ものっそい時間かかりました……ッ!(平謝り
と言うか、初めてですよ一話でこんな文字数書いたの……(19,000文字弱)。
読むのにも中々に気力が必要な気がしないでもない駄文量ですが、どうぞお納めください(ぇぇ
「……グリッド087内に、謎の集団を確認した、ですか?」
『あぁ。あそこは私等も匙投げて放置する事にした廃棄グリッドな訳なんだが』
「そですよねー? あそこ、RaDの直近のグリッドですし、
補修して
その損壊状況は推して知るべし、ですよねー?」
『そう云う事だね。大方、流れの傭兵崩れかドーザーが巣くったんだとは思うんだが……。
そいつ等の掃除を頼みたいんだよ』
RaDer’s大型輸送ヘリ内、操縦室。
そこにて、アクリ達は今回の依頼者――シンダー・カーラから状況の説明を受けており。
『――しかし、リブラが居ないとなると、あまり無茶な事はさせられないねぇ』
「それはそう」
――少々前の一件の為、Sheep Hornの元にリブラが開発した代物を送り届けたのだが。
思ったよりも調整に時間が掛かるらしく、彼はそのまま暫くあっちに滞在する事になった様で。
因みに造ったらしいその農機具(?)は
LP-AMESやリボルバーパイルのデータを使い開発された簡易型パイルバンカーと云う形をした削岩機である。
いや流石にその転用は無理がないの?
そんな突っ込みを入れてみたが、リブラは自信があるらしい。
あとACでもMTでも使える様に改造したし大丈夫! とも云っていたが。
まあそれはそれとして。
『とりあえずは、だ。先ず偵察。そして可能ならば追い払っとくれ。撃破でも構やしないよ』
「あいあい。でも、無いとは思いますが、無理筋な可能性があったら依頼放棄してでもさっさか撤収させて頂きます」
『それはまあ、仕方ないかねぇ。でもま、それだったら報酬は……』
「そこは仕方ないので諦めます、ハイ」
無茶も無理も出来ない状況下にはあるので、安全策は万全に、である。
「――んじゃま、行って来る」
『気を付けてね。でも、
AC壊れたらわたし達じゃあ修理無理だよ?』
「承知してるケド。あの辺り、アリエス達の居る隠れ家のほぼ真上じゃない。
頭上に不審者が居たら流石に拙いし」
『そうなんだけどねー……』
「……それと、いざとなったら、オールマインドに依頼して修理頼むよ。
……あそこの修理費の相場って幾らだったっけ?」
『リブラにあげてるお給料よりかは高いでしょうよ』
「だろうねぇ」
今回は、リブラが居ないのが気になったか。
何時も通りの
BASHO腕、
装備は右に失ってもあまり痛くはない鋲打ち機改造ニードルガンと、
左は使い慣れているレーザーダガー。
右肩にMT用ミサイルランチャー3段重ねに、左肩はクレーンアーム改で、
グリッド087に行ったらすぐにその辺りの残骸を抱える気満々である。
大方が捨てても問題がない代物ばかりを使っている。
いやさ、レーザーダガーは最初期からの相棒なので無くなったらそれはそれで凹みそうだが。
と云うか、普通に近かろう
リブラに頼まないのは何かあった時に
いやそんななら、わざわざ危険な橋を渡るなと云いたいが。
「そんじゃユミコ。オペレート、お願いね?」
『承知ー』
とりあえず、そんな緩い感じに大型輸送ヘリから出撃をするアクリである。
「――静か、ではあるんだけど……なんか、嫌な静けさだね?」
『わたしにはちょっと分からないけど……現場のアンタがそんな気がするならそうなのかな?』
グリッド087に降り立ち、その辺りの適当な残骸をクレーンアームに装備させてから暫し。
ガッション、ガッションと最小限の音だけで歩んで行くアクリは周囲の警戒を怠らず、
その中心部へと足を向けており。
――グリッドの中心点辺りは、端の方と比べ壊れていたり崩落していない事が多いので、
何かが居るとしたらそちらの方であろうと当たりを付けている様だ。
それから、スキャンを使い、地形を読み、崩れ落ちて通れなくなっている箇所を迂回し。
急がないといけない訳でもないので、なにがしかが隠し拠点として使用している可能性も踏まえ、
しっかりと監視カメラ類の有無等も注意深く捜索し。
そんな感じにてそこそこの時間を掛け、大まかに中心点辺りになるであろう場所にまで来た訳であるが。
今の時点では何がある訳でもなく。
「んー……。時々スキャンしてるんだけど、それっぽいのを見つけれないなぁ」
『頻繁にスキャニングしてて大丈夫? 仮に誰か居たとしたら、ソイツに勘付かれない?』
「あ、逆探の可能性もあったか。……最小限に抑えるよ」
『そうしとき』
「りょ」
そんな感じで更に暫し。粗方の探索を終え、
そのグリッドを支える柱の中でも特に太い――云わば、主柱と呼べるそれ――の辺りを残すばかりとなり。
――と、その場に着た途端に、少々分かりにくい箇所ではあるが、
壁に取り付けられていた動力パイプらしき一つの残骸に、そう古くない傷を幾つか見付けて。
「――位置的にこれは、腕部が接触した跡かな……。
