とあるルビコンのジャンカートリオ   作:清狼光牙

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23話

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 タンクレースのアレコレを終わらせてから暫し。

RaDer’sの一行は、とある汚染都市の近所にて大型AC輸送ヘリ(自宅)を停めて休息を取っており。

 

 「――と、云う事で、本日は私のトレーニングに付き合って貰う」

 「ど云う事なの??」

 「いや、そっちこそ何云ってんのよ? アンタが云い出したんでしょ、ダイエット(何とか)しろ、って」

 

 カーゴの格納庫内。いきなりそんな事を云い出したアクリにツッコミを入れるはユミコであるが、

半眼で思い切りよく反撃の口撃を受け大いにたじろいでしまう。

 

 ――数日前。シャワー室の脱衣所となっている所にリブラがいらないジャンクから、

体脂肪計と残留コーラル計付きの体重計を造り上げて設置したらしく。

ユミコは興味と恐怖から、それに乗ったらしい。

その直後に、ぎにゃーッ、と云う汚い鳴き声が脱衣所から響いた訳だが。

 

 それから操縦室にリブラも居るにも拘らず、バスタオル一枚巻いただけの姿で現れてアクリに涙目で詰め寄って、

アクリのご飯が美味しいからー、と自分が太った事を棚に上げたウザ絡みしながら、何とかしろとギャーギャー喚いて。

その直後にアクリから殴る蹴るの暴行を受けたようだが。DVかな?

 

 あと思春期の男の子にそんな姿を見せるんじゃない。性癖が歪む。

実際、顔を真っ赤にした状況のままに思い切り顔を明後日の方向に向けていたご本人が居た事だし。

 

 そんな過去はそれとして。

 

 「つうか、アンタも私の言葉に従って耐Gスーツ着ているじゃないの」

 「何で着ろっつったのか理由云ってなかったやんけ」

 「運動する為だよ察せや」

 「これ着て運動するとは」

 

 ――因みに、三名ともあの曲線がもろ分かりな耐Gパイロットスーツを着込んでおり、

薄いが頑丈であるパイロットスーツと同じ素材で出来ているグローブを装備している様だ。

 

 「……やっぱ、ユミコってそこかしこプニっててもやべーな、そのプロポーション……」

 「やかまし。プニってる云うなし。アンタのトレーニングでそれ解消するんだからねッ!?」

 「あ、あはは……」

 

 じとりとした視線をユミコ……の身体へと向けつつ、怨念が籠り切ったかの様な声を上げるアクリ。

リブラもそれを理解しているのか、乾いた笑いを垂れ流しながらも、視線がフラフラと彷徨っている感じで。

粘着性のありそうな視線でユミコの肢体を嘗め回すかの様にしているので、更に居心地が悪い。

 

 「特にチチシリフトモモがやべぇよね?」

 「それ全部では。いやそれ以前にわたし太くねぇし。

……まあこのスーツ、アクリのスペアなのか、お胸とお尻がキツいけどさ」

 「そのスーツ、ユミコ用にって一番大きいサイズ選んで買ったんだけどッ!? やっぱくっそ太ぇじゃねぇかッ!」

 「太くねぇッ! これはムチっとしてると云うんですぅー」

 「つまり太いんじゃねぇか」

 「ンだとコラ」

 「ま、まあ二人共、落ち着いて。ね?」

 

 思い切り良く喧嘩腰で云い合う二人を宥めるかの様にリブラは声を掛けるが、

その彼の言葉は完全に裏目に出た様で、ユミコから問われ。

 

 「……リブラ的にはどうなん? わたしの身体つきってさ?」

 「また男の子にはすっげぇ答え辛い質問を。……でも正直私も気になる」

 「ぅえッ……!? え、ええとその……」

 

