『信長の庶兄として頑張る』   作:零戦

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第十二話(改訂)

 

 

 

 

 

 

「……美濃にも硝石丘作るか」

 

 道三達(序でに直虎も)を直臣にしてから数日後、昼餉を食べている時に信広はふとそう思い付いた。

 

「直ぐに長秀を呼んでこい」

「(また何かする気ですか……)御意」

 

 信広は近習にそう言って味噌汁を口に付けた。程なく長秀が来た。

 

「御呼びですか?」

「おぅ、いきなりだが美濃にも硝石丘作るから」

「……本当になさるのですか? 確かに美濃は織田の支配下になりましたが……まだ織田家に良い顔をしていない国人もいますし……」

「構わん。何れ鉄砲が全国に普及すれば硝石は全国規模で作られる。なら織田が先取りして作っても構わんだろう(白川郷・五箇山の合掌造り集落とか有名だからな)」

 

 信広はそう思い美濃にも硝石丘を作る事にした。

 

「とりあえず五ヶ所程硝石を作る場所にする。そこは関係者以外は立ち入り禁止にしておく」

「その方が宜しいですな。もし他国に漏れたりすればかなりの危険です(……つい最近まで敵国だった美濃にもう硝石丘を作るとは……恐ろしい人だ)」

 

 長秀は内心、信広を怖れた。もし、信広が今川や武田にいれば織田など一捻りだったに違いない。だが信広は織田の陣営にいる。なら長秀が行う事はただ一つのみ。

 

(……全力で信広様を補佐するのが某の役目。この命、信広様の為に使うまでよ……)

 

 長秀はそう決断していた。なお、信広は長秀の変化に気付かずに導火線の製造も考えていたりする。

 兎も角、改めて長秀は終生信広に忠誠を誓うのであった。

 

「お久しぶりです信広様」

「おぉ、田吾作殿か」

 

 ある日、面会者がいるとの事で向かうと元忍びである田吾作がいた。

 

「今日参ったのは千歯扱きの事です」

「おぅ、どうであった?」

「かなりの物です。おかげで収穫は早くに終わり、くの一を筆頭に修行をより良く励めました」

「そうか、それは良かった」

「それでその御礼としまして信広様に忍を提供したいと思います」

「何と、それは真か田吾作殿?」

「真であります」

「それは有り難いぞ田吾作殿」

 

 信広は思わず田吾作殿に近寄り握手をした。それほどの事だ。

 

「あ、ありがとうございます信広様。これ、お前達」

『はッ』

 

 田吾作殿が手を叩くと五人の忍(男三人、女二人)が現れた。

 

「この五人は今日より信広様の忍でございます。飛龍と同様に御使い下さい」

「それはそれは……真に感謝します田吾作殿。そうだ此方も御礼として備中鍬を差し上げます。是非御使い下さい」

「ほぅ、信広様の事ですからかなりの物でしょうな」

「ハハハ、千歯扱きにも負けぬ代物です」

 

 信広も御礼に備中鍬を差し上げた。田吾作殿が喜んだのは勿論の事だ。

 なお、後に伊賀は織田家の攻略対象になるが信広が信長に口添えをした事により攻略は回避され、信広が交渉に赴き伊賀はその後直ぐに降伏。織田家の特別直轄地になる。それと五人の名前は佐助、烈風、彗星、紫、霊夢である。……なお、紫と霊夢は大きい、何が大きいかは自分で調べてくれ。

 

「とりあえず撫子を隊長にした忍軍団を結成だな。七人だけど」

「七人なれど我々は千の兵に匹敵します」

「良し、ならば俺にその力を見せてくれ」

『御意』

 

 七人は信広に頭を下げるのであった。

 

「あ、それと撫子は次期風魔小太郎とまで言われてるから稽古してもらえば?」

「ほぅ、それは是非ともお願い致します」

「私、新しい子猫ちゃんを見つけようとしたのに……」

 

 それから暫くのち、信広は岐阜城に赴いたが信長の表情は怒っていた。

 

「美濃に硝石丘作るなら私に言え」

「……忘れてた」

 

 いきなり機嫌が悪い信長を宥めるのに一刻掛かった。

 

