「――って云う事なんだって。アクリさん、ユミコさん。どうしようか?」
「ま、勿論行く一択だよ」
「そだねー。折角のBAWSからの招待なんだし」
RaDer’s
アクリ特製ご飯を食べながらそんなやり取りをしている一同で。
そんな中、リブラが年の離れた友人関係と云ってもあながち間違いではない、
BAWS開発部の部長と部長補佐からの共同メールの件にて二人に相談をしている様であり。
「しっかし、やっと目途が立ったかー。新型AC」
「まあ、とは云っても先行量産の一歩手前の試作型が予備含め三機。
それでデータ取りを熟している状況みたいだから、まだ先は長いみたいだけどね」
「やっぱり開発って時間が掛かるもんだねー」
そうなのである。
そこそこ前に依頼として遂行していた新型ACの件の話がリブラに届いたらしい。
開発部からのメールの要件は、アクリ達RaDer’sに新型をお披露目するのと、
依頼として仮想敵をお願いして来た様なのである。
「お披露目だけでも良いじゃん」
「性能も相対して見せたいって意気を感じる」
「それなー」
やれやれと云った感でそんな事を云い合うアクリとユミコで。
それからほんの少しの間の後、邪悪な笑みを浮かべる幼馴染ーズ。
「――しかし。それなんだったら、私達も色々仕込むべきじゃない?」
「そだねー。
「びっくりドッキリメカは色々完成してるし、こっちもBAWS開発部の皆の度肝を抜いちゃうのも良いかもね?」
そんな彼女等のノリに相乗りするかの様に、
リブラもリブラでさらっとエグい事を云っているのに気付いているのであろうか?
まあそんな感じでRaDer’sの一同は、
色々なネタを仕込みながら、BAWSの第一工廠へとその進路を向けるのである。
「久しぶりだね、RaDer’sの皆」
「お久しぶりです、部長さん。補佐さんと技師さんも」
「あぁ」
「お久しぶりですねー」
BAWS第一工廠区、開発部の所有する格納庫の一角。
招待を受けて通された場所には、二機のACがハンガーに駐機しており。
そのACの前にて迎えてくれたのは、どうやら以前に交流を持たせて頂いた人々だった様で。
そしてその後方にキャスの姿もあり。
アクリは彼に向かってやほ、と手を上げると少々苦笑を漏らしながらも手を上げ返して。
で、新型を見上げるRaDer’sの三名で。
無骨な見た目は多少ばかり洗練されている様である。
特筆して変わっている所と云えば、頭とコアパーツか。
……頭は前から見て台型の箱の如くであったが、新型は半月型に近くなっており、
コアは一回り近く小さくなっている様だ。
「……所々は変わってるようですけど、BASHOの面影はある程度は残ってますね?」
「使い勝手を考えたら、先ずは機種転換の訓練時間を出来る限り減らせる様に、と思ってね。
乗り心地そのものはBASHOとそう変わらない様に気を使ったよ。
機体名称は……結局いい案が出なかったので、
仮称をそのまま使う事にして、BASHO
――錦を飾る、と云う言葉ももじってる部分もあるから丁度良いかな、と」
「駄洒落かいッ」
「あはは。……まあ、次世代のフラッグシップ機になるであろうこの子には打って付けでもあると思うよ?」
アクリの突っ込みに笑いながら答える部長さんである。
まあそんな感じでまだ説明はする、とばかりに補佐さんが話を継ぐ。
「……一番の変更点は頭部パーツだな。
角ばった装甲から曲面装甲へ変更して、ある程度強度と軽さを両立させる様にした。
後はその曲面に合わせ、扇状に
そして後頭部に集積させたセンサーを一対取り付け、情報処理・伝達速度も相当上がったな」
「……輪切りにして半分に切り落とした蓮根みたい」
その姿を見ていると、ぼそりとユミコが呟きを漏らして。
彼女の言葉を拾い、疑問顔で首を傾げるアクリは鸚鵡返しに問い返し。
「――レンコン?」
「あぁ、アクリは分からないか。
地球の一部地域で食べられていた、地下茎の通称の一つだよ。
えっと、データ残ってたかな……。あ、あったあった。コレの事」
そう云うと、端末から何かの画像を呼び出し、アクリに見せる。