 これは完全に逆セクハラである。お巡りさんこいつ等です。有罪判決である。

顔全体を真っ赤にしながら云い淀むリブラの姿に萌える二人の女子(おなご)共。

いや、流石に酷過ぎるから止めた方が良いと思うが。

 

 それから、そこそこの間。

 

 「そ、その……二人共、す、すっごく、え、えっちぃくて、

綺麗な身体だし僕はす、好き、だけど……。恥ずかしいから、あまり、見せないで……」

 

 蚊の鳴くかの様な、ものっそい小さな声でそんな答えを返す、お顔が真っ赤なままのリブラ。

いやこのルビコンに蚊なんぞ居ないけど。

 

 そんな彼の声は何とか聞き取れたのか一瞬の沈黙の後、瞬間湯沸かし器の如くに一瞬で赤面するアクリとユミコ。

リブラに向かい口撃したのはこいつ等の癖に、防御力は皆無の初心娘共である。

そっかーリブラの好みに合致しちゃったかー、等と妙に嬉しそうにニヤニヤしながら意味不明の供述をしている姿は不審者のソレで。

 

 お巡りさん、こいつ等へんたいふしんしゃさんです。

 

 それから数瞬。気持ち悪いぐらいにニヤついていたのにいち早く気付いたアクリは、

己が両頬を勢い良く張った。

 

 バッチーン、と中々に良い音がカーゴ内に響き渡り、思わずギョッとして彼女に視線を移すユミコとリブラ。

アクリは涙目を浮かべながらも、四つの瞳に晒されつつ話を戻すことにした様で。

まあ勢い良く話が本筋から脱線していたので、当然と云えば当然なのだが。

 

 「――それはそれとして。とりあえず軽く身体を解す事から始めましょうか。運動する前の準備は大事、大事」

 

 そう云う事らしい。

 

 

 

 

 

 先ずは、入念なストレッチをアクリ自身が動きを交えて教え。

ある程度身体が温まって来ると、とりあえずこんなもんかな、等と小さく口にする。

 

 「んじゃあ、ある程度身体もほぐれたし、私に倣って……は、流石に無理か。

……うん、とりあえず見学してて」

 「「?」」

 

 肩や腕、膝や足首をぷらぷらと揺らし、更に解しつつそんな事を云うアクリに首を傾げる二人。

 

 「んじゃま、いくよーッ!」

 

 その一言と共に、結構な速さで駆け出すアクリ。

で、走り出した先には、色々なジャンクパーツがゴロゴロと転がっているスクラップ置き場があり。

 

 「アクリッ!?」

 「あー、そう云えば、やってたなぁ……」

 

 驚きの声を上げるユミコに、

ほぼ常時カーゴ内で作業をしているリブラが今思い出しました、と云った感で呟き洩らし。

 

 その速度を維持したまま、残骸に手を掛け、足を掛けて数mの高さのスクラップを一瞬で登り切った後、

直ぐ様に飛び降り着地。更に走り出す。それを何度も繰り返し、

時にはACやMTの装甲板やら腕や脚等を壁に見立て壁蹴りをした上で、

己が身長の数倍に至るかような大きいスクラップに手を掛け上り切る等をしつつ、

1分も掛からない内にそのスクラップ置き場を駆け抜けて。

 

 「うっわ、すっご……。確か、パルクールって奴だよねこれ」

 「そんな名称なんだあれ。アクリさんが云うには、全身運動だし、主に使う筋力を鍛えやすいからって」

 「この動き、ACにも取り入れてるんだろうなぁ」

 「強化人間の人みたく神経接続をしている訳じゃないから完全に、って訳には行かないだろうけど、そうだと思うよ?」

 「――そ云えば、ちょっと話は変わるけどさ」

 「どうしたの?」

 

 そんなやり取りをしつつも視線はアクリの奇行へと注がれつつも、ユミコはふと思い至ったのか、リブラへと質問をしてみて。

 

