ドラゴンボール超 ビールを飲んだおっさんがダラダラと全王様になった話   作:北村 貴之

12 / 19
全王様になったビール好きのおっさん、大神官に家事を教える

ドラゴンボール史上最強とされる神の王、全王様となってしまった俺、善応寺冬彦。

俺はいつしか、大神官と戦闘力5のおっさんとともに、ミスターサタンの屋敷に住み着いていた。

なぜかというと、サタンの屋敷があまりにも住み心地がよかったため、気がつけば数日滞在してしまっていた。

戦闘力5の農夫のおっさんはたまに、本来の自宅である農家に帰り農作業をしている。

あちらの家とサタンの屋敷を行き来している状態だ。

俺と大神官はというと、たまに農夫のおっさんの手伝いをしにおっさんと農作業をしたりして過ごしている。

サタンの屋敷には執事や家事手伝いがいるためサタン本人が家事をしなくてもいい状態だったが、俺はこのままあちらに丸投げもなんか気が引けるので、暇な時に手伝いをしていた。

全王様が家事をしてるなんて、これを見ている皆さんは想像できないと思うが…。

 

 

 

ここで、最近の俺たちの近況を報告しよう。

大神官は有能そうに見えて、意外にも家事ができなかった。

洗濯は洗濯機の操作がわからず洗濯機を破壊したり、料理はせいぜいスクランブルエッグ程度しか作れなかったり、洗濯物は裏返しのまま畳むし、清掃は隅々までやらずに適当にしてやった気にしていたりと…。

いくらなんでもそんな馬鹿な話はない。

戦闘力は超一星龍以上あり、俺を将棋で負かした大神官が、家事ができなかったことに俺は驚かざるをえなかった。

いやいや、そんなん誰でもできんだろ?

今まで大神官に色々やってもらっていた俺だったが、さすがに我慢の限界だった。

俺はある日、大神官を呼びつけた。

 

「よお、大神官」

俺は大神官に声をかける。

大神官は動じない様子で俺を見ていたが。

くっ、こんな顔をされたら腹立つのはなんでだ?

「全王様。何か用でしょうか」

「ああ。おおありだ。今日はな、お前に家事を教えてやろうとおもってな」

俺は腕を組んで大神官を睨む。

それでも俺を恐れていない大神官。

「はて。私の腕にご不満というわけですか」

「そうだよ?だからだ。何でもかんでも『後からしてくれるしいいでしょ』とでも言うかのように適当に済ませやがって。俺は怒っているんだぞ」

流石の俺も大神官に怒りを感じていた。

ただ、怒鳴りはせずに静かな口調で大神官を諭した。

「と、仰いますと…?」

大神官が聞き返してきたので俺は説明してやることにする。

「お前の家事スキルは低い!こんなんでよく俺の部下が務まってやがる。そこで、だ!俺が直々に、家事を教えてやる。無愛想なお前に、1から丁寧にな!」

俺が少し怒り口調でそう言うと大神官は唸った。

「わかりました。手ほどき、お願い致します」

そう言って頭を下げてきた。

お?大神官の奴もなかなか素直じゃないか! ということで俺の家事指導が始まった。

 

 

「まずは掃除機だ!水拭きをするまえに小さい埃とかゴミを吸うんだよ」

俺はそう言って床の掃除を教えていた。

大神官は真顔で真剣に聞いてくれていた。

「わかりました。全王様」

大神官は早速掃除機を持ってきて、床のゴミを吸い取った。

「ゴミは吸えたか?じゃ、次は水拭きでの掃除だ。こいつを使え」

俺は大神官にクイックルワイパーを持たせ、床を掃かせた。

大神官は一瞬眉間に皺を寄せたが、文句を言わずに床を水拭きした。

「…これでいいんですか」

大神官がクイックルワイパーを手に取って床を拭き始める。

…うーん、なんかぎこちないな。

まあ仕方ないか。俺の教え方が悪いんだろうか?

俺は、

「あーっ、代わってくれ。俺が手本を見せるからさ」

と言ってクイックルワイパーできれいに掃除してみせた。

大神官はほーっ、と感心した様子だった。

「なるほど、床の水拭きをする際はクイックルワイパーをこのようにして拭けばいいと…」

大神官が真剣な表情で言った。

こいつ、真面目だけとで実は意外に地球での仕事センスはなかったようだ。

俺は心の中で呆れていた。

「よーし、じゃあ次いくぞ」

「ま、まだやるんですか」

「当たり前だ!お前には覚えてもらわんといかんことが山ほどあるからな」

そう言って俺は大神官を連れ回して家事についてみっちりと指導していった。

 

掃除や洗濯の仕方、料理の基本動作と、数日かけて大神官に家事を教えた。

全部を掲載すると頭がこんがらがると思うので、ダイジェストの形でで俺たちの記録を紹介しよう…。

 

 