それは辛子蓮根の画像であった。なんでその画像にしたし。
更に云うと、きっとカメラの位置を分かり易くしたのであろう。
BASHOⅡ頭のカメラアイの配色が薄めの黄色と、
それよりちょっと濃くなった黄色が交互に扇状に並んであるのが更にそれにそっくりなのを助長していた。
「……本当にそっくりだし」
アクリの絞り出すかの様な声音にどれどれ、と周りの皆がユミコの端末に集まりだし。
――不名誉ながらⅡの頭パーツの愛称がRENKONになってしまった瞬間である。悲しいね。
まあそんな話はそれとして、解説は続く。
「――っと、それはそれとして。次はコアパーツですかねー。
こちらのコアはエルカノとの折衝が上手く行きまして、鋼板の技術供与を頂けたので、
それに合わせて全体的な強度を担保したままに軽く、小さくできました。
近接戦闘を主軸に置くのであれば、正道進化と云えます。
他には、少々ばかり地元傭兵達から不満が出ていた胸部下の視認の弱さも、
一回り小さくなった胸部装甲での視野拡張と更に胸部の下部の前後にサブカメラを増設。
これにより、視認できる範囲が劇的に広がりました」
更に前のお二人の解説を継ぎ、今度は女性技師さんが説明を続け。
「――後は、先に試用していた新型の腕パーツをエルカノ提供の新型装甲に置き換え、強度が上がっております。
脚パーツも腕と同じく新型装甲に置き換えたお陰で内部に空きが出来たので、
腕部と同じく内部パーツを見直して、前BASHO脚とほぼ同重量に据え置きの上で、
脚部積載量の増加となりました。
更にパーツ毎にそれぞれEN効率がかなり上がっておりますし、
新型のジェネレーターもエルカノと共同で作成しまして、
最新型となるHOKUSHIが完成し、搭載。
ブースタも、アクリさんの機動データと感想を参考にして再設計し、
キャスさんの試験運用を終えまして制式量産型となりましたKIKAKUⅡも搭載。
FCSは少々開発が遅れてまして……無念な話ですが、
現行のファーロンのをそのまま転用する事になってますねー。
これで機動力の担保と、重量のある武装の使用効果も上がったかと」
まあ確かに以前説明を受けた通り変わっていないのならば、
腕部はほぼ近接専門になっていた筈なので、
総積載量とEN容量と出力の増加を頑張るのは至極当然と云えた。
肩武器って重い上にEN消費が大きいのが多いし。
そして近接機動力をマイルドにした新規格のKIKAKUⅡも完成していた様である。
更に説明を聞く限り、近接推力を抑えた代わりに安定性とEN消費軽減に当てたらしく、
中々の仕上がりになったとの事。
「――流石。全てにおいてBASHOの完全上位互換になってますねー」
「問題は、お値段はちょっとお高めになっちゃってますけどー」
「それでもエルカノフレーム……総FIRMEZAに比べれば安いじゃないですかー」
新型の仕様書を読ませて貰っているユミコが賞賛の色を込めた合いの手を入れて。
値段は
少々頑張れば新型に手が届きそうなお値段設定である。
……まあ、BASHO三機分に近いFIRMEZA一式が高過ぎるだけな気がしないでもないが。
そして、更に解説を継いだのは部長補佐。
「武装も色々試してみて、重四脚MT用の装備をAC向けへと再設計も順調だ。
今完成しているのはガトリング砲とロケットランチャー、二連ショットガンだな。
ロケットランチャーは一門から三門までが完成している。
……因みにこれ以上は砲門を増やしても、
重過ぎる上にACでは撃った反動で大きくバランスを崩すだけなので開発は中止した。
両脇腰部の四連装ミサイルランチャーも爆発力を上げたタイプも新たに完成している。
こっちも少々重くなってしまっているが」
「肩ショットガンとか中々燃える代物を……しかも、二連装!?」
「重四脚MTの腕装備の一つにあったよね。
……あ、大きさ的にも重量的にもそのまま肩に積んだ感じ?」
「そうだな。AC腕では反動で持って行かれ兼ねんので肩に、と云った風情だ。
近~中距離では相応な威力を保証しよう」
アクリとリブラの合いの手に頷きながら言葉を返し。
そう云えばメイン兵装の近接武器は?
