『信長の庶兄として頑張る』   作:零戦

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第五話(改訂)

 

 

 

 

 

 

 『浮野の戦い』は史実と同じく信長の軍勢は約2000の兵力、信賢の軍勢約3000の兵力で激突した。

 浮野周辺は元より尾張は基本的に平地であり伏兵を隠す場所は無かった。その為に両軍は正面からの激突だったのだ。

 しかしこの時、信賢軍には種子島は無かった。対して信長軍は種子島は元より改良型種子島(種子島改)を少なくとも100丁は装備しており信広の指揮下で射撃を行っていた。

 

「第八射、撃ェェェェェェ!!」

 

 この時、信広は30丁ずつの鉄砲組を編成し三段撃ちの試し撃ちをしていた。

 

「どうだ一巴?」

「は、思っていた以上の成果ですな!! この三段撃ちなら武田騎馬隊の突撃も防げるやもしれません!!」

 

 信長の火縄銃の師匠でもある橋本一巴は信広の問いに笑みを浮かべつつ種子島改の引き金を引くのである。

 

(よし、この戦いで上手く鉄砲隊を活用すれば一巴の討死も防げるわな)

 

 史実では橋本一巴はこの『浮野の戦い』に置いて信賢軍の弓の名手である林弥七郎と一騎討ちを演じて討死していた。しかし、信広が鉄砲隊を活用し射撃で信賢軍を翻弄していた事もあり今のところ一巴の討死フラグは無かったのだ。

 この三段撃ちもあり信賢軍は信長軍へ効果的な攻撃が出来なかった。それを見た信長は突撃を決断する。

 

「全隊、兄様の鉄砲隊による援護射撃の下で突撃するぞ!! 掛かれェェェェェェ!!」

『オオオォォォォォォォォォォ!!』

 

 約1600となっていた信長の軍勢だが士気は高く信賢軍約2500を押し返そうとする。

 

「このままでは……信賢様!?」

「何なのだ……何なのだ信長!? 貴様は一体……何者だ!?」

 

 軍の崩壊が止められない信賢は迫り来る信長軍を見て思わずそう叫ぶしかなかった。そうこうしているうちに北方から別の軍勢が出現したのである。

 

「我等は織田信清軍なり!! 我等は信長殿に加勢するぞォ!!」

『オオオォォォォォォォォォォ!!』

 

 現れたのは織田信清の軍勢1000であった。使い番からの報告に信賢は驚愕する。

 

(北の独立勢力の織田信清だと? 信長の味方になっていたのか!?)

 

 信長の本陣では使い番からの信清軍参戦の報に信長はニヤリと笑みを浮かべた。

 

「織田が織田の援軍を得て織田を倒す……まさに同族で争う尾張統一を象徴する戦だったな信賢……この『浮野の戦い』は我等の勝ちだ!!」

 

 信清軍1000が加わった事で形勢は信長の方に逆転した。信賢軍は完全に軍が崩壊し支離滅裂となり岩倉城へと退却するのである。

 

「だが追撃しようにも追撃出来る力は残っていない……今回は此処までだな」

「デアルカ」

 

 信広の言葉に信長もそう頷くしかない。軍を見渡しても誰も彼もが疲弊していたのだ。信長も岩倉城への攻撃は後日に行われる事になり、攻撃予定日に前田慶次が1200の兵力を率いて岩倉城を鹿垣(竹の柵)で包囲し信賢の降伏も時間の問題かと思われていた。

 しかし……織田一族の争いはまだ終わりを告げていなかったのである。

 

 

 

 

 

 

 

「その報告に間違いは無いな飛龍?」

「御意。織田信行様、側近の津々木蔵人に唆されて叛意は更に増すばかりであり信長様を討つ密談を行っている模様です」

「……馬鹿妹めが……ッ」

 

 飛龍の報告に信広は思わず扇子をバキッと折って折れた扇子は捨てた。

 

(だが……史実のように信行を殺せば……信長は心を病むな……)

 

 信広は深い溜め息を吐きつつ立ち上がる。

 

