とあるルビコンのジャンカートリオ   作:清狼光牙

9 / 41
9話

 

 

 

 

 

 

 

 ラミー達RaDドーザーの主戦力となる連中を指導しつつ鍛える事二週間程。

その内にリブラを含めたRaDの曰く"頭でっかち"の一同は、

メイン戦力足り得る機体のオーバーホールと装備の見直しを推し進め。

どうやらその内に、ラミー以外にもAC乗りの適性があったのが何名か見つかったらしく、

そっちにもACを用意する事になって更に忙しさが増したようだがそれはさておき。

ある程度は形になったかな、と思った一同の総意によりとりあえずは依頼完了、と云った体となり。

グリッド086を離れる事となったRaDer’sである。

……因みに依頼料は、そこそこの額のCOAMと、一足先に貰っていた脚を除いた『RaD土建』シリーズの先行量産型の全パーツでした。

中々美味しかったです。

 

 ——そして、また鈍りだしたりしたら度々どーざーさーん、あっそびっましょー(暗喩)してやろうと心に決めた。カーラからも快諾されたし?

後、そこそこ貴重な、それなりに扱いの難しい系統(重四脚とか)のMTや、ACの脱出装置も、

危険領域になったらセミオートで作動する仕組みもリブラ達が組んだみたいだし、多少はマシになったかな?

等とかボンヤリ考えながら操縦室の一席で窓の外を見ているアクリである。

 

 「——あー。空が赫いや……」

 「何云ってんのアクリ? 何時もの天気じゃない」

 

 アクリの目に見えた赫い色は、ユミコに突っ込みを入れられ、今一度見直せば少々澱んでいる灰色の空に見え。

 

 (?——疲れてるのかなー?)

 

 等とか考えてはみるが、益もないな、とさっさか忘れる事にして。

声を掛けてきたユミコに何事かと問い返し。

 

 「——で、どしたのユミコ?」

 「うん、依頼の選別が大体終わったから報告しようとしたんだけど……調子、悪そう?」

 「どうなんだろう? 身体の不調はないと思うけど」

 

 視線は手のひらへと向かい、握ったり開いたりしてみる。……うん、問題ない。

そして視線を上げると、心配そうな表情を浮かべる幼馴染の姿。

 

 「大丈夫、大丈夫。問題はないよ」

 「……なら良いけど。とりあえず、今回は大豊、シュナイダー、後はBAWS絡みかな。それが依頼の候補だよ。

シュナイダーとBAWSはアクリってよりもリブラ、って感じだったけど」

 「そうなん? ってか、リブラかー。この所、オールマインドの傭兵ネットワーク間で半分フリーの凄腕のメカニックが居るって噂が流れてるからかなー」

 「半分フリー?」

 

 ユミコのそんな問い掛けにそうだよー、と云いつつ肩を竦め、話を進める。

 

 「独立傭兵付きのメカニックなんて企業に比べたら本当に木っ端じゃない。なのに、凄腕って事は……つまり?」

 「企業と云う大きい頑丈な箱に保護されてないから、ころしてでもうばいとる、……ってそんなに難しい話じゃないから、半分?」

 「ざっつらいと」

 

 理解の色が浮かんだユミコにうん、と一つ頷く。

腑に落ちたが……それだと、と顔色が一気に悪くなる。

 

 「……もしかしてわたし達、ヤバくない?」

 「もしかしなくてもヤバい。——まあ幸い、私達には大型輸送ヘリ(これ)って云う足兼住居があるから、

居場所の特定がし辛いんで、何とかなってる感じもある」

 

 そうアクリは云いながら下を指差して。

更に理解が深まると、溜息一つ。

 

 「それじゃこのままふらふらするしかないのかー。お金ある程度溜まったらどっかに定住しようかとも予定してたんだけど……」

 「まあそれは無理だろうねぇ。RaDに戻るか、企業付きになるなら多分大丈夫にはなるけど」

 「星内企業ならまだ兎も角、星外企業だったら、その代わりわたし達……いや違うね。わたし、消されるか人質にされたりしない?」

 

 アクリはAC乗りとして中々に有用だし、リブラは噂になるぐらいの凄腕だし……わたしは?

