予想以上に筆が乗りました……!(ぁぁ
いつもこんな勢いで書けるのであれば良いのですが……。
ムラッ気が多くて申し訳ありませぬ……。
それでは邂逅、なのです。
「……アクリさん、アクリさん……?」
先の汚染都市の小競り合いから丸一日。
心底困った感でリブラが部屋の入り口のドア前から声を掛けている。
そんな彼の状況に通り掛かったユミコが顔を出して来て。
「……あれ、リブラ。どしたん?」
「あ、ユミコさん。ちょっと前、カーラさんから連絡があってさ。
アクリさんに用事があったみたいだから、取り次ごうとしたんだけど……反応が無いんだ」
「自室以外には?」
「レティに確認して貰ったけど、他の場所にアクリさんが居る様子は無い、って……」
「自室でわたし等に何も云わずのお籠り……? ――あー、成程。なら、多分アレ、か」
リブラとのそんな問答になんかを察した様子のユミコが納得の表情を浮かべ。
そんな彼女の反応に、首を傾げ疑問符を浮かべながら問い掛けるリブラである。
「……アレ?」
「ん。数年前に、わたし達を拾ってくれたRaDドーザーのオッサンから教わった区切りの為の儀式、みたいなもんかな。
……もう少ししたら這い出て来るとは思うから、リブラは先にカーラと話繋いでてくれる?」
「う、うん……分かった?」
後ろ髪引かれる思いを持ちつつも、カーラと話をする為に操縦室へと向かうリブラを見送ると、
大きく溜息を吐き、勝手知ったる、と云った感でハッキングからのドアのロック解除。
それから直ぐに己が身を滑り込ませ、きっちりとドアを閉めて施錠する。
犯罪なのだが、まあ親友同士で同性だし、一応は緊急なので勘弁してもろて。
それはそれとして、狭く小さいその部屋の中。
ベッドに腰掛けた人影が、目で見える程に強い赫色を放っているソレを嚥下し、暫しの間の後、吐き出す。
ソレは薄暗い赫い煙となって女子――アクリの口から洩れ流れて。
そんな半ば心あらずな彼女の姿に呆れと憐憫の色を滲ませながらユミコは声を掛ける。
「アクリ」
「――ユミコ?」
声を掛けられ、今気づきましたと云った感の声音で言葉を返して来るアクリ。
彼女の受け答えがハッキリしているのに安心感を覚えつつも話を続けるユミコであり。
「そろそろ『いつもの』、終わるよね? リブラから伝言。カーラが話したいんだってさ。
……しっかし、すっげぇコーラルドラッグの匂い……。うん、リブラと会わせなくて正解だったよ」
「ん……。もう、一日経ってるの?」
ちょっとばかり顔をしかめ、そんな事を呟くユミコに気だるげな感でアクリが聞き返し。
「うんにゃ。リブラから又聞きしたレティの情報からの逆算で約半日ぐらい、って所かな。
……しっかし、何かしらに己が心の糧と為った者には、コーラルを送り火としても使いキメつつも死出の旅路を祈る、
ってあのわたし等を拾ってくれたRaDのオッサンのふざけた儀式……よくやるわー」
「そんな話をしたその数日後にはあのクソボケ、コヨーテスにヤられてさっさとくたばりやがったけど」
「それな。なんつうモンを教えやがったんだあん畜生め。それを律儀にやってるアクリもアクリだけどさ。
――存外にG7ってアクリの中では大きかったんだねぇ」
「うっさいわ。あの
感謝はするさ。返礼品の鉛玉は結局返せなかったけどね」
ぼやくアクリに苦笑を漏らすユミコである。
「……とりあえず、さっきも云ったけど、カーラから何事か呼び出しを受けてるっぽいから、
多少でも身繕いはしときなさいよ」
「ん、了解。……ユミコ」
「んー?」
「何だろう。前と違って、コーラルで酔えなくなっちゃった」
軽い口調でおどけながらそんな事をほざくアクリに、目を見開き驚きを返す。
「……アンタが服用している
ラミーが愛用してる、RaD内部では一番キツいヤツじゃなかったっけ?」
「うん。
因みに、李穏もコレを愛用してたりする」
「そんなTipsはどうでも良いから。
……でも、それが全く効果が無いって……ドクターの云ってたアレソレが現実味帯びて来てる?」
「世代を重ねてコーラルに適応を始めた人種ってアレ? 私、どこにでもいるなんて事はない女の子なんだけど」