こりゃ、何かが居るのは確定、だね。私で対処出来るようなのだったら良いんだけども」
『ま、大丈夫じゃないかなー?』
少しばかり真剣に呟くアクリに楽観的な言葉を返すユミコ。
その傷があった場所から奥へと歩みを進めると廃墟の様にカモフラージュされているが、
整備が施されている区画が現れ。それを確認したアクリは、引きつった表情を浮かべてぼやく様に呟きを漏らす。
「……やべーよ。単なる傭兵崩れとか、
こんな偽装工作まで噛ませた区画整備なんぞする訳ないわ……」
『……前言撤回するよ。これはわたしも流石にヤバいと思った。さっさかと撤退してカーラの判断を仰ぐ?』
「そうしたいのは山々だけどさ。せめて相手がどんなのかぐらいは確認しといた方が……」
『ぬぅ。下っ端の使いッ走りは世知辛いのぅ』
「それなー」
そんな感じにふざけつつ、更に奥へ。
――と、そんな中、通り掛かった通路の道中。
一つの古ぼけた感のあるAC大の扉に違和感を覚え。
「……何だろ?」
『どしたん?』
「いや……ユミコ、今こっちがカメラアイで見てる扉、確認できるー?」
そう云いながら、FINDER EYE改のカメラアイをその扉へと向ける。
それから少々の間ののち、ユミコの方からの呟きが漏れて。
『んー? この壊れて崩れたグリッド内の扉にしては、ちょっとばかり小奇麗過ぎるかな?』
「……やっぱそう思う、よねぇ」
そんなやり取りをしつつも、ゆっくりと近づくと共に、再びの監視カメラの有無やトラップの確認などを行うアクリで。
――何も無いと分かるとその扉の前へと寄り、扉の開閉をする為の端末へと近づいてACのマニピュレータを触れさせ、確認。
『――ロック、されてるねぇ』
「そうみたい。……確定かなこれ。――ユミコ、この先に何者かが居るかも知れないし、
そっちのに気付かれない様にこの扉、こじ開けれれる?」
『ACの手、そのままにしてて。ちょっと遠隔ハック試してみる。
――んー、中々エグいロックしてるなぁ。リブラの手持ちのハッキングツールのコピー取らせて貰っとくべきだったよー。
…………うん、ちょっと時間はかかるとは思うけど、何とかなるよ。
しかし、ここまで厳重なのがその不審者のモノだとすると……』
「惑星封鎖機構……?」
『もしくは企業の隠し工場?』
悶々考えても埒が明かないのは間違いないのだが、踏み込んだら虎の尾を踏む可能性が大ではある。
だが、最低どこの所属か。何の目的か。それのどちらかは分からないと、対策の取りようがない。
それから、暫し。
ふぅ、と溜息を洩らしながらユミコが通信越しに声を掛けて来て。
『――とりあえず。扉、開いたよ』
「……んじゃま、虎の穴に入らないとなんとやら、って感じで行くしかないかー。
虎なんぞデータ上以外で見た事無いけどな!」
『虎穴に入らずんば虎子を得ず、だねー。分かった。わたしも腹括る事にする』
そんな二人のやり取りは兎も角として、声音には真剣味が混じっていく中、
確実にヤバいであろうその内部へと足を踏み込む事となる。
あまりに静かなその空間にて、己の中の警鐘が大きくなって行くのを感じながらも、探索を続けるアクリ。
――それから少々。視界の先に、そこそこに広そうな空間が見えて来て。
ゆっくりと、出来うる限りに音を消しつつ歩み、
周囲から死角になっていそうな穴の開いている極太のパイプを見かけたのでそこに潜り込み、
どこかに居るであろう相手に気付かれない様に、陰から慎重に辺りの偵察を始めて。
軽く視線を這わせ、注意深く反応を探すと――
(――居ちまったよ……)
――居た。居てしまった。
こちらからは背中を見ている状況であるらしい、一機のACらしき姿が一つ。
そして、彼のACに相対する様にMTなのであろうか?
遠目から見えているだけではあるが、とんがり帽子の様な頭部らしきモノと、
腹部に円形の板の様なモノが取り付けられており、
手脚が小さ目で細い、と云う見てくれだけ見れば少々不格好に見える機体である。
それが10機程、何かしらの残骸にカモフラージュされていたらしいハンガーに駐機して在るようで。
(……何あれ……? 企業の機体には見えないし、かと云ってBAWS系って訳でもないし……?
噂のアーキバス先進開発局、ってのの新型の可能性もあるケド。
――兎角、何でこんな廃棄グリッドに、ここまでの戦力が……?)
そんな事を内心思いつつ、視線は先に見かけたACらしき機体の方へ。
カメラアイからの情報をモニタにて更に拡大し、確認を続け。
背中の方しか見えてはいないが、企業のパーツ類なら後ろ姿ででも分かるので、大体は察しが付く。
――頭、腕部、コア部をそれぞれ
しかし、脚はアクリも見た事がないパーツで構成されており。中々にスマートな見た目である。
右腕には同じく見た事がないバズーカ。爆発大好き企業メリニットの新作とか試作品か?
左腕には、BAWSの
右肩にはVCPLの
左肩にはまたもや見た事がない大きい筒状のモノ。装備部位からしてミサイルかグレネードキャノンか?
