ドラゴンボール超 ビールを飲んだおっさんがダラダラと全王様になった話   作:北村 貴之

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ドラゴンボール世界
ビールを飲んだおっさんがダラダラと全王様となった


俺の名前は善応寺 冬彦(ぜんおうじ ふゆひこ)。

 

愛知県名古屋市内に在住の、営業部の部長を務めている、どこにでもいるしがないおっさんだ。

大学へ進学せず高校からそのまま就職し、転職もせずにそのまま入社した会社で勤務した。

配属先は先ほども言ったが営業部。俺は生まれながらにトークスキルはあったので、仕事はすぐに覚えることができた。

同僚や上司に助けられながら、順風満帆な人生を送っていた。

しかし、気がついたらあっという間に30歳を超えてしまっていた。

俺は結婚もせず、親元を離れて一人暮らしをすることもせず、いつしか実家暮らしの冴えないおっさんになっていたのだ。

両親は存命しており、兄弟はというと、上に兄がひとりおり、下には弟がひとりいる。

兄は結婚し子供をひとり設けた。小学生のかわいらしい女の子だ。

弟はというと、実家から離れて一人暮らしをしている大学生となった。

そんな俺はというと、両親と3人で暮らしている、俗にいう「子供部屋おじさん」となっていた。

誤解しないでほしいが、俺は暗い性格ではないし、ニートでもない。

きちんと働いて給与をいただいているサラリーマンだ。

家には稼いだ金を入れているし、実家の家事も手伝っている。

そのため、万が一何かあればひとりでできる。

そんな、実家暮らしでビールをダラダラと飲むのが好きなおっさんが体験したある出来事を、述べていきたいと思う。

 

 

それは俺が部下たちと居酒屋でやっているときの出来事であった。

俺はその日、大卒で入社した、まだ20代の若造2人とお酒を飲んでいた。

俺が飲んでいたのはジョッキに注がれた黄金色のビール。

俺は仕事終わりにビールをダラダラと飲むのが大好きだ。

出されたアテを食べながら、居酒屋の雰囲気と共に酔っている。

部下2人が飲んでいるのはというと…。レモンサワーにハイボールだった。

アテはとり皮の唐揚げと枝豆。

会社の飲み会でよく出るメニューだった。

そして、部下が酔っている俺にこう言ってきた。

「部長ほんとビール好きですよね」

そう言ってきたのは部下の竹内だ。やせ形でガリガリの冴えない男だ。

噂によると彼女がいるらしい。

「ああ。こうしてこんな感じで飲むのが一番の至福の時間なんだ」

俺はそう返した。

適当気味だが、頭がアルコールのせいか回らないので仕方ない。

「ええと…。もう3杯はいってません?」

そう言ったのはしなやかな身体が素敵な福元だ。

大学時代にはサッカー部に所属しており、幼少期からサッカーに明け暮れていた青年だ。

彼にも彼女がいるらしい。くそっ。

「あっはっは…。まだまだいけるぞぉ」

俺はややへべれけになっていた。

ビールの苦みときりっとした辛さが、俺を至福の世界へと誘ってしまったようだ。

普段ならかなりしっかりとした態度で営業先や会社ではやっているのだが、この瞬間だけは俺を無気力にさせてしまうらしい。

「だ、大丈夫ですか?部長」

「俺の事は気にするな!お前は自分の心配をすりゃあ、いいんだよ」

俺はなぜかにやけながら彼にそう答えたのだった。

「あ、ビールもう1杯だ」

「へい」

店員はそう返し、数分後、ビールの入ったジョッキがやって来た。

俺はそれをぐびぐびと飲む。

眠い…。そりゃこれだけ飲んだら眠気も来るか。

竹内と福元がどこか心配そうにこちらを見てる気がする…。

「あ~っ」

俺はビールを飲み干すと、そのままテーブルに突っ伏してしまった。

ドン、という音をたてたのだが、これが何とも大き目な音のようで、他の客の目を引いてしまったようだ。

「だ、大丈夫ですか!?」

「部長?部長っ!!」

そんな声が聞こえてくる。俺はいつの間にか、うんともすんとも動かないでいたのだった。

 

 

 

 

「…ま」

誰かが俺を起こす声が聞こえる。

誰だろう。竹内か?福元か?あるいは…。実家にいる親父とおふくろか?

「…さま」

…さま?俺は「善応寺様」とか「冬彦様」とかいう名前で呼ばれたことはない。

しかし。声の主は誰なんだろうか。どこかで聞き覚えのある声なのだが…。

「…おうさま」

お、王様…?俺が?

「全王様!」

ぜ、全王だと?あのドラゴンボールのあいつか?

