「――と云う事で頼まれてくれないかな?」
「うーん。リブラはどう?」
「僕は構わないよ?」
RaDer’s、
ユミコとリブラは、一人の女性――ツィイーに何事か頼まれ事をしており。
と云うか、以前のアクリの言葉を承知してか、ちょくちょく連絡して来ては遊びに来るこの娘っ子は中々に図太い。
まあ、云ってもこいつ等が大体やるのは
と云うルーチンはそこそこ上手く回っており、ツィイーの練度も中々に仕上がって来ている。
――元々彼女の潜在能力そのものは高かったのだ。
でなければ、データ上とは云え、装備選びを大失敗しているBASHOフレームで、アリーナの中級ランクに食い込めまい。
……それをアクリと共に実戦で星外企業の一般兵相手に研鑽し続けていたらこうもなろう。
後、一部だけとは云え、懐事情が厳しい解放戦線以外から報酬が貰え、
更に星外企業の潰し合いを幇助した上で手に入れれた金で、
解放戦線の為の諸々が買えると云う気分になれるから自尊心も満たせて良い事尽くめだ。
「おらー、手前等ご飯出来たぞー、並べ―」
「――本当にちょくちょく馬鹿になるよね、アクリ」
「いきなりその突っ込みは酷くないかなッ!?」
そんな折、アクリが大きめのお盆を抱えて操縦室内に入って来て。
そのお盆には、アルミ製であろう緩い仕切りがある器と、
それに載っている温かなレーション……とは微妙に違う何か。
「アクリさん特製ご飯だぞー。感謝して食えー」
「ありがたやー」
そんな事をほざきつつ、器をそれぞれに手渡し、フォークも付ける。
受け取ったユミコはそのままノリでアクリを拝む。
「……ぇ、これ僕もする流れ?」
「別にやらなくても良いんじゃないかなあ」
苦笑しながら呟くリブラに、同じく苦笑を漏らしつつ言葉を返すツィイー。
因みにアクリが云っている特製ご飯はあながち間違っていない。
傭兵仕事が無い時の手慰みで、ノリで企業レーション類にひと手間加えた"料理もどき"を作ったら、
仲間内で中々に好評だったらしく。
それが楽しくなって、ちょくちょくとレーションに手を加えたものを食卓に出す様になったのだ。
今はもう給湯室はアクリのもう一つの戦場となっている。
何時の間にやら、アクリ以外には心当たりが無い調味料が棚に増えていたりする様だ。
ユミコとリブラも手伝おうとはしたみたいだが、その辺りの技術は壊滅的だったようで、
程無くしてアクリから出禁を云い渡された様だが。
まあそれは兎も角として。
「何これうっま。――アクリ、こんな事も出来たんだ?」
「まあやりだしたのはツィイーと初めて会った頃よりちょっと後だけどねー」
「それでこれなんだ……。っと、食べながらでゴメンだけどさ」
「んー?」
「ユミコとリブラには話し通したんだけど、ちょっと
「お手伝い?」
もぐもぐうまうましながら先の話をアクリに振るツィイー。
怪訝な表情で鸚鵡返しに聞き返すアクリに説明を続ける。
「うん。……まあとは云っても、戦闘とかそう云うのじゃなくて。
「それこそリブラだけで済む案件じゃない?」
「そうなんだけどさ。アクリにもある程度、アセンブルの事聞きたいかなって思って」
「私、自分自身のしか分かんないから何とも云えないんだけど?」
感覚派なので、案外フィーリングメインなのよ私。そんな事をほざく。
案外でもなんでもなく、事実な気がしないでもないが。
「まあそれでも、適性に合わせてパーツ組み替える知識ぐらいはあるでしょ?」
私のユエユーにも今の装備でやりたいならBASHO腕は止めとけ、って云ってた事あったし、と更に云い募る。
んで、その後、
少々前にリブラからMELANDER腕のリペア品を買ってそちらに変更したのである。
整備し易い様にと代替え出来そうなのは全てBAWSで手に入るモノに置き換える、と云うサービスも追加して貰って。
その上に、空いていた右肩武器も以前オマケでリブラから貰った多目的ラックにMT用の改造多段ミサイルを積み。
そうしたらEN容量が足りなくなったので、腕武器の片方をBAWSのバーストライフルに変更したのだが……。
それでも、ユエユーの戦闘力は飛躍的に向上していた。
「それぐらいなら……」
「じゃあ決まり。お願いー……」
「……はぁ。同性に泣き落としされて折れる私って何なんだろうね?」
