はい、こんにちは(何
どうやらコーラルをキメ過ぎた様で、集団幻覚+αなお話となっております。
石は投げないで下さい(ちょ
BAWSのお仕事を完了してから暫し。
先の開発部からの依頼料は、ほぼ全額生活物資と修理機材パーツ物資の確保でそのままBAWSに吸い上げられましたとさ。
何とも世知辛い話であるが必要な事なので仕方なし。
まあそんなオチはそれとして。
アクリは操縦室にて、ユミコやリブラと次のお仕事の選定をしており。
どうやら今回はユミコ以外も時間が空いていたらしく、多彩な依頼を確認していた。
「今回は……良さげなの、あんまり無いねー?」
「うーん……。報酬が良さそうなの、ファーロンとシュナイダー。でもってアーキバス、かぁ……」
しかめっ面のままに呟きを漏らすアクリだが、気が乗らない様で。
「まあ、ファーロンもシュナイダーも、自分の社の兵器の試射とか実験とかしたいから、解放戦線持ちの土地を切り取って来い、って依頼だし、
アーキバスはアーキバスで、ベイラムと真正面からやり合ってる所に送り込もうとしてるみたいだし……」
「真正面の喧嘩で独立傭兵持って来させるって捨て石確定な依頼はちょっと……」
まあそうであろう。傭兵なんぞどっかのイレギュラーでもなければ、遊撃で使うべき戦力である。
そんな折。ユミコが端末を弄っていたその時、新たに更新された依頼の一つに目が留まり。
——と云うか、これは独立傭兵に頼むものなのか、と云う疑問が湧き上がったので目に留まったと云うのもあるのだが。
「……なにこれ?」
「どしたん、ユミコ?」
「いや、これ?」
変な反応をしたユミコに気付いたか、アクリは訝し気に声を掛けてみると、
頭上に疑問符が浮いているかの様なユミコが先に見ていた端末を手渡され。
どれどれ、と確認をしてみると——
「——大豊主導の機体・兵器展示会の補佐ぁ?」
「何でこんなのが独立傭兵の依頼にあったのかが分からなくてー。
だって見学会の対象って大体独立傭兵でしょ、このルビコンだと」
「まあそうだよねぇ……? でもオールマインドのショップで大体賄えるはずだし……うぅん?」
悩ましげな声を上げるアクリにああ、これ多分……とリブラが答えて。
「これきっと、星内企業の……特にBAWSとそこに近しい会社との情報交換とか提携も視野に入れてるんじゃないかな?
BAWSは地元企業で犯罪者以外なら誰にでも商品売るから、そこの基礎技術高い方が有難いだろうし。
MTやAC開発を加速させてくれるなら、自力での製造工場を作り辛い星外企業のベイラム系としても願ったりなのかも」
「そう云う話なら、多分このコーラル争奪戦の件が終わった後、自分等の傘下に取り込む為の下準備も兼ねてそうだねー?」
「まだその辺りの話、ケリ付きそうな状況でもないだろうに……」
まあでも戦後を動向を考るのは企業では普通かな、とも思えるので気にしたら負けなんだろう、多分。
ある程度納得しつつ、話を続ける一同で。
「あ、でも会場警備も含まれるみたい。そっちのが独立傭兵としての本命……なの……か、な?」
「いやこれ警備の方も別途報酬アリみたいだし、どう考えても補佐の方がメインでしょ?」
「でも傭兵仕事する訳でもないのに報酬が5万COAMは破格過ぎない……?
