とあるルビコンのジャンカートリオ   作:清狼光牙

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 ものっそいお久しぶりです。生きてます(ちょ
筆が遅いのがモロに出てまして。
何とかしたいものですが……(吐血





22話

 

 

 

 

 

 

 「済まんな、突然呼び出しして」

 「別に問題ないですよ。こちとら木っ端の独立傭兵ですし、

時間的余裕があって、報酬がしっかりしているのであれば、どこへとでも来ますって」

 

 先の闇市にて大量にジャンク品を売り捌いてから暫し。

RaDer’sはとある依頼から、ガリア多重ダムへと来訪していた。

 

 そこの居住区画にある会議などに使っているのであろうそこそこ広い一室にて、

RaDer’sの面々――アクリとユミコの二人とインデックス・ダナムが面を合わせており。

リブラはと云うと、ガリア多重ダムに来たらお約束と化している、

整備班の指導の方へと拉致られて行ってしまった様で、ここには居ないが。

――と、その会話が途切れた時、軽く頭を下げるダナムで。

 

 「先に一つ、その件も含めた話、礼を云っておきたい。

――アクリ嬢やユミコ嬢が"アレ"の賭け金を企業のレーション十食分か、

1COAMを一口にすると云う助言をくれたお陰で、

解放戦線(我等)とその支援者達の内から、飢える者が大幅に減った。……助かった。ありがとう」

 「あぁ、あのルール、成功したんですか。

こっちも半分思い付きだったんで、上手く行くかはそれこそ"賭け"に近かったんですよねー」

 「娯楽が少ないからこそ、その方法がハマった、ってとこですかー」

 

 そんな彼の反応に気にしないで下さい、と遠慮しつつ言葉を返すアクリとユミコである。

で、ユミコがしみじみとした感で言葉を漏らして。

 

 「……解放戦線も出所は兎も角として、ある程度COAMは手に入る環境ではあるみたいですがー。

それ以外の必需品――一番に必要な食糧関連がミールワーム以外だと痩せ切った土地で作る作物……も、見込みがほぼ無い状況で。

残りは敵対勢力である、星外企業に泣きつく位な訳ですがー。

侵略してコーラルって云う可能性を秘めた物質を全て奪い取りたい星外企業(アイツ等)に取っちゃ、

土着の人々なんぞ心底どうでも良く、寧ろ居なくなってくれた方が後々にはありがたいでしょうから、

食料を売る旨味が全くない。

……それならまだ独立傭兵に流す方がよっぽど金にもなるし、恩も売れるし、ってトコですからー」

 

 ちょっとばかり胡乱な視線をダナムへと向けながらも、

直ぐ様にその視線を切ると、更に言葉を続け。

 

 「……だから、娯楽に飢えている独立傭兵達に夢を買うって謳い文句の下に供出して貰おうと提案してみた訳で」

 「うん。私達(独立傭兵)なら、ある程度食料は融通利くんで。

でもって、お金にはある程度困ってても、食いつめる程じゃないぐらいの連中をターゲットに、

アレ――ACタンクレースの賭博を持ち掛ければ……」

 「見事に釣れちゃいましたねー」

 

 悪どい顔をしている女子共である。女性がしていい表情ではないのはこの際気にしない事とするが。

実際、そのターゲットにした連中は、大方食料を掛け金にする事が多い上、

大体が浪漫だー、夢だー、と大穴を狙って無事死亡するので、

そいつらに関しては解放戦線(こちら側)の懐が痛まない上に食料を献上してくれる上得意様となっている。

 

 ごくたまーに、万レース券を取られる事はあるが、そっちは賞金……COAMで返しているので、

実質入って来ている食料類は完全に手元に残せれる。二重の意味で美味しいね?

