とあるルビコンのジャンカートリオ   作:清狼光牙

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 チャプター1(裏)、開始。






28話

 

 

 

 

 

 

 

 ――アリエス達から訓練を受けてから数日。

この日、RaDer’s、大型輸送ヘリ(自宅)の操縦室は、緊張した空気に包まれていて。

少々前にアクリとリブラを呼び出したユミコは、重い口調で口を開く。

 

 「――グリッド135近郊の汚染都市にて、ベイラムとルビコン解放戦線との戦端が開かれたみたい。

相当大規模な戦闘になってるみたいで、ある程度は落ち着くまであの辺りは行かない方が無難かも」

 「アリエス達から聞いた一連の騒動が始まった、か……。戦力比的には?」

 

 そんな珍しく真剣味を帯びた声音で問うアクリに、固い声のままで言葉を返すユミコ。

 

 「……総数100を越えるMT部隊がぶつかり合う様で、(ベイラム)(解放戦線)2.5:1ぐらいみたい。

ルビコン解放戦線は士気の高さでどうにか持ち堪えようとしてるみたいだけど、

数の暴力の上に、質の方も大方ベイラム側が優勢。

……遅くとも一両日中には解放戦線側の敗北で汚染都市占領になるだろうね」

 《訂正だ、ユミコ。たった今推定比4:1になった。

レッドガンナンバーが投入されると云う情報が入って来たんでな》

 「うぁ……それじゃあもう四半日も持たないかぁ。

……どれだけ上手く、自戦力を出来るだけ多く撤退させる事ができるか、って話だよねこれ」

 

 その答えを修正するレティの言葉に、あ、駄目だこりゃ、と云った感でアクリは呟き洩らし。

 

 「でも、レッドガンとそのナンバーが相手じゃ……」

 「……ぶっちゃけるとさ。かの戦場に居る解放戦線の一同は、

全滅すら視野に入れた方が良いかも知れない」

 「……そう、なっちゃうんだ」

 

 ユミコの合いの手に真剣な表情のままに頷き、

非情な事を云うしかないアクリにリブラが諦念半分な反応を返す。

だがしかし。それだけのレベルではあるのだ。レッドガンのナンバー付きと云う存在は。

実際見た事がある訳では無いので噂頼りになるが、

解放戦線の最上位……サム・ドルマヤンか、ミドル・フラットウェル。

後は、そのドルマヤンの近侍であるリング・フレディであれば、

ナンバー付きと対等に渡り合えると思われるが……

アクリより実力が二枚ほど劣るツィイーではまだまだ足りないし、

ダナムだと論外になるのは確かなのである。

 

 そんな重くなった空気を払拭したいか、アクリは少々明るい声音で戦闘の話から少々方向をずらして。

 

 「……しっかし、本っ当にアリエス達、ギリッギリで脱出したんだね、としみじみ思う」

 「傭兵稼業も暫くやってなくて、

更にAC自体もコア部以外は所有してない、って襲われたらほぼ詰みって状況だったみたいなのに、

危機を察知した途端に頭と手脚パーツをさっさか工面して、

状態も悪くない作業用MTも一機手に入れて。

BAWSの最新型とも云える携帯用住宅を躊躇もなく購入して、

子供たちの安全も考慮して。

その上でギリギリだけども間に合わす、ってのは凄いよ。

カプリの細々した後方支援の実力の高さが勝因なんだろうねー」

 「だねぇ」

 

 そんな彼女の思惑に乗っかり、気持ち明るめにそんな言葉を返すユミコである。

どうにも相変わらずリブラのアレコレには弱い娘っ子どもだ。

 

 「さて。今まさに汚染都市(現場)は危険がデンジャラスで危ない状況になってるけど……

双方の撤収時期を見極めて上手く立ち回れば、

レアもののジャンクパーツが大量に手に入る可能性、あるよね?」

 「そだね。まあ見極めミスったら、ベイラム関連部隊と解放戦線の部隊の両方とカチ合うけど。

そのリスクに見合うだけのモノはあるかと思う。

主に中破や大破AC、擱座した重四脚MT……は、流石に高望みし過ぎかな。

他には回収されなかった諸々の物資類とか。それでの話なんだけど……リブラはどしたい?」

 

 ユミコに軽い口調のままに突然に水を向けられ、とぼけた反応を漏らしてしまうリブラで。

 

 「……えッ?」

 「リブラがひょっとしたら知り合いが居るかも知れない戦場に行くのが辛いって云うなら、今回は見合わせるよ?