後、大豊のパーツの3割の割引券も3つもくれるみたいだしー」
めっちゃ怪しい。
三人共があまりの胡散臭さに首を傾げるのだが、
何度見返しても騙して悪いが的な危険そうな話が見えて来ない。
「……とりあえず、ブリーフィングを確認すべきかなこれ?」
「「同感」」
暫くこの依頼のブリーフィングの概要を聞いていた一同であるが、最終的には呆れ混じりの溜息を吐く事となり。
簡単に要約するとこうである。
・ベイラム傘下企業、大豊からの依頼である。
・とある事情で幾つかの所で欠員が出てしまった。穴埋めの為に急遽動ける人間を欲している。
・出来れば、我が社のコンセプトである『樹大枝細』。その要求に満ちた者が参加してくれれば有難い。その時には別途報酬も用意する。
・ベイラムルビコン支社から幹部が数名視察に来るので、出来る限り問題は起こさないで欲しい。
・警備を任された者は、警備主任が来るまでに工場入口にて待機し、指示を仰ぐ様に。
「——これって云わば、キャンギャルが何かヤバめの問題起こして解雇されて、それの補填って事じゃないかな?」
「それっぽいよねー?」
「この星の状況下でって事は多分、雇った人が解放戦線か星内企業のスパイだったとかその辺りかな?」
「あり得そうだーね」
そんな感じで適当に身勝手に己が予測を並べ立て盛り上がる一同。
まあ真相は結局闇の中であるのだが。
「ん~……問題なさそうなら、これ、受けてみる? 展示会なんだったら、リブラも色々楽しめるだろうし」
「そだねー。依頼次第では時間捻出も難しくないし、頼めば非戦闘員ぐらいなら見学の方にねじ込めそうだし……」
「僕としても大豊の装備とかパーツとかの仕様とか、色々確認したいけど……良いの?」
「ま、リブラにはACの整備強化を任せ切りだし、偶にはねー」
「んじゃあ、大豊の窓口の方に連絡入れるよー?」
そう云う事になったらしい。
「——やだーッ! わたしおうちかえるぅぅぅぅッ!!!」
「アンタが一番適任なんだから我慢しろやユミコ」
大豊の星内地下工場(封鎖機構からの目を誤魔化す為にベイラムの縄張り内に何とか設置出来た工場の一つらしい)にある会議室の様な多目的ホールの一角。
先の
詳細な説明を聞いた後、キャンペーンガールの衣装を見せられた直後に、こんな状況になったらしい。
「だ、大丈夫なのか? 君の相方は相当嫌がっているようだが……」
「大丈夫ですよ。これもお仕事ですし。ちゃんと覚悟決まったらやってくれますので」
「そ、そうか」
担当の方であろう男性の微妙な表情からの心配の声に、問題ないとアクリは返し。
それから視線を今だジタバタ藻掻いているヤツの方へと向けるのだが。
「こんなすけべぇなエロチャイナドレスなんか着たくないぃぃぃぃッ!!」
「キャンギャルなんてそんなもんでしょうが」
「絶対これちょっと動いたら零れちゃうううぅぅぅッ!!」
「むしろそれはネタとして美味しいのでは」
「ならてめえが着ろ」
「だが断る」
瞬時に表情をストンと落として突っ込んで来るユミコに同じく表情を落としてはっきりと嫌と云うアクリ。
そんな彼女等の相変わらずの流れる様な漫談への移行に付いて行けない担当者で。
「——とりあえずさ。樹大枝細。中心部が大きくて手足に向かって細くなる、ってコンセプトだと私より確実にユミコの方が適任なんだからね?」
「それはわたしの腹が太いと云いたいのか貴様」
「そうじゃなくて。アンタのは胸と尻が太い……ってかそれ豊満って云うの。アンタは私よりは男好きする体躯だって云ってんの。
キャンギャルなんぞ、男の視線を集めるのもお仕事の内なんだから、見た目を鑑みても私よりはアンタの方が向いてるの」
とりあえず畳みかける様に一つ一つ言葉を嚙み締めさせる様にユミコに伝えるアクリ。
その言葉にぐぬぅ、と唸るユミコである。よし、あと一押しだ。
「——それに、リブラに会場見学させたいんでしょ? 現場関係者になったらある程度の開発関連の裏側も見せれるかも知れないよ?」
「……リブラの名を出されたら、弱いよ……。——分かった、大豊娘々……だったっけ。まあその内の一人として、頑張るよ」