ツィイーのお目目ウルウル懇願に一つ大きくため息を吐くと、渋々に承諾するアクリで。
やった、と大喜びなツィイーに苦笑を深めるのである。
それから暫し。
この地域一帯に電気を送電している大出力水力発電施設であるガリア多重ダムの一角。
そこの機体格納庫にRaDer’sの面々とツィイーは来ており。
庫内の入り口からほど近いAC用のハンガーに三機のBASHOフレームが駐機されていて、内一機はダブルヘッド。
二機は通常の頭の様だ。ダブルヘッド以外は、相当酷使されていたのであろう。
至る所に銃創や爆発痕、塗装の剥げや錆が浮いている。
その更に奥の方にも、数機のやはりBASHOであるACと、二十を越えるMTがハンガーに駐機されていたり、片膝をつかせて停めてあるのも見える。
そんな中、リブラがちょっと渋い表情で口を開き。
「頭パーツだけ比較的ダメージが少ない辺り、あのダブルは
「そだよ。後は……まあ、うん」
「後ここにあるACもMTも、完全に共食い整備……
いや、比較的マシなパーツを選定した上で、それぞれにくっ付けてる状態かな。
……ぱっと見、どれもこれも両手両脚のバランスがおかしいし」
まあ物資が少ないから仕方ないんだろうけどもさ、とかぼやきながら機体の整備状況を嘆く。
だが、一目見ただけで機体状況を看破する辺り、この子も地味にヤバい。
「オーバーホールは……やる時間がなさそうだけど、時間内で出来る限りの調整しようか?
ユミコさんに何度も突っ込まれてるから、有償になるけどさ」
「お願いして良いかな。
リブラの事だから有償だって云っても、ものっそい手間賃安くしてそうだけど」
「バレちゃってる」
まあでも仲良くなった人限定だよ、このサービス料金は。
そんな事を云いながら笑うリブラである。
「……やっぱリブラ、
「流石に殴るよ?」
「ゴメンて」
またスカウトしようとしたツィイーに剣呑な色を醸し出したアクリの突っ込みが。
あかんこれマジだ。そんな事を思いつつ謝り倒す。全くもぅ。
「……んで、とりあえずアセンブルはどうするの? 希望は?」
「ここの幹部は、一機は中距離。二機は遠距離支援にしたいって云ってたけど……」
「遠距離型でBASHOは止めた方が良いよ。強みが完全に死ぬから」
それをやるってんなら、せめて腕パーツとブースタ、出来るならFCSは変更した方が良いって。
そんな風に呆れた声で云うアクリである。
「そーなんだろうけどねぇ……」
「……まあそれ以前の話。悪い事云わないから、
遠距離支援は重四脚MTでスナイパーキャノンか連装ロケットランチャーかバズーカを載せてやった方が良いよ。
コスト面で足出るかも知れないけど、相手が手練れのAC乗りでも無い限り、重四脚の方が断然強いだろうし。
近・中距離と中距離支援型の方がまだACの特性を生かせる」
そも、ACはあまり集団戦に向かない機体だし、と云う呟きも漏れ。
彼女の言葉が気になったのか、ツィイーは疑問符を浮かべながら問いを掛ける。
「その心は?」
「MTと機動力が剝離し過ぎてる。
……だから、ACを戦場で使いたいなら同じAC少数で場を引っ掻き回す遊撃が最適解だと私は考えるよ」
まあそれはそれとして、と自分の考えやらのついでに、ACの話をしていてふと頭を過ぎった事を呟き洩らす。
「――しかし、そろそろBAWSも新しいACパーツ完成させてそうだけど、まだ連絡ないねぇ……」
「――あ、ひょっとして新規AC開発依頼ってアクリ達が受けてたんだ?」
「あ、やべ。も、黙秘権を行使しますぅ」
そんな事を思いつつぽろっと云っちまった事を誤魔化そうとしているが、誤魔化せる筈もなく。
アクリの反応に、何となく察しがついたツィイーはバツが悪そうに頬を掻きながら言葉を返し。
「あー……。ま、まぁ私も知ってる事だから、新型AC開発。だから私達が口を噤んどけば大丈b「な訳が無いだろう」――ッ?!」
ゴンッ。
そんな生々しくも鈍い音が格納庫内に響く。
「――ッ痛ったぁッ!?」
「軽々しく機密を口にするな、リトル・ツィイー」
「ご、ごめんだよぅ、インデックス・ダナム」
うぁ、痛そー等と他人事の様に思いつつアクリはツィイーに拳骨を落とした一人の壮年の男性を見やる。
