ドラゴンボール超 ビールを飲んだおっさんがダラダラと全王様になった話 作:北村 貴之
俺の名前は善応寺冬彦。
ビールを飲んで酔つぶれてたらなんでか知らないが全王様になってしまった男だ。
名古屋市在住のしがないおっさんがなんでドラゴンボール最強のキャラになったかって?
それは俺もわからないし、俺も知りたいくらいだ。
全王様となった俺はいま、ミスターサタンの屋敷で、大神官と戦闘力5の農家のおっさんと、そしてミスターサタンというなんとももさい組み合わせで暮らしていた。
大神官は俺により下手っぴだった家事は上手くなった。
俺が教える前は悲惨だったが、今では普通に生活ができるレベルだ。
洗濯はしっかりと綺麗にし、料理も上手になった。
スクランブルエッグ程度しか作れない腕前が今ではステーキを焼いたりスープを作ったりできるまでになった。
そんな俺たちはいま何をしているのかというと、ミスターサタンの運転する車に乗ってドライブに出かけている。
「やるな、このおっさん…」
助手席に座っていた俺は、車窓から見える景色を見て呟いていた。
「どうです、凄いでしょ?」
ミスターサタンは嬉しそうに言っていた。
大神官は後ろの席でポテトチップスを頬張っていた。
戦闘力5の親父は、大神官からポテトチップスをもらって食べていた。
サタンが乗っている車は、高級車だった。
なぜサタンが高級車なんて所有してるのかと思う方もいると思うが、世界的有名人なのでこういう車を持っていても不思議ではないだろう。
さすがにフェラーリやらランボルギーニではなかったが、ドラゴンボール世界での高級車だ。
テレビとかで見たことのあるようで現実世界には存在しない会社の車だった。
ちなみにだが、俺は運転免許証は所有しているため運転は当然できるのだが、俺が運転しようとするとサタンがいきなり怒りだし、
「全王様にハンドルを持たせるわけにはいきませんよ!」
と言ってきたので運転ができなかった。
まあ、全王様が運転しているシーンなんてある意味放送事故になりそうなのでやらない方がいいと思うが。
「えーっと全王様。どちらへ行きますか?」
サタンが運転しながら尋ねてきた。
「そ、お、だ、なあ…。じゃ、ガンショップでも連れてってもらおかな」
俺が行きたい場所。
それは銃火器を取り扱っているガンショップだった。
なぜ俺がガンショップなんて行きたいのかというと、「奴」に会えるかもしれないので、その「奴」がいると思われる店へと連れて行ってもらうことにした。
サタンは快く了承してくれ、ガンショップへと車を走らせていた。
俺がそこへ向かう理由を聞いてこなかったので、気を楽にして行けそうだ。
大神官は後部座席でポテトチップスをバリバリと食べていた。
油臭いにおいが運転席と助手席に漂ってくる。
戦闘力5の親父は黙々と、エッチな本を読んでいた。
そして車は、とあるガンショップの前へと到着したのだった。
ミスターサタンは車を近くの駐車場に停めて、俺たちに声をかけてきた。
「さ、着きましたよ全王様!」
そうなのだ、今回俺が会いたかった人物というのは…
突然だが皆さんは、ドラゴンボールにこんな人物がいたことを覚えているだろうか。
魔人ブウ編に登場した、ライフル銃で何人もの人々を殺害した、金持ちのおっさんを。
フリーザ、セル、魔人ブウと、凶悪なボスキャラが登場することで有名なドラゴンボールだが、彼はこいつらを上回る凶悪さを持っている危険な奴だ。
戦闘力は恐らく皆無なのだろう。
銃は使えるといっても特殊な訓練を受けた人物というわけでもない。
だが、人々を簡単に殺害しているため、銃の扱いに長けている人物なのは確かだった。
彼が使用するライフル銃は、人の命を奪うのにまったく躊躇のない殺人兵器だ。
彼は人の命を奪うことを何とも思っていなかったとんでもないおっさんだった。
しかし、神は彼の極悪たる行為を見逃さなかったのか、魔人ブウがおっさんを殺したのだった。
おっさんが殺されたので多くの読者や視聴者は「ざまあみろ!」と思ったことだろう。
しかし。しかしだ。
神のきまぐれで、奴が生き返っているかもしれない。
とりあえずビール感覚で原作では死にまくった人々が蘇っているが、条件を出されてもそれをくぐり抜けて蘇った人たちもいることだろう。
となると、彼も生き返ってどこかで元気にやっているのかもしれない…。
話を戻そう。
俺たちはサタンの車から降りて、ガンショップに入った。
ミスターサタンは車の駐車場に車を置いてから俺たちについてきた。
「ちょっと全王様ー!待ってくださいよー!」
戦闘力5の親父と大神官を伴い歩いている俺に、サタンが踊りながら走ってきた。
俺は一瞬キモいと思ったが気にせず店内へと入ったのだった。
店内はというと…。
さすが銃の専門店というだけあって、多くのハンドガン、ショットガン、ライフルなどが所狭しと置かれている。
俺は店内に展示された銃を見ていた。
もしかすると、サムライエッジやレッド9、シカゴタイプライターが売っているかもと思ってしまった。
おいおい、ドラゴンボールなのにどうしてバイオハザードの話してるんだ?と思ったあなた。
よくぞ突っ込んでくれた。
俺、善応寺冬彦は中学生の頃、バイオハザード4の最難関ステージとして有名な「水の間」を何回も死んでやり直し、泣きながらクリアした思い出がある。
