ドラゴンボール超 ビールを飲んだおっさんがダラダラと全王様になった話 作:北村 貴之
俺は愛知県名古屋市在住のビール好きの善応寺冬彦。
部下たちと酒を飲みに行った居酒屋でビールに酔つぶれていて目を覚ましたら、ドラゴンボール最強のキャラクター、全王様になっていた男だ。
そんな俺は今、ミスターサタンの運転する車の中にいる。
サタンが運転しており、隣の助手席には俺が座っている。
そして、後部座席には破壊神ビルスがいた。
ビルスはサタンの屋敷に居候していた。
なぜかというと、俺が誘ったからだ。
俺が来てほしいと言ったところ、ビルスは渋々承諾してくれた。
どこか日和っているようで、めんどくさそうな目つきで俺を見つめていたのだった。
俺はそんな奴の顔色など気にせず、ビルスを住まわせることにした。
「…」
ビルスは固まったように後部座席で頭を垂れていた。
俺は彼の様子を助手席から眺めていた。
顔はというと…。
どうやら酔ってはいないようだ。
しかし、元気がない。
あ、あれか?初めて車に乗るもんだから、慣れていないんだろうか…。
サタンは口にタバコを加えながら鼻歌を歌いながらハンドルを握っている。
俺も知らない歌だ。
サタンの車の中には、カセットテープを入れる機械が内蔵されていた。
俺たちの世界でも存在しているものも同じ感じだ。
俺は車内にカセットテープがあるのを確認したが、入っている曲が、なんなのかわからないので入れないことにした。
くそっ。俺のいる世界でならDa-iCEやらDA PUMPやらをサタンとビルスに聴かせてやれたものを…。
そう悔しがる中、サタンが運転する車が、大きなスーパーの駐車場に入った。
目的地はここだ。
俺たちは買い物に来たのだ。
大神官と戦闘力5の親父とライフル銃の男はサタンの屋敷で留守番をしている。
「全王様、ビルス様。つきました」
サタンが言った。
「よし、ご苦労さん」
俺が言った。
ビルスは変わらず項垂れている。
「ビルス。ついたぞ。降りるぜ」
俺はビルスにそう言った。
ビルスは頷いた。
俺の言葉は理解できるようだ。
ここはサタンがよく買い物に来ているという巨大なスーパーだった。
いつも買い物をするときはこのスーパーに来ているらしい。
一言でいえばコストコやウォルマートのような感じの巨大スーパーマーケットだ。
「よし、じゃあ行くか!」
俺はそう言った。
サタンとビルスは俺の後に続き歩いた。
「どっひゃ〜…」
売り場面積の広さに目を丸くするビルス。
ただでさえ不細工な顔が不細工になっているがそれは気にしないでおこう。
サタンは大きな買い物カートをコロコロと鳴らして歩いていた。
カゴのなかにはまだ何も入っていない。
「ビルス、お前はこういう場所は初めてか」
俺はキョロキョロしているビルスに声をかけた。
「え、ええ。ここがスーパーマーケットだとは、思えなくって…」
ビルスの声には緊張が混じっていた。
「最近のスーパーは進化してるんだよ。面積が広いだろ?数多くの商品を置くためにこうしてでっかく建てて、中に多くの人が行き来できるようにしてるんだ」
俺がそう言うと、ビルスは納得した様子だった。
「あっ、あったあった」
サタンが言った。
「え?なんだあれ?」
俺は指差した方向を見た。
そこには野菜コーナーがあり、たくさんの野菜が陳列されていた。
「ああ、あれは確か、私の連れが品種改良して作ったトマトですね」
サタンは言った。
サタンは農家をしている友人がいたようだ。
サタンの手には真紅に輝く大型のトマトがある。
みずみずしくて美味しそうだ。
「せっかくだから買いますね」
「あんたのダチも喜ぶぜ」
俺はそう言った。
「では全王様、ビルス様。欲しいものがあれば、このカゴへとどうぞ」
サタンが言った。
俺はそう言われると、自然と心に火が付いたようだ。
「よし!ビルス、買いたいものがあればどんどんここに入れてけよ。こいつが買ってくれるみたいだからよ!」
俺は勝手にはしゃいでいた。
これがあるべき全王様の姿なんだろうか?