 

 後、地元の独立傭兵の中でもある程度聡い者は、アクリ達の悪巧みに勘付いており、

賭け事と云う娯楽を楽しみに来た、を建前に定期的に食料を持って来てくれる者も居るらしい。

 

 そういう連中は企業から文句が言われ辛いであろう、

傭兵らしい刹那的な享楽に身を委ねる、と云う体の言い訳が出来る土台を作ってくれたRaDer’sには感謝をしている様だ。

口にする事は永遠にないであろうが。

 

 「――後は、対EN消費モードのシステムを組んでくれた分も助かった。

アレで死傷者が出る可能性がグッと減ったのでな」

 「あれは私達と云うよりはRaDの愉快な連中が悪乗りしただけですから」

 「ACタンクレースのファンにいつの間にかなってたんだっけ、あのシステム組んでくれた技師さん」

 「カーラから聞いた話ではそうみたいだよ?」

 

 コーラルかッ食らいながら見物するのが日ごろの愉しみになってるみたいだし、と続け。

コーラルの下りで、RaDは比較的マシな部類だとは云えドーザーはドーザーか、と苦い顔になるダナムである。

 

 ……因みに、この対EN消費モード。先にもアクリ達がほざいていた様に、

タンクレースにハマったRaDの技術者が、死傷者が続出してやり手が居なくなったら(己の娯楽的に)困るからと、

EN兵装を扱うAC用に組んだシステムであり、そのEN兵装の攻撃力をほぼゼロにする代わり、

当たったらブースタのエネルギーを強制的に排出させ、機動力を一時的に削り取る様に造られており、

妨害攻撃ありのレースの方でEN兵装持ちにはこのシステムを使用しないと参加出来ない様にルール付けされている。

実弾兵器の模擬弾使用も同様であり。

もしも破ったとしたら、RaD含めた多数のドーザーとルビコン解放戦線と相当数の独立傭兵から、

物理的にも精神的にも袋叩きに遭うので止めておいた方が良い。

 

 端的に云って地獄かな?

 

 「――で、そんな話をするだけで呼んだ訳では無いんですよね?」

 「……あぁ、済まん。先にその話だけでも伝えておきたかったと云うのがあったが……

適度なガス抜き的な娯楽の提供と、食糧難の緩和を同時に提案した件で、帥叔フラットウェルも礼を云いたいと」

 「興味ないです。……ってか提案した時言いましたよね?

コレは解放戦線内(身内)でもない木っ端クソ雑魚独立傭兵の気の迷い的な提案をちゃんと吟味した上で採用した貴方の手柄だって」

 「だが……」

 

 まだ食い下がろうとするダナムに、アクリは耳をふさぎアーアーキコエナーイとかやって聞かない振りをして。

そんな彼女の後頭部を軽く(はた)くと、ユミコは苦笑を漏らしながらダナムに言葉を投げた。

 

 「ツィイーにも何度も云われましたけども……わたし達は、自分の意思で自由気ままに独立傭兵やってるんですよー。

解放戦線にも企業にも取り込まれるのはご勘弁願いたいですってー」

 「まあ、分かってはいたが……残念だ」

 

 仕方ないか、と一つ溜息を吐くと、今回の依頼の件へと話を変える事として。

 

 「――今回呼び立てたのは、そのネタの元となったタンクレースの件なのだが」

 「ふむ?」

 「何、別に難しい事を云う訳では無い。

……ただ単に、そろそろ参加者の顔ぶれが同じでマンネリ化して来たと云う不満が徐々に出て来ているから、

飛び入り参加枠を設けようか、と云う話になってな。少々募集を掛けた訳だが」

 「ぁー……。それのデモンストレーションにも私達を使いたい、と」

 

 ダナムのそんな分かり易い言葉に頷きながら察した事を口にするアクリである。

 

 「そうだな。それもある」

 「と云うと?」

 

 彼女の反応に頷きながらも、何かを勿体付ける様な風に云い淀むダナムに首を傾げつつ聴き返すユミコ。

 

 「後は……内偵、と云う程でもないが、お前達以外の追加の参加者にどんな者が居るのかと云う調査をだな」

 「――ひょっとして企業からのちょっかいを懸念してます?」

 

 歯切れの悪い受け答えに少しだけ眉間にしわを寄せながらのアクリの問い掛けに頷く。

 

 「帥叔からの提言でな。可能性の話でしかないが、ある程度信頼の置ける相手に秘密裏に探って貰えと」

 「その信頼の置ける相手と云うのにわたし達に白羽の矢が立ったのは有難い限りですがー。

企業と結託して騙くらかすかもしれませんよー?」

 

 そんなやりもしない事を嘯くユミコの言に頭痛を堪えながら溜息を吐き出す様に言葉を返すダナム。

 