☆大神官とおそうじ

「さっ、トイレの掃除だぞ」

俺が今から教えるのはトイレの掃除のやり方。

動作はいたってシンプルだ。

ブラシに洗剤をつけて、便器を洗うだけ。ただ、この便器を洗うというのが意外と難しい。

ブラシの動かし方一つですぐ綺麗にもなるし、ならない時もある。

簡単そうで実はコツがいる。

大神官は恐る恐る掃除を始めた。

しかし手慣れていないのか雑だった。

「うわっ!」

大神官がブラシを動かしたせいで便器の水が跳ねて俺に飛び散った。

「おまっ!何やってんだよ!」

俺が叫ぶと大神官はびくりとする。

「も、申し訳ありません…」

大神官は謝罪してきた。その顔はどこかおもちゃを買ってもらえなかった子供のような拗ねた顔だった。

俺はため息をついた。

しかし、これはさすがに未経験の大神官に見せずにやらせた俺に非があった。

「お前にいきなりやらせた俺が馬鹿だった…。手本見せるからよーく見てな」

大神官からブラシをひったくると、俺はトイレの掃除を開始する。

便器に洗剤をスプレーしてブラシで擦る。

「こうやって…、こうだ」

ブラシの動かし方を見せながら実際に実践する俺。

大神官は感心したように見ていた。

「なるほど…」

そう言って、俺と交代でブラシを手に持つと、俺の真似をしながらぎこちなく掃除をし始めた。

おお、意外と覚えが早いじゃないか。こいつもやればできるんだな…。

 

 

☆大神官とおりょうり

「じゃあそしたら…。今から目玉焼きとウィンナーを焼いてこうかな」

俺と大神官は屋敷内の厨房にいた。

屋敷内のメイドに無理を言って、厨房を貸してもらった。

サタンの屋敷で働いているメイドはまだ若々しい女性だった。

彼女以外にも数名メイドがいるそうだ。

サタン、お前まさか…。いや、考えるのはあとだな。

「まずは油をフライパンの上に敷くようにして、全体に広げる」

俺が大神官に教える。

「そして火をつける。中火でな」

「な、なるほど…」

大神官はメモをとっているが、メモをとる前からわかっていたかのような顔をしていた。

俺は手本を見せた。

我ながら中々の焼き加減だ。

俺は見事に出来上がった目玉焼きと焼かれたウィンナーを丸い皿の上に、フライ返しを器用に使って置いた。

「さあ、やってみ?」

俺は大神官に目玉焼きとウィンナーを焼かせることにした。

彼が使うフライパンは俺が使うものではないから安心してほしい。

「わかりました」

大神官はそう言って、サラダ油をフライパンにまきはじめた。

器用に注いでいる。

そして、卵をコンコンと叩き、カチュワッと音を立てて黄身と白身を油のしかれたフライパンの上に落とす。

「そうそうその調子だ」

俺は卵を割った大神官に言った。

そしてその後、ちょっと塩を入れるんだよ。

大神官は、塩をフライパンに投入した。

多すぎず少なすぎずの量の塩が黄身と白身の上に撒かれる。

「いいぜ」

俺は大神官に言った。

大神官は料理なら簡単なものならいけるんだろうか?

まぁ、スクランブルエッグが作れるんだからこんな程度で驚くのもアレだけど…。

これ、まさかワンチャン一発で成功するんじゃないか?大神官よ、お前はなんなんだ…。

「ところで全王様」

俺に質問をしてきた。

いいぞ。わからん部分は積極的に聞いてくれ。

「おっ、なんだ?質問か?」

俺は目を輝かせて大神官の顔を見た。

「ええ。ずっと前から気になってたことなんですけど」

「あぁ」

あれ?家事についてでなくて?

俺はとりあえず、彼の質問に答えてあげることにした。

「全王様はなぜ別人のように変わられたんですか?」

おい、それかよ?

俺が全王様になりかわったことに気づいたのかこいつ…。

大神官は不思議そうにおれを見つめている。

俺は焦った。

なんて言えばいいのかわからずにいた。

「あぁ、それはな…。実は…」

俺はなんと言えばいいのかわからず口ごもる。

そんな俺に大神官は尋ねた。

「もしかして、単なるイメチェンではないですよね?」

大神官の言葉に俺は固まった。

なんで知っているんだ?こいつ…。

「イメチェンに決まってるだろ?子供みたいな喋り方なんて他の世界の連中に小馬鹿にされるしな」

俺はそう答えた。

「全王様は別の世界のことまで干渉できるようになったんですか?多くの宇宙を治めるだけに留まらなくなったとはね」

「あ、あのな…」

俺は困ってしまった。

こいつは思いつきで言ってるのか、はたまた俺の正体に気づいたのか…。

俺が次の言葉を探していると、大神官は言った。

「でも、今の全王様の方が私は好きです」

「えっ?」

俺は思わず大神官を見た。

大神官は俺の方を見ていた。真剣な表情だった。

だが、しばらくするとこう言った。

「今の全王様の方が前よりも接しやすい感じがするんです」

顔がイケメンなのでどこか説得力があった。

まあ、さすがにあのレベチイケメンには劣るんだけどね…。

 

…あれ?