こうして俺たちは買い物をスタートさせた。
「おい、この肉も買っておこうぜ!」
「え、ええ…」
肉コーナーにて。
俺はバックされた肉の塊をどんどんカゴへと入れていった。
俺が入れたのは高級牛肉、鶏肉、豚肉だった。
使い道は焼肉に鍋、ステーキに串焼きとなんでもござれだ。
「それにしても…。すごい量になりましたね。こんなに買って消費できるのか…」
心配そうにサタンが言った。
「そりゃそうさ、こんなにたくさんの料理を作るんだからな!」
俺がそう言うと、サタンとビルスが驚いていた。
「え?」
二人は口をあんぐり開けていた。
「お前、料理できないだろ?だから全部俺がつくってやるんだよ!楽しみにしてろよ!」
俺はそう言ったが、サタンとビルスはどこか不安そうだった。
「全王様。大神官様も料理できたんですよね?全王様の指導で確か料理できるようになったって…」
サタンはそう突っ込んだ。
俺はそれを思い出し、
「あっ、そうだな!奴にも手伝ってもらわんとな。あっはっはっは!」
と笑った。
「…」
ビルスは無言のままだった。
こうして俺たちは買い物を続けたのだった。
「ビールじゃあーっ!」
「こ、これも買うんですか?」
サタンは戸惑いながら俺を見た。
それを聞いた俺は、
「当たり前だ!四の五の言わずにここへ入れるぞ」
と無理矢理カートの下へビールの箱を入れた。
「こ、これはすごいぞ…」
サタンがそう呟くように言った。
「え?今なんて?」
俺がそう言うとサタンは慌てて、
「とっ、とにかく一度レジに行きましょう」
と言った。
俺は不思議に思ったが、サタンとビルスについていくことにした。
会計はサタンに任せ、俺とビルスはスーパーの入り口で待っていた。
「全王様…。あなたはこの下界に降りてこういう生活をされてるんですね」
ビルスは疲れたような顔で俺を見ながらそう言った。
「まあな。下界での暮らしもかなり楽しいぞ。お前もこうして暮らしてみろ」
「はぁ…」
ビルスは溜息を吐きながら俺に返事をした。
「お待たせいたしました」
サタンがカートを押して現れた。
「おう!」
俺はそれに返事した。
ビルスとサタンは唖然として、スーパーの入り口に停められたカートを見た。
俺たちの買い物したものが所狭しと、山盛りになっているからだ。
これを全て三人で運ぶのかと、ビルスは青ざめていた。
そんな俺は、青ざめているビルスはお構いなしに、車に買ったものを積んでいった。
「おい!ビルスもボケっとしてないで手伝うんだ!」
「は、はい…」
ビルスは落ち込みながらカートから商品を下ろして、車の荷台に載せていった。
俺たちが荷物を乗せ終えたのは、10分後のことだった…。
帰りの車内にて。
運転席にいるサタンは笑いながら俺の顔を見てきた。
俺はそんなサタンを不気味に思い、「なっ、なんだ…?なんか俺の顔についてるか?」
と尋ねた。
「いいえ、違いますよ…」
サタンがそう言った。
そして話を続ける。
「全王様にここで問題です。今日の買い物の合計金額、いくらになったと思います?」
乙女のような顔でそう言ったのだった。
おっさんのぶりっ子はどうも慣れないもんだ。
そんなサタンに俺は、
「こんだけ買ったんなら…。流石に20000ゼニーはしたんじゃね?」
と言った。
サタンはそれを聞いて、少し寂しそうな表情になった。
そして、目をかっと開き、いやらしい笑顔で、
「はっ、ずっ、れぇ〜、はずれですよ、全王様っ!答えは、なんとぉ〜…」
「は、はぁ…?」
サタンが言おうとしていることを俺は察した。
「答えは…」
サタンは息を吸って、溜めた。
「15000ゼニーですっ!」
俺はその答えを聞くと、期待した
自分が愚かに思えた。
「や、安いな…」
俺はそう言った。
ビルスは後部座席にもたれて眠っていた。
「ええ、そうですよ。安値で買えちゃったんです!すごいでしょ?ねっ!」
とサタンは満面の笑みでジロジロと俺の顔を舐めるように見つめてきた。
「お、おう……」
俺はなんとなく目を逸らした。
「どうです?あのスーパー、やるでしょう」
サタンが言った。
「べ、別にお前が凄いわけじゃないけどな…」
俺はそう返事をしたのだった。
サタンはご機嫌な様子でハンドルを握っていた。
そんなサタンを見たビルスは眠っていた体をむくりと起こすと静かに溜息を吐き、俺の姿を眺めた後、窓の外を見ていた。