双方共に完全に弱点部位になっている様な気がするリブラの名前を出される事によって、渋々ながら承諾するユミコである。
いや本当にこいつ等リブラには甘々である。
「うぅ……やっぱすっごい恥ずかしい……」
衣装を更衣室にて着替えて来た直後。
顔と云うか、首までをも真っ赤に染めながらユミコは力なく呟き。
——首回り下から上乳辺りまでが盛大に開いてその柔らかそうでいてぎゅうぎゅうに詰め込まれた感が凄い谷間が眩しく、
ちょっとエグめのスリットが入ってはいるが、妙に窮屈そうなヒップラインが映えるチャイナドレスに、
髪をまとめてシニョンキャップに突っ込んでいる相当の美人さんの完成である。
「——悔しいけどやっぱ、ユミコって美人さんだよねぇ。えっと何だっけ。ヤトマナシデコ?」
「大和撫子の事? まあ確かにわたしの先祖ってそっちの方面の人種だったって話聞くけどさ。
でもそれだったらチャイナドレスじゃなくて、キモノを着てる時に云って欲しいかなぁ」
「うん、多分それの事。……で、担当者さんとしてはどうです?」
そんな感じで先の男性に水を向けてみる。
声を掛けたお陰か、ハッとした感で言葉を絞り出す担当者さんであり。
「——おぉ。あまりに見事だったので言葉が出て来なかったよ。
まさかここまで樹大枝細を体現してくれるとは思わなかった」
大絶賛である。
確かに手脚は細く長いし、身体つきは豊満であるからして、体現そのものではあろうが。
その上で更に顔面偏差値も高いと云うのだから、もう文句の付けようも無い話で。
そんな親友への手放しの称賛の言葉に、幾分気を良くしながらアクリは檄を飛ばす。
「お墨付きも貰ったし、頑張んなよ、ユミコ。
私はこれから輸送ヘリにAC取りに戻ってから警備の方に回るからさ。
——じゃあ、担当者さん。ユミコ、お願いしますね?」
「承った。君の方も警備の方、宜しく頼む」
「こちらも承ります。後、リブラの事も……」
「ああ、先に話を通して貰ったからな、承知した。
程度の低いデータ類なら閲覧して貰っても構わんよ」
「有難うございます、では、お願いしますね?」
そう云うと、アクリは己がもう一つの仕事へと向かう事にする。
さて、詰め込み式になるが、ある程度は大豊の武器パーツ類の情報を把握して貰うぞ、ユミコ君。
はぁい、了解しましたー、等と云う会話を耳にしながら。
「——やっぱ、暇だよねぇ」
『まあ、警備でヤバい事が頻繁に起こった方が色々拙いしなぁ』
「それはそう」
——ユミコと別れてから、数時間。
廃棄された都市の一角のビル。そこに地下工場の擬装された入口があり。
その地下側に、アクリ他数名の大豊付きのMT乗りと共に暇を持て余していた。
たまーに来る入場者であろう装甲車や輸送トレーラーの誘導や身分確認等々を熟してはいるが、ここまでの部隊は基本要らない訳で。
……だが、そんな中、一人だけものっそく燃えてる奴がおり。
『——でさ。俺、この前ACへの転換試験受かってさ。しかも、初の配備機がさ、試験評価機なんだよッ!』
「へー、凄いじゃない。大豊でもAC乗りってあんまり居なさそうだし、
評価機任されるって少なくとも一流相当ぐらいには機動兵器の腕が立つって事よね?」
『はは……ッ、面と向かってそんな事云われると少し照れるな……。
まあそれは兎も角。そろそろその評価機、完成するらしくてさ!
これからどんどん任務熟して……早くコールサイン貰えるぐらいになりたい訳なんだよッ!』
『はいはい、それもうこっちにゃ耳にタコだから』
同僚のそんな苦笑染みた突っ込みにもめげずに、やるぜ、俺はやるぜぇぇッ! 等と気炎を吐く青年である。
うん、とても暑苦しい。
「夢は大きいのは悪い事じゃないと思うよ? ——で、夢は大きくレッドガンナンバー?」
『そうなんだよッ! 目指せG10ッ!』
(とりあえず、今のレッドガンは9まで、と……。あ、いや……違うかも。
確か、地球圏の方では願掛けか何だか知らないけど、
9ナンバーって永久欠番って形になってるって噂なかったっけ?