 「わたしは分かるんだけどさ、どうしてリブラも同じ格好してるの?」

 「凄く今更な突っ込みが。……メカニックも体力勝負な所、あるからさ。

僕もちょっとでも鍛えとかないと、って思って。ユミコさんが準備している内にアクリさんに話聞いて貰って、

それじゃあ参加する? って聞かれたから、それだったら、って感じかな」

 「へぇー」

 

 そんなユミコとリブラのやり取りを尻目に、更にアクリは走り続けると、ジャックインザボックスに駆け寄りそのままよじ登り始め。

一応手足を掛ける箇所は相応にはあるが、どう考えても指が掛かる箇所に手足を伸ばしても届かない所もあると云うのに、

飛んで跳ねて片手片脚で己が自重を支えてさも簡単に上り切ると直ぐにそのまま降り始めてさっさと降り切ると、また駆け出し。

 

 「で、命綱すらない状況でのボルタリング的な上り下り、と」

 「うーん、真似したら直ぐに失敗して大怪我しちゃいそうだし、

やり切ったっとしても、全身筋肉痛で死んじゃいそう……」

 「それなー」

 

 己がACも先と同様によじ登りだして。

……少々の時間の後、登頂したACの頭の上でふう、と一息ついたアクリは、眼下の二人に声を張り上げた。

 

 「理想はこれぐらい出来れば良いかなーって感じー。

流石に、慣れてない人にコレやれって云っても無理だし、強制する気も無いから、

とりあえずはスクラップ置き場のスクラップを上ったり下りたりしてそこの置き場を何往復かすれば、

相当負荷掛かるだろうから、それである程度のトレーニングになると思うよー?」

 

 のほほんとそんな事をほざくアクリに、ちょっとばかり頬を引き攣らせ、ユミコは突っ込みを敢行して。

 

 「アクリの身体能力とその引き締まった身体、体幹の凄さの一端が見れたけど、本気で素人には無理じゃん!?」

 「そうだよねぇ。後、手や足を掛ける位置とか、バリとか破損部で怪我する危険がないかの判断も必要だし」

 「ああ、それでパイロットスーツを着ろって云ったんだね、アクリ……」

 「下手な刃物や銃弾ぐらいなら通さないからね、このスーツ」

 「そ云う事ー。じゃあ、軽めに始めましょうかー」

 「「おーッ!」」

 

 そんな感じでアクリの号令と共に、運動を開始するユミコとリブラなのである。

 

 

 

 それから十数分後。

二つの屍(比喩表現)が床に転がっており。

 

 「ヒィ……ヒィ…… 」

 「……ゼハッ。ふぃいー……」

 「まだ二往復しかしてないけど、大丈夫ー?」

 

 その屍達に声を掛けるは、ちょっとばかり熱くなっている吐息を吐き出すアクリであり。

そんな彼女の言葉に抗議する様に、息も絶え絶えのままにユミコは気だるげに反論し。

 

 「わたし等は、あ、アンタみたいに……体力お化けじゃあ、ないんだよ?」

 「ふぅ、ふぅ……。でも、凄いや……アクリさん。

僕達……と、同じ様に、やってる筈なのに、殆ど息、上がってないし」

 「更に、わたし、達よりも、アクロバティックな、動きしてた、ってぇのに」

 

 装甲板()を蹴って、宙返りも交えつつ一メートル程のスクラップの上に危なげなく飛び乗るとか、

壁蹴りに次ぐ壁蹴りでスクラップ間を高速で通り抜けるとか。

最早ギャグのレベルじゃないかな、等と息を整えながら突っ込むユミコに苦笑を交えつつアクリは応え。

 

 「ま、戦闘要員と後方要員の差はあるよね。あと、慣れも。

荒事、私。支援、キミ等」

 「何で、突然そんな話し方を……ッ!?」

 「何となく」

 

 何故か最後の方だけカタコト会話になったので更に突っ込みを敢行するが、

適度にスルーされて憤るユミコである。

 

