが道理だろう」

「……そうか」

「だが持久戦に持ち込めば勝機もある」

「……我等が美濃に攻めこむか……」

「あぁ。道三殿には何処かの城で粘ってもらうか、もしくは命を助けるために俺の忍を使って救出して尾張に迎えるか……だな」

「……美濃への足掛かりは欲しい。尾張に迎えるのは粘るのが無理になった時だな」

「じゃあ道三殿は何処かの城で粘ってもらうしかないな。落城寸前に尾張に落ち延びさせるがいいな?」

「無論だ。私から蝮の一筆書いておこう。その方が蝮も判るだろう」

「判った」

 

 信長から書状を貰い、信広はとりあえずそのまま末森城に帰る事にした。

 そして二日後、信広は飛龍に信長の書状を持たせて使者として美濃に向かわせたのである。

 

 

 

「……そう、やはり戦になるのね」

 

 鷺山城で斎藤道三は使者の飛龍から信長の書状を渡され一目するとそう呟いた。その表情は悲しそうだったが飛龍は何も言わなかった。

 

「相判ったわ。持久戦の構えに移るけど、間に合わない場合は尾張に向かうわ」

「御意」

 

 飛龍は道三に頭を下げて部屋を退出した。

 

「……私も読みが甘かったのかもしれないわね」

 

 誰もいない部屋で道三はそう呟いた。翌日、道三は挙兵のために兵を集め始めた。

 しかし、義龍は道三の動きを読んでいた。道三の先手を打つ為に義龍は弟である斎藤義重、喜平次を稲葉山城に呼び寄せてこれを討ち取り頚を道三に送ったのである。

 先手を打たれた道三は無謀を承知で兵を挙げた。しかし義龍の周辺には約一万七千程の軍勢を揃っており、しかも義龍側には西美濃三人衆も加わっていた。

 

「年を取りすぎたかのぅ御袋殿。全軍出陣じゃ!! 鷺山城を御袋殿の墓場とするぞ!!」

 

 義龍は稲葉山城で挙兵し鷺山城へ進軍したが道三は間一髪で鷺山城を脱出した。

 

「………(史実と同じになるか……)撫子、済まぬが急ぎ美濃へ行き道三殿を救出せよ。飛龍も美濃へ行き義龍軍の後方を撹乱しつつ道三殿を救出の援護をするのだ」

「御意」

「私に任せろ」

 

 飛龍からの報告を聞いた信広は直ぐ様撫子と飛龍に指示を出す。

 

「長秀、兵を集めろ。美濃へ行き道三殿の撤退の援護をせねばならん」

「し、しかし信広様。勝手に兵を集めては、まず信長様に御報告を……」

「清洲には俺が行く。長秀は尾張美濃の国境に兵を置け。道三殿を討ちたい義龍が深追いをしてくるはずだ。そこを襲い掛かれ」

「……判りました。某、奮闘しましょう」

「頼むぞ」

 

 信広は直ぐに支度をして清洲に向かった。

 

 

 

「……そうか。だが私から全軍は出せんぞ」

「判っている。東には今川義元がいるからな」

 

 信長の本体が動けば駿河・遠江の今川義元が尾張に攻めてくるのは必須であった。故に信長は動こうとはしなかった。

 

「兄様、末森から何人出す気で?」

「末森の六百全員だ」

「心得た。此方はお慶と四百を出す」

「感謝する信長様」

 

 信広は信長に頭を下げて退出した。そして二刻が過ぎた時、慶次が軍勢を連れてきた。

 

「御待たせヒロちゃん」

「うむ、それなら行くか」

 

 信広と慶次、兵四百は清洲城を出撃して尾張美濃の国境へと向かった。国境に向かうと既に長秀の先発隊が布陣していた。

 

「長秀、様子は?」

「は、既に道三殿は保護してあります」

「何?(早くないか?)」

 

 長秀の言葉に驚いている信広を他所に長秀が道三殿を連れてきた。

 

「斎藤道三です。この度は真にありがとうございます」

「道三殿、楽にしてよろしい。堅苦しいのは抜きだ」

「……フフ、ありがとうね。貴方からの誘いが無ければ私は長良川で討死していたわね」

「命があって何よりです」

 

 道三殿はそう言って信広にウインクした。子を生んでいるはずなのに色気がある。

 

「(うむ……マジで可愛いよこの人。てか胸でかいよねぇ)道三殿を保護したならもうこの場所にいる必要はないな。直ぐに陣払いをする」

「御意」

 

 到着したばかりではあるが、道三を保護出来たので此処にいる理由は最早なかった。そして軍勢は清洲に戻り、そこで一晩泊まる事にした。

 

「はぁいヒロちゃん」

「ん? どうした慶次」

 

 信広がそろそろ寝るかと思い厠に行こうとして廊下を歩いていた時、慶次に声をかけられた。

 

「ヒロちゃんが溜まってないか来たのよ」

「お前な……」

「ヒロちゃんもそろそろ良い人を見つけないとね」

「煩い。信長を筆頭に問題児のお前らの面倒を誰が見んといけんのだ。それと誘うような格好をするな。他から見たら間違われるぞ」

「フフ、欲情したのかしら?」

 

 慶次が誘うように信広の背中に自分の胸を押しつけてきたので信広もムッとしてその誘いを乗る事にした。

 

「なら相手してくれるか?」

「え――きゃ!?」

 

 信広は慶次を咄嗟に抱き締めて唇と唇が当たる寸前まで近づける。

 

「ひ……ヒロちゃん……」

「……嘘だよ慶次」

 

 突然の事に顔を真っ赤にしている慶次に信広はニヤリと笑う。その表情はしてやったりというモノであった。

 

「カッカッカ、早く寝ろよ慶次(エロいなぁ慶次は)」

 

 信広はそう言って厠に行くのであった。そして信広が聞こえないところで慶次は「……熱くなったじゃないの」と言っていたらしい。

 それはさておき、尾張下四郡の支配者となった信長は次に定めたのは上四郡の支配者である織田信安であった。しかし、信安側で政変が起きていた。嫡男信賢が父信安を追放したのである。信安は以前から信長を警戒するあまり心労に陥り、それを見た信賢からも見放され遂には追放されたのである。

 それに伴い信賢は武具や兵糧の買い占めを行うが信長や信広による商業政策が効果を挙げてきた事で上手くいかなかったのである。

 

「おのれ信長め!! こうなったら早々に奴を討つぞ!!」

 

 信賢は早期決戦を決意、7月に浮野という地名において両軍は衝突する。後に『浮野の戦い』と呼ばれる戦いであった。

 

 

 

 

 

 




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