「なんて事はない(失笑)女の子(嘲笑)」
「殴るぞゴルァ」
そんな感じにふざけ合いながら、よっこらしょ、と云ったばかりに立ち上がると、
とりあえずに身嗜みを整える為にシャワーを浴びる事にする。
それから少々。
さっぱりとしたアクリは、リブラと世間話的なあれこれを画面越しにしていた者へと声を掛けて。
「お待たせしました、カーラ」
『――あぁ、遅かったねぇ』
「あ、アクリさん。自室に籠り続けてたら、身体によくないよ?」
「あー、うん。ゴメンね、リブラ」
軽く挨拶したのち、リブラに心配された件に平謝りするしかないアクリで。
初手からもう何かグダグダである。
『……ゴホン。とりあえずは、だ。
少しだけ不審な声音に聞こえるが、気にしない事として。
早速本題に入る相手――カーラで。
「……こんな状況下で依頼って。武装ヘリのグリッド086への移送もまだ終わってないってのに」
『ああ。それのお陰で、私が手を離せないからこその依頼さね。
超個人的なアレソレだから、出来る限り私が掛かりたかったんだけどねぇ……。
「貴女の依頼で、超個人的ではない依頼って無かった気がしますけど……。
あと、相変わらず物凄く本能に忠実ですよねシンダー・カーラ」
思わずジト目で突っ込んでしまうアクリであるが、RaDのの首領は笑って受け流し。
そんな通信会話をしつつも視線を少しだけズラし、操縦室の窓から外を見やる。
――そこは、アクリが秘匿回線にてカーラへと通信を行った場所――汚染都市の廃基地の構内の広場で。
ソレに取り付いてわちゃわちゃしているRaDのMT部隊と、多少ながらにACも見える。
流石に100m越えの全長を持つ超大型のヘリコプターである。
MT部隊が豆粒……は、流石に云い過ぎか。
だが、ヘリの威容に比べると相当小さく見える。
……何で
RaDの
賢明な判断はまあそれとして。
『中々に云うじゃないか。まぁ、間違っちゃいないんだけどね。……まあそれは兎も角、だ。
とある古い友人とその連れが、星外からルビコン3入りする事になったんだけどね。そいつをアンタ等に回収して貰いたい』
「……あら珍しい。そんな依頼を私達にして来るって事はその友人様、独立傭兵じゃないんですね?」
アクリは物珍しそうな表情を浮かべつつ問い掛けると、察しが良いね、と返され。
いや大体独立傭兵だったら、己が乗機ごと流星になって強引に落ちて来るじゃないですかと内心思うがそれはさておき。
『まぁそうさね。先に降下した独立傭兵の雇い主である友人が、
封鎖機構に喧嘩を売った『誰か』の所為で混乱している今が安全に降下出来る好機、と見た様でね』
存外にその誰か、と強調されたその友人の正体を大体察せたが、とりあえずは話を聞く事にした様で。
『予定ポイントに降下出来そうな算段が付いたから、そのポイント付近で待機していて貰いたい』
「時間とか進入角度とか大気状況とかその辺りをちゃんとしないと、盛大に予定ポイントから逸脱しますもんねぇ」
『ああ。だからさっさと行って貰いたい訳さ』
「了解。……因みに、そのポイントはどこなので?」
『この汚染都市近郊の山中だね。到着予定時間は……大体今から1時間前後ぐらいか』
「ぎりぎりに話を持ってきすぎィッ!?」
あまりにあんまりな台詞に思わずひっでぇ勢いで突っ込みを入れるアクリで。
そら一時間ぐらいで到着って事は下手をすればもう大気圏に突入してる可能性があるレベルである。
慌てるのも無理はなかろう。そんな彼女の反応にしてやったりな風情で笑い声を上げるカーラ。
『ハッハッハ。そう云う反応が見たかった』
「いい加減にしましょうね、シンダー・カーラ?!」
『済まないね、この所アンタの反応があまり愉しくなかったもんでつい』
「つい、でその友人への無茶苦茶やらんで下さいよッ!! ……ふぅ。とりあえず、詳細を。
――で、多分ですけど、先の所属不明の総RaD探査フレーム……その、とある友人の子飼いですね?」
ジト目を尖らせて怒りの台詞を吐き出すアクリではあるが、
一つ息を吐くと、直ぐ様に心を落ち着かせ、必要な事を聞き出す体勢へと変えて問いを掛け。
『……流石にバレちまうか。そうだよ。あの探査フレームに乗っていたのは、