更に顔色が悪化する。もうユミコの顔色は土気色だ。

 

 「可能性はそこそこある」

 「——ダメじゃんッ!?」

 「だから定住するのも企業付きになるのも拙い。

……で、ふらふらとジャンカーや傭兵稼業を続けるのが、ベストではないけど、ベターかな」

 

 幼馴染の親友をこんな馬鹿馬鹿しい話で永遠に奪われてたまっか。

それがアクリの本音である。

 

 「一番ベストなのはRaDに戻る事なんだろうけど——」

 

 自由な空を知っちゃった身としては、ねぇ。

そんな事を云いつつ視線を投げて来るアクリ。そこはもう、自分も頷くしかなくて。

 

 「——こんな、色々スリリングだけど、楽しい世界。手放したくないなぁ」

 「でしょでしょ。だったら今のままが一番、だよ」

 「あはは」

 

 そんなオチが付いた所で。

ユミコは気を取り直し、お仕事の話をしましょうか、と楽し気に云い放つ。

 

 「そだね。ユミコこそ、調子出てきたんじゃない?」

 「この際太く短く、ってね?」

 「そうそうそんな感じで」

 「——んし、とりあえず。大豊の依頼はアーキバスの領内への侵攻。常に出ている依頼の一つだね。

今回のは地方の汚染都市の一つだから、ルビコン内に居るAC乗りの上位陣とかち合う事はまずないだろうから選んでみた」

 「星外企業の依頼は、ルビコン内企業に比べればお金払い良いからねぇ。撃破報酬も単価高いし」

 「そ云う事。次、シュナイダー。何か星内企業のエルカノと提携してACパーツを作るって話が在るらしくて、それの会談を警護するってヤツ。

腕の良いメカニックにもそこそこ高額で招集を掛けてて、そっちにも乗っかれる」

 

 ああ、だからリブラ絡みなのか、と納得するアクリ。

でもシュナイダーかぁ。親企業がなぁ。そんなアクリの懸念が分かるのか、ユミコも更に言葉を重ね。

 

 「まあ何と云うか、怪しい事この上ないんだけど、お金払いも良いし、

会談場所が戦闘区域から大分離れてるから、安全だろうと云う予測込み」

 「予測込み、って時点でちょっと怖いなぁ」

 

 先に話してたリブラの引き抜き云々の可能性も相応に高そうだし。

あまり期待しない方が良いのかなこれ。アクリの渋めの反応に、まあそうだろうなぁともユミコは思いつつも最後の一つ。

 

 「まあ仕方なし。最後のBAWS。実はこっちもエルカノ絡みもあるんだ。

新作の内燃機関を作るに当たり、軽くて頑丈な金属が欲しがった。

その流れにより、鍛造金属メーカーが出元であるエルカノと提携の話を持ち掛ける為の会談もあるらしい。

……だけど、こっちは依頼範囲には入ってないからスルーするとして」

 「じゃあなんで話した」

 「それを含めてこれから説明するって。解放戦線の依頼を受けて、BAWSってば新しいACの開発を始めるって話らしいんだ。

先の噂は、その機体を十全に扱う為の新型ジェネレーター開発研究の可能性が大。

で、評価試験のテスター……と云うか逆か。アグレッサー、仮想敵をさせたいらしいのと、

そこそこ以上の技術を持つメカニック。双方が欲しいみたい。どうも優秀な人手が足りてないみたいだねー?」

 「マジか。……あぁ、だから解放戦線から……」

 

 粗方の説明を聞きながらふと閃いた事を呟くアクリに、まあそんなトコよねーとユミコは言葉を返し。

 

 「そ。相変わらず察しが良いなぁ、アクリ。解放戦線、リブラが制作したダブルヘッドとトリプルヘッドから着想を得たみたいだよ。

0.5世代先でも改造機でも良いから、少しでも前に進まないと、星外企業のACと云うか、技術力に対抗できないから、ってBAWSのお偉方を説き伏せて。

んで、その大本の潮流を作り出したリブラとその恩恵を間近に受けてるアクリの二人に白羽の矢が立ったと。

実質的には指名依頼だよねこれ。因みに連名であの時の輸送隊の隊長さんのサインもある」

 「良し、BAWSの依頼に確定ね」

 「早いね。まあ、わたしもこれが一番わたし達も周りも得する依頼だって分かるし、良いんじゃないかな。——先の二つに比べれば依頼料安いけどねー」

 「それは云わないお約束? ……そう云えば、リブラにこの件は?」

 「決定はアクリに任せるって」

 「わぁ責任重大。ま、リブラが一番喜びそうだし、BAWSの依頼で最終決定で」

 「むーい、連絡しとくー」

 