――ヤマとしてはかなりリスキーではあるから、

ダメならダメでもまあしょうがないかー、って感じではあるし」

 「そだね。ハイリスクハイリターンを往くか、安全策を取るか、だねぃ」

 

 いっそ優しい声音でそんな言葉を発す幼馴染ーズ。

そんな二人のそのほぼいつも通りの姿に、リブラは恐る恐ると云った感で聞いて来る。

 

 「……アクリさんとユミコさんは? 二人共、怖くないの?」

 

 ちょっとした恐れが混じった問い掛けに何を聞きたいのか察すると、

二人共ほぼ同時に肩を竦め、答えを返してきた。

 

 「私達は、自分自身の感情は兎も角として、もう慣れたよ」

 「そうだねー。何時の間にか友人知人と呼べる人が居なくなってる、

なんて逃亡生活してた頃、ザラにあったし」

 「まあ、本当は慣れちゃいけない感覚ではあるんだろうけど」

 「でも、ルビコン3(ここ)はまだどこも戦場だからね。

ある程度は耐えれる様にならないと、色々辛いよ?」

 

 軽い調子ではあるが、諦念と覚悟が見え隠れする二人の言葉に、

沈痛な面持ちではあるが、ある程度の納得は出来たのか。重々しく頷くリブラである。

 

 「……ん。分かった。行こう。僕もベイラム系のジャンクや物資は欲しいし。

……でも、大体残ってそうなの、BAWS製のMTなんだろうけど……」

 「それはもう仕方ないかも知れないけど……うん、決まり。

んじゃ、とりあえず現場近くまではさっさか行って、

その上でどのタイミングで紛れ込むか、だね」

 

 彼も覚悟を決めて頷きを返すと、よっしゃ、と云った感でアクリ達は更に状況を詰める事にして。

 

 「時期的には……レッドガンナンバーが撤退した上で次の部隊との交代時期の合間ぐらい?」

 「そうだね。その辺りがお仕事(ネコババ)の狙い目になるかな?」

 「番号付きが複数名居て交代、って事になってたら頓挫するけど」

 「その辺りは情報収集を密に、後は天に運を任せるか、だねー。

……まあ重要拠点になりそうもない辺境都市に、そこまでの戦力は割かないとは思いたいけど」

 「天とか運とかなんて基本信じてない癖に」

 「それはお互い様だと思うけど。ま、言葉の綾だよー」

 

 そう云う事になったらしい。

 

 

 

 

 それから二日程。

ほとぼりが冷めた感のあるその汚染都市近郊に向け、RaDer’sの輸送ヘリは移動をしており。

 

 ――先日の戦端は、情報収集をしている内に、思わぬ形で終結したらしく。

あまりに大き過ぎた戦力のぶつかり合いになったが為なのか、

その戦場に封鎖機構の大型戦闘ヘリが数機乱入して来て、

ベイラム解放戦線隔てなく蹂躙して行ったのだ。

 

 それからどうにか生き残った小勢が双方共に己が拠点へと命からがらに逃げ帰り、その状況が発覚した様で。

噂として界隈に出回ったのが、蹂躙され抗争が有耶無耶になった時期から半日程経った後。

それから準備はほどほどに直ぐ移動を始め、一日程掛けて近郊空域まで到着したのである。

自宅が輸送ヘリのお陰で、初動が異様に早い。

 

 ……まぁ、現地辺りでジャンカー等をしている連中に時間としては後れを取っているが、

予測的に生き残りのベイラム・解放戦線や、

まだオイタをしそうな連中を警戒する為に巡回しているであろう封鎖機構の戦闘ヘリ。

更に来るであろう双方の勢力からの救援部隊等に手痛い反撃を食らうであろうし、

大丈夫だと思われる。多分。

 

 そして大型輸送ヘリ、カーゴ内、ハンガー。

ACのコックピット内でアクリは待機をしており。

軽く唇を舐めて湿らすと、通信機に向かい言葉を発し。

 

 「――うし。そろそろ始めるかな。ユミコ、仮称:敵はどの程度残ってる?」

 『色んな所に推定MT数機が分散して動いている様だけど、

これは解放戦線かジャンカー辺りだと思われるねー』

 「その心は?」

 『あまりにも無作為に広く散開し過ぎてる。これじゃあ各個撃破の餌食だよ』

 「フム……。知り合いがいれば多少は話が通り易いだろうけど……。

ん。次、リブラ? 今の機体で何か仕様変更とかある?」

 

 ユミコからの報告で大体の考えを纏めつつ、

次は己が乗機の状態を知りたいが為に、リブラへと問いを掛けて。

 

 『あー……っと。頭は買ったFINDER EYEをもっかい改造して、

前のと同じ様に追加のセンサー付けてる。

ちょっと切り口変えてセンサー部をMELANDERのカスタムタイプを参考にして、

大分小型軽量化したけど使い心地は変ってない筈だよ。

コアはそのままのORBITERで、……腕は、ちょーっと試してみたくなったから、

ジャンクパーツの方からBASHOとMELANDERを引っ張って来て、

左腕をBASHO、右腕をMELANDERって感じで取り付けてみたよ。

左右の重量差でバランスが悪いケド、ある程度はソフト面から調整掛けてるから、

勝手は悪くないと思う。

で、脚は……SPRING CHICKEN(重逆脚)の股関節周りを相当弄ったよ。

アクリさん、ハイキックとか回し蹴りとか膝蹴りとか、

二脚の時は多用してたから、その辺りを踏まえての改造。

やろうと思えばその重逆脚でもハイキックは出来るぐらいには可動域広げたから。

……でもその代わり、広げる為に股関節周りの装甲()を相当削ったから、

少々脆くなってるかも。気を付けて』

 「りょか。……何時も通り、後で使用感は報告するー……んだけど、

重逆脚でハイキックって重過ぎてどうなんだろう?」

 『削った分、取り回しは多少は早くは出来るだろうけど。

……んー、逆脚のブーストキックって、

強化した脚部での反動を利用したドロップキックするじゃない。

あれを参考にしてハイキックの体勢から逆脚伸ばして、のびーるキックとか……』

 「なんか地球産のもの凄く古いゲームでそんなキャラいた気がするなぁ……」

 

