『信長の庶兄として頑張る』   作:零戦

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第十四話(改訂)

 

 

 

 

 

 

「ようこそ浅井軍、そしてさようなら」

 

 信広はニヤリと笑い、傍らにいた忠勝に視線を移す。忠勝もまだ暴れ足りないのか自身の得物である『蜻蛉切』をブンブンと回してムフーと息を吐いていた。

 

「忠勝、武士の情けだ。浅井軍のトドメを刺してやれ」

「御意でござる。本多隊突撃でござる!!」

『オオオォォォォォォッ!!』

『 突 撃 』

 

 そして忠勝が本多隊を率いて浅井軍に突撃していく。

 

「さて……後は殲滅されるだけだぞ浅井軍?(急に作った釣り野伏せだが皆がちゃんと動いてくれてるから一安心だけどな。いやいや流石は有名な武将達だよ……)」

 

 

 

 

 

 

「浅井軍には武を自慢する者はおらぬでござるか!! この本多忠勝が御相手致すでござる!!」

 

 忠勝がそう叫びながら得物である『蜻蛉切』を振り回しながら浅井軍の足軽の首を刈り取る。刈り取られた首無しの死体は傷口から血が噴水のように噴き出しつつ重力に引かれて地面に倒れる。

 血はドクドクと流れて地面を染みさせ地面の色を変えていく。

 

「ば、化け物だ……」

 

 忠勝の行為に浅井軍の足軽達は腰を抜かしていた。あまりの出来事に失禁している者さえいる。

 

「う、狼狽えるな!! あやつを囲み一斉に襲いかかれ!! 数で挑めば勝てる!!」

『オ、オオォォォーーーッ!!』

「……ハアァァァァァーーーッ!!」

『ギャアアアアァァァァァァァァッ!?』

 

 足軽大将の言葉に足軽達は忠勝の周りを囲み襲い掛かる。しかし忠勝はただ一振りで足軽達を薙ぎ倒した。

 

「……それだけでござるか?」

「ヒイィィィ!?」

「な、なんて奴だ……化け物だ逃げろ!!」

「逃げるが勝ちだ!!」

「こら!! 逃げるな!! 逃げる奴はころ――ぐぇ!?」

 

 忠勝に恐怖した足軽達が足軽大将の言うことを聞かずに逃げ出していく。足軽大将達は必死に止めようとするが逆に逃げるのに邪魔をされたと思い、逃走する足軽達に討ち取られたりしている。

 

「他にこの忠勝を相手にする者はおらぬのでござるか!?」

「この海北綱親が御相手致すぞ!!」

「それは感謝致すでござる」

 

 そこへ副将の海北綱親が現れて忠勝に斬りかかる。

 

「おりゃァ!!」

「ふん、その程度でござるか!!」

 

 一合目は忠勝が海北の槍を避け、二合目で忠勝の槍――『蜻蛉切』が海北の首と胴を離れさせた。首が無くなった海北は後ろめに倒れて馬から落馬した。

 

「敵将海北綱親、本多忠勝が討ち取ったでござる!!」

 

 

 

 

 

 

 

 忠勝の怒号は戦場に響いた。副将を討ち取られた浅井軍の様子が慌ただしくなってきた。

 

「員昌様、このままでは……」

「……くそ!! 全軍引けェ!! 引くのだ!!」

 

 浅井軍が死地を脱出しようともがいでいる。しかし一人、また一人と倒れていき浅井軍はその数を減らしていく。

 

「磯野殿は早く佐和山城へ!! あたしが囮となります!!」

「……済まぬ藤堂!! 一点集中の血路を開け!!」

 

 磯野は近習や残存兵と共に何とか血路を開いて佐和山城へ向かい出す。残ったのは藤堂以下直率数百の兵である。

 

「これだけか……」

「は、残りは遁走を……」

「構わん、これだけいれば十分だ。者共、突撃する!! 狙うは織田信広の頸のみだ!!」

『オオォォォーーーッ!!』

 

 藤堂以下の兵達は雄叫びをあげて信広の陣営に突撃を敢行した。

 

 

 

 

 

 

「敵の殿が突撃してきます!!」

「信広、逃げた方がいいぞッ」

「構うな直虎!! 鉄砲隊は射撃しろ!! それと忠勝はどうした!?」

「逃げる浅井兵を追い掛けています!!」

「直ぐに呼び戻せ!!」

 

 十数人の鉄砲隊が射撃してくれるが数人の騎馬武者を転がすのみだった。後は突撃してくる浅井軍と衝突した。

 

「そこにいるのは敵将織田信広とお見受け致す!! あたしは浅井家家臣藤堂高虎也!! その頸頂戴致す!!」

「信広には触れさせはせんぞ!!」

「行くな直虎!!」

 

 隣にいた直虎が鉄の棍棒を持ちながら馬を走らせて藤堂に向かう。信広が止めようとするが直虎は聞く耳を持たない。

 

「貴様に用には無い!!」

「そうはいくか!!」

 

 藤堂と直虎は斬り合いをする。が、その横を藤堂の殿隊が突撃する。

 

「し、しまっーー」

「そこォッ!!」

「ウォ!?」

「直虎様!!」

 

 藤堂が不意を突いて直虎を落馬させ、直虎の家の者が直ぐに直虎を助ける。

 

「おりゃァ!!」

 

 そして信広までの道が開いたと判断した藤堂が信広に槍を投擲した。

 

(投げた!? イヤイヤヤバいヤバいヤバい!!)