 そう云う事になったらしい。

 

 

 

 

 「——と、云う事でお願いしますね」

 「承りました」

 

 数日後、BAWS第一工廠の開発部が持っている敷地の一角の建物内。

RaDer’sの三名と開発部の数名はそれぞれに、話し合っているようで。

ユミコは同じくBAWSの窓口となっていた人物との会話を交わしている。

 

 大体の方針と契約は決まったらしい。連名にはなるが、メイン開発はBAWSが行う事と、出来る限りの技術供与。

後はアグレッサーにて新武装の問題を洗い出し、出来れば次の開発に繋げれる方向に持って行きたい。

こちらへの報酬は通常の報酬の他、この機体と武装が量産ラインに乗り、

売り上げが上がれば共同開発料と云った具合に少々のCOAMか現物で支払われる事になる、と云った感じとなり。

BAWS側が相当有利な契約ではあるが、基礎技術が上がればこっちも質の良いパーツや武装が手に入る恩恵があるからと気にしない事にした様である。

 

 そんな双方のやり取りを完全にスルーするかの様にリブラは以前交友関係になった輸送部隊の隊長さんへと言葉を掛け。

 

 「——と云うか、隊長さん……もとい、開発部の部長補佐だったんだね? 何で輸送部隊に……」

 「彼は現場指揮能力が高く、解放戦線の幹部とも仲が良いんでな。大きめの輸送部隊を編成する時には任せているんだ」

 「成程」

 

 彼の疑問の台詞に、開発部の部長、と名乗った壮年の男性は苦笑しながらそんな言葉を返し。

因みに、部長自身はリブラと同じく開発改造はお手の物だが、その他が壊滅的なので上層部からの辞令で隊長さん——補佐が付いたらしい。

 

 それで彼はリブラと話が合ったのか。根っこが部長と同じだったからかー。

アクリはそんな風に思考を回しながら、目の前に居る人—技師然とした格好の女性である—へと言葉を掛ける。

 

 「——とりあえず、リブラの考えてるパーツ類とそちらの考えてるパーツ類との擦り合わせと……私の方は、新武器のテスト相手って事で?」

 「ええ、それでお願いします。ウチのテストパイロット、AC乗りではあるんですが、入社したばかりの新人なので……」

 「出来ればそっちの指導も、と。その人の為りに寄りますが、出来る範囲でなら承ります。

ちょっと前までRaDのドーザー連中にも教導してましたので、多少の心得は出来ましたし」

 「話が早く有難い上にそこまでしていただけて、感謝します」

 

 女性の云いたい事を直ぐに理解し、言葉を返すアクリ。

そんな彼女の反応に、少しだけ頬を緩め頭を軽く下げる技師さんである。

 

 「……本当に戦闘技術の増強は結構大事ですよ? 特に開発研究の所に居るテスターは戦場に出れる程の気概があるかは兎も角として、

少なくともベテランレベルの操縦技術が無いと十全に装備やパーツを扱い切れませんし」

 

 後は量産化に踏み切った後、武器やパーツ類を使い続けられる、満遍なく何もかもが出来る器用貧乏型のテスターも必要だと思いますけども。

なぞと云い、言葉を締めるアクリであり。実戦経験者の談と云うのは勉強になります。

 

 「その辺りは大丈夫です。……兎角、BASHOに合った武器を幾つか作成は出来たのですが、基本近接武器になりまして……」

 「まあBASHOですし、仕方ないのでは?」

 「そうなんですけれども。……先ずは素材的にも手に入れ易さ的にも、と云った感で作ったのがこちらになります」

 

 そう云いつつ技師の女性は端末を操ると、壁に設置されているスクリーンに画像が映し出され。

 

 「……建材じゃん」

 「建材です」

 

 アクリの突っ込みが入ると同時に頷く女性技師。

この所お世話になりまくってる気がしないでもないルビコンのおもっくそ頑丈な建物の建材—ACの全長の半分程度の長さの細目な鉄骨である—を軸に、

握りと申し訳程度のナックルガードを付けただけのシンプル過ぎる外観である。

まあ確かに最強の武器になり得る、頑丈で使い減りし辛い武器であろう。あろうが……

 

 「野蛮ですねー?」

 「野蛮ですよー?」

 「野蛮、だね?」

 

 さもありなん。

三者三様の台詞がまろび出て。

そんな彼女等の総突っ込みにも全く動じず、話を先に進めて行く女性。

中々にタフな娘さんである。

 