とある友人――"ハンドラー・ウォルター"が擁する強化人間のみで構成された傭兵集団、"ハウンズ"。その猟犬の一人さ。
「強化人間のみの傭兵集団で、
カーラからの説明に、物凄く胡散臭い、と思ったままに呟きを漏らすアクリである。
そんな彼女の反応は予測できたのか。カーラは取り成す様に言葉を重ね。
『まあ、触りの話を聞いた限りでは物凄くアレなソレなヤツだと思うだろうが……。
とりあえずは会ってみな。それでアイツの大体の性質は分かるだろうからね』
「はぁ……?」
そんな彼女の台詞にも、生返事でしか返せない。
更に不信感が増した様である。
まあ話を聞く限りには、自称だか他称だか知らないが、
強化人間を犬と称して
あまり宜しくない想像が頭によぎってしまい、警戒してしまうのも仕方なかろうが。
「とりあえず、詳細なデータとこっちが準備していた必要物資の目録は直ぐ送る。
それも持って行っとくれ。――じゃあ、後は頼んだよ、RaDer’s。
――おいそこのボンクラ共ぉッ! もっと丁寧に
どうやら、陣頭指揮をしている最中でこんな話を持ってきていたらしい。
中々に器用な女傑である。そして、そんな檄を飛ばしまくっている彼女に、
やれやれ、と云った感で肩を竦めると苦笑交じりのボヤキを漏らし。
「ああもう。あーなったらもうあの人止めらんないよね……」
「……まぁた、面倒臭そうな依頼を……」
一応アクリへの直接依頼だったが為、傍らに居たユミコはだんまりを決め込んでいたのだが。
そんな彼女に思い切りよくジト目を向け突っ込みを入れるアクリである。
「オイ何してるんだ交渉担当」
「ま、まあ気にしちゃダメなんだよ?
口を開いたら
「オイ本音」
更にジト目が尖ったアクリから視線を外しつつ、わたし悪くないもんとか小さくほざくユミコである。
そんな娘っ子に、ものすげぇにこやかな笑みで肩に手を置くと……
「ちょっと殴って良いかな? はい、右頬を出してー」
「それは、絶対嫌」
ささっとその囚われた肩を揺らしてアクリの手から逃げつつ嫌がって見せるユミコと云う、
相変わらずの漫才を繰り出す幼馴染ーズである。
……と、そんな二人をスルーして、モニタと睨めっこしていたリブラが一つ声を上げ。
「――ん、カーラさんから目録データ受け取ったよ……って、
ぅゎ、すっご……。大盤振る舞いだよ、これ」
「どれどれ……べリウス大陸内のAC用ガレージ数カ所の位置情報……。
これ、多分オールマインドが貸し出しをしているヤツじゃない、個人所有のだよね?」
「うん、オールマインドのログが付いていないし、そうなるかなー。
んで……ぅ、新品のAC輸送ヘリに、ちょっと前にアップグレードしたRaD探査フレームの新型一式と……
うぇ。RaDの初試作の、出力が中々高いジェネレータも入ってる。なんて羨ましい。
わたし達が独立した時にもこの辺りくれれば助かったのに……」
「まあ私等のあれそれは、カーラも戯言と思って真面目に受け取ってなかったのかもねぇ。
後は……あ、先の謎ACの位置情報もあるのか。
この汚染都市から一番近所のガレージで、その新品の輸送ヘリと先に共に待機中みたいね」
色々とやべー情報が入ってるのは不用心な気がしないでもないが、それだけカーラから信頼されていると思っておこう。
しかし、こんなに色々と支援して貰えるなんて、と少々妬心が湧き立つが、今はこれぐらいであったら、はした金である。
本気でお金持ちになったなぁ、としみじみ思う。
まあ100%リブラのお陰なんだけどね、とも思ったりもしながら、
目録のデータを頭に叩き込み、降下ポイントへと向かう事とする。
それから一時間弱。
もしもの降下ミスからの被害の可能性も加味し、
降下ポイントからある程度は離れた所で、空を見上げている三人であり。
《――来たな。時間ほぼズレは無し、か》
「レティ、肉眼ではまだ見えないけど、
《ああ。しっかり減速も始まっている。何の問題もなさそうだ》
「そんじゃ、アクリも準備を――アクリ?」
「アクリさん?」
二人は行動を開始しよう、と云った感で動き出そうとしたのだが。