……まああやふやな記憶でしかないんだけどさ)
どうだったかな? と熱く燃え盛る青年の声をうまい具合に受け流しつつ、そんな事を考える。
こんな軽い感じの会話の中でも細かな情報収集は欠かさないのは中々に
——と、そんな熱血青年の言葉が不意に止まり。
何だろ? と首を傾げるアクリであるが、通信越しに苦々しい声が漏れ出て来て。
『——あのクソ野郎、また来やがったのか……』
「うゆ?」
青年の殺気すら漏れ出し兼ねない程の不機嫌な声音に首を傾げるアクリに、
他の隊員達が色々と話をしてくれて。
『ああ、貴女は知らないわよね。あの重装甲車から身分確認で面倒臭そうに顔出したヤツ。
あれ、ベイラムのルビコン支部の幹部の一人で……』
『ベイラム本社の権威を笠に着て、やりたい放題するクソおっさんなんだよ。しかも女癖も悪い』
『あの禿デブ、私にも云い寄って来た事あったよね……キモいキモい』
『あんときはG2のナイルさんがたまたまあのバカに同行してて、
取り成してくれたから何とかなったようなもんだよなぁ』
『今回のキャンギャルの欠員の件も、アレがその娘っ子に手を出して、
その娘を自殺未遂にまで追い込んだからとかって噂もあるんだよなぁ』
『マジかー』
口々に悪態悪口罵詈雑言のオンパレードである。よっぽど嫌われているのかアイツ。
色々と真実なのか嘘なのか分からないが、それだけの噂が湧く程度にはクソ野郎らしい。
(……ま、てよ?)
それだったら、拙くないかな。
前キャンギャルが喰われて以下略って事は今回のキャンギャルも……ッ!?
「……ごめんなさい、皆さん。暫く警護抜けて良いですか?」
『どうした?』
「親友が今、キャンギャルとして働いているんですよ……。
しかも、担当者さんが大豊のコンセプトを体現してるってお墨付きで」
『ちょっ……!?』
『ヤバくねぇかそれッ!? 独立傭兵のツレなんて
あのクソデブに目を付けられても擁護できる人間が居ねぇッ!?』
『しかし……』
「この依頼、こっちの一方的な破棄でも構いません。違約金も払います。
だから……すいませんッ!」
『ちょっと待てッ!?』
止めに入る暇あればこそ。
アクリは直ぐ様に己がACを片膝立ちの状況にして駐機してハッチを開くと、
コックピットから抜け出してお客様が入場する所とは違う、運営側の入り口へと駆け出し。
カッカッカッカッ、とサバイバルブーツの硬い踵で廊下を蹴る音が暫く続いた後、
会場となっている地下工場の倉庫の一つへと入ろうとしたその直後。
携帯端末の反応に気付き、確認をするとリブラからで、慌てて端末を通話に切り替える。
『——さん、アクリさんッ! 応答をッ!!』
「リブラッ!? どうしt『ああ、繋がったッ! ユミコさんが、スーツ姿の変なおじさんに絡まれてるんだッ。
こっちも展示会の見学してたんだけど、人だかりが出来てて気になったから、
確認したらチャイナドレスなユミコさんが居て、その後に来たおじさんが……ッ!!』
「マジかッ! あのクソおっさん、手が早すぎるにも程があるだろうがッ!!」
(生身でやる——のは、いけない、大豊の上の人に迷惑が掛かるッ!
なんか、私だと云う記号を打ち消す何かを……ッ!!)
更に駆け足で移動しながら、辺りを見回す……が、そんなに良いものがそうそうある筈も——
(あったよ……ッ!)
彼女の視線の先、六角形の体躯に簡易な手足がくっ付いた代物が、くたっとした風情で捨て置かれており。
「確かこれなら……ッ!」
そんな事を一言呟くと、大慌ての体で何かをし始めるのである。
所変わって展示会会場である、地下工場の倉庫の一角。
(いやもう、いきなり最悪……ッ!!)