 「BASHO腕の潜在力を最大限に引き出せる様、左右どちらにも装備を出来る仕様です。

……と云うか、両手共に装備して運用がキモです。……後、すり減ったら機材をパージして直ぐに取り換えれる設計になっています」

 「コイツ腕装備での中・遠距離運用を完全に捨てやがった」

 「「でもあながち間違いじゃないのが笑える」」

 

 シンダー・カーラが居たら大笑いしているであろう大馬鹿兵器の極みである。

引きつった口元からガラ悪い言葉が零れ落ちるアクリと、真顔のユミコとリブラは異口同音で有用性があり過ぎるその武器を評価してしまう。

更に話を聞く限り、片方を防御、片方を攻撃としランダムに切り替え、翻弄しつつ殴り飛ばせ、がコンセプトらしい。

その為の攻撃プログラムも新規で組んでデータの蓄積を行っているようで、

受け手をそこそこ以上にACを乗りこなせるパイロットに相手になって貰いたかった、との事。

シンプルな上にアクリの得意とする方向と合致するのはどうなんだろうか。

 

 このブリーフィングと戦闘訓練後、双剣……もとい、打楽器……もとい双鈍器"BACHI(桴:太鼓を叩くアレ)"が誕生したのである。

やべーよこいつ等。まあそれは兎も角として。

 

 「後は、エルカノに無茶振りし続けている気がしないでもないですが、

ジェネレーター用の鉄鋼板の他にも、鍛造で剣なり刀なりを作って貰おうかと思っていたりしていまして。

一応会談の時に話は持ち掛けてはいるのですよ」

 「刀はロマンだよねぇ。整備力が劣悪だけど」

 「はいッ、そうなんですよッ!」

 「いや何その異様に朗らかな笑顔ッ!?」

 

 先々の言動でも見え隠れしていたが、こやつも変人奇人の類であったらしい。

と云うか、ロマン大好き系の様だ。それじゃあ、と云った感じでアクリは提案を投げてみる。

 

 「そんじゃあ、近接距離で打撃に近い扱いが出来る射撃武器とかどう?

ACのマニピュレーターで握りこめる程度の銃型の小さめのパイルバンカーみたいな?」

 「何そのロマン兵装。詳しく」

 

 思いっきり前のめりにならないで頂きたい。ただ単に今唯一ルビコン内で流通しているベイラム印のパイルバンカーのダウンサイジング品だようん。

コア部を撃ち抜ける最低限の硬度と大きさの杭をACのハンドガン程度の大きさに収めて至近距離専用射撃武器的なアイディアなだけで。

まあ使用目的がほぼ暗器用な気がしないでもないですけども。

……あぁ、先の建材撲殺兵器みたいにルビコン建材の先端が尖ってるやつとか使うのコストダウン的にもアリかも知れない。

多分使い捨てになるだろうけど、とか更に呟いてみる。……アクリのそんな言葉に周りの一同が沈黙した。

 

 「——そう云えばさ、アクリさんってどちらかって云うと至近距離戦闘が得意だったよね……」

 「いや流石にそれは云い過ぎだと思うよ? 近距離って案外怖いし、Gも凄いし」

 「いやでもブースト移動から流れる様に変態機動してレーザーダガーでの一刺しの一撃離脱戦法……」

 

 暫しの沈黙から復帰したリブラとユミコのダブル突っ込みに、私はそんなに野蛮じゃないやい。後そんなに変態機動してないやい!

そう吠えてみたが、誰も取り合ってくれず。そんな三人の漫談を華麗にスルーしつつ、BAWS開発部の面々は話し合いを始めて。

どうやら補佐さんからの報告でこいつ等の脱線事故は無視して話を先に持っていくのが最適解と分からされたらしい。

 

 「——一考の余地はありそうだな?」

 「そうだな。パイルバンカーと大口径のハンドガンの製造技術習得の礎になるかも知れん」

 「バーストハンドガンの強化にも繋げれそうなのは有難いです」

 

 部長と補佐と女技師の悪巧み。何とも見栄えが良過ぎで逆に酷い。

悪の組織かな? まあそれは兎も角として、話を続けましょうか。

 