アクリだけは空をそのまま凝視しつつ、そっか、そうなるよね、と小さく呟き苦笑を漏らし。
それに何か嫌な予感を感じたユミコは何かに勘付いたのか、固い声音で問いを掛けて。
「――アンタ、まさか……コーラルドラッグが効かなくなってるのって……ッ!?」
「ぇ、ど、どう云う事なの?」
「……あー……。空が全部、濃淡はあるけど、赫く見える……」
リブラもよく分かっていないが、ユミコの台詞の硬さに異常事態を感じ、焦った声音で聞き返してくる訳であるが。
返ってきた言葉は想像以上にヤバそうな話であり、驚きで目を見開く二人。
「コーラルに更に、浸食されてる……ッ!?」
「ま、赫く見えるだけで別に問題はなさそうだから、そこまで気にしなくても良いよ。
ハンドラー・ウォルターに関した詳細データの……ハウンズの件が本当の事なんだったら、
RaDのドクターの所にさっさと連れて行かなきゃだし。その時にまた診て貰うから、そんなにキッツい顔しないで?」
「だからってねぇ……ッ!! これから、アンタコーラル摂取するの禁止ッ!」
何事も無いかの様に、そんな軽い声音でそんな言葉を発するアクリにキレ気味に怒鳴るユミコで。
彼女のあまりの剣幕に、オロオロとするしかないリブラに何となく和みつつ、アクリは肩を竦めて口を開き。
「あー、うん。わか……っちゃいけないかなぁ、これは」
「アンタまだ……ッ!」
「これは譲れない」
アクリの
ユミコは怒り顔のまま、暫く目の前の娘っ子を睨み付けていたが……肩を落とし分かったわよ、と呟くと……
「――ったく。なら、これから先、あの儀式をしない様に、アンタは大切な連中を絶対に死なせるな」
「不可能に近い事を平然と云いやがる……。努力はするさ」
そんな風にて何とはなしに話は纏まったらしい。
親友と云う気安い間柄のやり取りに、リブラは何となく居心地が悪い気分を感じるが、
一つ深呼吸をしてその嫌な気分を追い払い、その二人へと声を掛ける。
「……そろそろ、到着しそうだよ。僕等の肉眼でも見えるぐらいになってる」
「おっと。そいつぁ失礼つかまつり。ユミコ。とりあえずは依頼の履行をしないとね」
「――了解ー」
そんな感じになり、一つ空を見上げてから、己が
それから、数分。
小規模なスペースデブリに擬装された、輸送ヘリ程の大きさの降下船が落下の衝撃を緩める為、
擬装された部位を突き破り現れた小型のブースタの逆噴射を行い着地し。
同じく擬装された部位が剥がれ落ちてそこにあった入り口の扉が割れ開くと、スロープめいたタラップが現れて、
そこから杖を付きながら、一人の初老の男がゆっくりと歩み、現れて。
「――お前達が、カーラの使いか」
下降船が着地し、落ち着いた所に駆け寄って来たRaDer’sの面々をゆっくりと見まわし、そう聞いて来て。
――彼が、星外で相当な腕を持つ傭兵集団"ハウンズ"を要する飼い主のハンドラー・ウォルター、その人であるらしい。
「お初にお目に掛かります、ハンドラー。
貴方の話は、
警戒している事を表に出さないように気を付けながらも居住まいを正し、
そんな風に畏まった口調で言葉を紡ぐアクリに、ああ、そうか、と云った感で言葉少なに言葉を返し。
うわぁ、イケオジ、とか隣にいるユミコの口から漏れ出たので、とりあえず肘撃ちで黙らせておく。
横目で悶絶している様子が見えるがとりあえずすスルー。
そしてそのまま、視線を彼の顔からさらに下に移すと――彼に連れられる様に、二機の簡易移動式の医療ポッドが移動して来ていて。
「……それで、そっちの移送用の医療ポッドが、要救助者ですか」
アクリの視線の向きとその台詞に小さく頷くウォルター。
「――ああ。致命傷に準じた深い傷を受けていたが為、休眠モードにした上で、冷凍処置をしている。
……この二人を、全治するまでの間、
「承知しております。強化人間C4-617、620、両名。
再生治療を施しますので、ご安心して下さい。
ただ……担当医から聞いた話では、再生出来る……とは断言できない様でして。その辺りはご了承を」
仕事用の笑みを浮かべつつそんな風に云うアクリは、憂いの表情に切り替えると、
ウォルターの傍らにある医療ポッドの方へと視線を向けつつそう断りを入れる。
