とあるルビコンのジャンカートリオ   作:清狼光牙

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5話

 

 

 

 

 

 『そんじゃ、今回のミッションのおさらいね?』

 「はーい」

 

 べリウス南部にある汚染都市から程近い空。

そんなこんなでRaDで補給その他諸々を終わらせて、簡単なばら撒き依頼を受けたりゴミ拾いをしつつ一週間程度経ったそんな日。

新たな依頼を受けた"RaDer’s"の大型輸送ヘリは、空を駆け。

アクリは毎度の如く、ACのコックピット内にてユミコの言葉を聞いている。

 

 『今回の依頼主はルビコン解放戦線で、撃退若しくは殲滅任務。非戦闘員らが暮らしている集落の近所に大豊の小部隊が展開し始めているんだって。

小部隊、って云っても、その部隊は星外から大物の物資をあまり持ち込めなかったみたいで、

その殆どはBAWSの純正MTで、大豊……ってか、ベイラム系統の純正MTは、そこの隊長格ぐらいしか持ってないみたい』

 「戦力を現地で調達したかー。BAWS的にはそこそこ美味しい収入だったろうねー。んで、数は?」

 『一応遠距離での熱源サーチでは、MTが5プラマイで2ぐらいー?』

 「最悪7~8機かぁ……。んで、ベイラム系だからほぼ確定で随伴に戦闘ヘリとかドローン、戦闘車両は居るよね。

——ちょっと厳しいけども、不意打ちでなんとか削るしかないなぁ」

 

 そんな会話を続けつつ、ふと思った事を聞いてみるアクリ。

 

 「そ云えば、解放戦線の武闘派の連中は? こんな状況で出張ってこないなんておかしい気がするんだけど」

 『今、対アーキバスとの防衛戦の展開中らしくて、援軍はほぼ絶望的なんだって』

 「あー……。対岸を狙われたか」

 『そみたいだねぇ。だから、ルビコンに直接の縁がある独立傭兵をメインに依頼をばらまいているみたいでそれ、受領したんだー。

アクリの変態機動なら、敵の意識を止める事出来るだろうからその内に撃破とかしてくれると思ったし』

 「誰が変態だ」

 『アクリ』

 

 打てば響くかのような相変わらずのやり取りをしつつ、更にヘリは進んで行き。

少々前にやったシミュレーターのログから披露されたACによるバク宙一回転半捻りなんぞ見せられたら変態と云われても仕方ない所業である。

逆脚でも無い上に、ブースタをも全く使っていないのに成功させたらしい。

……因みに、覗いていたらしいオールマインドさんからも呆れの突っ込みと機動データログの提出を請われたので送っておきました。

良い小遣い稼ぎ(50COAM)になりました。そのまま食料品の中で高級なエナジーバーとかしっかり味がついたレーションを買い漁りましたとも、ええ。

これで暫くの食卓が華やかになるとかなんとか。

 

 それは兎も角として。

唐突に疑問符が張り付いたかのような声音でユミコは呟いて。

 

 『……あれ?』

 「どしたの、ユミコ?」

 『あ、いや……戦闘が始まってる?』

 

 レーダーとスキャニングのデータと睨めっこしているであろう彼女からの言葉に首を傾げつつ可能性の話を上げるアクリ。

 

 「ばら撒きだから、他の独立傭兵と運悪くバッティングしちゃった?」

 『かも。いちお調べてみる。何時でも出撃()れる様に準備しててねー?』

 「了解。……よし、リブラ、今回の装備での気にする点とかある?」

 

 気合を軽く入れ直し、己が専属メカニックに本日の仕様の説明を受ける事にする。

アセン自体は自分が組んではいるが、それ以外の部分は本職に任せるに限る、と云うのがアクリの考えであり。

決して楽をしたいと云う訳ではない……筈である。

 

 『んー、とりあえず、メインの右手装備と右肩装備はオールマインドの報酬である正規品のベイラムのリニアライフルとファーロンの4連垂直ミサだから割愛するとして。

左武器のレーザーダガー。アクリさんの要望通りにダガーのまま運用する事にしたから更に調整を施してレーザー刃の展開と収納を数秒早くする事が出来てるから、

前よりも一撃離脱的な戦い方しやすくなってるんじゃないかな』

 「あ、それは有難い。コックピット穿つ時以外あまり使わないから、展開収納が早くなるのは大歓迎」

 

 ACの機動力を生かして素早く一番の急所を狙うスタイルが確立された。

NINJA的な暗殺者かな?