大豊娘々の格好をしているユミコは、
引きつりまくった笑顔で禿デブ的なオッサンの対応をしており。
どうだねきみぃ。儂に大豊の製品の良さを教えてくれないかい、別室でのぅ。
上から下まで嘗め回すような視線をやりつつ、
ねっとりした声音でそんな事を云って来る禿デブなオッサンであるが、兎に角気持ち悪い。
気持ち悪いのだが、視線を回した限り、おっさんの後方にはやれやれまたやってるよ的な感でこちらを見ている黒服の男が二人。
その上、この禿デブの胸の辺りに幹部役員のプレートが見え隠れしているのに気付き。
(よりにもよってベイラムの上役かよ……ッ!)
内心で悪態を吐きつつも、今だに引きつってはいるが笑顔でお客様困りますぅと云えている辺り、
まだ追い詰められてはいないらしいが、時間の問題な気がしないでもない。
(逃げる……訳にはいかないよねー。お仕事なんだし……。
でも、もっとヤバそうになったら……うん、違約金も視野かなぁ……トホホ)
なぞとか考えていると、更に詰め寄って来たおっさんが、娘々の手を取り——
——ぺちん。
ゆるくも軽い手を叩く音。
驚きで固まるおっさんであるが、その相手の外見の所為かと思われる。
——ベイラムのロゴマークに、簡易的な手足を付けただけの子供が書きなぐっただけの様なものっそい簡単な落書きの様な見た目——
まあつまり、マスコットキャラクターでゆるキャラなベイラムの神髄、ベイ太郎である。
「ボクの目が黒い内は、大豊娘々に指一本触れさせないんだよーッ?(裏声)」
ベイ太郎はそんな事をほざき(それ以前にお前目が在るのか?)つつ、
ユミコをお持ち帰りしようとしていたおっさんへと凄みを利かせて。
全く利いてる気がしないが。
「……な、何をするんだね君はッ!?」
「お客様。当展示会では、キャンペーンガールへのお触りは厳禁、なんだよッ☆(裏声)」
(……何やってんのアクリ?)
裏声で喋っていても親友の声くらいは聞き分けれるから、
中の人が誰なのかはあっさり割れるのだが、一体何してんのさアンタ?
いや助けて貰って嬉しいんだけどね?
「何を云っているのかね! 儂はこの娘さんに大豊の兵器の話をだね」
「それなら、ここで説明できる事なんだし、
態々別室に行く必要ないんじゃないかなッ☆(裏声)」
「煩いッ! オイ、このマスコットを黙らせろッ」
おっさんは、キレ気味にそんな事を後方に居た黒服共に命令を掛ける。
そんなおっさんの言葉に、やれやれ……と云った感でベイ太郎へと歩み寄って来る黒服。
「おい、この方の邪魔はやm「えいやッ、なんだよッ☆」ぐぶぇッ!?」
ベイ太郎の腕を取り、凄もうとしていた黒服その1に彼(?)は頭を下げる要領で手始めに頭突き(?)。ポコン。
「な、なにしやg「ほいさ、なんだよッ☆」がぐぶふぇッ?!」
黒服その1が中々の悲鳴を上げ、倒れ込んだのを見て、黒服その2が掴み掛ろうとするが、
今度は腰だめに構えた短く見える左拳で腹に一撃。ポコン。
たった二撃で黒服を沈黙させた手腕は見事に尽き。
つうか、攻撃音声はゆるゆるであるのだが、黒服ーズの反応を見るに威力は中々にヤバそうである。
「くッ……儂はベイラムの幹部だぞッ! 貴様の様な木っ端な奴なぞ……」
「何を云っているのか分からないんだよー☆」
あまりにあんまりな状況に、おっさんはそんな怒りの言葉を上げるのだが、
全く意に介していないベイ太郎で。いやどんだけ上等な人間でも衆人観衆の中で犯罪まがいな事をやる時点でダメだろ?