――カーラからの詳細データから読んだ事柄として、この強化人間二人は、
このルビコン3へと来る少々前、ここへ密航をし易くする為に襲撃したとある封鎖機構の基地の一つに投入され、
そこの常駐部隊との激闘の末に、ほぼ相打ち(うち一人戦死)と云う体でその基地を破壊したのち、
リブラが開発し、カーラが改良した脱出システムにより何とか生きて帰って来れた、と云う話らしいのだが……。
その状態は、悲惨、と云っても良い様であり。
両者共に四肢の欠損が見られ、片方は命の危機すらある状況。
それを再生できるかはドクター達の診断結果待ちになるが、
生命を繋ぐ事は出来るであろうが、それ以上は相当に厳しいのではないか、と云う風に書かれていた。
「……こちらも相当無茶を云っている自覚はある。……だが、出来うる限り、頼みたい」
彼もそんな事情を理解しているのか。アクリの断りの台詞に、
少しだけ頭を下げ、短くも強き想いが籠ったそう云う初老の男の姿。
それに一瞬だけ気圧され、驚きの表情を浮かべるも、直ぐに元の笑みへと表情を整えて。
「――承知致しました。此方も全力を尽くさせて頂きます」
(……旧式の強化人間を使い捨てて金を荒稼ぎする冷血な男だって予測だったけど……先入観でしかなかったって事、か。
カーラの云っていた通り、顔を会わせて分かったよ。
この人、感情を押し殺しているから分かり辛いけど、アリエス並みの善人だ。
……まあ、そもそもカーラの古い友人って人が、あの人が不快に思う様な事を平気でする様な外道だとかありえないよね、うん)
ちょっと警戒し過ぎていたかも、と内心反省をしながらも、会話を続け。
「――それで、あいつは……621は、今、どこにいる?」
そんな彼の問い掛けに、アクリは頷き言葉を返し。
「C4-621は、貴方に提供すると云う数カ所あるガレージの一つに指示された通りに移動し、
休息モードにてAC内で待機しているそうです。そこには今から私達が案内しますよ。
……あぁ、
"そのガレージにある諸々は、私からのプレゼントだ。好きに使いな"、だそうです」
「あいつには恩に着る、と伝えておいてくれ」
「……今なら近所に居るので、普通に顔合わせもできますけど……」
「いや、止めておこう。此処に顔を出していない云う事は、己が愉快事を優先しているのだろう。
それの邪魔をしたら異様に不機嫌になるからな、それは避けたい」
「――よくお分かりで」
そんな彼の台詞から滲み出る疲れと諦めの色を多大に含んだモノを感じ取ってしまい、
ああ、やっぱりこの人、確実にカーラの古い友人だなぁ、と同情を禁じ得ない。
「それでは、案内いたします。そちらの医療ポッドはこちらに任せて頂きますね?」
「ああ、頼む」
「ユミコ」
「あいあい」
そう短く名を呼ぶと、ユミコが了解と云った感で手際良く二つの医療ポッドの設定をし直し、
そのままカーゴ内の安全区域に連れて行く事にしたらしい。
「あ、僕は――」
「リブラは止めとこうね。色々と刺激が強いだろうから。貴方はハンドラー・ウォルターの手助けを」
そんな彼をやんわりと留め、ウォルターの方に行くよう促すアクリである。
――まあ四肢を欠損している……情報によれば、女子二人。
それが冷凍処置されて(衣服は肉体に張り付く危険性があるので裸か剥がしやすい素材で入念に巻いたであろう姿で)寝ているのだ。
彼には二重に刺激が強すぎよう。
「あ、うん。……じゃあ、ウォルターさん。このヘリ、応接室とか無いから、操縦室の座席になるけど……」
「大丈夫だ、慣れている。……では済まんが、頼む」
「うん、それじゃ、行こうか」
そう云いながら、相手が杖を付いている事を慮ってか、ウォルターと歩調を合わせて行くリブラは、
ちょくちょくと彼に質問とか話題とかを差し向け、それを受け答えすると云った感で共に歩んで行く。
その姿に孫とお爺ちゃんかな? とか微笑ましく感じる思考を転がしつつ二人について行くアクリである。
《マスター権限により、C4-621、再起動。ハッチ、開きます》
「――あぁ、頼む」
それから暫し。
情報通り、汚染都市から少々離れた所にある岩山の隙間に隠されたガレージに入り込んだ一行は、