――そんな姿の、一機のACである。
(見た目だけだったら、アーキバス寄りの独立傭兵なのかな、と希望的観測が来るけど……。
こんな状況下では、ありえないよねぇ……)
――と、そのACの方から不可思議な音を含めた何かが発せられ、
それを拾ったユミコが悲鳴染みた声を上げる。
『……暗号通信……? って何これッ!? 全くこっちのハッキングに反応しないんだけどッ!?』
一流に近しいレベルのオペレーターではある筈のユミコのハックに全く反応しないとか、
あり得るのだろうか、と思いながら、アクリの脳裏に何かがかすめ、小さく口から零した。
「――ひょっとして:コーラル通信装置?」
『――あ……ッ』
「……試してみるか」
『ちょッ、こんなヤバそうな場所でまた肉眼で――』
ユミコの抗議の言葉を意図的に無視しつつコックピットハッチを開けるアクリ。
物陰ギリギリまで己がACのマニピュレータを動かした後、固定。
それから直ぐにコックピットを飛び出して。
パルクールで鍛えられているお陰か、駆け足レベルで一気に腕を伝いマニピュレータの指先まで行くその姿は危なげが無い。
少しだけ物陰から顔を出す様にして視認を行い。
「――うん、やっぱコーラル通信装置だ。多分、通信してるたびに赫いのが薄く見え隠れしてる」
『だから危ない事しないの!』
アクリの呟きの言葉に、インカム越しからの声を荒げるユミコで。
「……しかも設置型でもなく、ACに積めるレベルの小型……。
――何となーく違和感を感じていたんだよ。
総数は多いとは云え、単なるジャンク屋に毛が生えた程度のジャンカー・コヨーテスが、
下手な技術屋じゃ保守も出来るか分からないコーラル機器を大量に抱えれていれたのか。
頭領の
カーラやドクター程コーラル式の機械に明るい訳じゃあなかったって話だし。
――つまりは、供給源と何らかの形で繋がっていた、と」
『こいつ等が、あの定修のゴタゴタの供給源――元凶、だったっての?』
「多分、ね。……うん、これは確実に私達だけじゃあ手に余る。もう少し情報収集したら、撤退しよう」
『うん。こっちも準備しとくよ』
情報の種になりそうなモノを手に入れる事が出来そうなので、
更にもう半歩程踏み込む気で情報を得ようとしたのだが。
『――フム? ネズミが紛れ込んでいる、か』
《―――ッ!?》
『分かっている。
情報が抜かれる前に目撃者は消せ、だろう?』
暗号通信を行っていたらしきそのACから、
初老と云っていい風情の声音の男の台詞がスピーカー越しから発せられており。
その声が聞こえたとほぼ同時。ナニカに射貫れたかの様な感覚に見舞われるアクリ。
(嘘……ッ、勘付かれ……)
――と、背筋が凍る程の悪寒を覚え、そんな思考を直ぐさま打ち消して。
マニピュレータの指先から一息で掛け下がり、コックピットに飛び込むと同時にハッチを閉じて、
シートに座り込むとベルトを付ける間もなく無理やりに操縦桿を引いてバックブーストを掛ける。
己が隠れていたパイプを内部から突き破りながら、クレーンアームの掴んでいる壁板を前面に押し出した。
――その直後。アクリのACが居た辺りへと中規模の爆発と共に周りを小規模な連鎖爆発が埋め尽くす!
先のパイプを突き破った衝撃と爆発の衝撃の二連続で、コックピット内は大きく揺さぶられ、
内部機器へと身体を何度か打ち付けてしまい痛みでうめき声を上げてしまう。
「――ッ、ったぁ……ッ! クソッ、COM、戦闘モード起動ッ!!」
《メインシステム、戦闘モード起動。――頭部、右腕部、損傷軽微》
『外したか。だが、少々は痛かろう』
(うっそでしょッ!? 今のこっち反応だけで大体の位置を特定したって云うのッ!?)
並人ではまずバレた事無いぐらいの隠形だったのにッ!
そんな感で歯噛みするアクリではあるが、反省は後ッ!!
今度こそシートベルトを確実に締めて、戦闘状態へと移行。
「ユミコッ! 偵察、ミスったッ!! 尻尾巻いて逃げるから、
できうる限り安全そうな脱出ルートを選定してッ!!」
『わか……ッ!? 何――れッ! アクリッ! アク――ッ!!
返事を――ッ! これ、ジャ――グ……ッ!?』
アクリは怒鳴るかのようにユミコに撤収を伝えようとするが、
どうやら反応が芳しくない様で。そんな状況に舌打ち一つしつつ苛立ちを吐き出す。
「――チッ、初手でジャミングを仕掛けて来るッ!?」
『――どこに逃げようと云うのだ?
「ッ!!」
言葉が聞こえたと同時、更に嫌な予感が胸中に広がるのを感じてしまい、
本能のままに己に掛かるであろう身体ダメージを無視してのクイックブーストの連打を敢行。
「ぐぎッ!」
無理なGが掛かり視界が狭まった中で、アクリが先程まで居た辺りをミサイルの様なモノが通り過ぎるのが見えて。
数瞬後、その軌跡を伝う様に連鎖的に爆発が巻き起こる!
「けほッ。何、このミサイル……ッ! ……肩にあったヤツかッ!?」
『――ほぅ。初見であろうコレを避けるか。面白い』
「私の方は全く面白くないんだけどねッ!」
『一思いに死ねば、その辺りは気にならなくなるぞ?』
「お こ と わ り ッ !!」
内心の薄ら寒さを押し殺しつつも敵ACパイロットとそんなやり取りをしつつ。
何とか隙を見出そうとするのだが。
(何だコイツッ! 隙だらけの様な風を装ってるけど、全く隙が見えないッ!?
……乗っかって、下手な攻撃なんぞしたら、一瞬で
なればどうするか。
(逃げの一手、だよねッ!!)
壁板を前面に押し出しつつもバックブーストで真っ直ぐに下がらず何度も小刻みに打ちジグザグ走行。
時々広場内にある元が何かが分からない瓦礫を壁にしながら、牽制のニードルガンも忘れずに。
それにて、一気に通路と云う狭い空間へと飛び込んで行くアクリである。
『――彼我の戦力比を読み直ぐ様に動ける程に判断が早く、思い切りも良い。
もう何度か死線を潜り抜ければ、相応の猟犬に育ちそうではあるが……』
相手の感心したかの様な声が響くと、その通路の先の敵ACが居た方の入り口に当たる場所に、一つの影。
アクリは弾かれる様に、ニードルガンの引き金を引き絞る!