 

 『……で、左肩なんだけど、ちょっと悪ノリしちゃって、MT用の4連ミサイル……三段重ねしちゃった』

 「おーい、リブラきゅーん?」

 『あ、あはは……つ、つい興が乗っちゃって。ゴメンナサイ。

——で、でも動作は保証するから! 照準補正ユニットも外付けしてるから、命中率も問題ないし!

撃ち尽くしたら自動でパージする機能も付けてるから、悪くないと思うんだ!』

 

 慌てて言い募るリブラにああ、能力は高くても若くてもやっぱり元RaDの技術者なんだなーとか内心苦笑い。

まあでもそこそこ使い勝手は良さそうだし、それ以上は言いませんよ、ええ。

多分先日のBASHO頭三段重ねカスタムの熱がまだ残っていたんだねうん。

それにAC用の10連ミサよりは多少は軽いみたいだし、パージできるならなお良し。

 

 などとか己を納得させつつうんうん頷くアクリ。

しかし、ユミコがそんな事をやらかしたら肉体言語を駆使するのが予定調和なのに、リブラに対してはそれだけで良いのか。

そんな感じで駄弁っている内に大体の状況は掴めたらしいユミコが疲れたかのような声音で這いずり出て来て。

 

 『解析と情報整理、終わったよー。……どーやら、どっかのおバカな解放戦線の無鉄砲が勇み足で周囲の制止を振り切って駆け付けたみたい。

で、さっき依頼主に詳しく突っ込んで聞いてみたら、報酬多少色付けるからその娘も止めてくれって。ちょっとばかり遅かったけどもねー』

 「おいおい、それでいいのか解放戦線」

 

 思わず真顔で突っ込みを入れてしまうアクリである。

 

 『さぁ? ま、相当なお転婆みたいね、その娘っ子』

 「あれ? 娘っ子って女の子なん?」

 『うん、依頼主からの話だとわたし達とどっこいぐらいの年の頃の娘って話みたいだよ?』

 「私等……ってか私も相当特異な事してるんだけど、解放戦線の方も頭おかしいのが居たか―」

 『いくら事実だからって自分で頭おかしいとか云ってんじゃないってー』

 「おい同じ穴の狢」

 『……あれ、この言い分からすると僕も同カテゴリに入ってる?』

 「『——えっ?』」

 

 こいつら全員自分を常識人だと思い込んでいる変人だと云う事に気付いていなかったらしい。

突っ込み不在の為に、何とも間の抜けた空気が辺りに漂い。

 

 「——と、兎に角ッ!! その娘っ子の救出ミッションも同時に熟せと云う事なんだね」

 『——う、うん、そんな感じで。ああでも、先方さんもAC乗りだから、合流したら共同戦線を張れると思う』

 「あ、MT乗りじゃないんだ。介護ミッションではないって時点で大分気が楽になった、アリガト」

 

 しばしの沈黙の後、そんな抜けきった空気を払拭する為にアクリは一つ声を上げて気を取り直すと、

それに倣ってユミコも話を先に進めていく事にして、リブラからも一言。

 

 『あ、そうだアクリさん。ジャンクの無人機二機分、無事に作れたから、一機は随伴機にしてくれて大丈夫だよ?』

 「——有難いけど、今回は見送りだね。そこそこ緊急みたいだから、アサルトブーストで一気に突っ込むんで、ジャンクMTじゃ耐えきれないし、追いつけない。

だから2機とも輸送ヘリの方の護衛に割り振ってて」

 『あ、そっか……。うん、分かった。次にはもっと良い感じに仕込んでおくね』

 「期待しとくよー。——さて、と。行って来る。あ、ユミコはその特攻娘にコンタクトだけ取って。あっちも忙しいだろうし、返答は貰わなくても良いからッ!」

 『任された! ご武運を、ってね!』『行ってらっしゃい、アクリさん』

 

 そんないつも通りと云えばいつも通りなやり取りをしつつ、機体は輸送ヘリから中空へと放り出されると同時、アクリはCOMへと指示を出す。

 

 「COM、戦闘モード。……と、追加でダメ判定もオンでッ!」

 《メインシステム、戦闘モード起動》

 「っし、そんじゃま、行くかぁッ!!」

 

 操縦桿を前に押し倒しつつフルスロットル。一気に後方に流れていく景色を知覚しながらもその瞳が見据えるは、真正面!