そんな疑問をリブラは呈すと部長さんがそうだった、と言葉を漏らし。
「とりあえず近接武器は先のMA-C-101 BACHIの他にも鈍器である……あー、えーと」
「その名称、止めにしません?」
「じゃあ君が名称を決め「鈍器、MA-C-102 BOKU-SATHUとかありますね」おーい……」
「撲殺ッ!?」
どうやら部長さんは元より、女性技師さんも名付けが壊滅的であったらしい。
見苦しい責任のなすりつけ合いである。
あまりに酷いので部長補佐さんに視線をやると、補佐さんも視線を逸らせた。
こいつ等全員同じ穴の狢だったか。
と云う事は、先に話していた肩武装も大体アレなのか。
――因みに、この後ソレを開発部の皆さんに聞いてみたら、
肩武器は型番がMA-B-100の連番になっているようだが、案の定名称はお察しだった。
101
102~4
105
腰部武器にはMA-S-100連番で、
101
102
いや私も人の事全く文句言えない頭なんだけどさ。
流石にそれはどうよ、と突っ込みたかったけど、
もう制式登録されてるらしいからもう何云ってもアレなんだろう。
ちらっとリブラの方を見ると、彼も気まずげに明後日の方向に視線を向けており。
そいや、この子も
何とも痛々しい空気が辺りを満たして。
ダメージが一番少なかったユミコが何とか声を絞り出し、話の先を促す様に言葉を投げた。
「ま、まあクッソ個性的な名称は兎も角としましてー、他に武器はどうなんですー?」
とりあえずそんな話は置いておいて、女性技師さんに他の解説するのはあるのかとユミコは尋ねると、
彼女の問い掛けで気を取り直したか、コホンと一つ咳払いをした後、今一度口を開き。
「そ、そうですねー、話を続けますよー。
後は、重四脚の大出力のレーザーブレードを小型化したAC用レーザーブレードですねー。
こちらも制式採用されてまして、型番はMA-C-102 KIZANとなりますー」
これにて武器は以上になります、と最後に締めの言葉を口にする女性技師さんである。
「おぉ、その名称はカッコ良い」
「まあとは云っても、機体を斬る、の略ですけどねー。
……他の武器開発は、BASHOⅡの量産が軌道に乗ってから、となりますか。
生産ラインが足りないのでー」
「一番のメイン商品のMT系と一定数は確実に需要がある旧BASHOも生産しないといけないですしねぇ?」
「そう云う事ですー。旧BASHOは少しずつラインは減らす予定ですけど、
Ⅱが量産の目途が立ってからになるかと」
そんな感じで進むらしい。
「――と、云う感じで説明は大体終わりまして。
次は
ふぅ、と一息ついた後、女性技師さんはそんな事をアクリへと問いを掛け。
そんな彼女の言葉に不敵な笑みを浮かべて言葉を返す。
「こっちも色々仕込んでるよー。なんせ、リブラが居るからねッ!」
「丸投げかい。……ま、アクリの言じゃないけど、
そこそこネタにまみれてるの作ってますよー」
「ま、多分
自分からネタまみれとか云ってるよく分からん娘っ子達の台詞に、
お、お手柔らかに頼むよ、と引きつった声音で言葉を返すしかない部長さんである。
場を移しまして。
ACやMTが小規模な戦闘行為をしても問題がない程の広さを持つ演習場の中央付近にて、
二機のACが対峙しており。
片や、キャスが搭乗している、先程アクリ達にお披露目されたBASHOⅡフレーム。
右手には地球で中世時代に使用されていたとされるメイスをACサイズにした鈍器――BOKU-SATHUが握られ。
左手には重四脚の大型レーザーブレードをそのままダウンサイジングしたKIZANを握り。
右肩は二連装ショットガン。左肩には二連装ロケットランチャーと云う装備。
両腰部にも四連ミサイルが取り付けてあった。
相当な重武装であるが新規制作のBASHOⅡのお陰か、
動きそのものは重量機寄りの中量機に収まっている。
片や、アクリが搭乗している、頭とコアと腕がBASHO、脚がWRECKERのAC。
右手にリボルバーパイル、そして左手に大型の銃の様な姿形をしているが、