 そんな感じなやり取りをしていると、カーゴ内のスピーカーから声が響き。

 

 《――仲良くじゃれ合っているのは良いのだが。皆、報告がある》

 「これのどこをどう見て仲良く、ってなるのかな、レティッ!?」

 

 声を発したのは、大型輸送ヘリ(自宅)の管制をしてくれているAIである、レティであり。

その台詞に思い切りよく突っ込むユミコなのだが。

 

 「――レティ? こう云う時、殆ど絡んで来ないってのに、どしたん?」

 「アクリもボケをさらっとスルーしないで欲しいかなッ!?」

 《ユミコの事はどうでも良いんだが、少々面倒な事になりそうなんでな》

 「面倒事?」

 「オイコラ。いい加減にしないとわたし泣くぞ?」

 

 中々のユミコ虐である。

いやレティも、発言に違和感がなくなった上で、中々に良い性格に育っている様だ。

 

 RaDer’sのAI教育は完璧である(戦慄)。

 

 まあそれはそれとして。

 

 アクリの疑問の言葉に答えを返すレティ。

 

 《……ここからは多少離れてはいるんだが、小規模な戦闘が起こっているらしい。

RaDer’s(こっち)は動力をほぼ停止しているお陰で(やっこ)さんには気付かれていないが、稼働した時バレる可能性がある》

 「成程。そのままダンマリしてやり過ごすか、介入するか。どっちにするか、って話だね?」

 《そうなるな》

 

 そんな彼の言葉にアクリは数瞬考え込むと、再び口を開く。

 

 「双方の戦力とか分かる?」

 《暫し待ってくれ。――確認した。推定:ACとMTの二機と、MT複数機だな。

ヘリのカメラの最大望遠で撮っているから不鮮明だが、確認するか?》

 「ん。リブラ、端末は」

 「はい、アクリさん」

 

 アクリとレティのやり取りである程度は予想はしていたのであろう。

リブラは流れる様に何時の間にか用意していたタブレット端末を手渡し。

ユミコも違う端末を手にしてレティから送られて来たヘリのカメラの映像の確認をしている様だ。

 

 「アリガト。――うん、確かに不鮮明だけど、AC……っぽいのと、非武装で何か背負ってるっぽい辺り、作業用のMTかな。

もう片方は……うわぁ、これ完全に破落戸(ごろつき)かドーザーじゃない?」

 「そだね、このいかにも手入れがされていなさそうな外見のMTの群体なんて、貧乏傭兵とか同じく貧乏なならず者共ぐらいしか使ってないでしょ」

 

 アクリの指摘に頷きながら答えるユミコ。

その彼女の手元の端末をリブラも覗き込みつつ困った感の表情を浮かべ、少数の方の状況を口にして。

 

 「――うーん、でも、少ない方の組も相当ヤバそうだよ?」

 「推定AC、色々壊れてるねー……」

 「それでも戦闘型じゃないMTを守りながらもなんとか持ってる辺り、純粋に凄いと思うんだけど」

 

 そんな感じで言葉を投げ合っている中。やる事を決めたか、アクリは一つ頷くと、一同に向かい宣言。

 

 「……ん、よし。ちょっと群体の推定ならず者共、落として来る」

 「良いの? こんな急場であるんだったら、報酬とか厳しいだろうし」

 「ユミコさん……」

 

 彼女の発言に思わず半眼で突っ込むリブラである。

だがしかし、無報酬で仕事もどきをやる事が周りにバレたりしたら、

傭兵稼業に支障が出るので、間違ってはいない話ではあるのだが。

 

 それは兎も角として。

 

 「ここまで見てて、ってのもなんか寝ざめ悪いし。行って来るわ。んじゃ、管制、宜しく―」

 「りょかー。わたしも操縦室の方に行ってオペレート準備するね」

 「じゃあ僕はもしもの時の為にリペアの準備しとく」

 《ではオレはヘリが何時でも出れる様にしておくか》

 「その辺りのさじ加減は皆に任せるよー」

 