 なぞとかゆるーい馬鹿話を挟みながらの説明を受け、出撃の準備は整い。

因みに武装は、右にLUDLOW(マシンガン)

左に中古品の癖に値段の高騰の為、売れなくてお蔵入りし続けてしまっているBU-TT/A(パルスブレード)

右肩にクレーンアーム、左肩にクレーンアーム改と云った風情である。

 

 完全にジャンク拾いのみ(後軽く自衛)を想定している布陣だ。

 

 「そいじゃ、行って来る―」

 『あいよ、いてらだよー』

 『気を付けてねー?』

 「ほーい」

 

 そんな感じで飛んでいる輸送ヘリから出撃、そして降下。

 

 「COM、探索モード起動」

 《メインシステム、探索モード起動》

 

 降下中にCOMに指示を出し、己も軽く息を吸い、吐き。

思考を切り替えると共に、操縦桿を握り込み、フットペダルを踏み込もうと――

 

 「……ん?」

 『どしたん?』

 「んー、何でもない(空が光った? 流星? 衛星砲? ……いや、流石にそれはないか)」

 

 自由落下中のアクリの反応が気になったか、

疑問調に声を掛けて来るユミコに何でもないと返すと、

アサルトブーストを起動。汚染都市へと接近する事にする。

 

 

 

 それから何事も無く汚染都市の端へと到着したアクリはブーストを切り、

地上へと降り立つと警戒を強めながらも移動を始める。

 

 「――中々にひっでえ有様だね」

 『どこもかしこも、まだ火の手が上がってる状況、か……。

二日ぐらい放置してた程度じゃ鎮火はしなかったみたいねー』

 

 カメラアイを四方八方へと向けながらそんなボヤキを漏らすアクリに合の手を入れるユミコで。

 

 実際問題、そこかしこから煙が上がり、多分燃料であろうモノが燃え移ったMTやヘリ、

ドローン等の残骸が転がっていたりして。

……そんな状況を目の当たりにしているので、そう云いたくなるのも無理はない。

 

 地獄絵図かな?

 

 まあそれは兎も角として。

暫く注意深くモニタを睨んでいたアクリは表情をヌルりと弛緩させ、

溜息を吐くと伸びをしながらシートにもたれ掛かる。

 

 「……うーん……。こりゃ、だいぶジャンク品諦めないといけないかなぁ」

 『ここまで蹂躙されてるとちょっと厳しいかもねー?』

 「そっちの金属探知はどう?」

 『とりあえずある程度は選別して探索しているけど、

殆ど部品ぐらいにまで解体されたスクラップばかりだねぇ……あ、ちょっと待って。

そこから正面11時方向に大きめの金属反応。あともう少し遠目に数カ所。

さっさかマーキングしとく』

 「お願い。んじゃ、とりあえずそっち行ってみるかー」

 

 そんな感じでとりあえずの進行方向を決めると、ガッションガッションと歩みを進め。

 

 『あ、アクリ。先に云っとくけど、その金属反応のある辺り、

動いてる何かの反応――多分MTが居るから気を付けて』

 「あー……『――貴様は何者だッ!?』げ。もう見つかったかー」

 

 その怒声が聞こえて来た方向へとカメラアイを向けると、

マシンガン辺りの銃撃がぎりぎり届くかどうかの距離に二機のACの姿。

どちらもBASHOで、RANSETSU-AR(バーストアサルトライフル)の銃口をこちらに向け、

声を荒げ問い掛けているBASHOの方はダブルヘッドの様で、この辺りに居る連中の隊長格であろう。

 

 「あら、同業者(ジャンカー)……、じゃ、ないか。ダブルヘッド使ってるし。

……って事はルビコン解放戦線?」

 

 問答無用で攻撃してこない辺り、ドーザーや破落戸(ごろつき)ほど会話が成立しない連中とは違う様だ。

あと、ジャンカーがACに乗るのは珍しい例になるので、

消去法で聞き返してみるアクリである。

 

 『! ――独立傭兵、かッ!!』

 「だからこちとらジャンカーだっての。……まぁ、独立傭兵も兼業してるけどさ」

 『何をごちゃごちゃ云っているッ! 貴様は敵かッ!』

 

 待って欲しい。何でここまで敵意むき出しなのか。

そんな事を考えるアクリではあるが、

対ベイラムとの戦闘でベイラム側に独立傭兵が相当数参加していたのかも知れない。

そう考え直すと、とりあえずは落ち着いて貰おうと口を開こうとするのであるが。

……と、傍らに居たもう一機のACの方がアクリ機の肩にマーキングしてあるエンブレムへとカメラアイを向けながらも、

ダブルヘッドのBASHO乗りへと制止の言葉を掛け。

 

 『――待って下さいッス。こいつ、"RaDer’s"みたいっスよ?』

 『RaDer’s……? ツィイーと懇意のジャンカー兼独立傭兵のッ』

 「……あ、私等知ってる人居たんだ?」

 『以前ガリア多重ダムで、ACのアセンブルでお世話になったッスね』

 「あぁ、あの時の」

 