先の改造頭パーツでのやり取りのお陰で多少は交流がある、解放戦線の幹部の一人――インデックス・ダナムその人であった。
「す、済みません。私が不用意に零してしまったから……」
「フン。アクリ嬢、君ももう少し言動を選ぶ事だな」
「その通りですはい」
ぎろり、と云った視線と小言をアクリへと放つダナムに反省しきりのアクリである。
さもありなん。
「……だが、方々でその噂が立っていて、そろそろ幹部クラスだけの緘口令では間に合わなくなりつつある。
――早く、完成すれば良いのだが……」
「あ、ダナム、ずっこい! 私殴られ損じゃないかッ!」
「口が軽い貴様が悪い」
何だとこんにゃろめッ。
そんな感じで喚いているツィイーを見事なスルーでやり過ごし、ダナムはアクリへと視線を移し。
「ツィイーからあらましは聞いている。……済まんが、俺にもパーツの相談を頼みたいのだが、良いか?」
「ちょっとダナム、まだ話はッ」
「問題は無いですけど……リブラーッ!」
「――何ーッ、アクリさーんッ?」
「アクリ達も聞いてよーッ!?」
とりあえず、ツィイーの抗議は完全スルーする事にしつつ。
専門家に聞くのが一番と思ったか、アクリは何時の間にか居なくなっていたリブラに向けて大きな声を上げると、
そこそこ遠くから反応が返って来て。そちらの方へ視線を向けつつ、言葉を続ける。
「今どれぐらい売り物になるパーツってあるのかなーッ?」
「ああ、輸送ヘリのカーゴを開けて見本市みたいな感じにしてるから、そっちを見て貰ってーッ。
こっち今、コアの調整してるからーッ! 後、パーツとかの説明はユミコさんに頼んでる—ッ」
気が早いし手回しも早い。もう解放戦線の機体に手を入れ始めている様だ。
因みに、彼が言葉を発していた所は、ダブルヘッド装備のACのコアの外装部である。
もう腕とのジョイント部のメンテナンス用のカバーを開いて何かをしているらしい。
何時の間にかタラップを上りそこまで移動していた様で。フットワークが軽い。
「……と云う事みたいなので。輸送ヘリの方に行きましょうか」
そんな感じになったらしい。
「……中々に壮観だな」
「私もまさかここまで色々用意してるとは思わなかったんだけど」
「完全同意」
アクリ達はアセン相談も兼ねているからか、
ツィイーが話していたパーツ相談の大本になるAC乗り達三名も連れて、己が自宅である大型AC輸送ヘリ前へと来ており。
そんな中、茫然とそんなやり取りをしているツィイーとダナムにアクリである。
彼女等の視線は、開け放たれたカーゴの中身へと注がれていて。
「――あ、来たね、皆。諸々の準備は出来てるよー?」
「いつもありがとうねぇ、ユミコ」
「それは云わないお約束だよ、おとっつぁん」
皆が来たのに気付いたらしいユミコがどうも、とばかりに手を振ると、
アクリもいよう、と手を上げつつボケはじめ、すかさずツッコミを返し。
そんな感じで相変わらず漫談染みたやり取りを始めた幼馴染ーズである。
気を取り直しまして。
「まあそれは兎も角。品質保証はリブラ印だから安心して下さいねー?」
「その辺りは信頼してるよー」
とりあえず、営業スマイルを浮かべつつそう云うと、ツィイーは売り手にとっては嬉しい言葉を返しながら、
闇市場っぽく配置されたパーツや武器類を見物をする事になり。
「――とりあえず、ACの頭からだねー。ダブルとトリプルがあるのは何時もの事として……って、
そいや、リブラってBAWSにこれ等の所有権丸投げしたって云ってなかったっけ?」
「ああそれ。なんか
見物しながら疑問の言葉を漏らすツィイーに答えるアクリである。
……とは云っても、顧客自体がそう数が居る訳でもないので、副収入以上の物にはならないが。
「――TIAN-QIANG頭はまあ、安いし軽いけどさ……うん……」
「一応リブラ印の魔改造……共食いのレストアで余ったMELANDERのセンサーアイを改造して外付けしてたりするけど。
……それでも、BASHO頭とそう性能が変わらないと云う……。だから、それの特筆事項は軽い、ってだけですかねー。
整備不良のBASHO頭使うんだったらこっちの方が良いかな、ってレベルですけどー」
「うわぁ……」
「――で、こっちのがそのレストアしたMELANDER頭っスかね?