 方針が決まれば己がやれる事をする為に一斉に動き始める一同なのであった。

 

 

 

 

 「んじゃま、行って来る―。COM、戦闘モード起動」

 《メインシステム、戦闘モード起動》

 

 恐ろしくゆるーい発言と共に、相手に気付かせないためであろう。

何時もなら半自動化している出撃をほぼ手動にして、輸送ヘリの搬入口を開き出るアクリ。

 

 今回の彼女の構成は、FINDER EYE改(ウサミミ探査頭)、BASHO腕、WRECKERのコアと脚となっており。

装備は右手に何時ものお供、鋲打ち機改造ニードルガンと、右肩、左肩、左腕に掛けての装備である、LP-ARMSの二種である。

 

 COMに戦闘モードへの起動を命じると共に、その場から低空でのブースト。

汚染都市の背の低い建造物の影を縫う様に、戦場となっている場所へと加速する。

 

 「……不意打ち上等、闇討ち上等、ってね」

 『相変わらず悪どい声を発してますなぁ、アクリさんや。

とりあえず、今の所は奴さん達気付いていないから、そのまま行っちゃって』

 「りょかー。接敵するのに大体どれぐらいかな?」

 『今のアクリの機動速度でなら数分程度かな。

まさか、わたし達ががっつり運動していた間にこんな近所でやっべー事になっていようとは』

 「それな」

 

 そんな緩いやり取りをしながらも、ACの動きは繊細そのもので。

最低限のブースタの排気音と、たまに最小限の駆動で建物を飛び越え。

その連続にて、余程敏感なソナーでもないと感知できない程のステルス機動を行っているアクリ。

ACそのものの駆動するための諸々の音を極限まで絞り込んで行くその動きは、

完全に暗殺者か狩人的なムーヴなのだがもう気にしない方が良いのだろうか。

 

 あと少しで接敵できそうだと云った所で、小さく息を吸い、長めに吐き出しながら集中力を高め。

それとほぼ同時、解析を終えたユミコが通信を投げて来た様で。

 

 『さてアクリ。とりあえずだけど敵として設定した方、マーキングしたよ。ジャンクMTが5の、まともそうな戦闘型MTが3だね。

今のアクリなら問題なく片付けられる戦力だと思うよ?』

 「流石ユミコ。仕事が早いね。……しかし。RaDer’sを開業した時は、これぐらいでもちょっとキツいレベルだったってのに。

今では全く脅威を感じないってのは成長の証なのか増長の産物なのか」

 

 彼女のしみじみとした言葉に、聞いていたユミコから苦笑を交えた突っ込みが。

 

 『いやぁそれほどでも。と云うボケはさておき。

そこで増長、って言葉も出る時点で、油断自体はしてないんだから、その辺りは大丈夫だよ。

わたしが保証するし、なんなら間違った時点でぶん殴ってでも止める』

 「ん、アリガト親友」

 『ぉー? 全幅の信頼感マシマシな台詞に照れやがったな親友』

 「ユミコ、帰ったら校舎裏」

 『校舎ってどこのッ!?』

 

 そんな感じで良い感じに漫談を交えつつ、隠密のままに目的の連中を攻撃圏内に捉え。

 

 「そんじゃ……ド派手に参りましょうかッ!」

 

 アクリはそんな台詞と共にCOMに指示を出し、右肩のクレーンアーム改の横合いに取り付けられていた、

筒状の物をそれから外すと共に、上空へとブン投げた。――暫しの間の後、爆発ッ!