ちなみに兄貴はダメージをほぼ喰らわずにそこをクリアしていた。
その思い出は善応寺家では有名な思い出話として語り継がれている。
ちなみにそのクリアした時に使っていた武器は「レッド9」というハンドガンだった。
威力は大きめだが手ブレが大きいじゃじゃ馬娘だ。
思い出深い武器だったので、ここでは売られていないだろうなと、俺は半ば諦めていた。
「全王様、何かお探しですか?」
サタンが尋ねてきた。
サタンの言葉を耳にし、俺は正気に戻った。
「あ、あぁ…。銃を探してるんだが、どうにもな…」
「銃ですか?このお店は銃器の専門店ですので、色々ありますのでお探しの銃をおっしゃっていただければ一緒にお探ししますよ」
サタンが親切にそう言ったので俺は探してもらうことにした。
「ちょっと威力のあるやつを探してるんだけどさ…」
俺がそう言うとサタンは店内を歩き出し、ハンドガンが展示されているコーナーへと向かった。
「これなんてどうですか?」
サタンはそう言って、一丁のハンドガンを俺に見せた。
俺はそのハンドガンを手に取った。
「へえ、なかなかの代物だな…」
そのハンドガンはマグナムリボルバーだった。
威力も高そうで弾数も多いので使い勝手がよさそうな銃だった。
俺はこの銃を気に入った。
「これにするよ」
サタンに言うと、彼は嬉しそうに喜んでいた。
「ほほおー!」
動物の鳴き声のような声をあげるサタン。
俺の視線に、あるものが映った。
それは銃じゃない。
人だった。
金髪のポニーテールに、人相の悪い目つき。
痩せ型の体系で、長い脚が一際目立つ。
黒色のパーカーを着たその青年は、ガンショップの店内のライフルのコーナーにいた。
俺はサタンに告げた。
「おい。サタン…」
サタンは軽く頷き、俺の顔を見る。
一瞬ぴくっとするが、元通りの顔となる。
「全王様。まさか気にいらなかったんですか…?」
「いやまさか。気にいったのがちょうどあってだな」
俺の視線は金髪の男の方を向いていた。
記憶が正しければ、彼は間違いなく奴だろう。
ブウの暴動に便乗して大勢の人々を殺害した男。
俺はその男の元へと向かった。
サタンは俺にへばりつくかのようについてくる。
俺は男に声をかけた。
「あの〜、すみません」
「はぁ、どちらさんスか」
男が俺に気づく。
サタンはその男の顔を見てはっとする。
「きっ、貴様…!?」
サタンは身震いしていた。
「あっ、あんたは…」
男も身震いしてサタンを見ていた。
「知り合いか」
俺はサタンに尋ねた。
「知り合いもなにも。こいつ、魔人ブウの騒動のときに暴れてたとんでもない野郎なんです」
サタンの言葉に、俺はにやりと笑う。
「なら話は早いな」
俺は男の肩に手を置いた。
「な、なんッスか…」
男は顔を青ざめさせて俺に尋ねてきた。
俺は答える。
「ちょうどいい。今から俺らにつきあってくれるか」
魔人ブウの暴動の際、人々をライフルで殺した男であることは確かのようだ。
サタンは肉に餓えた肉食獣のような目で男を見ている。
そんなサタンを無視して俺はこのライフル男を誘うことにした。
「いいけど、あんた、誰…?」
俺のことを聞いているようだった。
「んなあっ!?こやつ、このミスターサタンを知らんだとぉ!?あの日、あの時、お前をしばいたあのミスターサタンだぞっ!!それを知らんとは、どこまで愚か…」
「おっさん一回黙れ。こいつは俺と話がしたいようなんだ」
俺は低い声でサタンを落ち着かせた。
サタンが一瞬俺を睨む。
「悪いね、俺ん家の連れが。俺の名前は全王。全ちゃんとでも呼んでくれや」
「全ちゃん…」
男は俺のことをそう呼んだ。
「でだ。お前、名前は?」
俺が尋ねると、男は答えた。
「俺か…?俺は…」
「ライフルマンって呼べばいいか」
俺は彼が名を名乗る前にコードネームをつけてやることにした。
「ちょっ、全王様…!?」
サタンが慌てているが、俺は無視して男に告げた。
「ライフルマン…。いいだろう、あんたらにつきあってやる。暇だしな」
「随分あっさり答えてくれるじゃないか。面白い。サタンの屋敷に今から住み込みで働いてもらうぞ」
「ぜっ、全王様!こんな奴を我が屋敷に住まわせるというんですか?」
サタンはどうやらライフル男の同居に反対しているようだ。
鼻息を荒くして反発している。
「嫌ならお前を消してもいいんだぜ」
興奮するサタンに脅しをかけた俺。
それを聞いたサタンはビクッとして青ざめ、
「ごっ、ごめんなさい…」
と言って子犬のように意気消沈した。
こうして俺たちはライフル男を連れ、ガンショップを出て、サタンの車へと戻ったのだった。
車はガンショップを出た後、そのまま一直線の道路を走っていた。
俺に怒られて落ち込んでしまったサタンに変わり俺がハンドルを握り運転していた。
助手席に座っているミスターサタンは終始、低い唸り声をあげて泣きそうな顔でうつむいていた。
後部座席には、ライフル男、戦闘力5のおっさん、大神官がいる。
おっさんと大神官がフレンドリーだったのか、ライフル男はすぐに溶け込んでいたようだ。おっさんと大神官は、
「君は一体どうやって生き返ったんだ?」
「あなたはこれまでどういう人生を?」
などとライフル男に尋ねていた。
逆にサタンは俺に対して不満たらたらのようで、ブツブツと独り言を言っているようだった。
俺は運転しながら後部座席の会話に耳を傾けていた。
サタンは放置していた。