 「……何でこの娘共は事ある毎に露悪的な事ばかりしか云わんのだ。――ゴホン。

まあお前達がそんな事を云い出すだろうと予測していたか、これの話を幹部級で通した時、

直ぐ様にツィイーがアーシルと共にお目付け役をすると名乗り出て来てな。

――それで悪い事は出来んだろう?」

 「めっちゃ行動予測されちゃってるねぇ」

 「やかましーです」

 

 彼と、解放戦線内の友人に生態を把握され、

事前に潰されていた感のある言葉に、苦笑し合いながら反応する幼馴染ーズである。

 

 「とりあえず、了解しました。今回のお仕事、頑張らせて頂きます」

 

 そんな感じで、今回の依頼は始まるのであった。

 

 

 

 

 

 そんな感じで、第何回になるか分からないし誰も覚える気が無さそうな気がしないでもないが、

チキチキ! タンクAC猛レースの会場に来たRaDer’s(リブラも整備班への一通りの指導完了後、合流したらしい)。

今回は生身でガリア多重ダムの氷上を歩く事になるので、一同も相当の厚着である。

まあパイロットスーツは防寒具としても優秀なので、持っている者はそれを着た上で更に着込んで完全体になっている様であるが。

だって寒過ぎるのって嫌じゃない?

 

 「「「ちょーッス」」」

 「……えっと、リブラ君。この娘っ子達、何を云っているんだい?」

 「さ、さぁ?」

 

 ダナムの指示の下、指定された場所へと移動した面々は、

先に来ていたらしい女性と男性のコンビ――ツィイーとアーシルの二人に出迎えられ。

右手を軽く揚げながら、挨拶であるらしい意味の不明な鳴き声を上げる三名の姦し娘共と、

意味が分かっていないらしい男共の温度差の中、話は始まる事となり。

 

 「――ぶっちゃけ、帥叔がそんな事云ってるけど、ほぼあり得ないんだよねぇ」

 「だろーね。企業なんぞ、ルビコン解放戦線なんぞいつでも捻れる、って自負ってか慢心がすげぇから、

切羽詰まってる状況でもないなら、最低限の情報収集しかしないだろうしね」

 

 ツィイーのそんな言葉に頷きそんな言葉を返すアクリである。

つうか、ちょっと偵察ドローンでも飛ばせば隠れる場所なぞほぼ無いと云える、

単なる大型の水力発電所でしかないガリア多重ダムの戦力なぞ簡単に察せる事は出来るであろうし、

捻り潰すならそのまま己がヴェスパーないしレッドガン(戦力)ですり潰せばいいと考え、

破壊工作を行う為のスパイとかも潜ませるコストが勿体ないとなっていそうである。

奪って使うと云うのであればまた話は変わって来るが、企業自身も自前の発電施設がある以上、あまり意味はないだろうし。

 

 「ま、ちょっと怪しい程度の連中に軽く聞き取りして終わり、ぐらいだろうねー」

 「でもそれだったら何で私達呼んだし」

 

 その言葉にジト目で突っ込みを敢行するアクリである。それはそう。

そんな彼女の突っ込みに、ああそれ、と軽く言葉を返すツィイー。

 

 「実際にもっと良く見て貰って新しいアイディアを貰えないかなー、と云うダナムの小癪な考えだよこれ」

 「一応上司っぽい人を小癪云うなし」

 

 それもそう。

アクリも地味に辛辣ではあるが、ツィイーの云い分よりは多少マシである。多少は。

そんな彼女たちのやり取りに、長身の青年がその人の良さそうな表情を曇らせつつ二人に声を掛け。

 

 「――ツィイーもアクリさんもあまりダナムを虐めないで欲しいかな?」

 「ちょくちょくあの人にはゲンコ受けたりしてるんだから、ちょっとぐらいグチっても良いじゃない、アーシル」

 

 その青年――アーシルに、愚痴ともつかない事をぼやきながら唇を尖らせるツィイーで。

 

 「こっちは部外者だから云いたい放題しても良いかな、とか」

 「あ、アクリずっこい!」

 「……ツィイー?」

 