発射口がレーザー発振器となっている機器が握られており、
その機器の後部からエネルギーチューブが繋がれ、
左肩の多目的ラックを占拠している箱型へと伸びている。
そして、右肩のクレーンアーム改がその箱を支えるかの様に添えられていた。
そんな両機に通信が繋がれ、女性技師さんの声が聞こえて来る。
『とりあえずこの模擬戦に当たりまして、コア部への致命攻撃は厳禁でお願いしますねー』
了解、と答えるアクリ。――それから少々の沈黙が辺りに漂い。……はて?
「――それ以外は?」
『それだけですよ?』
他に何か無いのか、と女性技師さんへと問い掛けてみるが、本当にそれだけだったらしい。
コア――人命以外は破壊されても問題がない様だ。
まあ人命は替えが利き辛いので、間違ってはいないのだが。
「マジか」
『大丈夫だよ、アクリさん。機体は直せば良いんだから』
『そうですねー。なので、キャスさんも気になさらずにガンガンやっちゃって下さいー。
一応予備含め三機あるとは云ってますが、素組みだけで良いなら後二機は組めるぐらいには準備してますから』
『了解です』
そんな感じで話を進めていると、部長さんの疑問の声が通信機から漏れて来て。
『アクリ君のAC……BASHOだが……何か、違和感があるねえ』
『確かに。頭とコアと……左腕の三カ所、ですか?』
『それっぽいかなぁ。色合いが違う、ってだけでもなさそうだ』
『あー、やっぱり部長さんも技師さんも一発で見抜くんだ……』
アクリの乗ったACをモニタ越しに見ていたのであろう。
部長と女性技師が違和感を感じ、それぞれが疑問を口にしている様で。
流石に、この二人のブレーキ役である補佐さんの方はそこまでの洞察力は無かったらしいのが、
ある意味救いか。
その姿を間近で見ていたのであろうリブラも、
尊敬の色を多大に含んだ声音で言葉を漏らしている様である。
何で僕の周りの
そんな事をどうしても考えてしまうアクリである。
『左肩と左腕を埋めてる機構は……まさか……』
「本当に察しが良いよね、流石BAWSの機体開発部の所属だけの事はある」
『――本気で
「更にちょっと魔改造もしてるけどねー」
相対しているキャスから悲鳴染みた叫びが聞こえるが、多分気にしたら負けだと思う。
そんな風に思うアクリを他所に、リブラが解説を始めて。
『えっと。とりあえず説明するね。
ジャンク拾いでちょくちょく手に入ってるジェネレータ、
JOSOをコツコツとリペアしてたんだけど。
それを改造して一番出力が上がったのを、
大型レーザーブレード専用の動力として割り切ってポン付けしたんだ。
機体の重量バランスは相当悪くなったけど、
ジェネを積んだ左肩とは逆の肩……右肩にクレーンアーム改を装備して、
それでジェネを支える事で何とかバランスをある程度整えれるようになったから、
データ取りも兼ねて使って貰ってる感じかな?』
『装備可能箇所の三つを潰してまで使用とか。それは、また……』
「因みにコレの発案は私。――火力は相当高いけどエネルギードカ食いするし、
クッソバランス悪いしでネタ武器にしかならないんだけど。
……ロマンを含めて今後の新武器の礎になるんならありかな、と」
『えぇ……?』
完全なドン引きした声音である。そりゃそうであろうが。
そんな彼女の言葉を引き継ぐ様にリブラも口を開き。
『アクリさんの要望と僕の好奇心で他に一個ギミック追加したけど、
それはまあ模擬戦中にでもアクリさんが披露してくれると思うよ?』
『……部長、私非ッ常に、お腹が痛くなってきたので早退したいのですが』
『頑張り給え、若人よー』
『冷たいッ!?』
タスケテ、と言外に云っているのが分かるのだが、
部長さんは凄く愉しそうな声音でさっさとやれ、と返している。
下っ端はつれぇわ。
それはそれとして。
『それではー。模擬戦を始めて下さいねー』
「んじゃま、先手必勝ッ!」
そんなゆるっゆるな模擬戦の開始の合図に思わず、ずっこけそうになりながらも、
先行はこっち、とばかりにブースタを吹かせ、吶喊ッ!