「飛龍、護衛を頼む」

「何処へ……?」

「勝家のところだ」

 

 飛龍の言葉に信広はそう答え、馬を用意して柴田勝家の屋敷に赴くのである。

 

『………………………』

 

 屋敷に着くと信広は勝家のところに案内されたが勝家の様子はどう見ても尋常では無い程焦っていた。

 

「どうした勝家? 顔色が悪いな?」

「………はっ……」

「……信行の謀反だろ?」

「ッ!?」

 

 信広の言葉に勝家はハッとし信広を見る。

 

「情報を仕入れた。信行が側近の津々木蔵人の言葉を聞き入れ謀反を企んでいるとな」

「……………申し訳ありません信広様!! 亡き大殿から信行様の教育係を任命され今日まで邁進してきたのに……更にはワシまで殺す計画を立てていた様子で……」

「……甘い香りを掻かされ過ぎたか信行……」

 

 大泣きする勝家に信広は溜め息を吐く。

 

「だが勝家、まだ活路はある」

「ッ!? 真ですか信広様!?」

「あぁ……少々手荒くなるがな……」

 

 そう言って信広はボソボソッと勝家に何かを言う。勝家は驚きながらも……やがては頷いたのである。その日の夜、信広は信長の清州城に戻り直ぐに状況を説明し信長も信行の叛意に激怒したが信広に全て任せる事にしたのである。

 それから数日後、信長が病に倒れ清州城にて養生しているとの情報が信行らの耳に入り信行らも重病なら好機と思い勝家の具申で一先ずは見舞いに行くという事になり信行、蔵人らが供として清州城に向かった。そして末森城の表門で見送った勝家は信行らが見えなくなると土下座をするのである。

 

「では殿の寝所には信行様のみで。御供の方は此方でお待ちを」

「分かったよ」

 

 信長の側近でもある池田恒興の言葉に信行は頷き蔵人らと別れて寝所に向かう。そして待機の部屋に待たされた蔵人らは突如後ろから開かれた襖の先に抜刀し待機していた森可成らによって討たれたのである。

 そうとも知らずに信行は信長の寝所に入った。

 

「御姉様、信行が見舞いに来たわ。具合はどうかしら?」

 

 布団を被っていた信長は起き上がりーーそこにいたのは秀吉だった。

 

「貴女……秀吉とか言うサル……まさかッ!?」

「そのまさかだ」

 

 襖が開かれ、中から出てきたのは信広であった。そして信行は不意を突かれ床に組み伏せられた。

 

「信行……蔵人に唆されたな」

「……何の事お兄様?」

「蔵人は討った。お前の他の取り巻きもな」

「蔵人を!?」

 

 信広の言葉に驚愕し信広を激しく睨み付ける信行。だが信広はそんな事は気にしなかった。

 

「信行、お前は親父殿の取り決めで決まった織田弾正忠家の当主信長に逆らい二度の叛意を露にした」

「…………………」

「信長はお前を討つつもりだったが俺の具申により命だけは免じる事になった」

「え……?」

「しかしだ……」

 

 不意に信行を抑えていた家臣達が退き、信広は信行の胸ぐらを掴む。

 

「ぐッ!?」

「今から仕置きだッ」

 

 そう言って信広は右手で信行の頬を平手打ちをする。しかも一回で終わらず何度も打つ続ける。

 

「ッ……ッ……」

「左頬が腫れてないな」

 

 信広はそう言って今度は左手での平手打ちを行う。その様子を見ていた秀吉でさえ「うわぁ………」とドン引きをしていた。そして両の頬を紅く腫らし涙を流す信行であったがまだ終わりは告げていなかった。

 

「次はケツな。秀吉、信行を抑えとけ」

「……本気ですか信広様?」

「本気じゃなかったら何もしないが?」

「デスヨネー」

 

 秀吉は冷や汗をかきつつ信行の身体を抑えて信広は信行の濃い赤色のスカートを捲り下着(パンツ)をもずらすと信行も抵抗する。

 