 ちょっと冷えた声音で身内の娘っ子の名を呼ぶアーシル。

そんな彼の言葉に、顔を青くしながら謝罪の言葉を返すツィイーである。

 

 「……ゴメンなさい」

 「あまり、我儘ばかり云わないようにね?」

 「すげぇ。あのツィイーの手綱取れてる……」

 

 ポロリと零れ出た言葉にアーシルに気付かれない程度にギロリと睨みを利かせて来るツィイーで。

おぉこわいこわい。

 

 そんな中、瞳をキラッキラに光らせて辺りをきょろきょろと見まわしていたリブラがはしゃぐ様に言葉を発し。

 

 「――うわ、すっごいね、あのタンクAC!」

 「……何故タンクにでっけぇなっげぇマフラーを……?」

 

 彼が指差したタンクACは何と云うかひっでぇ有様で。

武器を装備していない辺り、妨害攻撃無しのレース参加機体なのであろうが。

 

 因みに今の所のレースジャンルとしては、妨害攻撃無しの単なるレースであるノーマル。

妨害攻撃ありのレースであるサバイヴと云う二種類のレースが開催されているらしい。

……先のダナムとの話でもあったルールの制定により比較的安全にタンクレースが出来る様になったので、

死亡事故が出る事も無く、機体ダメージも激しく機体同士をぶつけ合ったとしても、中破止まりになっている。

リブラの指導した新人メカニック達の実地訓練にも最適なので、レース期間中は有償でリペア屋もやっている様だ。

中々に抜け目ないね、フラットウェルの差し金かい?

 

 それは兎も角として。

 

 ――そのACはTIAN-QIANG(大豊頭)NACHTREIHER(シュナイダーコア)

WRECKER(RaD土建腕)BORNEMISSZA(ベイラムタンク)と云う一見スピードを意識してそうなのだが、

全くの無意味なアセンの上に、タンクの後ろから使う意味が無いので何で付けてるのか不明なタケヤリ的なマフラーが出っ張っており。

 

 古の珍走団型かな?

そんな馬鹿馬鹿しい事を考えるユミコである。

 

 辺りを見回すと、似たようなアセンのタンクACどもが数機駐機しており。

……どうやらこの辺りは、ノーマルに参加するACパイロット共の待機場になっている様だ。

 

 それにしては濃ゆいアセンブリのACが多いが。

視線を移すと、目に留まった一機のACの感想を漏らすリブラ。

 

 「あ、あっちの、チャティのACの試作型に似てる」

 「BASHO頭にメランダーコアと腕にBASHO改造タンク脚かあ。……あれ? 何で改造タンク脚があるの?

あれってほぼRaDer’s(ウチ)が独占改造してたよね?」

 「――あの脚、RaDのエンブレムが印字されてるみたい。皆、考える事は同じなのかもー」

 「流石、リブラの元同僚」

 「ツィイーさん、それってどういう意味かなッ!?」

 「言葉通りよ」

 

 そんな感じにわちゃわちゃとしている一同である。

そして、その四人の後方で妙に生暖かい視線で穏やかに微笑んでいる好青年。

 

 中々にカオスってる気がしないでもない。

まあそれはそれとして。

 

 「……ノーマルの待機場の方は、デッドウェイトにしかならない違法改造してるバカが数名いるだけで問題はなさそうだねー?」

 「多分半分ネタでやってるんじゃないかな、あの人達」

 「だろーね。……んー、いっその事、ネタアセンでタンクかっ飛ばすレースがあっても良いんじゃないかな?」

 「違法改造マシマシで?」

 「マシマシで」

 

 独立傭兵ってそう云うの大好きでしょ、とほざくとなにそれウケると云う反応。

アイディアの一つが浮かんで新たなジャンルレースが誕生しそうな悪寒がする。

 

 まあそんな感じで軽口を叩き合いながら、次のサバイヴの方の待機場へと歩みを進める一行である。

 

 

 

 「――あれ?」

 

 サバイヴの方の待機場。どうやらこちらの方が人気の様で、予想以上にタンクACが待機しており。

仕方がないので手分けして調査をする事になった様で。

安全を鑑みて、アクリ一人と、ユミコにツィイー。そしてリブラとアーシルに分かれたらしい。

 

 おい一番野放しにしたらやべー奴を放流しているのはどういう了見だツィイーとアーシル。

……まぁ信頼してくれていると思っておこう。ユミコとリブラの方が大事だからって事じゃないよね?