 「後はリブラ君の開発したMT武装の変換式武器ラック……と云いつつ多目的ラックだなこれは。

あれのデータを流用させて貰って、BAWS(ウチ)の重武装四脚MTに良く装備させているガトリングガンとロケットランチャーの二つを使用出来る様にした。

ゆくゆくはAC用装備として再生産する予定だが、とりあえず今ははデータ取りに注力する」

 「ちょッ、リブラきゅん、またアンタは……ッ」

 「仲が良い所との技術交流は常だし、色々とブレイクスルー出来そうで開発が進みそうだったから……」

 「ああもうこの子は技術畑思考から抜けられないッ!!」

 

 その説明を受けて、ユミコはまたもやリブラに突っ込みを入れるが、相変わらずのお返しが返って来て。

……そんな二人の漫才に苦笑を漏らしながら部長がああ、この辺りは技術協力として報酬に上乗せするので気に病まなくても良いよ、と云ってくれた。

 

 あからさまにほっとするユミコ。本当にお疲れ様です。

そんな中、部長さんが咳ばらいを一つした後、女性技師へと一言声を掛け。

頷きを返し、タンタン、とスクリーンを軽く叩くと、話を進める。

 

 「話を続けます。——そして今回の一番の目的。BASHOの上位機か次世代量産機の雛型になり得る機体……

まだ機体名称が決まっていないので、仮名として"BASHO(弐式)"と呼称してます。コンセプトは『強みを更に鋭角化』。

——はい、先の双鈍器からも分かる通り、両腕は完全に近接戦闘"だけ"に特化させました。

マニピュレーターも親指とその他の部位と云う所謂ケンドーの小手を参考にして作り上げました。細かな動きは出来なくなりましたが、

頑強さは大幅にUPしてますし、丸みのある手甲部で往なす事も可能になっています。

拳で殴る状況になったとしても、全く問題ありません」

 「握る事しかできないのね……。まあ、トリガーを引く、と云う事を全くしないのであれば、合理的っちゃ合理的ですか……」

 

 思い切ったなぁ、としみじみと呟くアクリの言葉に、頷きながら続ける女性技師。

 

 「そうですね。その代わりと云ってはあれですが、先に部長が云っていた肩武器で中・遠距離を補う形になっています。

後は横腰部にMT用のミサイルランチャーを改造した4連ミサイルを左右に一基ずつ装備させました。

脚パーツの重量が少々重くなってはいますが、スペック上では問題はない……のですが、まだデータが不足している状況でして。

今回のテストで問題の洗い出しをする事となっています」

 「はーい、腕の良い兵士ならそこを狙い撃って誘爆させたり出来ると思うんですが、それは大丈夫なのですか?」

 「よっぽど上手にスナイプ出来ない限りは誘爆する危険性は低い物質と入れ物の強度がありますし、

問題が起こったら自動的にパージする機構は組み込まれているのでデータ上では危険は無いと思われます。ですが、ACの高速戦闘機動中ではどうなるか……」

 「BASHOでの試用をしているのでは?」

 「そちらでも問題は無かったんですが……更に高速で機動してでのデータも欲しいので……」

 「ああ……さらにギアを上げた高速機動まで付いて行けれなかった、的なー?」

 「そう云う事ですね。……で、頭部パーツは、今の所はそちらのリブラ君からのデータ提供を受けたダブルヘッドで運用する事となってます。

こちらとしては情けない限りですが、BASHO頭と同サイズ程度でダブル以上の性能を付与する事が出来なかったんですよ……」

 

 まだまだ修行が足りませんね、とぼやく女性技師である。

まあサイズを半分にして、性能を同等にすると云うのは普通に難しい話であるからして、仕方ないとは思うのだが。

現にリブラはそれの為に頭を重ねたんだろうし。……ノリでやったって訳じゃないよね? よね?

 

 アクリはふと思考を掠めた雑念を振り払いつつ話を続けて貰う。

 

 「コア部もエルカノと折衝中ですね。ベイラムのカスタム品の量産コア部を参考にできればなお良いんですが……」

 「流石にまだ私の方の傭兵ショップの方でも取り扱いはないですよ。こっちとて木っ端の独立傭兵である事は間違いないんですから」

 

 ちょっと何か云いたげに視線をアクリへと送って来るが、

まだベイラムにもアーキバスにも顔も名前も覚えられて居ない木っ端傭兵にそこまで求めてどうするよ、と暗に返し。

と云うか、こちとらまだコア部はBASHOである。脚は土建になったが。

土建のコア部は試しては無いが、慣らしがまだ出来てないので使うのは怖い。

とりあえず使い道が思い付かなかった残りの土建頭部腕部は、リブラに全部丸投げした。

良い感じに魔改造か使い道を示してくれると信じる事にして。

 