 何か特徴的な後輩ムーヴしていた人がいたなぁとか思いつつ機体を流し見ると、

比較的状態が良いBASHOに乗り、武装も両手にバーストアサルトライフルを持ち、

片方の肩に4連垂直ミサイル。もう片方にクレーンアームを装備している様で。

 

 しっかりとした武装が出来ている辺り、

中々に頑張っているんだなー、なぞとか思ってしまうアクリである。

 

 『RaDer’sがここに居ると云う事は、ジャンク漁りっスか?』

 「そだね。イキの良い戦場跡だし、美味しいお宝でもないかな、と」

 『あー……。出来るなら、この辺りのジャンクには手を出して欲しくはないっスけど……』

 「あぁ。この辺りだったの? 解放戦線(そちら)の本陣」

 『……っスね』

 

 その後輩君(仮称)の言から察したので聞いてみると少々の重い沈黙ののち、

肯定の言葉が返って来て。

だったら、この辺りでの遺品(ジャンク)漁りは厳しいなぁ、

等とか内心溜息を吐きつつ言葉を続けるアクリ。

 

 「あー……。分かった。この辺りのBAWS系の残骸は手を出さない。

それと、多少の修理で何とかなりそうなジャンクも持って行かない。

……だけど、大破品とかそっちでは修理不能そうなのはこっちが貰う。

で、出来る限りリペアしたパーツは解放戦線(そっち)に流れる様にする。

口約束でしかないけど、それで手を打ってくれないかな。

こっちもここまで来たからにはお宝欲しいしさ」

 『ぬ、う……』

 『良いんじゃないっスか? こちとら拾い集めたジャンクパーツの修理がままならなくなりそうっスし』

 『しかし、同志達の遺品を……』

 『だからRaDer’sも、この辺りで破壊された兵器群に手を出さない、

って云ってくれてるんっスから』

 

 アクリの提案と、彼女を取り成そうと言葉を挟んで来る後輩君の一言に、

隊長らしい男は唸り声を上げ。

 

 『それに、ジャンカーの中でもかなり信用できるっスよ、RaDer’s(こいつ等)

ツィイーが良い意味でバカな事するようになったり、良い顔で笑う様になったのも、

こいつ等と交流始めてからっスしねぇ』

 「なんか熱い風評被害を受けている気がする」

 『一応褒めているんっスよ? あれだけルビコン解放戦線の為、

って頭がガッチガチに硬くなっていたあの娘が、

まさかまさか、独立傭兵と懇意にし始めた上に、コントをする程に打ち解けるなんて、と』

 「おいこらまてやそのツッコミどころ満載な単語ッ!?」

 

 誰がコントじゃあッ! と、不当な単語に抗議の声を上げるアクリである。

だがしかし、本人以外にはそう思われていないので文句を云っても意味はないが。

そんな和気藹々とした(?)やり取りの中。

アクリは辺りの空気感が(野生(おサル)の勘で)変わっている事に気が付き。

その違和感の元を特定しようと軽く視線を回すと同時、ユミコから切羽詰まった声が通信から届く。

 

 『――やべッ。和気藹々としてるところ悪いんだけどさッ! 早くそこから逃げてッ!!』

 「ッ、どうしたの、ユミコッ!?」

 『封鎖機構のSG……大型武装ヘリが、今そっちに行くのが見えたッ!』

 「マジかッ! ――解放戦線の皆ッ、

今、封鎖機構の大型武装ヘリが接近してるみたいッ! 逃げるよッ!!」

 『――ッ、総員、退避ぃぃぃッ!!!』

 

 アクリの焦った声音での警告に真実を感じ取ったか。

彼女を大いに警戒していたダブルヘッドBASHO乗りの方も、

辺りで隠れて様子見をしていたらしい己が部下達に指示を短く飛ばした――その時。

 

 遠くから恐ろしい程の爆音――ローター音の筈なのだが、巨体が過ぎてその音は辺りに衝撃波すらもたらしている――が、

その巨体の割りに早い速度で勢いよく近付いて来ると共に、

その機体前方に設えられているライトの強い光が辺りを照らして。

 

 『へッ……あッ!?』

 

 その場に居た一行は一斉に退避機動を始めたのだが、

まだ修羅場慣れしてないがゆえに一瞬だけ反応が遅れたか。

後輩君がその場にて棒立ちになってしまい。

それを見たアクリは大きく舌打ちすると――

 

 「チッ! こンのド阿呆がッ!!」

 『へあッ?!』

 

 後輩君のACの肩と腕を、両肩のクレーンアームで掴んだ上で、

逆脚のジャンプ制御を真横に飛ばした上の無理やりのクイックブースト!