 

 そんな阿呆な思考を回すが、気にしたら多分何かが壊れそうなのでスルーする事として。

軽く辺りを見回すと、肩を落としながら溜息と共にボヤキも漏れ出て来て。

 

 「こっちもこっちでカオスってるなぁ……」

 

 幾ら殺傷能力自体は皆無になるとは云え、

模擬弾であっても至近距離で撃ち込まれたら薄い装甲位は抜ける可能性はあるからして、

装甲(それ)を厚くするのは分からないでもないが……

なんぞこれ、と云いたくなるようなレベルの分厚い反り立つ壁を見上げるアクリで。

 

 「これ小型のジャガーノートだって云われても納得しちゃうよ?」

 

 特に目立っていたACをほぼ真下から仰ぎ見ると、

元々タンク脚は、前面に小さめのブレードを持っているのだが、それを取り外し、

タンク部から位置合い的にはコア部の中ほどまでを覆いつくすレベルの装甲板的なブレードが取り付けられており、

横部のキャタピラ辺りにもそこを覆う様にカバー的な装甲が取り付けられていて。

 

 いやこれ完全に自重で機動力死んでるよね、レース大丈夫なん?

そんな栓も無い事を考えてしまう。

 

 ……装備が、両肩レーザーキャノンの両手レーザーハンドガンと云う感じなので、

他の出走者の機動力を完全に奪ってからクリアすると云うコンセプトか。

ほぼ間違いなく上手くは行かないであろうが。

 

 「いやー、やっぱ妨害攻撃ありのレースだとイカツイの多いわー。

……ぉ、あっちの両手両肩ガトリングガンだ。……ロマンではあるけどさ。

模擬弾とは云え、フルバーストなんぞしたら、足出ちゃうんじゃないの?」

 

 独り言を呟きながら辺りを見回し、歩くアクリである。

ああ、私も出場するんだから、後でRaDer’s(ウチ)のACもアセン見直さないと、とか思考を回し。

 

 そんな折。

ふと目に付いた一機のAC。

 

 リブラに聞かねば正確かは分からないが、

見た感じ総てが正規品であろう大豊の頭コア腕に、ベイラムタンク脚。

それだけを見るならば、ベイラム寄りの独立傭兵かと予測はできるが……

肩部に簡易的な目張りと云うか、エンブレム隠しにしか見えない雑なペイントが上塗りされている様子で。

ものすごーく嫌な予感を感じつつも、寄ってみる事とする。

 

 「――っだぁッ!! そこそこ割りが良さそうなバイトだっつって云ってたけどよ!

何で俺が整備兵の真似事なんぞしなきゃなんねーんだよッ!!」

 「喧しいわ。とりあえず聞いてる限り1レース毎に優勝賞金、50万だぞ? 高ぇパーツすら普通に買える金額だ。

あのクソ親父をブチ殴る為にも隠し札の為の資金はあった方が良いだろが。おら、そっちのハッチ持て」

 「まあ、そうなんだがよ……っと重ッ!?」

 

 すると、そんな感じの会話がタンク部の天板の方から聞こえて来て。

アクリは楽しそうだなー、と小さく笑いながらその面を声のする方へと向けると、

一人の男と目が合った。どうやら、小さく笑った時の声が彼の耳に入っていたらしい。

 

 「――ンだよ、何か用かよ」

 「あ、いや別にそう云う訳じゃないけどさ。偶々通り掛かったら、なんぞ楽しそうにしてるなーと思ってね」

 「何処が楽しそうだってんだ! ……チッ、見せもんじゃねぇぞ、ったく……」

 

 舌打ちばかりしてても良い事はないよ若人さんや。

そんな栓無き事を思ってしまうアクリ。いやお前も若人だろうが。

 

 「済まんな、ツレが喧しくて」

 「ま、こちとら独立傭兵してるし。

荒くれの反応なんて大体そっちのお兄さんと似た感じだって知ってるから、気にしてないよー」

 

 先の男と言葉の応酬をしていたもう一人の方である大男も先の発言からアクリが居たのに気付き、

彼女に向かい謝罪の言葉が投げられるが、こちらも慣れたもので問題ない事を告げながら軽く笑う。

 