なんか焦げ臭いぞ…。

どこからだ?まさか、火事か…!?

俺は焦げ臭いにおいを鼻で感じていた。

俺はふと我に返り、この焦げ臭いにおいの原因がなんなのかがすぐにわかった。

そして、大神官にこう叫ぶ。

「おい!大神官!フライパンを見ろ!」

「えっ?」

大神官はキョトンとした顔でフライパンを見た。

フライパンは黒煙をもくもくと立ち上らせていた。

「あっ!」

大神官が慌てた顔で叫ぶ。

俺はそれを見て言った。

「早く皿に乗せろっ!」

俺がそう言うと、大神官は慌ててフライ返しを手に、黒く焦げた目玉焼きとウィンナーを回収して皿に乗せた。

これでひとまずは安心だが…。

いや、そうでもないぞ?

 

大神官が焼いた…、というよりも焦がした目玉焼きとウィンナーは、黒いこげが全体についていた。

これは食べられるのだろうか…? いや、食べるけどさ…。

「とりあえずはこれで完成かな」

俺はその目玉焼きとウィンナーを見てそう言った。

そしてその後、大神官を見つめ、

「変な質問しなかったらこんなことにはならんかったのにな…」

と小声で言った。

大神官は俺の言葉に首を傾げていた。無言で…。

 

 

 

そんなこんなで、俺による大神官への指導はおよそ4日で終わった。

大神官はと言うと、なぜかこの4日で家事スキルが飛躍的にアップしたようだ。

全王様たる俺に家事を叩き込まれた彼は一変していた。

掃除は前に比べると技術力が上がっているし、洗濯は洗いから取り入れまで丁寧にできている。

料理はというと、ハンバーグやらステーキが造れるまでに腕前が上がった。

サタンも戦闘力5の親父も、大神官の家事スキルの上達を賞賛していた。

大神官はドヤ顔で俺を見た。

「どうです?全王様に家事を叩き込まれて、私は激変しましたよ」

その変わりようは見ていて微笑ましいぐらいだった。

 

 

数日後のサタンの屋敷のバルコニー。

朝の7時のことだった。

俺は自分で淹れたコーヒーを飲みながら、朝の清々しい空を見つめていた。

椅子にもたれながら気持ちよさそうに朝日を見ている。

そんな俺のいるバルコニーに、戦闘力5の農夫がやってきた。

「よお、全王様」

農夫の親父は灰色のスウェット姿だ。

起きたての顔で眠たそうだ。

「ああ、あんたか」

俺は親父の方を見た。

親父の手には今朝の朝刊が握られている。

「隣、ええか?」

「あんたと朝の風景を見たいと思ってたとこさ。こっち空いてるぜ」

俺がそう言うと親父は俺の横の椅子に座った。

バルコニーからはサタン邸の庭、少し離れた場所には大学や会社のビルが見える。

今日は昨日ほど寒くはない。朝の爽やかな風が心地よかった。

俺と親父は二人で朝日を眺めながらコーヒーを飲んでいた。

そんな時だ。親父が俺に話しかけてきた。

「こんな朝っぱらから外で飲むコーヒーも格別やな」

「そうだな」

俺はコーヒーの入ったコップを口につけたまま返事をした。

「ところで全王様。大神官様にどうやって家事を仕込んだだか?」

親父が聞いてきたのは、大神官に家事を教えていたことについてだった。

俺は何を言うべきか悩んだが、ひとまずこう言うことにした。

「それはだな…。アレだ」

「アレってなんね?」

「アレは…。そうだな」

俺は言葉に詰まってしまった。

そんな俺を見て親父は言った。

「全王仕込みの神の力ってやつでかな」

そんか俺の発言に、親父はあっさりと納得した顔をした。

「全王様は神様だから教えるのも朝飯前やしなぁ」

「まあな」

親父の解釈に俺は少し戸惑いながら答えた。

親父の目の前にいる神様、実は人間なんですけどね。家事は母親から仕込まれたので大神官からすれば母親は大師匠とでもいえる存在だ。

親父はふと思い出したかのように言った。

親父は澄み切った青い空を見上げている。

「なあ、全王様って一体どんな存在なんだべか?」

そんな素朴な疑問だ。まぁ、普通気になるよね…。

親父の疑問に俺は答えた。

「正直自分でもよくわからないんだ」

神様になったが、人間である俺にはなぜかそんな自覚がなかった。

俺は神様で王様だ。

だが、そんな自覚が湧いてはこなかった。

なんでだ…。

俺はそんな疑問を紛らわせるかのように、残っていたコーヒーをがぶ飲みした。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。