そんな事をベイ太郎は思いつつ、さてコイツはどうやってやろうかと思案してた所。
唐突に力強い声が辺りに響き渡り。
「——貴様、役立たずは役立たずでも、中々骨のある役立たずの様だな、ベイ太郎ッ!!」
「何奴ッ!?」
その強い口調の誰かを探す為に辺りを見回すおっさん。
あそこだッ、と参加者の一人が声を上げ指を差した方向へと一同は視線を向けると——
展示品の大豊のマシンガン。その上に立って居たのはベイ太郎より一回りは大きい体躯で、
頭頂部に申し訳程度のねじり鉢巻きが巻いて……? 巻いて?
まあ、乗っけているベイ太郎の姿形をした何者か。
注目が集まっているのが分かったか、そのベイ太郎? は名乗りを上げて。
「俺か? 俺の名は……ベイ親父ッ!! そこにある、ベイ太郎共のボスだッ!!!」
な、何だってーッ!? とか何とか周りが囃し立てる。
何なんだこの空間。ベイ太郎の中の人も一体何を云っているんだこの親父としか考えられず。
「そこなベイ太郎ッ! 俺と共にそこの不届き者を成敗せんかッ!?」
「な……何を云っているのかなッ☆(裏声)」
「俺には分かるッ! 貴様の……悪事を許さぬその精神をッ! ——合わせろッ」
「——ッ!!!」
とぅッ! とばかりにベイ親父は飛び降りると見事な三点着地をキメた後、すぐさまにおっさんへと駆け出し。
そのベイ親父が腕を構えた途端、意図を察したベイ太郎は同じように腕を構え——
ベイ太郎とベイ親父の短い腕同士が不届き者の首を前後から挟み込むッ!
……見事な前後からの首狩り腕刀である。
「ぐぇ……ッ!?」
その一撃で白目を向きその場へ崩れ落ちるおっさんで。
「「——成ッ敗」なんだよッ☆」
うおおおおおおおおおッ、と何故か周りの人間どもが物凄い勢いで湧き立つ。
いや本気で何なんだこの空気。とりあえず自分もノリでやっちゃったけど、大丈夫なのこれ。
そんな益も無い思考がベイ太郎の中を空回るが、ベイ親父のがなり声に意識を戻されて。
「——ベイ太郎ッ! 貴様、役立たずの割には良い動きだったぞッ! どうだ? 俺の下に来んかッ!?」
「ッ……。お、お断りするんだよぉぉぉぉッ!!(裏声)」
「うひゃッ!?」
そんな事を云われるが、すげぇ勢いで嫌な予感がするので、
ベイ太郎は傍らに居た大豊娘々を小脇に抱えてダッシュすると同時、お断りの言葉を全力で云い放った。
だが、ベイ親父の方も慣れたもので、更に言葉を云い募り。
「G6レッドに、ベイ親父からの紹介だ、と云えば直通で俺の下に話が通る筈だッ! 覚えておけッ。……待っているぞッ!!」
「だからお断りするんだよぉッ……よぉッ……よぉッ……(エコー)」
裏声が続かなかったか、最後はベイ太郎……もとい、アクリの素の声でお断りの言葉を言い返しつつ、
更に後ろに向かって全力で前進して行く着ぐるみである。
「……ふむ。中身は年若い女性だったか。まぁ良い。——さて、幹部殿? 愉快な遠足へのご同行、願えますかな?」
「ぶふぃ、ぶふぃ……こ、こんあこひょをしてただでしゅむちょ……」
「何を云ってるか分からんが……警備部ッ! このド畜生を連行せよッ」
「「「ハッ、総ちょ……もとい、ベイ親父殿ッ!!」」」
理解不能な状況のままに、悪は去ったのである。……本当に何だったんだこれ?