 中々の美人なのに独立傭兵とは勿体ねぇなあ、とかその大男は内心思ったりしつつも話を続け。

 

 「……レースの参加者って認識で良いか?」

 「ま、そだね。敵情視察兼息抜きのお散歩中だよ。

どーいうアセンでどーいうカスタムをやるべきかの勉強にもなるし」

 「さらっとやり口盗む宣言するとか、一応敵の目の前でチャレンジャーだなおい」

 「こーいったお祭り騒ぎは、こう云う所でも楽しんでこそナンボだと思うからねー」

 

 それで勝ったら賞金も貰えるとなったら勿論やるでしょ!

とか開けっぴろげに楽し気に云うアクリに大男はそらそーだわな、と楽し気に返し、HAHAHAと何故か変な笑い声を上げて。

何か地味に波長が合ったらしい二人である。

 

 「何やってんだよヴォルタよぉ……」

 「いやー、中々おもしれー女だから楽しくなってつい」

 

 白い眼を向けながらそう云う男にヴォルタ、と呼ばれた大男は悪びれもせずに笑う。

……はて? 何かどっかで聞いたような気がする名前だのぅ、とか思うアクリ。

更に嫌な予感が大きくなるが、そんな彼女の思考をぶった切って来るかの様に大男は再度軽い調子で訊いて来る。

 

 「やっぱ独立傭兵的に金欠でか?」

 「うんにゃ。懐にはまだまだ余裕あるけど、

楽しそうだから一回ぐらいはレース参加してみようかなーってさ。そちらさんは?」

 「ほぅ、なかなか稼いでる傭兵の様だな。

……こっちは色々と入用でな。今は出来る限り小遣い稼ぎしときたいんだ」

 「確か三位入賞までは賞金出てたはずだから、お互いに頑張りましょう?」

 「おう。でもやるからにゃ、狙うはトップだ」

 

 そんな感じで和気藹々と会話をしている二人である。

 

 「おい、いい加減にしろやヴォルタ……」

 

 ハッチ部を持たされている男の方は、

律儀にそれを持ったまま無視された上に仲良いやり取りを始めたので、

少々キレ気味にそんな言葉を漏らし。

 

 そんな彼の発言にアクリとヴォルタと呼ばれた大男はつい、と視線を交わすと。

 

 「……あのお兄さん、こらえ性がないね?」

 「そうなんだよ、こらえ性がねぇんだわコイツ」

 「ああ、やっぱり?」

 

 やれやれ、と云った感で本人の目の前にてそう扱き下ろす二人。

中々に鬼だね君達。男の方は表情を引き攣らせながら、ブチギレ直前な震え声で口を開く。

 

 「……なぁ、そろそろぶん殴っていいか?」

 「「だが断る」」

 「ほんと手前等仲良いなッ!? 本当に初対面かッ!?」

 「「初対面」」

 

 見事なユニゾンである。いやだから何でそんなに息が合っているのお前等。

そんな彼女等の反応に更に大きく機嫌を損ねたか、抱えていたハッチ部を投げ落とし、怒鳴り声を上げるその男。

 

 「――ヴォルタは兎も角としてだ!

小娘、テメェ俺を何だと思ってやがる! 手前の様な土人がレッd「おおっと足が滑ったぁッ!!」――ぐげがぼッ!?!」

 

 男がキレ気味にアクリに云い放とうとした台詞を思い切り遮り、

足が滑った、とか云いつつアクリが仕掛けたのは口元を覆う形でのラリアットである。

足が滑ったとは。

 

 と云うか、かの男が不用意な単語を云い放とうとした直前に、

アクリは嫌な予感が間違っちゃいなかったか、と内心嘆きつつも、

タンク脚に手を掛け足を掛け、一息で登り切った上でそいつに対しそんな事をやってる辺り、

生身ででもお猿さん的変態移動が出来るらしい。やっぱやべーわコイツ。

 

 それは兎も角として、不意打ち気味に美少女(笑)に密着され、

ちょっとばかりドギマギしつつも文句を付けようとするその男。

 

 初心かな?