――だがその攻撃は、その陰の手前で何かに刺さったのかの如く、止まってしまう。
それに驚きながらも更にバックブーストをし続け。
……カメラアイをズームしてみると、その針が刺さった辺りが蜃気楼の様に揺らめいており。
「光学、迷彩……? しかも、レーダーにすら映り辛くなるレベルのッ!?」
『余計な事をするな、そこな阿呆。わざわざ相手に、見せては拙い手の札を見せてどうする?』
《――――ッ!!?!》
アクリの小さな呟き声を拾ったかは不明だが、敵ACの呆れ返った台詞がどこかの誰ぞへと掛けられていて。
……察するに、先の通信相手先、と云った感か。だとすれば、この通信妨害もそいつがやっている可能性が高い。
――高い、のだが……。
唐突に、強烈な嫌な予感を覚えてアクリはその思考を打ち切ると、全身のブースタを稼働させ、
早回しで回転をしつつ、ニードルガンを握り込んだままに、裏拳を何も無いと思える箇所へ撃ち込む。
だがしかし。その拳は確かな手応えと共にナニカを捉え、重い金属同士がぶつかり合ったかの様な酷い大音声を巻き起こす!
そこには、先に見かけたとんがり帽子の様な頭部らしきモノと腹部が円形のモノが付いているMTが転がっており。
「……さっきの奴ッ!? 何時の間にこんな所に……ッ! 隠し通路でもあったのッ!?」
アクリのそんな驚きの言葉を吐き出す。
――確かに、彼女に襲い掛かって来たらしいそのステルス機は、
後ろに下がり続けていた筈の更に後方に待ち伏せていたので、それは間違ってはいないのだろう。
そんな彼女の一連の行動を見ていたらしい敵ACの男は、愉快気な声を上げる。
『ククク……クックックック……クハハハハハッ!!』
「悪役高笑い三段活用ッ!?」
『
その野性的な感覚ッ! その闘争への嗅覚ッ!! まさかまさか、幾らあのガラクタは脆いとは云え、
完全ステルス機をただの勘だけでカウンターを打ち込み、撃破するとはッ!!』
心底愉しそうに嗤うその相手にうすら寒いものしか感ぜられず。
『――ククッ。阿呆に逐次投入の愚と手札を開きすぎる愚の指摘をするより先に……
貴様を狩る方が愉しそうだ……ッ!!』
「うわぁ……。なんか変なスイッチ踏んじまったよ……」
そんな彼の言葉に頬を引き攣らせ、悪態を吐きつつも更に後ろへ。
少なくとも、このジャミングが途切れる所まで!
「こうなりゃ、一か八か、か。……COM、盾を奴さんにブン投げ破棄ッ!
んで、クレーンアームは、ランダムで周りの機材を握ってコンマ5秒、解放ッ!」
《了解。カウント3、2、1……シュート》
先のステルス機の件からして、背後も安全とは言い切れなくなっているこの状況下。
前も後ろも気を掛けながら動くのは詰む可能性が高い。
そんな思考から、デッドウェイトになりうる重い建材をタイミングを見計らいつつ先の敵ACへとブン投げる!
『苦し紛れの適当な攻撃なぞ当たりはせんし、隙を晒すだけ……とは云えぬか、貴様の様なAC乗りにはッ!!』
突拍子もない攻撃に怯むも無く最小限の動きで回避しつつ敵は照準を定め様とするのだが。
その投げ付けられ、回避した建材の影から無数のミサイル群。
――どうやら、建材をブン投げた直後に右肩の三段重ねミサイルランチャーの全弾をぶち込んだ様である。
だが、それすら敵は予測していた様で。
プラズマミサイルの短時限起爆によるプラズマ放電で壁を作り、
そのミサイル群を連鎖爆破させた。
「うっそだろおいッ!? プラミサでそんな使い方ッ!?」
『貴様とは年季が違うわ、小癪なネズミよッ!』
その一瞬の双方の攻撃の間に、ライフルの射程圏外まで退避しつつも驚きの声を上げてしまうアクリ。
――見ると彼女が通ったらしき周辺は、壁にも天井にも動力パイプらしき物や通路にすらヒビや握り潰したかの様な跡が残っており。
視界を遮る為の盾の投擲とミサイルの雨を撃ち込むと同時、クレーンアームのハサミ部を後方に射出し、
遠方の嚙ませれる部分に嚙ませてウィンチでワイヤーを巻き取ると共にバックブースト加速し、
直ぐ様反転した後、壁や天井を蹴りつけると共にブーストをしたりと相当無茶な挙動で少しでも早く遠くへと駆け抜けたらしい。
相変わらずの変態機動は健在である。
『……カカ。しかし、その動きはネズミと云うより猿だな。――あぁ、
確か、
「――ッ!!」
そんな彼女の肩のアームまで使っての変態機動にさも愉快気な嗤い声を上げる敵パイロット。
その声に乗る……あり得ない程の、悍ましい粘性を帯びた明確な、殺意――ッ!!
