『信長の庶兄として頑張る』   作:零戦

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第六話(改訂)

 

 

 

 

 

「兄様、京へ上洛するぞ」

「……尾張の軍勢は弱小って知っているか信長?」

「違う、大軍を率いてではない。軍勢は百人程で将軍義輝と謁見するのだ」

 

 五日後、清洲に呼ばれた信広にいきなり言ったのだ。なお史実での信長の上洛は永禄二年(1559年)と永禄十一年(1568年)である。

 

「だが何故上洛を?」

「なに、剣豪将軍と唄われた義輝がどのような者か見たいのもあるが……諸国の牽制も兼ねている」

「……弱小の尾張でもやろうと思えば上洛は出来る……と?」

「そのようなものだな」

「ふむ、それで将軍に土産は?」

「銭三千貫、金五十枚、銀三十枚だが……」

「……銭をもう千貫と金銀三十枚を用意出来ないか?」

「フム……それくらいなら用意は出来る。が、それを何に使うのだ?」

「お前を天下取りにするためだ。と言ったら許してくれるか?」

「……アッハッハッハッハ!! 分かった兄様、銭はもう千貫追加して二千貫まで用意する。何せ硝石の銭を他に回せるおかげである程度は楽だからな。後は兄様の腕次第よ」

「……真に感謝します信長様(工作で色々と他にも用意するか)」

 

 そして信広をも加えた上洛一行は三日後に清洲を出立した。その間に尾張を纏めるのは慶次と長秀だ。京へ到着したのは尾張を出立して二週間が過ぎていた頃であった。

 

「……二条御所で謁見じゃなくて斯波家の邸宅か……」

 

 史実でも義輝は斯波家の邸宅を改修して住んでいたみたいである。

 

「織田上総介信長、堅苦しい事は言わん。此度の上洛は何じゃ?」

「……将軍家を助けるためでございます」

「嘘をつくのは良くないのぅ上総介。クハハハ、まぁ表向きはそうしておくのじゃ」

「………」

 

 義輝と謁見が終わった信長が酷く疲れていたのは信広も少々驚いていた。

 

「大丈夫か信長?」

「あぁ……兄様……義輝様の殺気は生きた心地がせん」

「……まぁ今の将軍は塚原ト伝から指導を受けていた一人だからな(多分俺だったらチビりそうだわ)」

「私は京見物をするが兄様はどうするのだ?」

「俺は少し用事がある」

「うむ」

 

 信広は信長と分かれると数人の供を連れてある屋敷に赴いた。

 

「織田三郎五郎信広です」

「ふむ……尾張のうつけと称する兄かのぅ」

 

 信広は関白である近衛前嗣(後の近衛前久)と謁見していた。

 

「して麻呂に何用でおじゃるかな?」

「……銭二千貫、金銀三十枚、米と麦を各三十石を近衛家に寄付致します」

「……織田の後ろ楯が欲しい……かの?」

「その通りでござる。何せ東には東海一の弓取りである今川義元がいますので……」

「ふむ……あい分かった。うつけ殿に伝えてほしい。困った事があれば協力するとな。あぁそれと尾張守を正式に名乗られよ。斯波家は京におるのじゃ、もはや斯波家に尾張を統治する力は無い。そこのところは麻呂に任せるのじゃ」

「は、感謝します近衛様。それと寄付も少量ですが……」

「うむ、期待するでおじゃ(しかし織田信広かや……この繋がりは逃すわけには行かぬでおじゃるな。めぼしい娘を信広に嫁がせて織田家の仲介役になれば……)」

 

 とりあえず関白との謁見は無事に終わったのである。貴族は今でこそ権威を失いつつあるがまだその影響力はあるところはあるのだ。しかし、信広の用事はまだ終わりではない。

 

「済まんがもう一件行く」

「御意」

 

 供にそう言って信広は別の屋敷に向かう。

 

「織田三郎五郎信広です」

「細川藤孝です。して何用ですか?」

 

 挨拶をする二人。細川藤孝は史実でも足利義昭を支えた人物の一人である。その細川藤孝に信広は用があった。

 

「今から言うのは某の独り言です」

「独り言……?」

「……三好長慶の家臣である松永久秀……何かと危ない輩のようです。松永は平気で人々を驚かせる暗殺をするかもしれません」

「……それは……まさか……!?」

「あぁ、今のは某の独り言ですからな。最近惚けがありましてなぁ。細川殿は何か聞きましたか?」

「……いえ、何も聞いてません」

「さて、お茶も馳走になりましたので此れにて。今度は茶の作法を習いたいですな」

 

 信広はそう言って細川殿に頭を下げて立ち上がり部屋を後にした。

 

「……ありがとうございました」

 

 部屋を出る時に細川殿はそう言った気がした。そして信長一行は京から尾張へ戻るのであった。

 

 

 

「道三殿の服装が助平だと?」

「儂はそう思いませぬが、下の者には溜まる服装でしょうなぁ」

 

 長秀は苦笑しながらそう言う。

 

「(まぁあの服装はエロいと思うがな。)まぁ道三殿はな……。成る程、そうなれば……兵達のために欲求を吐き出す部屋を作るか」

「どうなさるので?」

「戦で夫を失った未亡人を主に集めて小屋を作る」

 