「やだやだやだァ!? お兄様、謝るから!? 謝るから下着をずらさないで!! 御姉様に謝るから!?」

「なら一度目の時に止めるんだったな!!」

「んきゃッ!?」

 

 そして信広が信行の尻を叩き出す。一回、二回と信行は喚くがそもそも両頬を平手打ちされている時点で正常な意識は低下しており十回も叩けば信行は気絶したのである。

 

「チッ、後二十は叩くつもりだったが……今回はこれで勘弁してやるか」

「信広様……もしかして信行様には……」

「恐怖を与えて反省だったわな。信長も身内には変に甘いし不器用だしな……誰かがこうやって怒ってやらんと信長も示しはつかんしな」

「そうだったんですね……」

 

 秀吉の言葉に信広はおーいてーと手を水桶に浸けて冷やす。そこへ勝家から情報を聞いた信長と信行の母である土田御前がやってきた。

 

「信行!?」

「気絶と腫れているだけですよ」

「信広殿……貴方という人は……ッ」

 

 睨み付ける土田御前であったが深く溜め息を吐く。

 

「いえ……筋違いですね……貴方は織田弾正忠家を守る為に当たり前の事をしたまで……悪いのは信行……そしてこの私です。信行、許しておくれ……」

(いや生きてるんですが……?)

 

 死んだ雰囲気になっているが一応重傷で生きてはいる信行であった。その後、別室で待機していた信長も気絶している信行にオロオロしていたが気絶から回復した信行に沙汰を申し付けた。

 

「再度与えていた末森城は没収。この清州城にて暫くは謹慎の上、飼い殺しとする。無論監視付きでな。監視の一人には母上、お願いしても宜しいか?」

「えぇ、勿論です信長」

 

 信長の問いに土田御前は頷く。その表情は今度こそ信行を守るという意思の現れであった。そして肝心の信行は信広に対してモノ凄い警戒心を露にしており信広もまぁ当然としており特に口を開く事はしなかった。

 信行は最後に信長に黙って頭を下げ土田御前と共に部屋を退出するのである。

 

「……嫌われたな兄様」

「構わん。最後に過ちを正してくれたら俺はそれで良いさ」

「ハハハ、それなら兄様も不器用だな」

「お前らに比べたら目茶苦茶マシだな!! 少し対話をしろ対話を!!」

「あたァ!?」

 

 信広をからかう信長であったが信広に手痛い拳骨を喰らうのであった。それから2ヶ月後、岩倉城に籠城していた織田信賢も降伏、これにより尾張は信長によって尾張統一を果たすのであった。

 しかし、尾張を統一しても尾張の四方は敵だらけなのは言うまでもなかったのである。

 

「尾張はうつけが統一したかの……まぁ構わぬ。尾張攻略の際は一思いに踏み潰してくれるわッ。ハッハッハ……」

 

 海道一の弓取りである今川義元は今川館で報告を受け豪快に笑うのであった。そして清州城では軍儀が開かれていた。

 

「美濃を取る」

「それは分かっている。だが、犬山の信清がこのところ小賢しいぞ」

「……信賢の旧領地か」

 

 信長と信清は追放した織田信賢の旧領地の分与を巡って争いが起きていた。信清の軍勢が楽田城を落としたのもそれが一因であった。

 

「……先に信清を片付けるか。義龍が信清と手を結ぶ可能性もある」

「だな」

「それと道三の生存発表だが……」

「今川を片付けてからだな」

 

 信広の言葉に信長はピクリと眉を潜める。

 

「……今川が来ると?」

「うつけが治める尾張を今川が取る……そういう風評を駿河と遠江に流している。家臣から押し上げられたら義元も尾張に来るだろ」

「デアルカ」

 

 信広の言葉に信長はニヤリと笑みを浮かべる。二人は初めから今川を尾張で討つつもりである。

 

「義元を討つ場所は決めておるのか?」

「ある程度はな……だが決定的では無いがな」

「フム……兄様に任せよう」

「御意」

 

 共にニヤリと笑みを浮かべつつ信広は頭を下げるのであった。

 

 

 

 

 

 

 




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