己がACの膝と股関節に嫌な軋みを感じながらも、

無理くりに行ったQBの推力で引っ張られた後輩君の驚き悲鳴が漏れ聞こえて来るが、

死ぬよりはマシと判断しその辺りは無視しつつ、

近場の建物の影へと己が機体と共に飛び込んだ、その直後。

 

 ――恐ろしい程の爆音と共に、

凄まじい勢いでばら撒かれる双翼に取り付けられた四連ガトリング砲からの銃弾。

その鉄の絶叫は、もうACのガトリングガンの比ではないレベルの文字通りの銃弾の雨霰(あめあられ)であり。

それが垂れ流され、同時にその武装ヘリ下方に取り付けられたミサイルランチャーからもミサイルが吐き出され、その通り一帯を蹂躙する!

 

 「……ッ!」

 『み、皆……ッ! みんなぁッ!!?』

 

 金属の砕かれる音に爆発の轟音に紛れ、小さく悲鳴や絶叫の混じったノイズが、

連鎖して行く爆発の衝撃の揺れと共にコックピット内のスピーカーから割れ聞こえて来る。

 

 アクリは歯を食いしばりながら、後輩君のACの動きを封じる様に己が機体で抑え込む。

流石に今の状況下で彼を行かせる訳には行かない。完全な無駄死にになる。

 

 「止めなさいッ! 死にたいのッ!!?」

 『でも皆がッ!』

 「――今のアンタに、あのヘリの蹂躙する大火力攻撃を回避できるアテがあるのかッ!!」

 『ッ!!』

 

 非情ではあるが正論でぶん殴るアクリに、息を飲んで言葉を無くす後輩君。

 

 「それにッ! ダブルヘッドの人が撤退を促してたんだからッ! 逃げ切れてる人もいるだろうしッ!

――――だから、落ち着けぇッ!!!」

 『あ……ッ』

 

 更に強い口調のままに云い募ると、完全に頭が冷えたか、動きを止める。

それから、数瞬。ヘリの再度の攻撃が無い様なので、

アクリは己が輸送ヘリへと通信を繋げると小さく声を発して。

 

 「……リブラ、聞こえる?」

 

 悔しさで血を吐きそうな唸り声を上げている後輩君のそんな慟哭を、

スピーカー越しに聞き、痛ましい表情を浮かべながらも聞き流しつつ、

今一度彼の名を呼ぶと、慌て割り込んで来たかの様なユミコの声が返って来て。

 

 『――ッ、だ、大丈夫だったのアクリッ!?』

 「ユミコだったか。うん、何とかやり過ごせれたよ。

……そっちにも飛び火するかもだから、きっちり警戒は忘れないでね。

――で、本題なんだけどさ。先にアンタが云ってた部隊の生き残りになる可能性が高い一人を今保護しててさ。

ちょっと精神的な意味合いで戦闘不能になってるっぽいから、無人MTを一機こっちに回せれるか、訊いてみてくんない?」

 『ちょっと待ってて。リブラ、アクリの位置情報送るから、そっちに無人MT持って行ける?』

 『だ、大丈夫。ユミコさんが今マーキングした所に向かわせれば良いのかな?』

 

 通信の奥からそんなやり取りをしているらしい後方支援組の会話を聞き取りつつ任せておけば大丈夫かな、と思い。

 

 「……大丈夫? キミはここでじっとしてて。私は生き残りが居ないか確認して来る」

 『……っス』

 「返事が出来るなら、大丈夫か。あまり希望は持ち過ぎちゃあれだけどさ。

こっちも何とか出来る限りの事はしたげるから、ちょっと我慢しててね」

 『……』

 

 無言ではあるが、承諾の意が返って来たと感ぜられたアクリは用心しながらその建物の物陰からACの顔を出す。

 

 (サーチは、今の状況だと逆探で気付かれる可能性があるから止めといた方が良いか。目視確認が無難かな?)

 

 そんな事を内心で転がしつつもAC()を乗り出そうとするのだが。

 

 『――ん? アクリ、ちょい待ち』

 「っとぉッ!?」

 

 突然にユミコから待ったを掛けられ、思わずつんのめるアクリ機である。

無駄に器用な動きをするなし。

それはそれとして、いきなりそんな事を云われ、思わず抗議の声を上げてしまう。

 

 「何事ッ?!」

 『この動き――多分、ACだ。注意して?』

 「はッ? 生き残りが居たの!?」

 『ッ!』

 

 アクリのそんな台詞に後輩君の息の呑む声が聞こえるが、

やんわりと否定の言葉が返って来る。

 

 『違う……もっと遠くからの移動――くるッ!』

 

 そんな彼女の言葉に再度身を潜めるアクリである。

それから、数瞬。一機のACがアサルトブーストでこの場へと飛び込んで来て。

 

 ――ソレ(・・)は、頭部とコア部は灰色に染められ、

腕部と脚部がそれぞれに水色と赤色。そして橙に染めらていたのであろうが、

爆発痕や銃創が残り、擦り切れた感がある色合いの、えらく配色がちぐはぐな印象を受ける総RaD探査フレームのAC。

 

 そのACは、アクリ達が息をひそめている所の程近くでブーストを切って着地をすると、

その勢いのままに前方方向へと軽くジャンプをした後、今一度位置調整をして再度着地した辺りで動きを止める。

 

 『――企――は、足が――。6――1、次の――ターゲッ―――』

 

 そのACがやり取りをしているのであろう、ノイズが相当強く走っている通信音声を拾ってみたが、

ほぼ聞き取れないので諦めるしかないか、とか内心思いながらも更に暫し。

動きを止めていたそのACは、再びアサルトブーストを起動すると、飛ぶ様に去って行った。

 