「信広君!!」

 

 そこへ撫子が苦無で槍を叩き落とした。

 

「済まぬ撫子(マジで助かった……)」

「ちぃ、ならば!!」

「む」

 

 そして藤堂が抜刀したのを視認した信広も咄嗟に太刀を抜刀した。藤堂が馬を走らせて信広に斬りかかろうとするが信広は太刀で受け止めて鍔迫り合いとなる。

 

「ぐ……」

「ぐぐ……」

「(予想以上に藤堂の力が強い……だけどなァ!!)負けて……たまるかァ!!」

「く!!」

「信広君!!」

 

 何とか力を振り絞って押し返した。そこへ撫子がまた加勢して苦無を投げた。投擲した苦無は藤堂の太刀を折れさせる事に成功した。

 

「………はぁ」

 

 折れた太刀を見た藤堂は深い溜め息を吐くと納刀して馬を降り地面に座り込んだ。

 

「些か邪魔が入ったがあたしの負けだ。好きに頸でも討つといい」

「……捕縛しろ」

 

 信広の言葉に足軽達が直ぐに藤堂を縄で捕縛した。

 

「信広君、勝負の邪魔をして済まないね。でも信広君が死ねば……」

「いや、良くやったよ撫子。あのままだと俺は死んでた。助けてくれてありがとう撫子(流石忍、次の給料は上げておこう)」

 

 信広はそう言って撫子を褒めた。

 

「……褒めてくれるなら俸禄を上げてくれないか?」

「……また借金か?」

「紫達からのだよ……」

(……前言撤回しようかな……)

 

 信広は深い溜め息を吐いたのであった。

 

「それより敵はどうした?」

「は、方角からして佐和山城へ逃げたと思われます」

「……道三殿達と合流して佐和山城へ向かい包囲する。包囲してから改めて軍使を出すか」

「もう一度降伏を促すのですか?」

 

 直虎が驚いた表情をして信広を見ている。

 

「城を無駄に破壊したくないし無駄な血を流したくないんだ(戦後を考えると優しくしないと……)」

「………(優しいのか優しくないのか分からない)」

 

 直虎はそう思った。兎も角、二度目の降伏を促す軍使が佐和山城に向かう事になった。

 

 

 

 

 

 

「……生き残りは二百も満たぬ……か」

 

 佐和山城へ戻った磯野は被害の報告を聞いて落胆していた。将の損失も大きかった。海北は本多忠勝に首を取られ、殿となった藤堂は信広との一騎討ちの末、捕縛されたと聞いている。

 

「……藤堂の言う通り小谷からの援軍を待つべきであったか……」

 

 礒野は後悔した。しかし後悔しても失った者は帰ってこないのだ。

 

「磯野殿……」

「……やむを得ん。佐和山城から撤退して小谷に戻る。全ての責任は儂が持つ」

「御意。直ちに準備を致しますッ」

 

 磯野はそう決断して残存兵と共に佐和山城から脱出して小谷城へ向かうのであった。その為、軍使が来た時は磯野達が脱出してもぬけの殻となった後であった。

 

「……佐和山城に兵はいないだと? 籠城する気はないのか?」

「恐らく籠城するだけの兵力は無いのでしょうな。先程の合戦で粗方討ち取りましたからなぁ」

 

 信広の言葉に長秀はそう繋げるように言った。

 

「まぁ……敵がいないならそれで良い。長秀、佐和山城に入城するぞ」

「御意」

 

 そして軍勢を整えた信広以下織田軍は進軍して佐和山城に入城した。

 

「長秀、城にある全ての井戸を調べてくれ」

「と言いますと?」

「杞憂かもしれんが、敵が進軍を遅らせるために井戸に毒を投げてるかもしれんしな」

「承知つかまつった」

 

 長秀は直ぐに井戸を調べに入った。しかし井戸に毒は入れてなかったみたいだ。毒を投げる時間はあったかもしれないがそこまで思考できなかったのかもしれない。

 

「信長に戦況報告をしよう。使者を出せ」

「御意」

 

 そして使者が信長の元に向かったが……。

 

「は? 観音寺城が無血開城?」

「観音寺城ってそんなに防備は弱かったのか?」

 

 聞けば史実通りの戦になっていた。箕作城と和田山城が落とされると六角親子は戦わずに甲賀郡に落ち延びたらしい。

 そのおかげで他の十八の支城は蒲生賢秀の日野城を除いて降伏。蒲生も後に降伏した。

 

「それで信長様は美濃三人衆と交代して此方に向かえとの事です」

「何故だ? そう簡単に代えてはならんだろう?」

「……京に三好がいます」

「……何だと?(確か三好は長慶が死んで衰退する筈……まさか?)つかぬ事を聞くが……三好長慶は生きているのか?」

「はい、御健在ですが?」

 

(……そうだよな。歴史が変わってるなら他のも変わってそうだな)

 

「……分かった。直ぐに信長の元へ行こう」

 

 そして信広達は佐和山城から出立した。しかしこの時、京ではある事が起きていたのであった。

 

「……三好軍が引き上げたじゃと?」

「如何なさいますか?」

 

 物見の報告に近衛前嗣は一瞬無言だったが直ぐに命令を出した。

 

「信長の元に使者を遣わす。三好で何かあったのかもしれぬ」

 

 

 

 

 

 




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