機体越しにすら感ぜられる程の死の気配に全身が粟立つ感覚を覚えるアクリである。
(
内心毒づきながらも回避機動と撤退行動は緩める気もなく。
敵は一頻り嗤い終えたのち、アサルトブーストを起動。
並の機動兵器が三体縦横に並べば埋まってしまう程の幅しかない通路の上に瓦礫が散乱しており、
更にその空間を狭めているのだが、器用に回避しつつ一気に距離を詰め射程圏内に入ると、
事も無げにバーストライフルを構え――
『――だが、まだ動きは粗い』
《コア部、損傷軽微》
「ッ!?」
そんな敵の言葉と共に左腕のライフルが火を噴くと、WRECKERのコア部に数発を中てられ。
ダメージそのものは微々たるものであるが、見事な腕に戦慄してしまうアクリ。
「――あっちはアサルトブースト中の上に、こっちも撤退の回避機動してるってのに、それでも中てて……ッ!?」
『驚いている暇があるのか?』
その言葉が発せられたと同時。さらに接近して来た敵のACはアサルトブーストの加速込みでの蹴りを放って来た。
アクリは慌てて反転し、その遠心力と脹脛のブースタ稼働の勢いのままにその蹴りに同じく蹴りを合わせ、相殺しようとするのだが……
「押し……負けるッ!?」
『まさか合わせて来るとは思わんかったが……アサルトブーストの勢いが乗っている蹴りと、
回転の遠心力とブースタの噴射を調整して蹴りを放つとしても、動きを止めた状況の貴様では差が出て当然だろう?』
《右脛部、小破。継戦に問題無し》
一方的に競り負け、後方へと弾き飛ばされる。
……が、その勢いも利用した上でブースタを小刻みに吹かし、更に後方へと逃れるアクリ。
と、同時。突然機体をジャンプさせ、通路の天井スレスレに張り付くようにしながら再度のバックブースト!
――直後。アクリの居た場所へとバズーカの弾の連鎖爆発が弾けて。
硬直を狙った砲撃らしいが、これぐらいなら!
『これすら躱すか。本当に愉快だぞ、猿ゥッ!』
「置き土産が重すぎるわッ!!」
『カカ。何なら、もっと土産を持って行っても良いのだぞ。カロンの渡し賃代わりになぁッ』
更に気分が高揚して来たのか、喜の感情が乗りまくったそんな台詞に、
心底うんざりとした表情を浮かべるしかないアクリである。
(ライフルで動きを阻害され、謎ミサイルとプラミサで削られ、蹴りと謎バズで畳み掛けられる。
――コイツ、手馴れてるッ!!)
――そんな事を分析してると、敵ACが居る方向とは違う方向からレーザー光がモニタの端に一瞬映ったのに気付く。
それに反応し、この狭い空間ででも再度天井を蹴って落下する様に降り、前回り受け身の要領でその勢いを削ぐ様に一回転し三点着地。
勢いあまって暫く床を削り取りつつもその飛び込む様な動きにてその謎の攻撃を回避した。
……ACで出来る動きではない気がするのだが、もう考えない方が良いのであろうか。
ともあれ。
彼女が回避したレーザーは、通路の壁を焼いて弾けた様であり。
「またッ!? ……さっきのステルス機もお代わりがきたの!?」
『――チッ。あの阿呆は一度
《――――ッ!!》
『喧しい。……まぁ、それは後か。先ずは猿を狩るべきだな』
企業のレーザー兵器よりも更に強力そうなレーザー砲らしき攻撃に慄くアクリの耳朶に忌々しいと云った感の敵の呟きが漏れ聞こえる。
――敵AC乗りとそいつの通信相手。ひょっとしてこいつ等仲悪いのか?
そんな栓無き思考が頭を掠めつつも、二対一の状況……。更に時間が掛かればお代わりが来るであろう状況である。
詰み、の文字が脳裏に浮かぶが、諦める気は毛頭ないッ!!
「COM、ジャミング状態はッ!」
《全域ジャミング継続中》
記憶違いでなければそろそろ室内を抜け、室外の開けた場所――撤退が容易になりそうな所ですら、か。
まあ、簡単に逃がしてくれるとは思ってないけどさ。
そんな言葉を口の中で転がしながらも、隙を突いて逃げる算段はしているのだが。
『邪魔だ、巻き込むぞ?』
そんな言葉が聞こえたと同時に、反射的に回避――をしたのだが、それに半息遅れ、連鎖爆発!
野性的な反応からの変態機動回避をする習性を逆手に取り攻撃のタイミングをずらした様だ。
そして、近くに潜んでいたらしいステルス機毎、アクリ機は爆破に巻き込まれて。
《頭部、小破。コア部、損傷軽微。継戦に問題無し》
『耳が良いのも考え物だな?』
その爆風に巻き込まれ大きく仰け反ったが、そのまま太腿と脹脛のブースタを吹かせ、
変則的なバク宙の要領で一回転し、崩れた体勢を立て直す。
言葉の一つだけで騙されるミスをするなんて、と歯噛みする。二回目だぞおい。
――そんな風に思いつつも、体勢を立て直し後退し続ける先は、アクリが潜入を果たした近郊の開けた場所だった様で。
終点に戻ってこられたのは行幸ではあるが、ここは隠れれる場所がないのでとても拙い。
かと云ってそのままさっさと淵から飛び降りたとしても、逃げ切れるとも思えず。
傍らに擱座したステルス機が転がっているが、これを使ってどうにか出来ないか、なぞと考えていると――
『余計な事を考える暇があるのか?』
「ッ?!」
一瞬の思考の隙に突っ込んで来た敵ACはそのまま蹴り込んで来て。
思わずクレーンアームでそのステルス機をひったくると、それを盾にしてその蹴りを往なす。
ガゴン、と云った鈍い音が辺りに響き、その機体の一部がひしゃげた。
更にアクリはそのステルス機を鈍器に見立て、クレーンアームに握らせたまま振り回すと、
それに当てられるのを嫌うか、敵ACは後退して。
《――――ッ!!!》
『だから喧しい。貴様が勝手に放ったガラクタだ。
こちらの戦闘中に勝手に猿の寝首を掻こうと接近なぞしたら巻き込むに決まっていようが』
《――ッ!!》
とっさの判断でやったが、なかなか上手く行った。
相も変わらず、あちらはあちらで喧嘩している様だが。
……実は今の内に逃げれば逃げ切れるんでない?