グングンと近づいて行く戦闘音に、緊張感と戦意を漲らせつつ、アサルトブーストで突き進むACは、

一気に高速まで加速すると同時、改造ミサイルランチャーとを戦闘待機状態に起動させる!

 

 「とりあえず、煙幕代わりにランダムでブッパすれば良いっしょッ!」

 

 ロックオンが出来るようになる距離より先に、適当な広範囲に左肩のミサイル群を全弾バラ撒いてパージすると同時、時間差で右肩の垂直4連ミサイルを起動。

4連ミサイルの方は更に近づいたお陰か、大豊のMTや戦闘車両にロックオンが出来たので、そっちに狙いを付け、発射!

大豊の部隊に半包囲まで持ち込まれていたらしい一機のAC——解放戦線のAC乗りが大体使っているBASHO型である——毎、ミサイルの洗礼が降り注ぎ。

MTのミサイルの威力と、彼のACの頑強さを加味してのミサイルパーティなのであろうが、中々の外道の所業である。

 

 『うわっちぃッ!? な、何もんだッ!?』

 

 そのフレンドリーファイアに巻き込まれたBASHOのパイロットの方から抗議めいた叫びがチャンネルを合わせていたらしいアクリのAC内に響くが、

差して気にした風も無く通信を返した。

 

 「先に通信貰わなかった? 貴女の味方だよ、BASHO乗りのパイロット」

 『聞いたけど、どの口が言ってるんだい!? 普通は味方に撃たれるなんて事そうそう無いんだよッ!?』

 「そいつぁ失敬……っとぉッ!」

 

 相手パイロットに怒鳴られつつも、混乱した現場の状況のままにアサルトブーストを解除し、下半身(・・・)だけ軽くバックブースト。

その反動で機体は半回転し、その状況で後は軽くコア部をひねると、アサルトブースト時の前のめりの状態から真逆の方向に脚が向き。

更に脚下のブースタを吹かす事により勢いを殺した状況で目前まで迫っていたビルを地面に見立てた感で脚を付け、

地上側に真正面に向くような状況になり——

 

 (慣れててよかったバク宙一回転半捻りッ!)

 

 そんな事を思いつつ眼前に見えるMTの一機の頭上にリニアライフルを向け、射撃!

頭上からの直撃を受け、そのMTは動きを止める……と、同時、重力に引かれアクリのACが落下を始めて今度は上半身だけ軽くバックブースト。

すると脚が地上側を向ける事となり、そのまま動きを止めたMTを踏み潰す。

 

 「このまま何回かやってると残機が一機増えそうかなッ!」

 

 等と云う意味不明な供述をしつつそのMTを足場にジャンプして、近場に飛んでいた戦闘ヘリをレーザーダガーは格納状態のままで左拳で殴る。

ACの拳の質量的にもあっさりとヘリは破壊され、地上へと落下していくのだが……

 

 「——って、やばっ。コレBASHO腕じゃなかったッ!」

 《左腕マニピュレーター、損害微小》

 「ゴメンてッ!」

 

 マズった、とばかりに飛び出た独り言にCOMからの損害報告が一つ。

心なしCOMの報告の音声が冷たい気がするが、アクリの思い込みで完全に気のせいである。

 

 そんな一人ボケをしながら細かくブースタを吹かせ位置調整をしつつ、まだ戦闘機動は出来ると思われる頭と左腕が小破しているBASHOの傍らに着地とほぼ同時。

先にロックオンで撃ち込んでいた垂直ミサが敵機に降り注ぎ、その落下地点にいた少々の数のMTと戦闘車両をまとめて吹き飛ばす。

あまりに無茶苦茶なやり口だったお陰か、数瞬の沈黙の後に通信を返して来るBASHOのパイロットで。

 

 『——コアと脚がBASHOなのに、なんなのその変態機動』

 「いきなり変態云うなしッ!? ——そ、それは兎も角、先に通信である程度は聞いてると思うけど、こちらは独立傭兵"RaDer’s"。

元々こっちが受領した仕事なのに勝手して暴走して突っ込んで包囲され掛かって、依頼主に迷惑掛けて。

挙句にその人、アンタを助けたいからって報酬上乗せしてくれたんだよ? 後でこってりと絞られるよーに」

 『う゛ッ』

 