こちとら武装が少ない上に両方とも近接武器、突っ込まないと何もできないッ!
『くッ、前回の模擬戦とは違い、KIKAKUⅡを使ってる訳でもないのにこの近接加速……ッ!』
キャスは戦慄しながらも牽制にか、右肩のショットガンを起動。
時間差を付けて二連装のショットガンが火を噴いた!
「あらよーっとッ!!」
しかしそれは予見していたか、クイックブースト張りに突然ブースタ機動を切り返す。
クイック程高加速の回避ではない筈なのだがブースタ使用と同時に脚で地を蹴っているらしく、
少々のブースタ使用で緩急が付く動きが出来ている様で、FCSのロックオンを上手く回避している。
相変わらずに変態染みた機動の仕方である……が、そのままキャスの左手側へと機動しつつ、
砲撃からの安地に至ったと同時、全身のブースタを細かく吹かせ一回転。
遠心力と脹脛のブースタ増速を加味した上段回し蹴りを放った!
高速からの軌跡を描くアクリのACの脚の機動に驚き慄きながらも、
カウンターとばかりに左手のレーザーブレードを振るおうと発振させるのであるが――
「ほいさッ」
『ッ!?』
アクリは脚横のブースタを今一度小さく吹かせ、蹴りの軌道を下段側に無理やり変更する。
――ガギン、と金属同士が勢い良くぶつかり合う音が辺りに響き渡り。
《右脚、損傷軽微》
「も一つおまけぇッ!!」
COMからの警告を聞き流しつつ、そのまま脹脛のブースタを強めに吹かせ、
そのままの勢いで足を払う!
キャスのACはバランスを崩し、上半身が倒れ込んで行くのであるが――
『――まだッ!!』
あちらもアクリとの数度の対峙で変態機動にはある程度慣れたか。
払われた方向にそのまま脚のブースタを吹かせ、側転よろしく横に一回転する。
「――うぇッ!?」
『はあッ!!』
いつもの
一瞬動きを止めてしまったアクリは、
その一回転し上手く着地したキャス機の左手に握られたメイスの攻撃が――
「――っぁッ!!」
だがしかし。アクリはフリーズした思考を叱咤しその恥を気合の声と共に吹き飛ばしながらも、
メイスを迎撃する為、左腕の大型レーザーブレードをそちらに向け、
すると、大型レーザーブレードの発振器の下部に
轟音と共に
メイスとパイルの破片が二機のACの周りに散るのを尻目に、
驚き染まった声音で突っ込みの台詞を云い放つキャスである。
『……使い捨ての小型のパイルバンカーですかッ!?』
「いきなり隠し札切らされるなんて……キャス、強くなってるねッ!!」
『それは、どうもッ!』
彼の声に答える様に賞賛の言葉を贈るアクリ。
台詞に礼を返しつつ、バックブーストを掛けると同時、
左肩の二連装ロケットランチャーを撃とうとするのであるが。
「その辺りは、読んでるッ!!」
『ッ……! 振り切れな……ッ?!』
同速度でキャス機に張り付く様にブーストを掛けていたアクリは、
先とほぼ同じクロスレンジの間合いを維持しており。
過日のG7との戦闘に置いて距離感と云うのを思い知らされ、
己が得意分野を押し付けるのが秘訣だとあのクソ男に教えられたのである。
――いつかお礼代わりに、弾丸かパイルでお返しするけどな!