俺は声の主に応じるかのように目を開いた。

視界がとぼけており、眠気もまだある。

「全王様。ようやくお目覚めですか」

視界が徐々にクリアになっていく。

そして…。俺は絶句した。

俺の目の前にいたのは会社の部下ではなく…。オールバックの男だった。

白銀色の髪を後ろにしてオールバックにしており、深緑色の服を身に纏っていた。

男の肌はというと…。なぜだ。肌色ではなく、薄気味悪い青白い肌をしていた。

しかしながら、顔は健康そうな顔だった。

俺は今いる場所を確認すべく、辺りを見回した。

どういうことだ。いつの間にか居酒屋ではなく、宇宙空間にそびえる神殿のような場所に移動してしまっている。

俺はビールを調子に乗ってダラダラ飲んで、眠っていたらいつの間にか謎の場所に移動してしまったようだ。

「おい、お前は誰なんだ?」

俺はその男に声をかけた。

「おや。全王様喋り方変わりました?」

「へっ?」

男の言葉を聞き俺は唖然とした。

そして、彼が発する、「全王」という言葉…。

「おい。ふざけてるのか?俺は善応寺冬彦だ。全王じゃないぞ!」

俺は寝起きなので少々機嫌が悪かった。からかっているのかと思い、腹を立ててそう答えた。

「おや。珍しく眠っているのが気になりましたが…。どうやらまだ寝起きみたいですね」

男は真顔でそう答えた。

俺はとりあえず冷静になることを考えた。正面にいる男は初対面だ。

仕事で営業をしている時を思い出し、笑みを浮かべて質問した。

「先ほどは失礼した…。あ、ここはどこなんだ?」

俺は気を取り直してそう尋ねた。

すると、男はニコッと微笑んだかと思うと、こう返答した。

「何をおっしゃってるのですか。全王様の神殿ですよ」

男の言葉に耳を疑ったが、ここがどこだか分からない以上信じる他ない。

「全王…?じ、じゃあ、あの宇宙すべてを治めている、あの全王が俺ってことか!?」

 

全王は俺も知っている。

俺は漫画やアニメ、そしてゲームが大好きなおっさんでもある。

全王とはドラゴンボール超に登場したキャラクターだ。

一言でいえばものすごく偉い神様の王様だ。

気まぐれで宇宙を滅ぼしたことがあるという、まさしく「ドラゴンボール最強のキャラクター」だ。

しかし、どのような経緯で俺が全王様と呼ばれているのか、わけがわからなかった。

 

「しかし、あんなにも幼い喋り方である全王様がまるで別人のような喋り方になるとは、私も少々驚いてますよ」

男の正体はすぐにわかった。

全王に仕えている大神官だ。

神官というと俺は即死呪文を連発するあの男を思い起こしてしまう。…気にしないでくれ。

「お、俺は元々こういう喋り方なんだ」

俺は慌て気味にそう言った。

本当に全王になってしまったのか、とりあえず確認をしておきたい。

ひとまず俺は大神官にあるお願いをした。

「なあ。大神官よ…。手鏡を持ってきてくれないか」

「手鏡ですか」

「そうだ。俺の顔を確認したくて…。あ、俺はナルシストじゃないからな、勘違いをするなよ」

「わかりました。おい、お前たち」

大神官はそう言って、全王の側近と思われる人物に声をかけた。

声をかけられた側近らしき2人は、手鏡をすぐさま錬成させた。

そして、それを大神官に手渡す。

「ご苦労」

大神官は側近にねぎらいの言葉をかける。

なぜ俺が手鏡を持って来いといったのかというと、自分の顔が見たかったからだ。

俺の予想では、あの顔になってしまっているかどうかを確かめたかったからだ。

単純すぎる依頼をしたのだが、かなりあっさりと応えてくれた。

俺は安心したが、少し不安にもなった。

「どうぞ全王様」

「わ、悪いね」

大神官から手鏡をもらう俺。

そして、その手鏡で俺の顔を確認した。

 

「う、嘘だろう…」

俺は絶句した。

当然だろう、俺の顔は人間の顔ではなくなっていた。

大神官が俺を全王と呼ぶのは当然だった。

なぜなら、俺の顔は楕円形のボールのような形で、紫と青のカラーリングの色あいという、なんとも奇抜な顔になってしまっていたからだ。

これは紛れもなく、アニメやゲームで見たまんまの全王様そのものだった。

胴体の方も鏡で照らしながら見ると、服も全王の着ていたもののまんまだ。

待て。となると、背も小さくなっているのではないだろうか。

俺はこれでも身長は180cmある。

中年男性にしては割と大きめの背だ。

しかし、姿が姿なので、縮んでしまっているらしい…。

最強のキャラクターになれたのはいいが、背も体重もそれに反映されてしまうらしい。

 

 

「な、なあ。これってゆ…」

夢なのか?と聞いてみようとすると、大神官は俺の言葉を遮るかのように、

「現実ですよ」

と真顔で言った。

口元は笑っているようだが、目は笑っていない。

俺はまたしても唖然とした。

「じゃあ、ここは宇宙なのか?」

「ええ」

「え…」

どうやら、俺は全王という神に転生してしまったらしい…。

いや、夢の可能性もある。

あれだけのアルコールを身体に取り入れたんだ。変な夢を見るのもおかしくはない。

しかし、全王になったのはそうだ。

作中史上最強のキャラクターなのだ。

「消すよ」と言えば本当に消してしまうのだろうか。

試してみたいが、他人に迷惑をかけるのはよろしくない。

「しつこいが、俺は本当に全王なんだよな?最強の存在なんだよな?」

「そうですよ」

「即答されると困るけど…」

俺は少し困惑した。

まさかあのキャラクターになっているのは夢にも思わなかったが、心のどこかで「早く日本に帰って普通の男として戻りたい」という気持ちもあった。

「喋り方が違うんで違和感ありますけど、まあいいでしょう」

「いいんかい…」

俺は早くもとに戻りたかった。

しかし、これが現実であるらしい。大神官がそう言ったので嘘ではないようだ。

俺はほっぺたをつねってみたが痛いだけで居酒屋や実家に帰れなかった。

どうやら本当にドラゴンボールの世界へとやって来てしまったようだ。

「ど、どうすんの俺!?」

俺は後悔していた。ビールの飲みすぎを。

見栄を張って部下の前で数杯のビールを飲み干し、あろうことかそれから飲んだくれているうちに意識を失ったのだ。

…最悪だ。

これからどうするか。全王様となった俺は、この世界でダラダラとくらす羽目になってしまった…。

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