 

 「な、何しやがるテメェッ!?」

 「ダァボッ!!テメェこそ 今この場この状況下で何口走ろうとしてやがるッ!?」

 「うお口悪ッ!?」

 

 だがしかし。キレ気味にそんな言葉をブン投げる男に、反論のクッソ口の悪い台詞が迸り。

黙っとけボケ、と今一度その男に言葉を掛けてから、アクリは傍らの大男へと視線を向け口を開く。

 

 「そっちのは何で私がこんな事したのか、分かってるよね?」

 「――あァ。相棒の不始末の尻ぬぐいをしてくれて、正直助かった」

 

 睨み付けるかのようなその眼光の下、理解を求める彼女の言葉に、

ヴォルタは苦りばしった表情を浮かべながら謝罪の言葉を返して。

 

 「――オイ、ヴォルタ!?」

 「イグアス、黙ってろ」

 「ッ!?」

 

 そんな彼の反応に詰め寄ろうとする男――イグアスであるが、有無を云わせぬ重い声音により気圧され。

やっと静かになったその場にて、大きく溜息を吐くと、アクリは噛み砕く様に説明を始めて。

 

 「――アンタ、今この場で"その部隊"の名を大声で云ってその関係者だって匂わせたりしたら、運悪く聞いてる人が居たら私刑で殺されるよ?

巻き込まれ事故的にそっちの大男もほぼ確実に、さ?」

 「――ッ!?」

 

 その彼女の醒め切った台詞に思わず振り向くと、厳しい表情で頷く大男。

 

 「そっちさんは、この辺りの連中にとっては怨敵なんだ。

それなのに、何で遊びに来るかなぁ……。

今のルビコンって娯楽は少ないし、お金稼ぎもまっとうなのは難しいから仕方ないっちゃ仕方ないんだけどさ。

……それでもこう云う事やりたいなら、もう少し隠す努力をしろっての」

 

 "その名称"を適度にぼかしつつ小声で説明を続けるアクリに状況がある程度理解できたか沈黙するイグアス、と呼ばれた男。

 

 「多くの同胞を殺し、そして多くの己が住み慣れた世界を削り取って行った極悪非道な企業の使い走りなんだよ、アンタ等。

……それで、ガリア多重ダムと云う彼等の縄張りの上でこんな状況下。アンタの頭が湧いてても、分かるでしょ?

――口は禍の元。私の親友の先祖が居た国の諺だけどさ。云って良い事と悪い事をちゃんと把握しなさいな」

 「――チッ」

 

 更に云い募ると、バツが悪そうにそっぽを向き舌打ちする。

そんな彼の反応にヴォルタは大きく溜息を吐くと、またイグアスが済まん、と告げつつ疑問に思った事を口にして。

 

 「――しかし、何でお前は俺達を助ける真似を?」

 「一応私だってそっちのの云う土人(ルビコニアン)で、解放戦線寄りではあるけどさ。

独立傭兵でもあるから太そうな所と顔繋げれそうならそれもアリなんだよ。

それに、アンタ等……いや、7には以前殺り合った時、色々と戦い方の勉強を強制的にだけど、させて貰ったから。

それの礼も兼ねて今回限りは、だよ。次は期待しないようにね?」

 

 果てしなく物騒な物言いをした上に壮絶な笑みを浮かべるアクリの台詞に思い切りよく表情を引き攣らせつつも、

以前G7()から彼女と同様の物騒な笑みと共に聞かされた話を思い出し、問い掛けるヴォルタであり。

 

 「……お前、まさか。ガリア多重ダム(ココ)でハークラーが殺り合ったと云っていたクソ女か?」

 「わぁなんかひっでぇ云われ様。……まぁ、間違っちゃいないんだけどさ」

 

 彼の言葉に偶然その時に雇われててね、と返しながらアクリは頷く。

そしてあからさまに不機嫌になるイグアスが呟く様に吐き捨てた。

 

 「あぁ、何かあのクソ野郎、そんな事云ってやがったな……」

 「コイツ、この所G7(アイツ)との模擬戦で負けが込んでて、な」

 「ヴォルタ、一々いらん事を云ってんじゃねぇ」

 