そんな物騒な決意を固めつつも、今はキャスとの対峙だとばかりに、
今度は右手のリボルバーパイルの銃口をロケットランチャーの下部へとアッパー気味に打ち込むと同時、トリガー!
再びの轟音と共にキャスのACをその衝撃で仰け反らさせ、
更にロケットランチャーの先をへし折った!
「更にもいっちょッ!!」
『――がッ!』
追撃とばかりに、先の蹴りと同じ様にブースタと遠心力を使った延髄蹴りを、
BASHOⅡの後頭部部位へと叩き込んで振り抜き、
キャス機を前方へと盛大につんのめらせると同時に着地、
そこから半回転して追撃のリボルバーパイルでの打撃を――爆発!
《左腕部、コア部、損傷軽微》
「ちょッ、自爆ッ!?」
『――今の状況、それぐらいしないと貴女の動きを止められないでしょうッ!』
――たが、キャス機から腰部ミサイルを至近距離にて撃ち込まれ、
その攻撃を潰されて諸共に爆破ダメージを受ける。
己がダメージも考慮して撃ったミサイルは一発だけであったが、
それでも動きは鈍ってしまう。
そしてその間隙により、少々よろめきながらも距離を離されて、
模擬戦開始前ぐらいの距離感で対峙し直す。
『……いやはや。アクリ君、相当練度上がってないかい?』
『前ここに依頼で来てから後、何度かやべーレベルの修羅場潜り抜けちゃってますしねー……』
今の今まで息つく暇もなかったのであろう。
モニタ越しに見ていて小さく溜息を洩らし、言葉を紡ぐ部長さんにユミコはそう答え。
確かに修羅場潜りまくってるよねうんと頷くアクリである。
『しかし、アクリ君のAC。
あれ程の至近距離でのミサイルの爆発だった筈なのだが……損傷がほぼ見られないのは何故だ?』
『――あ! まさか……アイビスの火以前の旧時代のBASHO!?』
補佐さんの疑問の声に、今思い出したとばかりに女性技師さんは声を上げた。
ああ、やっぱり思い当たるんだー、とリブラの感心した呟き声も通信に乗ってきて。
「気付かれたみたいなんでさっさとネタバレするんですけどね。
技師さんの答えで合ってます。ちょっと前にとある場所のジャンクの山の底から拾った中で、
状態の良かった旧時代のBAWSACの残骸からリペアしたのを改造して貰って使ってます」
『噂は部長達から聞いた事はあったが……凄まじい頑強さだな、旧時代のACは』
『因みに
『本当かい!?』
開発部の面々が関心を示している状況下。
ユミコがそう口を挟むと一足飛びに飛びついて来る部長さんである。
散逸した技術が目の前にあるのだから、
前のめりになるのも分からなくもないが、ちょっとばかりやかましい。
……まあ、ユミコとしては
現BASHOよりも射撃適性も反動制御も低いと云う、
普通に終わってる腕なので手放しても問題がないらしく。
アクリとリブラにも取引に使っていいと許可を貰っていたので、
そのまま商談に入ろうと画策した様である。
後、装甲に使うなら他に手に入っていた旧時代MT群のパーツでも問題がないと気付いたという話もあるのだが。
そんな感じで交渉が始まったモニタルームの方は兎も角として。
「技師さーん。とりあえずどうしましょう。
そっちはそっちでなんか盛り上がってそうですし、
こっちも解説してる内に戦闘再開、って気分じゃなくなってきてますし」
『あー……。一旦機体の修理も含めて、休憩しましょうか?』
「その方がありがたいかもです」
『――とりあえず、突っ込み良いですか?』
そんな感じで一息吐こうとするアクリにキャスから一つの問い掛けが。
「どうぞ」
『大型レーザーブレードにパイルバンカー仕込んだのはノリとかその辺りなんでしょうけど。
それより前に……いつの間にハンドガン型パイルバンカー完成させてたんですか。
妙に使い回しに手馴れてる辺り、大型レーザーブレードより先に造ってた臭いですし』
『あ、そう云えばそうでしたねー?