……やっぱこれ、カッコいいっスよねぇ」
「それは同意する、かな?」
色々と見ながらドン引きしつつそんな会話をしていると、先の三人の内の一人がそんな事を呟き、もう一人が頷いて。
とりあえずは頭パーツはBASHOカスタム品のダブルとトリプル、リペアカスタム品のTIAN-QIANGにレストア品のMELANDERの四種の様だ。
ジャンク屋としては中々に品揃えが多いのは、リブラの技量と趣味が高じて、のお陰か。
「――で、コアは同じくリペア品のTIAN-QIANGと、RaDの探査パーツ……ORBITERの二種ですかねー。
星内生産のORBITERの方は兎も角、TIAN-QIANGも、BAWSの部品で代用可能な所は全部置き換えているから、
整備面も多少はマシになってますよー?」
アクリ達の会話を継ぐ様に話すユミコの説明に、おぉー、と感心する一同で。
星内で活動している組織に優しいリブラの配慮にありがたみしか感ぜられない。
「腕は、ちょっと前にツィイーにリペア品のMERANDERを売っちゃったから、
今あるのはちょっとマニピュレータに手を入れて飛び道具の補正が多少マシになった、
リペアカスタム品のBASHOぐらいしかないので、申し訳ないですー」
その分、買って頂けるのであればある程度の値引きにも応じますよー、とも続け。
「脚はシュナイダーのリペア品のNACHTREIHERと、RaDのCRAWLER、
後は変わり種としては肩の多目的ラックの制作の中で思い付いたと云っていたMTの重四脚部とACの腰部の変換接続用パーツ。
重四脚MTは、AC四脚とは違って滞空能力は無いけど、代わりに耐久力も積載可能許容量もベイラムのタンク以上にあるから、相当無茶な装備でも積めると思いますよー?
……まあでも問題は、造ったは良いけど、わざわざACの上半身に重四脚MTの脚付けて、って……それ普通に重四脚MT使った方が早くね?
――となって、お蔵入りしたんですけど。……使い道あると思います?」
「いやこっちに聞かれても我々にどうしろと云うのだ?」
ユミコの苦笑しながらの問い掛けに憮然とした感で返すダナムである。
そりゃそうであろう。
「あー、重四脚MTとか四脚ACとかでふっと頭を過ぎったんだけどさ。……インデックス・ダナム」
「どうした、アクリ嬢?」
「貴方がACの才は無いと嘆いてるって噂を方々で聞く訳ですが」
「うぐッ」
ふと思い出しました、と云わんばかりにそんな非道な事を突っ込んで来るアクリに痛い所を突かれたとばかりに言葉が詰まる。
ああ、それが悪いって非難してる訳じゃなくて。
「……戦場指揮官として、四脚とかタンクとか。
頑丈で積載量のある機体に、指揮官用のデータリンク強化とか通信強化とか、
そんな諸々を載せてAC型の指令所にしつつ、
砲撃反動無しの脚を上手く使って大火力支援で戦闘に参加するみたいな感じで、
どっしりと構えて指揮を執る、って事をする気は無いので?
もしそれも無しなら、重四脚MTってコックピットある程度広くできますから、それで乗り手と指揮官って形で相乗りしても良いんだし」
「人手と戦力が足りん。相乗りなぞするぐらいなら、それぞれがMTなりACなりに乗り、手数を増やす方がマシだ。
マシだが……四脚やタンクで指揮、か。……そこは考えておこう」
バッサリとした言葉を返して来るダナムであるが、耐久性と積載量が高く、
砲撃武器系統の反動も抑え込める上に更に色々と手を入れ易くできるACには一行の余地がある様で。
「四脚なら先の変換用のパーツ貸しますから使って使用感試して貰っても良いですし。
……そっちに予備の四脚MTの脚が余ってれば、になりますけど。
後はタンク型なら……ユミコ、流石にアレ、売れ残ってるよね?」
とりあえず試してもらうか、的な感でそんな事をダナムに向けて云いつつ、
タンクの方も心当たりがあるのか、視線をユミコの方に変えながら聞いてみるアクリである。
「……ああ、タンクモドキ。売る売らない以前に出品した事無いよ。ネタにまみれすぎてるし、アレ。
――一応、今回はノリで品揃えはしていたハズ……」
何やら不穏なやり取りをしている幼馴染ーズに嫌な予感が募って来る解放戦線の面々である。
「――とりあえず、タンクの方も試せそうな脚パーツもある訳ですが。そっちも試用してみます?