 ピンチであった上に間違いなく知り合いであろうアクリ達の依頼人の事を出され、言葉に詰まるBASHOパイロット。

 

 「まあいいや。先にも云ったけど、私は"RaDer’s"のアクリ。そちらさんは?」

 『あ、ツィイー。解放戦線の皆からはリトル・ツィイーって呼ばれてる』

 「ツィイー、ね。こっち独立傭兵だからこれっきりになる可能性もあるかも知れないけど宜しく」

 『いきなり縁起でもない事云うなッ?!』

 

 そらそうである。

更に云うと、それをあっけらかんとした感でとかますます頭おかしい。

だがしかし。鉄火場の中で、そんなにわちゃわちゃしている余裕はあるのだろうか?

 

 「とりあえず後の事は……この状況を突破してから、かなッ!!」

 『……そう云う事、だねッ!』

 

 云うが同時、ツィイーの機体の後方からこっそり寄って来ていたMTをリニアライフルで撃ち抜き。

同じくアクリの後方から機を窺っていた戦闘ヘリがツィイーの撃ったグレネードで爆裂。

ひゅぅーと音が鳴っていない口笛を吹くアクリに音声だけで何をやってるのか察して何やってんだコイツ、的な空気を醸し出すツィイー。

 

 どうやらアクリの変態機動っぷりに脳がフリーズしていたらしい大豊の部隊が続々と解凍して来たようで、

俄かに騒がしくなって来た周りの状況にちょいとばかり震え。しかし、それでも無理やり獰猛な笑みを浮かべる。

 

 「とりあえず、半分、任せた」

 『そっちも、半分、任せたよ』

 

 先の不意打ちと思考が止まった連中への打撃でMTが2、3機、戦闘ヘリが3、4機。

戦闘車両が数両。与えた損害はそんなもんか、と頭の中で電卓を叩く。

 

 後は、事前に予測した最悪数だと想定すると、残りがMTが4~5機、戦闘ヘリやドローンの空中戦力が10前後、戦闘車両も同じぐらいか。

あっさり半包囲されたっぽい所を見るに、ツィイーも新兵に毛が生えた程度のレベルのようである。

つまり、その程度のAC乗りがたった二人。ドーザー連中でジャンクMTとならまだしも、

企業の私設とは云え、練度は軍に相当する戦力であり、正規品の戦闘型MTに乗っている連中を相手取れるのか……?

 

 (まあ、やるしかないよね、この状況ッ! 出来なきゃ死ぬだけだッ!!)

 

 そう己を奮い立たせ、ダメージ覚悟で操縦桿を前に、スロットルを踏み出し、ブースト!

突然の行動に相手側も一瞬だけ動きが止まったが、それでも訓練された兵士である大豊のMT部隊は狙いを絞り砲撃を仕掛けてくるが、

クイックブーストで真横に機動。そのお陰か、弾丸は自機の横をすり抜けて行き。

 

 「——んぐがッ! さ……すがに急制動のクイックはキッツッ!!」

 

 歯が欠けてしまいかねない程食いしばりつつも思考と視線は敵機に向け、

回避後に緩んだGの最中、悪態を吐きつつもリニアライフルを一射。

先に攻撃を仕掛けて来ていたMTに違わず突き刺さり、大破。

 

 「一つッ! ……っとぉッ!?」

 《コア部、損傷軽微》

 

 ガンガンガン! と機銃が装甲に弾かれる音を聞きつつ、それをして来た相手方向へと切り返しざまにブースタを軽く吹かし小さく回避。

その攻撃された方面へ機体を向けるとそこに居たのは戦闘車両が三両程。攻撃する為にリニアライフルをそちらへと向けるが……アラート!

 

 『アクリッ! 右手方向ッ!!』

 「ッ!?」

 《右腕部、小破。継戦に問題なし》

 

 ユミコのオペレートとアラート音に反応し、思わずバックブーストを敢行したがそれでは間に合わなかったらしく、右腕部に砲弾を受ける。

モニターに視線を走らせた限り、バズーカ持ちのMTが居たようだ。

 

 「……やっぱ、きっつい、よなぁッ!!」

 『アクリ、次、正面空中!』

 「ッ!!」

 

 耳にそんな声が届いたと同時カメラアイをそちらに向けると、4機のヘリとドローンがおり、ミサイルを撃ち込んでくる姿が。

反射的に横方向に一瞬だけブーストの後にすぐさまロックオンしリニアライフルを三連射!