 

 どうやら、ACサイズの手榴弾らしき代物を造ったらしい。

グレネードキャノンやバズーカを使う方が爆発力も飛距離も稼げるのに手榴弾(こんなもの)をあえて使用する辺り、

ジェネレータの負担軽減と、アクリの隠密性を最大限に利用しようとしている様である。

乗ってるのはロボなのにやってる事はリアル白兵戦である事には目を瞑るべきか。

 

 『――何だぁッ!?』

 『爆発!? ……新手かッ! 迎撃ぃッ!』

 

 その爆発の中、目に見えて動揺を表している推定敵:破落戸。

爆発で動揺と、周りを警戒し始めたその連中の間隙を縫い、横合いへと飛び込んだアクリは――

 

 「――おせぇよ」

 

 そう零すと左手に持ったその獲物を握り込み、起動。

それによりACのサイズ程の長大なレーザー刃が形成され、

己が機体を比較的マシな方の戦闘型MTが群れている所へと滑り込ませると同時、刃を構えたまま自機を一回転。

その大仰な斬撃により、三機居たMT全ての胴体部が泣き別れになっており。

 

 直後、そのまま前のめり気味にブースト!!

アクリのACがその切り捨てられたMT達の間を抜けた後、斬られた連中は爆散した。

 

 『うっそだろ、一瞬で……ッ!?』

 『重四脚MTのレーザーブレード!? 何でACが使ってんだオイッ?!』

 

 残っているジャンクMTに乗っている連中は、彼女の攻撃範囲内からは離れていたので難を逃れている様だが。

ただの一回の攻撃により的確にMTの群体を半壊にする位置取りが出来るアクリの戦闘に関しての目の良さが地味にヤバい。

 

 そして、ブーストを切りつつ己がACを残りの敵機にへと向けると、

レーザーブレードをあえて見え易い様に顕示し、敵となった連中へと声を掛けるアクリで。

 

 「……さて。アンタ等はどうする? 死にたいってんなら、問答無用にやるけど?」

 『っつか、何なんだよテメェッ!? いきなり割り込んだ挙句、有無を云わせずに切り捨ててきやがってッ?!』

 「とりあえず同数程度の相手だったら手出しするのもアレだったけどね。

多数で(なぶ)る様な事してたみたいだし、文句云う筋合いはないんじゃないかな?」

 『ぐッ……』

 

 彼女の台詞に激昂する破落戸共であるが、呆れ顔で言い返してみると、

その通りではあるので思わず反応が止まってしまう。

 

 『お、おい……。オレらだけであの滅茶苦茶女をヤるってぇのか……? こっちにゃボロMTしか残ってねぇんだぞ……?』

 『む、無理だッ! こんな出鱈目女とやるなんぞ……ッ!』

 「滅茶苦茶女に出鱈目女となッ!?」

 『『ヒィッ!?』』

 

 かなり失礼な事を云っている様なので、アクリは凄みを利かせながら突っ込んでみると、

数歩程バックブーストにて引くジャンクMT五体組で。いやそんなに怖いか貴様等。

 

 『も、もうこんな所に居られるかッ!! ……オレは帰らせて貰うッ!!』

 『うわずりぃぞ手前ェッ!!』

 

 一人が完全に怖気付き、逃げの体勢に入った途端、蜘蛛の子を散らすかの様に撤退を始める破落戸共。

これ以上悪さをし辛くさせる為に、追撃とばかりに改造ニードルガンで追い撃ちを掛けて二機ほど撃破。

そうしている内に残りの連中は撤退に成功した様だ。中々の逃げ足の速さである。

 

 暫くの間、辺りを警戒していたアクリであるが、

ユミコからの完全撤退の言を聞き気を抜くと共に襲われていた人達へとカメラアイを向けると、

外部スピーカーを繋いで声を掛けた。

 

 「……さてと。余計なお節介だったかも知れないけど、大丈夫?」

 