「それで……火急の件とは?」

「……将軍義輝が行方不明と聞いているな?」

「無論だが……まさか見つかったのか?」

 

 信広の問いに信長は頷いた。あの京の都からよく脱出出来たものである。

 

「して場所は?」

「今は越前の朝倉に逗留中との事だ。そして義輝から使者が来た。京に上洛して幕府復興の手助けをしてほしいとな」

「……京へ行く大義名分は出来たが……最早室町幕府は機能してないぞ。義輝はそれを理解しているのか?」

「義輝も分かっていると思うがそれでも……一分の望みをかけてる……のが妥当だろう」

 

 信長はそう言っていつの間にか信広の後ろに回って腰を降ろして背互いに中合わせをしている。信長の呼吸が余計に聞こえる。

 

「……兄様、上洛出来ると思うか? 畿内には三好長慶の三好家がいる。それに摂津は本願寺もいる……兄様の正直な意見が欲しい」

「……難しいところだな。唯一此方で有利なのは季節関係無く兵を出せる事だし」

「……そうか」

「それか早めに近江を取って三好を牽制するかだな」

「南北どちらだ?」

「早めに南でゆっくりと北だな。案外三好と六角が手を結びそうな気配だ」

「……あい分かった。その方向で行こう」

「……考えなくて良いのか?」

「サルの半兵衛もそう言うだろう」

 

 史実だと信長は北近江の浅井長政に妹の市を嫁に出して同盟を組んで南近江の六角氏を攻めた。だが、松平、今川を傘下にしている時点で余力は十分にあるので浅井と手を結ぶという利用価値は低かった。

 

(……この世界だと浅井攻めは別に構わんな。長政は女みたいだし同盟をするメリットはあまり無いしな……)

 

「兄様は浅井の処置を任せる。私は六角を攻める」

「二方面作戦か……」

 

 史実のミッドウェー海戦みたいだが……まぁ失敗はしないだろうと信広はそう認識した。なお上杉や武田は相変わらず川中島で戦っている。

 

「……承知した。浅井は任せろ、六角は任したぞ信長」

 

 信広はそう言って信長の頭を撫でる。撫でられた信長は一瞬、嬉しそうな表情をしたが直ぐにいつもの表情に切り替えた。

 

「……撫でるな馬鹿者」

(そう言うが信長さんや。貴女のアホ毛がブンブンと回ってますが何か? ……まぁ追求したら怒りそうだから止めとくか)

 

 そう思う信広であった。

 

 

 

「お久しぶりです信広様」

「おぅ、納屋の者か」

 

 岐阜城の一角で信広は津島の商人と再会していた。この商人、カネになりそうな噂を聞き付ければ何処にでも駆けつける御仁であったりする。

 

「信広様に指示されていた大陸で手に入れたモノです」

「あったか」

 

 商人が差し出した茎を見て信広はニヤリと笑う。

 

「大陸まで済まなかったな」

「いえいえ、面白い体験でしたよ。しかし、その茎は一体……」

「この茎を植え、塊根は喰えるんだ。しかも痩せ干せた土地でも収穫は可能だ」

「ほぅ……それはそれは……」

「場合によってはこれを元に酒をも製造可能だ」

「ほぅ……」

 

 信広の言葉に納屋は目を細くする。脳内で試算をしているのだろう。

 

「まぁまだ栽培するところからだな」

「成る程……」

「無論……納屋にも一枚噛ませてもらう」

「ほぅ……楽しみにしておきますよ」

 

 信広の言葉に商人は笑みを浮かべるのである。後に茎ーー甘薯又はサツマイモは織田家の領地で栽培され織田家の糧食を増強させるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――おまけーね――

 

「私に言わんでどうする?」

「済まん信長。御詫びに何かしてあげるが……」

「御詫び……」

 

 そう言って信長が信広の膝に乗って身体を預けてきた。

 

「……信長さんや?」

「これが罰だ。暫くそうしてるんだな」

 

 そっぽ向く信長だった。そうされては信広も動けようがなく時折、信長の頭を撫でたりするのである。

 

「う~狡いですよ信広様ぁ~」

 

 少しだけ開いた襖から藤吉郎が涙を流しながら見ているのであった。

 

 

 

 

 

 




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