そんな事を考えてしまうアクリである。
『これ以上ガラクタ共の被害を出したくないなら、さっさと引かせろ。
戦力の消耗はしたくないだろう?』
《―――――ッ》
『……もう良い、好きにしろ。俺は俺でやらせて貰う』
話が付いたのか。
ACパイロットの方は、大きなため息を吐くとアクリにカメラアイを向ける。
――そんな彼のACの後背の空間が少々揺らめいているのが確認出来て。
……数が分かり辛いが、ステルス機も数機はそこに居そうだ。
普通に死ねる戦力差なんですけどどうしろと?
「やっぱコイツ等が喧嘩してる最中に尻尾巻いていた方がまだ生存確率高かったかも……」
『その時は、貴様の背中に冥途の土産が届くだけだが、やってみるか?』
「デスヨネー」
アクリのそんな呟きに、敵はやれやれと云った感でそう答えを返してきて、思わず引きつった表情でうめき声を漏らしてしまう。
そんな緩めなやり取りの中。仕切り直し、と云ったばかりに敵は武器を構える。
(――今の状況、最低でもあのAC乗りの攻撃手段を何とかしないと、逃げ切れる気が全くしない。
かと云って、あのACに注力しちゃったら先の何機居るか分からないステルス機に寝首を掻かれそうだし。
……やっぱ、詰んでね?)
冷静に鑑みたとして。改めてほぼ詰みの状況下でしかないと云う結論に至る訳だが。
(とりま、今は―――)
そんな思考をしつつも、今まで反応が無かったアラート音が耳朶に響き。
どうやら強力な攻撃に反応する筈のアラートすら何らかの介入で潰されていたらしい。
敵さん側が仲違いしている内にそっちの方面が疎かになった様で、正常な反応が戻って来た様だ。
「っとぉッ!?」
反応があった方向へと人型の盾と化したステルス機を向けて防御するとレーザーの弾ける衝撃と光。
先のレーザー砲がまたもや襲い掛かって来た様だ。
そして、その攻撃により、盾としていたステルス機の一部が蒸発した様で。
頑丈が過ぎる建築材類に比べ相当に脆いのだから仕方ない話であるのだが。
「思った以上に威力エグッ――っとぉッ!?」
驚きの声を上げつつも更に違う方向からアラートが鳴り響き、素早くその場から回避。
回避と同時にレーザー光が床を叩いた。
「……レーザーの鞭ッ!? ――ッ?!」
《右腕部、小破。継戦に問題無し》
更に見た事のない武装に慄いている内に、今度は敵ACからのバズーカの砲撃。
またもやステルス機の盾で防ぎ、辛くも直撃は避けられたが、それでもある程度のダメージは貰ってしまった上、
ステルス機もほぼ全壊状態になってしまったので、再度レーザーを撃とうとしていたらしいステルス機にブン投げて、
攻撃の阻害と多少のダメージを稼ぎつつ悪態を吐く。
「――くっそ、完全に袋叩きだこれッ!!」
モニタの確認とスキャンの多用、後は勘と運に任せ、
どうにかこうにか生き長らえている。……だが、このままではジリ貧である事は間違いなく。
何とかせねばと思いもするが、今の状況では――!
その焦りが集中力を削り、判断を誤らせたか。
数度目の紙一重の回避を失敗し、レーザーウィップに右腕を絡め取られてしまう。
「……ッ、ミスったッ!?」
《右腕接触部、融解まで三十秒》
「――頑強なBASHO腕ででも、それだけしか耐えられないのッ!?」
『……流石に、この戦力差では厳しかったか。まあ、猿よ。恨むなら、こんな所まで派遣した依頼者を恨むんだな』
「誰が恨むかってのッ!!」
少し残念だ、と云った色を乗せた敵ACパイロットの台詞に言葉を返すアクリは、
最後の賭けに出るべきだと行動を開始する!
「クソッ……。ならッ!!」
右腕部が焼け溶けるのもお構いなしに、思い切りよく右腕を己の方へと引っ張った直後にそちらの方向へとブースト!
鞭での攻撃にて右腕を絡め捕っていたステルス機は強引に引っ張られた勢いでバランスを崩す。
そして、そのままにブーストキックを叩き込む!
ゴガンゴガン、と云った風情で吹っ飛んで行く鞭を持っていたステルス機。
吹っ飛びはしたが、レーザーウィップは今だアクリ機の右腕に絡まったままであり、そのまま引っ張られ――
《右腕接触部、融解切断、中破。撤退を進言します》
無情なCOMの報告に何を云うでもなく、更にもう一手!
焼き切れ、中空に吹き飛んだ右の二の腕の先にカメラアイを向けつつ、
スキャンして吹っ飛んだステルス機が居る所に当たりを付けると、その右腕の残骸が落下してくるその所にタイミングを合わせ、
外回転の後に上段回し蹴りの要領にてその腕を己がACの踵部で蹴り飛ばすと同時、アクリは吼えた。
「ロケットなパーンチッ!!」
『――そこまで小さな目標を蹴り飛ばすッ!?』
敵も流石にこれには驚いたか、素っ頓狂な声を上げて。さもありなん。
踵の硬さとブースタと遠心力も加味した回し蹴りの勢いにより、
その右腕の残骸は、轟音と共に爆速でぶっ飛んで行き、
ゴガン、と云う恐ろしく鈍い音と共に体勢を立て直し掛けていたたらしきレーザーウィップ持ちのステルス機の胸部へとめり込んだ!