 ACの方を軽く確認をしてみると、まともな武器はほぼ全損している様で、

辛うじてレーザーブレードが何とか動く程度で残っているだけであり。

頭部は破壊されたのか、頭部とコア部を繋ぐ為のコードだけが露出していて。

他は、VP-40S(アーキバス量産コア)、右腕が無くなっている様だが、左腕はBASHO。

脚が錆が浮きまくっている様子のCRAWLER(RaD探査)と云う構成のボロボロなACである。

 

 アクリからの問い掛けに応え、そのボロボロのACから言葉が返って来た。

 

 『――いえ、助かったわ。ありがとう、傭兵さん』

 「あ、AC乗りさんってば女性だったんだ?」

 

 優し気な声音でそんな感謝の言葉を返して来るAC乗りさんに、思わず言葉を漏らしたアクリで。

駆動系がやられているのであろうか。どことなくぎこちない動きで崩れていた体勢を立て直しつつ言葉を続けて。

 

 『元、とは云え、同業者に助けてもらうと云うのもなんか不思議な気分だね』

 「あ、やっぱり元独立傭兵(そういう)感じなんだ?

……でも、そんな状態のACなのに、あの破落戸共をある程度あしらえていたんだから凄いと思う」

 『流石にこの状況ではあしらう以上は無理なんだけど、ね』

 『――兎も角。本当に助かった。アンタにゃ面倒な話かも知れないが俺からも礼を云わせてくれ。

アリエスと、俺。……後、チビ助達も、アンタの助力のお陰で生き長らえれそうだ』

 

 そんなAC乗りの女性――先のMT乗りさんの言からアリエスと云うらしい――の言葉を継ぐ様に、再度の礼の言葉。

今度はMTに乗っている人の方からで。こっちは男性の様だ。

 

 その彼の言葉に疑問的に目を瞬かせた後、視線を走らせて納得の言葉を漏らすアクリ。

 

 「チビ助……あれ、他にも誰か……あぁ。

MT乗りさんのが背負ってるの、BAWS製の特殊環境対応の住居用コンテナか。

そっちに乗ってるって事ね」

 『住居用コンテナ(コイツ)、ちょっと前に出たBAWSの新商品だってのに知ってるんだな』

 『カプリ、その話はまた後で』

 『っと、ゴメンなアリエス』

 

 MT乗りさん――カプリが少しの驚きの色を含み、云って来るのにお得意様だからそこそこ交流あるんだよ、と返し。

そんな風に云っているがこのコンテナ。アクリも知らずの内に間接的に開発に携わっていたりした代物である。

 

 KIKAKUⅡ(の試作機)の試験の時に、アクリの耐Gスーツを何度か更新した時のデータを転用し、

開発部は新たに揺れや衝撃をかなりの比率で吸収する素材を完成させたのが始まりで、

基本はトレーラーの荷台の衝撃吸収能力の向上が主に使用していたのだが。

 

 ACやMTが背負えて脱着も容易な住居があるなら今のこの終末世界なご時世、案外需要あるんじゃね? の精神から、

コンテナの中に衝撃吸収材を充填しその中に一回り小さいコンテナを入れ、

出入口を造ってその中を生活空間にする、と云う狂気の沙汰が承認され、そう間を置かずに完成したのである。

しかも、どうやら結構売れているらしい。

アクリ達はコレが商品化される直前に、部長補佐さんからリブラ宛のメールに書いてあったと話を聞いていた様である。

 

 そんな小話はさておき。

 

 「しかし。そんなボロボロのACを持ち出したり。移動式住居を装備しているMTが居たり。

――まるで夜逃げでもしてるかじゃない?」

 『……あながち、間違ってないんだよね』

 

 アクリのその言葉に少し空気が重くなったアリエスにうぁ、地雷踏んだ? と云う気分になり。

それから少々の沈黙。何か覚悟を決めたのか、彼女は再度口を開き。

 

 『傭兵さん。お願い……いや、違うかな。貴女に依頼をしたいの』

 「――どう云う事?」

 