 土人にも、己と同等となりうる実力者は居る。それを理解したのであろう。

己が研鑽を更に重ね、G6(レッド)は元より、G5(イグアス)にもそこそこ勝ち越し、

G4(ヴォルタ)も何度か冷や水を浴びせ掛ける程となっている様だ。

 

 ……まあ、そんな内部事情全てを独立傭兵(アクリ)に話す訳には行かないが。

 

 ――と、そんな折。タンクレースの受付が終了する三十分前だとダム湖氷上に設置されたスピーカーから流れ。

その放送を聞いた途端、アクリはうわ、早く受け付け終えないと、と云いながら、

慌てて己がACの下へ帰ろうとしつつレッドガンの二人へと声を掛け。

 

 「……とりあえずさ。次もタンクレースに参加する気があるんだったら、

もうちょっと隠し通せるように頑張んなさいな。次は庇えないだろうし。

……だから、出来るならもうこれっきりにして欲しいのが正直な所なんだけどね?」

 「ああ。アンタの指摘の通りなら、予測よりもレッドガン(こっち)への当たりがキツそうだしな。

今回やれるだけやったら、止める気だ」

 「なら良し。これっきりにするんなら解放戦線の方には黙っとく。

そんじゃ、私も準備があるから、コレでお暇するねー」

 

 そんな彼女に、ヴォルタは最後に一つだけ、と声を掛け。

 

 「――ああ、そうだ。一応そちらさんの独立傭兵としての名、聞いといて良いか?」

 「そいや、名乗ってなかったね。独立傭兵"RaDer’s"。

ジャンカーもやってるから、状態の良いジャンク品が欲しいなら気軽に声かけて下さいな」

 「あァ、必要があったら連絡する」

 「はいな。それではー」

 

 そんな言葉と共に男二人から背を向けると、駆け出すアクリである。

それを見送って暫し。イグアスが何となく疲れた声音で呟き。

 

 「何なんだあの女は……。だが、ハークラーの戦闘力が上がったのはアイツが原因、か」

 「だからっつって、アイツにいきなり喧嘩売るんじゃねぇぞ?

ハークラーからの詳細な話を聞くに、RaDer’s(アイツ)

トリッキー過ぎる動きと普通じゃ考えられん方向からカウンターを仕掛けて来るらしいからな。

教本通りの戦い方をする今のお前に取っちゃ、天敵だろ。完封すらありうるだろうぜ?」

 

 無作為に無軌道に相手の死角と隙を狙い、搦め手も厭わん上に下手に攻撃をすれば、

それを呼び水にして反撃を繰り出すその動きに対応できるのか?

彼の言葉に渋い顔をするイグアス。それから暫しの沈黙。

 

 「……もう少し、訓練量を増やすか」

 「そうしとけ。俺も付き合う」

 

 その暫しの沈黙の中で何か思う所でもあったのだろうか。

そんな事を云い合うイグアスとヴォルタである。

 

 

 

 

 

 

 ……この後。合流したRaDer’sの面々+αはレース参加を申請し受理されたノーマルとサバイヴクラスのレース。

 

 アクリの結果は散々で、最下位は無かったが何度やっても下位にしか入賞できなかったらしく、

最終的には大型AC輸送ヘリ(自宅)にて不貞寝する姿が発見される事となった様である。

どうやらタンク脚とは致命的に相性が悪いと云う結果になってしまったらしい。悲しいね。

 

 逆にレッドガンコンビの方は何度か優勝した様で、

アクリを煽る姿をレース参加者の独立傭兵数名が何度か見かけたとかなんとか。

 

 今回はアクリに取っては、中々に散々であった様だ。

 

 

 

 

 

 後、蛇足ではあるが、アクリ達が調査がてらに飛び入り参加の連中から見聞きした話から着想を得て、

指定された速度まで増速した後に指定範囲内に止まる事が出来るか、と云うレースタイプのハードストップ。

ネタ(改造)系のアセン専用レースのドレスアップと云う新たな二つのタンクレースがその後に追加されたと云う話である。

 

 

 

 






 感想を頂いた方からのネタを僕なりに膨らませた感で書きました。
……まあ、タンクレースそのものは端折っちゃってますけど(吐血
戦闘も全くないってのに、文字数が今作で一番多くなっているのは何でなんだろう……。

 と、兎に角、更に精進する事にします。
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