 「……つうか、先生。この状況、エルカノさんに頼り過ぎなんじゃ? 会談ポシャったら地獄見ません? 大丈夫?」

 「一応、転ばぬ先の杖として、別軸でコア部設計はしている。……一枚はおろか二枚は性能が落ちる可能性が出てしまっているが」

 「それダメなヤツじゃないですかッ!? そこまで性能落ちるなら、元のBASHOコアを素直に使いましょうよ!?」

 「ははは、そうだよねぇ……」

 

 アクリの突っ込みに力無く返答する部長。

最悪の可能性への対応策は相当に煮詰まっているらしい。

背中がすすけているぜ。

 

 「話を戻しますね。後は、ブースタも新規に開発していますが、こっちは完全にKIKAKUの上位互換、と云う感じになっています。

こちらも仮称としてはこちらもKIKAKU(弐式)と呼称していますが……あまりにじゃじゃ馬過ぎて、ウチのでは扱えないらしく……」

 「殺人ブースタですね分かります。……とりあえずさ、近接突き詰めるのは良いけどさ。

強化人間ありきなGの暴力になる仕様じゃ、量産機としてはヤバいんじゃないですか?」

 

 乗る人全員強化されてる訳でもないんでしょうに、とアクリは云い放った。

その指摘は薄々は本人達も気付いていたのか、ちょっとばかり表情に苦みが浮かんで。

 

 「BASHOの後継機として、我々の技術力で出来る限りの全力で性能を引き上げて開発していた弊害、だろうな……」

 「ここからダウングレードしつつ模索する予定だったのですが、そもそもの話、引き上げ切ったパーツを扱えなかったらデータ取り以前の問題ですからね……」

 「軽く回してみるか? それでも一応のデータは取れるが……」

 「いやそれだったらそもそも新型の必要性は、って話になってきそうですが」

 「「それな」」

 

 開発課の人々の話し合いに突っ込みを入れるアクリに全く同意の他の二人。

全くその通りであるのでぐうの音も出ない。

 

 「——とまあ、話ができるのはこれぐらいですか。

今現在実際に実機に乗せて試用しているのは、先の話の武器数種とBASHOⅡの腕パーツ、後はKIKAKUⅡです。

武器と腕はこちらのテストパイロットでも大丈夫そうなのですが、ブースタの方が……」

 

 女性技師はそう説明をした後、チラッチラッとアクリに視線を投げ。

その視線の意味を微妙に悟りつつも、軽くチクチク刺さって来る周りの気配がある彼女以外の一同に、恐る恐ると云った体で問いを掛けた。

 

 「……何で皆様、わてくしを見るのですか? ユミコにリブラも……」

 「いやぁ……」

 「だって……ねぇ?」

 

 そんなアクリの台詞に、ユミコとリブラは視線を交わし合いながら言葉を濁し。仲良しさんか。

仲良しさんの話はさておき。部長がちょっとばかり悪どい上にうさん臭い笑みを浮かべつつアクリへと言葉を掛けて来て。

 

 「——とりあえず、アクリ君。提案……と云うか、追加依頼があるのだが」

 「…………すっごく聞きたくないんですけど?」

 「ブースタの方のテストをやってくれないだろうか。無論、別途報酬は出す」

 「聞きたくないって云いませんでしたっけッ!?」

 「今の状況、そのまま有耶無耶に終わらせる訳には行かないのでな。頼まれてくれないか」

 

 それから暫しの沈黙。

……やがて根負けしたのか、アクリは力なく言葉を吐き出す。

 

 「……追加報酬の額を減らしてくれても構いませんから、

BAWSが直ぐに用意できる中では最上級の耐Gスーツ一式売って下さい。それが条件です。

無かったら多分ミンチよりもひでぇやになりそうですし」

 「それぐらいはこちらで持とう。中々に酷い事を云っている自覚はあるからな」

 「それではこちらの契約書にサインをー」

 「早いですねッ!? まさかこれ見越してたんじゃないでしょうね皆様ッ!!?」

 

 目を逸らされた。マジですか。企業の癖に一介の木っ端傭兵に何期待してんですか。

機動サンプル? いやまあそうなんでしょうけども。

 

 そんな感じで、騙して悪いがと云った体で機動負荷実験にすら付き合わされる事になったのである。

 

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。