 ぶっちゃけて言えば慰安所である。千歯こきで未亡人がする役目が無くなったから農村では多数の未亡人が暇になってるらしい。一応、蚕の養殖とか養鶏、養豚等を信広の居城である末森城(信行から取り上げ、再度信広に渡した)周辺の農村で行うようにしているがまだ尾張全土での普及は遅かった。

 

「それと小屋の掃除等は徹底的に行え。両方が病になったら洒落ならんからな」

「兵は欲求を吐き出して女性は代わりにカネを受け取る……ですか」

「それで構わないなら雇え。無理なら別の方向を考える(相手の意見は尊重しないとな。後々五月蝿くなりそうだしな……)」

 

 

 

 

 

 

 そして季節は初夏、信広は清洲城に来ていた。清洲城に呼ばれたのは信長から火急の件と言われたからである。

 

(……まさか桶狭間か? だがそうであれば時期は符合するわな……)

 

 信広はそう思いつつ評定に参加した。

 

「皆に集まってもらったのは他でもない。遠江、駿河に潜らせた者から今川が米や武具の購入が激しいと報告してきた」

「……ではいよいよ今川義元が京へ上洛すると?」

「恐らくはな」

「しかしこれは由々しき事態ですぞ信長様。直ぐに兵を……」

「分かっておるわ鬼五郎左。直ぐに兵を集めよ!!」

 

 こうして信長の号令で戦の準備が始まった。

 

「今川の目的はまず、鳴海城と大高城を奪回するはず。そのため鳴海城周辺には丹下、善照寺、中嶋砦を大高城周辺には丸根、鷲津砦を築いて相互の連絡を遮断している。丸根砦には佐久間盛重と兵五百、鷲津砦には兵三百が入っている。善照寺砦には佐久間信盛と兵三百、中嶋砦には梶川高秀と兵三百五十、丹下砦には水野帯刀と兵三百がおりまする」

「では信長様の本隊にいるのは……」

「約二千になりまする」

「二千では戦になりませんぞ!!」

 

 長秀がそう言ってくる。確かに僅か二千だけで今川に太刀打ち出来ないのは確かであろう。

 

「ならばやる事はただ一つ……そうだろう信長?」

「……奇襲しかないな」

 

 信広の問いに信長はニヤリと笑う。

 

「では何処で……?」

「それは長秀や兄様にも教えられんな。今川の物見が紛れ込んでるかもしれんしな」

「……あい分かった。信長に秘策有りならそれに従うまで」

「その通りです」

 

 そこで軍儀は終わったが信広は信長に呼ばれて信長の自室に赴いた。

 

「兄様、暫くは私と共に行動してくれ」

「……兵力の集中的運用するためか?」

「今回は織田家の命運をかけた戦。兵力は予め私のところに集めておきたい」

「……分かった。勝家達にも伝えておく」

 

 こうして信広は末森城に戻らず清洲で暫く寝泊まりをする事になった。

 

「信広様、こんな部屋で良いのですか?」

「構わんよ藤吉郎。寝れば十分だ」

 

 信広は藤吉郎に連れられて小さい部屋に入っていた。畳四、五畳くらいの小さな部屋である。

 

「何かあれば知らせます」

「あい分かった」

 

 藤吉郎が出た……と思ったら数分すると信長が入ってきた。

 

「……添い寝してくれ」

「……はいはい」

 

 そう言って信広と信長は背中合わせで寝る事にした。

 

(断ったら多分殺されるしな)

 

 そう思った信広だったが、密着してふと気付くと信長の身体が震えていた。

 

「……なぁ兄様、勝てると思うか?」

 

 布団に潜り込んだ信長が信広にそう聞いてきた。その声は普段より小さき声だった。

 

「……大丈夫だ吉。お前なら勝てる」

 

 振り返った信広はそう言って信長の頭を撫でる。信長は信広に撫でられて一瞬だけ嬉しそうな表情をしたが信広と視線が合うといつものキリッとした表情になる。

 

「……撫でるな馬鹿者」

(そう言うけど、嬉しそうですよね? まぁ良いか)

 

 その後、大の字で寝ている信長の脚が信広の脇腹に直撃して悶絶したが、翌日の信長の表情はイキイキとしていたのは言うまでもない。

 

 

 

 

 

 

      おまけ

 

 

 

「今日のノブちゃんは嬉しそうね。何か良いことでもあったの?」

「まぁ……良いことがあったな」

 

 慶治の指摘に笑う信長。

 

「それじゃあヒロちゃんとヤれたって事かしら?」

 

 ニヤニヤする慶治だったが、対して信長の表情は暗かった。

 

「……まさかヒロちゃん……」

「……添い寝だけで手を出してくれなかった。どうしようお慶?」

「……まさか長秀とそういう関係じゃあ……」

「よし、長秀は切腹とする」

「それは本気で止めなさいノブちゃん」

「でも……頭撫でられた」

(脈あり……かもね)

 

 二人の間でそのような会話があったような。

 

 

 

 

 

 




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