そこにあるハンガーに駐機していたあの歪な色合いのRaD探索フレームがちゃんとあるのを確認したのち、
機能を休息モードから再起動して、ウォルターの所有者権限からの命令に従い、ハッチが開く。
そして、そのコックピット内のシートに座っている人影の姿を見ると、
少々痛ましい表情を浮かべるアクリとユミコであり。
「なん……て……ッ!?」
逆に、リブラだけが絶句をしている状況である。
……アリエスからの簡単な説明だけでは強化人間のあれそれを理解しきっていなかった様で。
――そこに居たのは、年の頃、12,3歳程で耐Gスーツを着ている禿頭の少年。
……いや、真っ白い髪の毛がまばらに生えているように見える辺り、
冷凍処置の為に毛を残らず剃り落としていたのが解凍されたのちに生えだしている状況の様だ。
つまりは、彼を冷凍処置から目覚めさせてからそう時間は経っていないらしい。
そんな彼の首筋にケーブルらしきものが左右3本ずつ繋がり、
そのケーブルはシートの奥の方へと伸びていて、彼とACと"繋げて"いる様である。
「少年兵、かぁ……あの子が、封鎖機構の大型武装ヘリを単機で落としたやべー奴、なんだねー」
「まあ、強化人間ってのは戦闘能力さえあれば、
他はどうなってても問題ない、ってスタンスで開発されてるからねー……」
「肉体的な強化をするにしても、若い方が大方その基礎値は高いから、
あり得ない話じゃないよね……。それにしても、若すぎる気がしないでもないけれど」
そんな感じでボソボソとリブラには聞こえない様に気を使いつつ小さく会話をする二人である。
「――621。調子は、どうだ?」
「―――」
そんな二人と今だ絶句しているリブラを他所に、
ウォルターはそんな言葉を621、と呼ばれた強化人間に掛けると、こくり、と小さく一つ頷く。
どうやら声帯もまだ再生できていない状況らしい。
「封鎖機構のSG……そして、ライセンスの取得。お前の奮闘のお陰で、俺も安全な降下が出来た。
まだ本調子には程遠いのに良くやった、621。後の調整はやっておく。今は、休め」
「―――(コクリ)」
そんな彼の言葉に、今一度頷くと、電源が切れたかの様に、意識がシャットダウンする621。
その姿を見やりながら、杖を付いたままの状態で、片腕で小さな戦士を抱き上げるウォルター。
器用だなオイ。そんな言葉が思わず出かかるアクリではあるが、
こんな空気の中でそんなボケは無粋過ぎると自重して。
賢明である。
「――――済まん、世話になった。礼を云おう、RaDer’s」
「いえいえー。ちゃんと合流出来てこちらも安心しましたよー。
……今の状況で聞くのも無粋かもしれませんが。これからどうしますので?」
「今の俺……。いや、621はアリーナランク最下層のまだまだ無名の独立傭兵だ。
適当なばら撒き依頼を熟して信用を得る所から始めんとな」
アクリの問い掛けにそう答えるウォルターで。
あれ? 来星したばかりのこの人達が、いつの間に傭兵ライセンスを、とか疑問に思ったが、
先のウォルターの台詞にああ、不穏な事したんだなと当たりを付けつつも、
別の件を口にして。
「――とりあえずは、ですが。輸送ヘリの方に最新にアップデートされたRaDの探査フレームと、
操縦室の方に細々とした生活物資がある筈です。
それもカーラからの贈り物ですので、活用下さい」
「――重ね重ね礼を云っておいてくれ」
「はいな。あとは……資金繰りが苦しいようでしたら
純正パーツ程信頼性は無いでしょうが、中々の品質の中古パーツや、戦闘物資であればご用意できますので」
そして、自分達を売り込む事も忘れないこいつ等は案外強かで。
その言葉に覚えておこう、とウォルターは応えるのであった。
これがRaDer’sと、ルビコン3の新たな火種となりうる、
独立傭兵とその主との初めての邂逅となったのである。
そんな感じで早めに知己を得ましたRaDer’sと、ぼくらのいれぎゅらー(ぁぁ
色々と軌道修正の嵐が吹き荒れそうな悪寒がしないでもないですが、それはそれとして(ちょ
さて、次は……どっちの話を書きましょうかねぇ?(吐血