……BASHO脚の脛側を改造して、打ち捨てられていた多分BAWSの戦闘車両の無限軌道をリペアして取り付けてるトンデモですが」
「「正座して機動しろとッ!?」」
アクリのそんな説明に、思い切り良くツッコんで来るダナムとツィイーで。
お前らも仲良いな。
「一応、尾てい骨部にすっ転ばない様に収納式の支え用の補助的な無限軌道も取り付けてますから倒れる事は無いですし。
使用感的には、エルカノの軽タンクと似たような感じにはなるかと。
……傍から見たら正座に座りかけて中腰になってる状態に見えなくも無いですが、気にしたら負けだと思うんですよ?」
「最後の台詞で不穏さが増したんだけどッ!? と云うか、不格好が過ぎる気がするよねッ!?」
更にそんな事をほざくアクリにツィイーは再度の突っ込みを敢行し。
そんな彼女ににこやかに返すは引き継いだユミコであり。
「大丈夫だよー。
「なんの慰めにもなってないッ!?」
「――ツィイー」
「な、何かな?」
さらに突っ込むツィイーにちょいとばかり悪どい笑みを浮かべつつ名を呼ぶアクリに更に嫌な予感を募らせながらも応え。
「……このだだっ広いダム湖の氷上を、タンクタイプで気の向くままに思いっきり、爆走してみたくない?」
「――ッ」
「おい、アクリ嬢、ユミコ嬢。何を吹き込んで――」
「ダナムも。タンクだったらアサルトブースト程加速は出来ないけど、
安定性も良いし、対G対策をしていない常人で耐えれる程度にGが抑えられる上で相当速度が出るんですよ?
――試してみたくありませんか?」
「――ッ」
そんなささやきに劇的に反応をしてしまう辺り、順調にツィイーもダナムもRaDer’sに染まっている。
確かにこの案外広い敷地(とは云ってもダム湖上の分厚い氷で形作られているだけなのだが)を何も考えずに爆走するのは楽しそうではあるが。
ごくり、と云う喉の鳴る音が聞こえたのは、アクリ達のささやきを聞き取ったからか。
視線を向けると、AC乗りの若い衆達がちょっと物欲しそうにこちらを見ていて。
「――もう一個、試作のリペアカスタム品……こっちは先のタンクモドキとは逆で、
太腿側に無限軌道を取り付けた脚パーツもある訳ですが。……こっちも太腿のブースタを完全に殺してしまっているオチの上に、
座って脚を前に投げ出している感じな見た目なので、体高低くて射撃攻撃がし辛いって云う難点はありますが……まあ走れますよ?」
「い、一度試乗してみても?」
「まあ使用感は大事ですし。構いませんよー。ACだから、ACハンガーと知識さえあれば誰でも組み直せますし」
よし乗って来た。
内心ほくそ笑むRaDer’sの面々はそれを表に出す事無く話を進めていく事にする。
それから暫しの……と云うか、半日以上ガリア多重ダムに高速で機動するキャタピラの駆動音が延々と響き。
リブラと整備ついでに何となく指導もしていた素人整備員達からの抗議の殴り込みが発生するまでそれが続くのである。
何やってんだ貴様等。
兎に角。この件のお陰か、そこそこのACパーツや武器類も売れたので、ホクホク顔になったユミコが居たとか居なかったとか。
後、アクリのアセン指導も存外好評だったらしく、切実に星内で手に入るACパーツの追加が切望される事となった様だが、
こっちとしてもどうしようもないので、超頑張れBAWSにエルカノ、と他人事の様な応援をするしかないRaDer’sの面々である。
――その後、ガリア多重ダムのACに通常の中二脚からタンクに変形できるタイプの改造脚パーツが妙に流行ったのは余談である。
改造請負い業務、とっても美味しいです。
あと、氷上がなんかサーキット風に整備され始め、レースモドキをやるようになったのも余談である。
なんかチキチキ! タンクAC爆走猛レースとかって命名され定期的にやるようになったのも余談で(略)。
何か賭け事が成立しだしたのも余(略)。
そんなに娯楽に飢えていたのか
まあそんなアレでソレな件は兎も角として、
RaDer’sは良い意味でも悪い意味でもロクな事をしないと云う証左になる出来事であった。
何で変な方向にぶっ飛んで行くんでしょうね、僕の駄文って(己の所為だろう
でも地味に某マ〇オなカート的な妨害ありのACタンクレースは見てみたい気が……(ぁぁ