――あぁ、そのデータを基礎に外付けパイルバンカーを造り上げたって事ですか』
キャスの突っ込みに乗って来る女性技師さんである。
そんな二人の言葉にアクリはそいやそうだった、と思い出して。
「あぁ。そこそこの頻度で使ってたから
BAWSの依頼が終わった後に、とある伝手から手に入れた武器を使って改造した代物ですね。
なので知らないのも無理はないかと。……リブラー?」
そんな感じで軽めに説明を終えた後、己がメカニックに声を掛けるアクリである。
『はーい。そっちのデータも提供して良いんだっけ』
「うん。パイルバンカーの開発の礎にでも使ってもろて」
『分かったー。後で部長さんに諸々のデータ提出しとく。あぁ、LP-ARMSのデータはどうするの?』
「あー……。提供しても良いんじゃないかな?」
そんな感じの会話の中、知らない単語が出て来たのでとりあえず聞いて来る女性技師さん。
『LP-ARMS?』
『アクリさんがさっきの模擬戦で使ってた大型レーザーブレードとパイルバンカーの複合兵装の仮称、かな。
それぞれの頭文字に
『うわぁ……』
キャス、再びドン引きしない。
そんな突っ込みを敢行するアクリなのだが、呆れ返った感情が乗っかった溜息を吐かれ。
泣くぞチクショウ。
何か通信越しのリブラも乾いた笑いを漏らしてるしさ!
『ま、まぁとりあえずさ。アクリさん達、一旦格納庫に戻って来て。
修理と戦闘データを吸い出すから』
『そですねー。……しかしⅡの頭とコアと脚、これは総取っ変えした方が早いかもー?』
『なら僕もそっちを手伝うよ?』
『大丈夫ですよー。リブラ君はアクリさんのACの整備点検をお願いしますー。
修理完了して一息ついたら、更にデータ収集でやり合って貰うんですしー?』
『あぁ、そっか。ならちゃんと整備しないと』
そんな感じになったらしく、バタバタと移動を始めるメカニックさん達に気が早いなぁ、
なぞとか思いつつも相対していた相手へと声を掛け。
「あはは……。じゃあ。キャス。ちょーっと修理と休息に戻りましょっか」
『そうですねぇ』
先程の殺し合い一歩手前かの様な激しい戦闘の後くされなぞ全く感じさせないままに、
二人のACは格納庫へと歩みを進めるのだった。
その後、交渉も修理もつつがなく終えて、何度か模擬戦を熟して色々とデータ取りが捗ったか、相当に機嫌が良かったBAWSの開発部の一同で。
そのお陰か、報酬に多大に色を付けてくれた様で、
ユミコのお顔が輝いていたらしいと云うのはあまり意味のない余談である。
BASHOⅡとか新規パーツ類、元ネタであるらしい
松尾芭蕉と蕉門十哲から引っ張ろうとしたんですが、
大体使われてる上にどのパーツにどの名称を埋めるかで悩んだ挙句、
脳みそパチパチしそうになったので、
もういいやと開発部の皆さんに泥をかぶって貰うことにしましt(ド外道
まあそれはそれとして。(多分)みんな大好き重四脚用MT大型レーザーブレード。
AC用の実装はよ。左腕と左肩の装備枠潰しても良いですからはよ(真顔
そんな欲望駄々洩れでお送りします(ぁぁ
……他の武器も随時追加してくれてもいいのよ?(吐血