 彼女の台詞に居住まいを正し、硬めの声音で言葉を返すアクリで。

話を聞く体勢になったらしいのを感じ取ってくれたか。口重く言葉を発すアリエスで。

 

 『この辺り、星外企業が大規模な抗争を起こすって噂が方々から聞こえて来てて。

色々とキナ臭くなって来てるこの状況下、皆を安全な場所へと連れて行きたいのよ。

でも、今の私じゃ……戦えもしないし、殿(しんがり)なんかもっての外。だから……』

 『――報酬は?』

 『誰だッ!?』

 

 そんな台詞に別口から声が掛かり。

アクリ達を知らない彼女等からしたら不審者そのものである。

警戒の声を上げるのはごく当然だと云えるが。

 

 『――わたし、独立傭兵"RaDer’s"、マネージャー兼オペレーターのユミコと云います。

こちらの戦闘員、アクリに依頼と云う事なので、口を挟ませて貰いました』

 『傭兵さんってば、まさかのRaDer’s……。運よく当たりを引けた、かな?』

 

 その別口の声――ユミコのそんな台詞に思わず、と云った感で呟きを漏らすアリエスであり。

まさかの、と枕詞だちょっとばかり気になったりするが、今はとりあえずそんな話からは目を逸らし。

 

 『兎に角。オペレーターさんの言い分の通り、依頼料の話を先にするべきだったよね。

それで、報酬は今手持ちがないから、ボロくなっちゃってるけど、このAC()の全パーツって所でお願いできないかな?』

 

 RaDer’sは兼業ジャンカーだし、報酬としては悪くないでしょ?

そう云い己の愛機を手放す形で話を付けようとしているアリエスに驚きの声を上げるカプリで。

 

 『おい、アリエスッ!?』

 『カプリは黙っててね? ……私の愛機(コレ)

手脚は適当なジャンカーからパーツ買ってくっ付けただけの上で、撤退戦染みた戦闘を何回も熟したから、

所々大破したり中破したりして、ボロボロで多分値は付かないだろうけど……。

コアは星外から持ち込んだ純正品のVP-40Sで、ルビコンではそこそこ珍しいパーツだし、

度重なる戦闘で少々痛んではいるけど、比較的まともなパーツだし、少しは価値はあるでしょう?

……コレで頼まれて、くれないかな?』

 「それだけあればこっちとしては十分だよ。ユミコもそれで良いよね?」

 『――アクリが決めたんなら良いよ。報酬は兎も角、それ以上の面倒事になってる気がするけど』

 

 不承不承、と云った感でアクリの台詞に頷くユミコは、それじゃあヘリそっちに回すねー、と云うなり通信を切った。

その直後に、男の方の悪態が通信越しに漏れて来て。

 

 『――クソッ。俺も戦えていれば、アリエスのACを手放さずに済むのに……ッ』

 『カプリは元々非戦闘員なんだから、無理はしちゃダメ。キミのオペレート能力でずっと助かってたんだし、適材適所だよ。

それに、まともにAC扱えなくなったとは云え、私の方がキミより強いし。だから大人しく守られてて』

 『戦闘員だったとは云え、その状況のACに乗ってるアリエスに守られ続けるのは、こっちの立つ瀬がねぇんだよ』

 『拗ねないの—』

 『拗ねてねぇッ!!』

 

 随分と仲のいいその二人のやり取りに、ひょっとして? 等と邪推しつつアクリ達はまたぞろ襲撃の気配がないか、

周囲の警戒をしつつも、己が大型輸送ヘリ(自宅)の到着を待つ事とする。

 

 

 

 こうして、RaDer’sの新たな知己として、

以後、とある理由でそこそこの頻度で顔を合わせる二人とその家族達との出会いとなるのであった。







 うーん、新キャラばかり出してる気がする。
……で、でも大きな設定変更でも無ければ、
これでオリキャラ連中は打ち止めになる筈……(フラグ
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