 今一度再訪する可能性も考慮して暫し動かなかったが、それでも何事も無かったので、

建物の影から這い出したアクリは、視線を先のACが飛んで行った先に固定しながら、ぼやく様に言葉を紡ぎ。

 

 「――行った、か。アレ、何をしていたんだろうね……?」

 『さっき云ってた大きめの金属反応があった所で暫し止まってたみたいだし、

多分データログを抜いてたんじゃないかなぁ』

 「つまり、近くの金属反応、そこには原型留めているMTかACがあるって、事?」

 『だろーね。データログだけ漁って他はほっぽってくれるってのはこちらとしては有難い事だーよ』

 「だね。しかし、データログ漁りかぁ……。新しくルビコン(ここ)に侵入してきた独立傭兵かな?」

 『かも。今のルビコンって情報源が少なすぎるしね。

とりあえずログ回収して今の情勢を読もうとしてるのかも知れないねー』

 「だったら、今の所は私達には関係ないか。とりあえずは――」

 

 そんなやり取りの後、少しだけ警戒を強めつつ注意深く周囲を確認し、

残骸が多数見え隠れするその場をゆっくり歩み進めるアクリである。

 

 「……生き残れなかったの、かな……?」

 『上手く建物の影にでも退避できてれば……』

 

 ぐるりとカメラアイを回してみるが弾丸の通り雨(スコール)のお陰か。

砂埃が舞い、視界が微妙に悪く見え辛いが……だとしても、動いている様子の機械が見当たらない。

 

 さっさかと隠れていてくれれば有り難いのだが。

 

 ……と、少し遠目にBASHOの腕が瓦礫に埋まっているように見えるモノを確認し、

そこまで寄って腕を取り上げてみるのだが……

 

 「……ダメ、かぁ……」

 『腕だけ、みたいだね……』

 

 落胆の言葉を吐き出すアクリとしかめっ面であろうユミコの声。

……その視線は、右肩のアーマー部までが銃弾で歪に抉り取られたかの様になっている、BASHO腕に注がれており。

更にその周りを見回してみると、MTの胴体部や、砲塔部が誘爆したか、

グリップだけが残っているマシンガンや真っ二つに折れたアサルトライフルらしき残骸が散らばっていた。

 

 そこから、暫しの沈黙。

 

 「――ユミコ、生体反応とか辿れない?」

 『流石に、こんな状況じゃ……解放戦線のパイロットデータでも残ってればあるいは……』

 「……そんなん、流石に手持ちに無……あ、BASHO乗り君のデータで!」

 『それなら、行けるかも。そろそろ無人MTがそのBASHOと合流できそうだから、

その辺りの諸々、こっちでやっとく。

アクリは他に何か危険がないかの確認と、ついでにお宝探索の再開もヨロ』

 「あいよー、少しでも希望がありそうになったら元気出るねうん」

 

 希望が多少なりとも見出せたので、何時もの調子に戻って来たか。

そんな軽快なやり取りを始めつつ、

先のACがログ漁りをしていたのであろう場所へと歩みを進め。

 

 「そんじゃあ、先の謎のACが捨て置いて行った落とし物なお宝の御開帳でござ――ッ?!」

 『アクリ?』

 

 気持ち明るめにそんな言葉を吐きつつ、

そのくずおれている一機のACの前に立った訳であるが……。

その機体は、どこかで見た記憶がある構成で。

 

 ――ベイラムのMERANDERの頭とコア。大豊のTIAN-QIANGの腕と脚パーツ。

左腕にベイラムの兵装パイルバンカー。右腕は大豊のマシンガン。

左肩に六連装ミサイル。右肩に中型三連双対ミサイルと云う構成……だった筈の、AC。

 

 ……だが、そのパイルバンカーは中ほどから折れてパイルは明後日の方向に捻じ曲がり。

マシンガンは消失しているのか、辺りには見当たらない。

両肩のミサイルランチャーも暴発したのか、ミサイル部が消し飛んで、支柱部しか残っておらず。

TIAN-QIANGの腕も、左肩部は辛うじて残っているが、

右肩部は爆発の直撃を受けたか、肘までしか残っていない様だ。

脚は何とか原型を留めているが、爆風に煽られ続けたか、塗装が剥げて地金が覗いている。

MERANDER部は頭はほぼ半分になっていて、

コアは……コックピット部が何か大きな爆発に巻き込まれたか、大穴がぽっかりと開いていた。

 

 その無残な姿を目の当たりにしたアクリは、マジか、と小さく呻きを上げ、独り言ちる。

 

 「――こンのクソ男……ッ。私を殺してやる、っつっただろ……ッ!