……が、流石に貫通までには至らなかったらしく、胸部に腕が突き刺さった程度で終わってしまったが、
それでも良い所にぶち込めたらしく、ステルス機は動きを止めた。
「――っしゃッ、一機ッ!!」
『咄嗟の行動でそこまでの命中率かッ』
(ちょい前に手に入れたFCSに感謝だよこれッ! 至近距離限定だけど、すげぇ扱い易いッ!!)
近接戦闘の細かな動きに対応が出来、
自分の動かしたいようにサポートしてくれるFCSに内心喝采を上げるアクリで。
『やってくれたな、猿ッ!』
「やってやったさッ!!」
そんな彼女の変態機動に喜色の色が戻った敵ACパイロットの台詞に、一矢報いたぜ的な口調で言葉を返し。
直後にレーザー砲がまたもや飛んでくるが、軽くバックブーストして回避して、
反転するとそのまま砲撃をしていたステルス機へと突っ込むが――。
「これで――『流石にそれは頂けんなぁ!』ッ?!」
敵ACパイロットの云い放った言葉にペダルを踏み込み操縦桿を大きく前へ倒し、ブースト状態からアサルトブーストへと移行。
何の心構え的な準備も無くアサルトブーストへと移行した所為か、ぎッ、とうめき声を上げてしまうアクリであるが。
一息でステルス機の目前まで迫ると、腕部が消失してしまっている右腕を前へ突き出しその胸部の上部を殴り込むと同時、
脚部の前面ブースタを全開で吹かせ、右腕を支点にして己が身を上下逆の視点のままに中空へと吹き飛ばす!
その直後、バズーカの爆発がそのステルス機を襲い、フレンドリーファイアにて撃破。
《右腕、更に大破。撤退を進言します》
「これで二機ッ!」
『猿ッ、本当に貴様は予想だにしない動きをするッ!』
「お褒めに預かり、って奴だねッ!!」
そんな軽口を叩きながらも、逆さのままに今一度のアサルトブースト!
今度は覚悟が決まっていたか、表情を多少歪める程度で敵ACへと突っ込む。
敵もバズーカの弾の装填が終わっていないのか、両肩のミサイルを時間差で撃ち込んで来た。
(プラミサは、起爆する前にすり抜けれれ……いや違うッ!)
先の時限起爆を思い出したか、アサルトブーストを切り、位置を調整しつつ真下へとブーストを掛けた。
案の定か。それは時限起爆になっており、そのまま飛び込んでいたら真正面からプラズマ爆発で焼かれ、
行動不能ないし撃破となっていたであろう。
『ほう、これも読むか』
「先にアンタが使ってくれたからねッ!」
『違いない……が、コレはどうかなッ!』
時間差で撃っていた逆肩に載せている特殊ミサイルの軌跡は、アクリ機の着地地点を狙って伸びており。
もう一つ罠を仕掛けられていたらしい。
「……ッ!? ら゛ぁッ!!!」
流石に二段重ねで罠を仕掛けているとは予想しきれていなかったか。
驚き慄きつつも、もう一度中空でクイックブーストを打ち、真下に落下している状況から、
ミサイルの軌跡を少しでも避けれる真横へと無理やり軌道を変える、が。
――連鎖爆発!
「がッ!?」
《左腕部、中破。コア部、小破。左脚部、小破。レーザーダガー、中破。使用可能。撤退を要請》
それでも流石に完全回避、とは行かなかったらしく。
左半身を盛大に焼いてしまい、アラート音量が更に大きくなる。
――が、まだ動くッ!
「あ゛ぁッ!!」
どうにか着地。すぐさまに全身のブースタを起動。
一息で至近距離まで間を詰め、右脚を軸に一回転し――
「――らぁッ!!」
『この状況下で膝蹴りなど――』
(今ッ!!!)
遠心力とブースタ起動の勢いを乗せた回転膝蹴りを見舞うアクリであるが、相手のAC乗りは読んでいたらしく、
紙一重の回避で止めの反撃しようとするのだが――
ガゴン、と云う重い爆発音と共に、ACの腕より一回り程細い
ACの膝アーマー部を突き破りながら高速で射出された!
『隠しパイルバンカーだと!?』
予想の範囲外であった超高速の射突攻撃に驚きの声を上げつつ大きく回避しようとするが、遅い!
『―――ッ!!』
だが、それであっても彼に引導を渡せた訳でもなかった様で、
右腕を吹き飛ばしただけで終わり。
その代償に――
《左脚アーマー部、大破。左膝部、中破。撤退を要請》
(流石にぶっつけ本番での強引が過ぎたかッ! ――でもッ!! 多少の手傷は――)
『――やってくれたようだが、だからと云って戦闘が不可能と云う訳では無いぞッ!』
「――ッ!?」
そして、相手からそんな言葉が飛び出ると同時。
左のバーストライフル――いや、先に右手に保持していた
(――は?)
『俺も、曲芸は出来なくはないんでなぁ……ッ!』
どうやら隠しパイルで打ち抜かれる前に、バズーカだけ頭上へと投げ上げて退避させたのちに、
ライフルを投げ捨てた左手で重力に引かれ落ちて来たバズを掴み直していたらしい。
この極限状況にて火器をジャグリングして成功させる辺りこいつも相当に神経が図太い。
アクリの意識はそこで一瞬止まってしまうが、長々と隙を見せる訳には――。
その彼女の思考が遅きに失したか。――爆発ッ!!
「――かはッ!?」
《右肩部、大破。コア部、中破。撤退を要請》
右の腕部がほぼ無くなりかけていた上に更に追加の一撃。
そのお陰かBASHOの右肩アーマーから二の腕に当たる部位が吹っ飛び、コア部にすら影響が出る程の損傷。
更に爆風にてそこそこの距離を吹っ飛ばされてしまい。
しかし、
何とか立ち上がり、獰猛な表情のまま吼える。
「――まだまだぁッ!!」
『ホゥ、まだやれるか。今回の獲物は存外にしぶとい……ッ!』
トドメを仕掛けようとしたか。プラズマミサイルと特殊ミサイルを起動し、発射。
それを爆風を煽られるのを覚悟の上で、最小限の動きで懐に飛び込む!