 

 急な攻撃だったせいか三射の内一射は外れ、二機のヘリを撃墜。

 

 (とりま、今は戦力を削らないとジリ貧だってのっ!!)

 

 そんな事を内心で叫びつつも次の獲物を堕とそうと再度リニアライフルを構え……またもやアラート!

 

 「忙しい……ってのッ!!」

 《左脚部、損害軽微》

 

 今度は先程狙おうとした戦闘車両群からの攻撃らしい。拙い、脚を狙われだしたら致命傷になり兼ねない!

焦りの心をねじ伏せつつそんな事を思いながらも視線はモニタの全域を縦横無尽に移動させて。

 

 「そこッ……だぁッ!!」

 

 攻撃が緩んだ一瞬に突っ込んで一両を踏み潰すと同時、充填を終えたライフルで足元に二射。

今度は全ての攻撃が先に攻撃をして来た車両に突き刺さり、全壊。

 

 「三つッ! ……で、こっちも二つッ!」

 

 視線を再び空中に投げ、残りのヘリやドローンも射撃にて撃墜。

これで、MT1、空中戦力4、戦闘車両3。

 

 ようやく受け持ちの半分ぐらいか、とか思考を加速させつつも視線は忙しなくモニタとレーダーを行き来して。

 

 『次、左手方!』

 「了か——ッ?!」

 

 カメラアイをそちらに向けて、驚きと焦りの表情を浮かべるアクリ。

視線の先は、近場に居る敵機よりも更に先——ツィイーの乗っているACが、制御不能(スタッガー)で動きが止まっている姿。

 

 (やべッ——)

 

 そちらに注意が行った上に、彼女の近くで敵MTが止めを刺そうとバズーカを構える姿を見てしまうと——

己の状況そっちのけでリニアライフルをチャージしたのち、そのMTを狙撃してしまう。

運よく頭を撃ち抜けて撃破出来たようであるが、思い切り己が隙を晒した事になる訳で。

 

 《コア部、小破。左腕部、中破。レーザーダガー小破、使用可能。撤退を推奨》

 (ああもうクッソ、分かってるっての——ッ!!)

 

 ガギンドゴンとライフルとグレネードかミサイルがアクリのACへと連続で叩き込まれ、衝撃でコックピットが激しく揺れる。

中々厳しいダメージ報告が為されるのを聞き流しながら悪態を吐きつつも、モニタを睨みつけつつスロットルを軽くキック。

一瞬のブースト加速で先に攻撃を受けた方向へと機動し、その先に居た敵機——MTのコックピットをダガーで一刺し、撃破。

 

 『G2に報こ「やらせるかっての!」』

 

 後は、MTの傍らで共に砲撃を行っていた戦闘車両をまたもや踏み潰す!

何かを連絡をしようとしていた様であるが、させるつもりはない。

そのまま撃破。

 

 『アクリ、とりあえずはアンタの周りは敵機なし! だけど——』

 「ツィイーの方はッ!」

 『後MTが1に、ヘリが3ッ!』

 

 ユミコの報告を遮り、ツィイーの状況を聞くとそんな簡潔な答えが返って来て。

大丈夫か、と視線を向けると同時にブースト!

 

 ——その視線の先には、頭部が大破し、左腕の半ばが消失しつつも残った右手のグレネードを撃ち、抵抗しているツィイーのACが見え。

その状況に拙いと感じたか、フルスロットル! アサルトブーストで一気に距離を詰めるが、減速する余裕は……無い!

 

 (リブラ、ゴメンッ!)

 

 そう心の中で己がメカニックに謝罪をしつつ、そのまま残っていた一機のMTに突貫ッ!

ドガグシャン、と派手派手しい音と衝撃でコックピットを揺らしながらも更にブースト!