今のこの星じゃ、戦場(コレ)が常だっつってもな……ッ」

 

 血反吐を吐くかの様に、アクリはそんな台詞を吐き出し、その視線を左肩の装甲に移す。

そこには見覚えのあるエンブレム――レッドガンのエンブレムに赤と青、

二重の炎の絵柄にG7の文字。

 ――まごう事無く、G7:ハークラーのACであった。

 

 『――アクリ』

 「分かってる。――クソ男。テメェのAC、貰って行くぞ。

……あっさりと逝きやがったテメェが全部悪いんだからな。

私達が……RaDer’sが、有効活用してやる。

だから……だから、化けて出るんじゃねぇぞ、ハークラー……ッ」

 

 ギリ、と云った無意識の己が歯の軋む音を感じ取りつつも、

ユミコの気遣いの声に大丈夫だ、と返すアクリ。

そんな感で暫しの沈黙が降り……と、唐突に遠方で盛大な爆発音が鳴り響いた!

 

 「なんッ――」

 『戦闘ッ!? 今の今でッ?!』

 

 思わずその爆発の音の発生源へと視線を向けると、

高台にある基地の様な場所で、恐らく先程解放戦線の生き残りを蹂躙して行った同機であろう大型武装ヘリが、

その高台の基地内の地表に向けて、ミサイルやガトリングを撃ち下ろしている様子が見えて。

 

 「大型武装ヘリッ!? 誰かとやり合ってる!?」

 『ひょっとして、さっきの探査フレームッ?』

 

 驚きの声を上げながらその戦闘の姿を茫然と見やるアクリと、監視をしているであろうユミコで。

カメラをズームしてみると、最大望遠ででもかなりの遠目、それでもなお巨大なヘリの真下から、

彼のヘリと対比としても小指の先よりいくばくか大きいか、と云った感の一つの機動兵器が、

パルスの刃で的確に斬り付け、攻撃を回避し離脱をしながら四連ミサイルを置き土産に打ち込んで行くさまが見えて。

 

 「ま、マジか……? あのAC、一対一で……大型武装ヘリに押し勝ってる!?」

 『うっそだぁッ!? いや本気で何なのあのAC乗りッ?!』

 《――解析結果。ごくありきたりの無改造の探査フレームだ。それで、あそこまでの大立ち回りが出来る、と云うのか》

 『……レティ、それマジな話なの?』

 《俺も驚いている。何回も解析を通しているんだが……結果は変わらん》

 「マジかぁ……」

 

 戦慄し切りの一行を尻目に、彼のACは順調に危なげなく武装ヘリを削って行き。

ヘリの方はそれを嫌ったか、少しずつそのACから離れつつもガトリングとミサイルを撃ち返している様なのだが、

危なげなく空中にてクイックブーストを吹かせてやり過ごし、こちらからは見えない所に消えて暫しの間の後に、

再度アサルトブーストで飛び上がって来て(どうやらブースタの回復待ちだった様である)、

リニアライフルらしき武器を撃ち込みながらミサイルも放つと、その爆風で目くらましをしたか、

見失ったらしき大型武装ヘリの死角よりそのACは、パルスの刃を中枢部に突き込んだ!

 

 その攻撃にて武装ヘリは一瞬だけ痙攣したかの様にブレると、ゆっくりとその基地の敷地内に墜落して行く。

それから、何か大きく重いモノが地面に叩きつけられた大音声と振動が、アクリの居る場所にすら聞こえ、揺れる。

 

 「――ユミコ。事前に知らせてくれてありがとう。

もしも先の警告が無くてそのまま隠れる事もせずにあんなのに出会っちまってたら、私確実に死んでた……」

 『あ、うん。どういたしまして……?』

 

 あまりの軽やかで鮮やかなその戦闘機動に目を見開き唖然としてそんな呟きを漏らしてしまうアクリ。

その茫然としたままの礼の言葉も、同じく茫然としているユミコには殆ど届いておらず、生返事も良い所である。

さもありなん。

 

 呆然としている内に、彼のACは、用事は済んだとばかりにアサルトブーストをまたも起動したらしく、

カッ飛んで行くようにこの戦場から去って行ったのをそのまま見送って、暫し。

呼吸をする事すら忘れてたかの様なアクリは大きく一つ、溜息を吐いて、身体のこわばりを弛緩させた。

 

 「……ふ……ぅ。なんて奴だよ、あの探査フレームのAC乗り……」

 『……何者か調べとこうか? ルビコンに来たばかりの独立傭兵だとしたら取っ掛かりは皆無になるんだけど』

 「ん、そうした方が良いと思う。もしもあんなのと敵対したら、命がいくつあっても足りないし」

 『だよね……うん、最優先で調べとくよー』

 「お願い」

 

 そんなやり取りののち、大分周りの状況が落ち着いたようなので、元々の目的(ジャンク漁り)に戻る事にするRaDer’sである。

 

 

 ――なお、リブラに頼んでいた解放戦線の生存者探索は、

後輩君と脱出できたらしい数名のMT乗りを救出する事が出来たので、不幸中の幸いと云った状況だった様だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その後。

 

 「――シンダー・カーラ。悪いニュースと、良いニュースがある訳なんですが、乗りません?」

 『――何だい、アクリ。不躾に。笑えない話ならお断りだよ?』

 「RaDの戦力、出来る限り貸して下さい。今めっちゃ困ってますんで!」

 『アクリがそれだけ焦っている……?