とりあえず、逃げ帰ってきた上で担当者さんの所へと出頭するアクリとユミコ。
そしてあのゴタゴタの内に二人について来たらしいリブラ。沈痛な面持ちのままに依頼人に詫びを入れるアクリで。
「申し訳ございません。ベイラム幹部に喧嘩売った上に、殴り潰してきてしまいました……。
完全に依頼失敗ですし、違約金をお支払いしますので……申し訳ございません」
「そ、それを云ったらわたしもあのおっさ……もとい。
幹部からのアレコレを上手く受け流せれれば良かったんですが……。それすらできない始末で。申し訳ございません……」
平謝りのアクリとユミコである。
まあやった事は色々やべーし、仕方ない部分はあるのだが……、
そんな二人に明るく言葉を返して来る担当者さんであり。
「いやいや、あのルビコン支社の幹部殿も、前々から色々と問題ばかり起こしていてね。
……だが、『中身が誰かが分からない』ベイ太郎とベイ親父のお陰で成敗された上に、
彼の問題事が次々と明るみになったらしく、さっさとベイラム警備部のお縄になった、と先程聞いた。
なので、君の行動の問題はほぼ無くなったと云える。
……まあ、警備の勝手なサボタージュの件があるが、そちらは入口警備をしていた大豊MT部隊の一同から、
『それは休憩時間に抜け出したので問題ないのではないか』、と云う話が上がって来ていてな。
そう云う事にして、そちらの方も不問にする事になった」
「——そ、そう云う事にしてって……。い、良いんですか? こちら、相当な事してますよ?」
「まあこれからちゃんと仕事に戻って終業まで全うするのであれば問題ないと云う判断をしたまで」
中々にすっ惚けた回答に驚きつつも恐る恐ると云った感で聞き返すアクリに問題ないと返して来る担当者さんで。
その彼の答えにあッ、ありがとございますッ! と御礼を云いながら頭を下げるRaDer’sの一同であり。
中々に話の分かる方であろう。
ああ、後はこれはオフレコで頼むのだが、と担当者さん。
「どうやらミシガ……もとい。ベイ親父殿も、あの幹部殿の行動があまりに目が余るのを気にして内偵をしていた様でな。
その件もあった状況で、アクリく……ではないな、中身不詳なベイ太郎が現行犯で止めてくれたお陰で、やりやすくなった、と喜んでおられたよ。
それも含めての事だ。結果的に良い方向に転がってくれたので、気に病まなくても良い」
「本当にありがとうございます……」
微妙に不穏な名詞が聞こえた気がしないでもないが、その辺りを気にしていたら多分鬼が出るので気にしない事にして、
もう一度感謝を伝えると、担当者さんはちょっと人の悪い笑みを浮かべ、そしてこれはまあ独り言だが、と口を開き。
「……云っては何なのだが、私等大豊一同も、あの幹部殿を成敗した所を見て、胸がすく思いだった」
色々と無茶振りしてきたり、先のキャンギャルの件も然り、だ。
相当思う所があったようである。中々声にドスが利いている。
「——なので、残り時間、きっちり熟してくれれば、報酬も全額持って行って構わないし、
幹部の件での迷惑料として、追加報酬を色々進呈しよう。
ああ、また不届き者が出んとも限らんので、もう少し警備の方にも人員を割くので、ユミコ君は安心して仕事を全うしてくれ」
「度々、ありがとうございます。では、残り時間まで頑張らせて頂きますね」
「私の方も、残り時間、頑張らせて頂きますッ」
「二人共、頑張って」
「「うん、頑張るッ」」
そんな感じで話は纏まったので、奮起したアクリとユミコは思い切りよく頭を下げると、己が仕事場へと戻る事にするのである。
とりあえずその後の仕事は問題なく終わりを迎え、先に担当者さんが云っていた報酬と、
先の展示会で展示していた、量産化には至らなかった企画落ちの大豊製武器を数種貰える事になり、
ユミコとリブラはとてもはしゃいでいた様である。
この一連の騒動の後、RaDのシンダー・カーラ宛に、差出人不明なデータが二件送られて来て。
軽くウィルススキャン等の精査した後に確認してみたら、
アクリのアレでコレな状況とユミコのアレでコレな状況が前者が動画で。後者が画像データとして送られて来ており、
彼女の腹筋に絶大なダメージを与えたらしい。
その後にこっそりとRaDer’sの口座へと少なくないCOAMが入金されていた様だ。ヨカッタネ。
とりあえず、中の人など居ない。イイデスネ?(吐血