『直線的な攻撃は死を早め――』
「私の狙いは、こっち……だぁッ!!」
『何ッ!?』
左のレーザーダガーを
中破したダガーのリミッターを解除した上で出力をオーバーロードさせ続け。
――どうやら、左腕毎捨てる気で捨て身の攻撃を行う様だ。
更に、アクリはCOMへと大きく叫ぶ様に指示を出す。
「COM、左腕強制パージと同時にコア部
《了解。左腕部パージ。パルスアーマー一極発動》
COMの左腕部そのものを強制的に外すと共に、一極集中したパルスアーマーを発動。
その直後にバズーカ内の爆薬に引火したか、レーザーダガーと左腕ごと爆発したとほぼ同時に、それを目くらましと反動にして、
グリッドの外へと吹っ飛ぶようにバックブースト!
そのままグリッド外の中空へと投げ出されるアクリ機で。
《左腕部、消失。左脚部、大破。右脚部、中破。撤退を――》
「――もう、終わってるッ!!」
そして、そんな彼女の台詞に、行動を予測していたのであろうか。
RaDer’sの大型輸送ヘリが吹っ飛んだ機体の方向に居て、カーゴの口を開け滞空していた。
その口がアクリのACを飲み込んだ途端に入り口は閉じ、一気に加速を始めて。
更に目くらまし用のスモーク弾とミサイル類を攪乱するチャフを同時に後方へと射出。
『――――戦闘音の移行から大体の位置を割り出して、
撃墜されない様に物陰に隠れつつ機を見ていたんだけど……上手くハマってくれたッ!!
――生きてるわよね、アクリッ!?』
「ぐっど、たいみん……」
《――コア部、大破。左脚部、消失。右脚部、大破。負荷限界。――が、撤退、完了》
あらかじめ張っていてくれたらしいセーフティネットに包み込まれつつも、
中々に派手派手しい音を立てながら、大型輸送ヘリのカーゴ内へと突っ込んだアクリ機。
アラーム音は今だ喧しく喚いているが、COMからの反応は止まったそのコックピット内で大きく息を吐き。
それとほぼ同時、隠しパイルの使用やレーザーダガーを突き込む際、
仕様外使用である攻撃と踏み込む為に前に出していた左脚が、
度重なる使用と爆発衝撃を受け続けた為か時間差でへし折れ、
それぞれを繋ぐ動力コードは引きちぎれ、格納庫内の床にけたたましい音を立てつつ落下する。
「……ほんっと、ギリギリ、だったぁ……ッ!」
《――しっかりどこかに掴まっておけ。このまま最大速度で撤退する。
ユミコもベルトをしっかりと締めろ、カーラからデータ取りも含めで提供されたブツも使用する》
「ありがと……ってちょっと待ってレティ。それってまさか……」
『いやちょっとまてやお前ぇッ!?』
《オーバードブーストドライブ点火》
そんなやり取りと共に、大型ヘリ後方に取り付けられていた大きめのコンテナの様なモノから轟音と共に火が噴いた。
――後にアクリ達がカーラへと抗議した時に聞いた事であるが、
ソレは封鎖機構の大型武装ヘリ後方に付いているブースタを参考に見様見真似でコピーした代物だったらしい。
その巨大なブースタにて前方へと一気にカッ飛んで行く事になり、
そのGの圧迫感と共に悲鳴を上げながら撤退して行くRaDer’sなのであった。
――その後、何とか
待ち受けていたカーラへと報告と相談、あと抗議をした後。
アクリは気が緩んだかぶっ倒れて気を失ったらしく。
周りが騒然となり、大慌てでメディカルルームへとぶち込まれる事となったのは余談である。
……後、どうでもいい話ではあるが。
アクリと彼のACパイロットの戦闘ログを見たどっかの誰かさんが息巻き大興奮して近接対応出来る様にと、
先のパイロットにデータ取りも兼ねて使って貰っていたバズーカに"耐レーザーコーティングを施した大型の銃剣"を取り付ける、
と云う狂気の沙汰を下して実行したらしいが、それはまあ蛇足以外の何物でもない。
『―――して、やられたな』
グリッド087、端の一角。
両腕を消失させ、バズーカの暴発により至る所の装甲にヒビや破損が散見するが健在であるそのACの担い手は、
カッ飛んで行く輸送ヘリをチャフとスモークの合間から確認すると、賞賛の言葉を呟く。
そんな彼の台詞に通信機越しの何物かが喧しく喚いている様で。
《――――――ッ!!!》
『喧しい。こちとらまさか共倒れ覚悟の自爆攻撃をやってくるまでは思いもよらんかったのだ。
しかも、それすら撤退の為の布石にする……。本当に、あの猿は面白い。
アレが第四世代以前の強化人間だったら……』
《―――――》
『――動き的にアレは強化人間ではなかった様であるし、栓無き話だがな。
しかし、あの猿に知られてしまったからには、河岸を変えんといかんか。面倒な事だ』
AC乗りはそんな呟きを漏らし大きく溜息を吐くと、行動を開始するのであった。
因みにプラミサの扱い。あの爆発範囲攻撃が出来るなら迎撃用武器としても優秀なんじゃないかなー、という妄想の産物です(ぁぁ
次はもうちょっと気楽な話を書きたいです、はい(吐血
……でも、時期がですねぇ……(遠い目
が、頑張ります(吐血