確かアンタ等、グリッド135の戦場跡のハイエナをしているって聞いたが……

一体どうしたって云うんだい?』

 

 アクリは己が古巣の首領へと直通の秘匿回線で連絡を取り。

彼女の焦燥と心底弱った、と云った声音に、

困惑気味に言葉を返すその首領……シンダー・カーラで。

 

 「カーラの云う通り、今、ジャンク漁りの為にグリッド135からほど近い汚染都市の高台の基地跡に居るんですけれども。

あらましとしては、解放戦線の連中と鉢合わせしたり、

その直後に封鎖機構の武装戦闘ヘリが来襲して来たりして、暫く隠れてたんですが……

高台の方ですっげぇ連続で爆発音とか銃撃音……つまり、戦闘音がしたんで思わず確認したんですよね」

 『――続けな』

 「一応データログはあるんで後から送りますし、何なら直接見分してくれても良いんですが……

封鎖機構の大型武装ヘリ、一機のAC(・・・・・)に堕とされたんですよ」

 『………』

 「(ち、沈黙がこわひ)……で、そのACがヘリを撃破した後、何も取りもせず直ぐ去ったんで、ただ今絶賛ヘリの前まで来てる訳で。

んで、これは良いニュースの方になりますが。

封鎖機構の武装戦闘ヘリ、これメインの制御部分は破壊されてますけど、

それ以外はほぼ完品で残ってるんですよ(・・・・・・・)。あのAC乗りの技量が伺えます」

 『分かった、直ぐに戦力を向かわせる。私も行くよ』

 「良かった。大型武装ヘリ(コレ)はジャンカーとしては見過ごせないですし、

かと云ってRaDer’s(私達)だけじゃ100%を超える勢いで持て余しますし。

……で、悪いニュース。先に話したAC。私も見てくれを確認してたんですが……。

ソイツ、色合いはなんか歪でしたが全身RaD探査フレームだったのですけども……カーラ、所属分かりますか?

総RaD製ACが封鎖機構に喧嘩売ったなんて噂が回ったらすごい面倒な事になりません?」

 『――分かった。その所属不明機は――いや、私の方で調べてみよう。

……それは兎も角としてさ、それだけの大物、私等に情報も売れば相当稼げたんじゃないかい?

今の話じゃあ、そのヘリの情報と所属不明ACの情報、二つの情報料は考えてないように聞こえるよ?』

 

 何か歯切れの悪いカーラの台詞に疑問顔になりつつも、

云わなきゃいけない事なら後で話してくれるでしょ、と気にしない事にしたアクリで。

 

 「まあ、実際ちょっとは売ろうかとも考えましたよ? ――でも、こっちはこっちで大物のお宝手に入ってますから、

それ以上欲張ってもケチ付いちゃうんじゃないかと思いまして」

 『お宝?』

 「リブラの判断待ちではありますが、中破大破のAC4機と、ベイラムと解放戦線のMTが相当数。

まあMTの方は、何とか生き残った解放戦線の人達に大半は譲る事になってますが。

因みに中破のAC2機は相当状態が良いです。

大破のは解体(バラ)して修理用パーツにする以外には出来ないぐらいにアレしてるみたいですけど。

後、ベイラムのパイルバンカーも二つもあって、一つは多少修理すれば使えるレベルで残ってますね。

もう一つの方はほぼ修復不能なので修理用パーツ取りとリブラの改造(遊び)に使うつもりです」

 『ぶッ』

 「吹くでしょう? ……だから、幸運のお裾分け、ですよ」

 

 からからと笑いながらそんな事を言い放つアクリに、唖然とした空気が感ぜられるが、気を取り直したか。

カーラは一頻り笑った後、笑みを浮かべたままだと確信できるような楽しげな声でしみじみと語って来て。

 

 『やっぱりアンタを外に出したのは正解だったねぇ。色々驚かせてくれるし、笑わせてもくれる。

――そうさね。データ取りと解析が済んだら、大型武装ヘリ、アンタらにやるよ。そうした方がもっと笑える事になりそうだ』

 「ちょッ!? 云いましたよね、こっちじゃ絶対持て余すって! ちゃんと引き取って下さいよ!」

 『まあデータ抜いて修理しただけじゃ面白味がないから、色々と擬装もするし、何か笑えるモンでもくっ付けとくさ』

 「ちょっとッ! シンダー・カーラッ!? だから要らないって――――切れてる」

 

 アクリは抗議の声を上げるのだが、そんなこと知ったこっちゃねぇとばかりにカーラは通信を切り。

それから暫くの間、沈黙が続き。

 

 「……その……えっと、アクリ?」

 「あ、アクリさん、後ですごい空中拠点を手に入れれるって思えば、ね、良いと思うんだよ?」

 

 そんな彼女の状態に頬を引くつかせながらフォローの言葉を述べる二人に、

物凄ーく不穏な嗤い声の反応が返って来て。

 

 「……フフフフフフフフフフフフフフフフフフフ」

 「アクリが壊れた」

 「あ、アクリさん?」

 「本当に、何時か、あの姉御。お腹よじれるぐらい笑い死に(比喩表現)させてやる……ッ!!」

 

 そんな感じで、限りなく不毛で無意味な宣言をするアクリに、ドン引きするユミコとリブラである。

 

 

 

 









 喪中につき年末年始のご挨拶は失礼させていただきます。



 ……なら、こんな時期に投稿なんぞするなと(セルフ突っ込み
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