暫し後にナニカが弾けたかのような嫌な音と振動がコックピットに響き、重しが取れたかの様な感触が残り。

 

 《頭部、小破。コア部、中破。危険領域》

 

 やかましい程にコックピット内に響くアラート音をバックミュージックに、フットペダルを緩め減速。

COMからの警告に顔を顰めながらも頭部を中空に持ち上げ、残った敵機を確認しようとする……が、そこに見えたは最後の一機であったであろうヘリが爆散する姿。

 

 『——アクリッ、アンタ、大丈夫なのッ!?』

 「あ……。ツィイー。大丈夫だった?」

 『いやそれはアンタの方が……。いや、ゴメン。助かった、ありがとう。

あそこでアンタが突っ込んで来てくれてなきゃ、私も終わってたと思う』

 

 どうやらこっちの特攻の内に残っていた敵を掃討してくれたらしいツィイーが安否の確認をしてくるが、鸚鵡返しで同じ問いかけをするアクリ。

思わず突っ込みを入れようとするが、思い直して謝罪とお礼の言葉を返し。

 

 「まあ、追加依頼、貰っちゃったし……。ここで意地を通せなきゃ、私の矜持に反するから、ね」

 

 そんなツィイーの言葉に照れた感で色々と云い募るアクリであり。

ちょっと和んでいるその状況で、割り込んで来る通信越しからの声。

 

 『——アクリ、生きてる!?』

 「っと、ユミコ? いきなりの言葉がそれはどうなのかと愚考する訳なんですが」

 『よかった、無事だー』

 「ACは無事じゃないけどねぇ……」

 『僕が幾らでも直すから。そっちの心配はしないで。それよりもアクリさん本人の状態だよ?』

 「ん、心配アリガト、ユミコ、リブラ。あ、でもまったりしてる状況じゃなかった。敵勢反応は?」

 『大丈夫ー。近場は敵影無し。殲滅完了してるよー』

 

 なら良かった。そう軽い気分で云い放つと、乙女にあるまじきだみ声でづがれだー、と独り言を漏らしながらシートにもたれ掛かり。

 

 「ふぃー。しっかし、散々だったなぁこの依頼。しぬかとおもった、まる。なので、帰ったらユミコは色々と覚悟するよーに」

 『ゴメンよー。本当にここまでヤバい感じになるなんて予測してなかったんだよー』

 「うん、分かってる。分かってるけど許さない」

 『あぅ』

 

 ほんと運に助けられたよ。

そうボヤキながら更に言葉を紡ぎ。

 

 「いやー、しかし。ノリとネタでやったシミュレーターのアクロバティックな動きをまさかリアルでも使う事になろうとは……この私ですら見抜けなかったわッ!」

 『いや何云ってんのアンタ。て云うかやっぱその場のノリだったんだ、あの一回転半捻り』

 『何やってんのよ。いや本当に何やってんの??』

 

 本当にその通りである。ユミコの呆れ返った声音とツィイーのスンッとした声音の突っ込み。

そんな彼女達の突っ込みにうめき声をあげて抗議してみる。

 

 「ツィイーまで酷いッ?! 色々と今回は助けたのにッ」

 『……助けてくれたのは本当にありがたかったんだけどこっちのダメージ、1~2割ぐらいはアンタの無差別爆撃の所為なんだけどね?』

 「いやゴメンよぅ」

 

 からかい気味に軽口でそんな突っ込みを入れるツィイーに倣って軽い感じで謝罪の言葉を返すアクリ。

とりあえず命を助け合った戦友的な状況ではあったので、多少の無茶は水に流した様だ。

 

 「煙幕代わりの爆発物だったんだけど、思ったより被害出てた……うん、お詫びも兼ねてウチ寄って。修理もするから、ね?」

 『——修理?』

 

 そして更に言葉を紡ぐアクリにこんな所で? 的な疑問符が張り付いたかのような言葉を返すツィイー。

するとアクリはあっち、とばかりにACの顔を上空の一方向へと向ける。

そのACの視線の先をツィイーは同じく見やると、大型のAC輸送ヘリが遠目に見え、センサーからもヘリのローター音が届き始める。

 

 『アクリ―、お仕事お疲れー、お疲れぇ~。……あと、そっちの解放戦線のAC乗りさんもお疲れ様~』

 「う~い、とりあえずめっちゃ疲れてはいるけど、私はスクラップ集めと奴さんのデータログ引っこ抜いて来るから。リブラ、ツィイーのACの修理お願い―」

 『はーい、頑張るよ。——ゴメンなさい、えっと……つ、ツィイーさん? アクリさんがあんな無茶した所為で。ちゃんと丁寧にリペアさせてもらうね?』

 『——あ、あぁ、お世話になる、よ?』

 

 そんな感じで己が移動アジトに初めてのお客さんを招き入れる事になった一行なのである。

 

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