ドラゴンボール超 ビールを飲んだおっさんがダラダラと全王様になった話   作:北村 貴之

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全王様になったおっさんがダラダラと大神官と戯れる

俺の名前は善応寺 冬彦。

ビールをダラダラと飲むのが大好きな営業部長の30超えのおっさんだ。

そんな俺だが、居酒屋で部下の前で数杯ビールを飲んだせいか、大きな音を立てて眠りについたようだ。

目が覚めると、宇宙空間にそびえる神殿だった。

そこにいたのは青白いお肌のオールバックのイケメンの大神官。

彼は俺にこう告げた。

俺は全王なのだと。

全王とはドラゴンボール世界最強の存在である、神様の王様だ。

機嫌を悪くして宇宙を滅ぼしたことがある、恐ろしい存在だ。

そんな神に俺はなってしまっていたようだ。

俺は一刻も早く現実世界に帰りたかったが、大神官曰く「現実」のようだ。

俺は絶望していた。

だが、親しんできた漫画の世界に入り込んだので、この世界を満喫できるのでは?という期待も淡く抱いていた。

 

 

ドラゴンボールとは説明するまでもないが、日本を代表する漫画作品である。

地球育ちのサイヤ人であるカカロットこと孫悟空が、カプセルコーポレーションの令嬢であるブルマと出会ったところから物語は始まる。

人気キャラを多数輩出していることで有名な作品で、アニメ、映画、ゲームと、数多くのメディア展開を繰り広げていることで有名だ。

海外でもその人気は強く、かめはめ波のポーズをとる外国人の姿はほほえましい。

俺も子供のころ、週刊少年ジャンプでリアルタイムでドラゴンボールを読んでおり、アニメも視聴していた。

友人と映画も見たことがある。帰りにジャスコに行き、マクドナルドを食べに行ったのは思い出だ。

しかし、そのマクドナルドも値上げらしい…。時代の流れは残酷だ。

 

 

「俺は全王様なのか」

「これ何回目ですか、その質問」

繰り返し俺は、大神官にそんな質問を何度も繰り返してしまっていた。

クールな大神官もさすがにイラっときたのか、声色がすこしうんざりとした感じになっていた。

俺も好きでこんな質問をしたのではない。

ある意味異形の存在となった俺は、不安だったのだ。

なぜ、こうなった? 本当に俺が全王なのか? 全王様は確かに「最強の存在」だ。

しかし、俺には実感がなぜかなかった。

仕事のしすぎ?結婚に無頓着だから?いやいや、それはさすがに関係なかろう。

「ええっと、この世界にサイヤ人はいるのよね?」

「いてますけど…。全王様、もしかしてまだ眠気が?」

本当にサイヤ人は存在しているようだ。となると、俺と彼がいるので、孫悟空やベジータもいるというわけか。

あと、映画に出てきた「アイツ」も…。

「悪いね。当たり前の質問をして」

俺は眠気はないのだが、どうしても確認をしたくなったのだ。

大神官にいろいろと質問をしてみるのも悪くはないだろう。

全王の機嫌取りも大神官の仕事なのだろうから。

俺も昔、入社したてのころは上司の機嫌取りに躍起になっていたものだ。

 

…というか、普段全王は何をしているのだろうか。

仕事といっても、宇宙に存在する悪を消滅させたりすることとかなのだろうか?

ずっとこうして何もしていないのだろうか。俺はドラゴンボールに親しんで数十年だが、こういう疑問は抱いたことはない。

こうして俺が全王となりドラゴンボールの世界にやって来てしまった以上、この世界に住む彼らに、今いるうちにこんな質問をしておいた方がいいと思っていた。

異世界にやってきた奴がまずすべきこと。それは来た世界の情報を収集することだろうか。

「変な質問になるけど…。俺ってさ、普段どういう仕事をしてたんだっけ?」

大神官に俺は質問をしてみた。

彼は困った表情を見せると、こう答えた。

「し、仕事?はあ…。仕事も何も、あなたは宇宙やら悪の存在やらを消滅させて整理整頓をすることくらいではないですかね」

なるほど…、と俺は納得した。

仕事をせずにぐうたらしているようにしか見えなかったのだが、そうではないらしい。

「なあんだ」

と俺は笑った。

待て。こいつ(大神官)のことも少し気になるな…。

俺は思い切って、彼にこんな質問をしてみることにした。

 

「なあ。お前。名前ってあるのか?」

大神官と呼ばれているこいつだが、本名があるのかどうか不明だ。

作中でも別の名前で呼ばれておらず、ただ「大神官」という名前でそう呼ばれている。

ドラゴンボールヒーローズのカードでもそう呼ばれている。

一応言っておくが、俺は休日にドラゴンボールヒーローズをやりに行っている。

カードはカードショップで購入することが多い。

マシンから排出されたカードも使うことがあるが、使わないカードは母親にお願いしてフリーマーケットで売っている。

性能は察してください…。

「はあ。名前ですか。私にはきちんとした名前などなくてですね」

どうやら本当に本名はないようだ。

しかし、名前がなく役職でもある「大神官」と呼ぶのも少し気がひいてしまう気がする…。

俺は提案した。

「よし、それなら俺がお前の本名を決めてやる」

「はぁ」

「ちゃんとした名前があった方がお前もいいだろう?」

俺は笑いながら、大神官の本名を考えることにした。

まさかの大神官にキャラ付けか?まあ、それはどうでもいいか。

俺は考えることにした。大神官という言葉を分解して何になるか考えていくのだ。

そして名付けることにしようと思う。

(え~っと、似たような境遇のピサロって、住んでいる場所から名付けたんだっけな。あのエルフの女の子の名前を)

そう。こういうシチュエーションは俺も知っている。

住んでいる場所から名前を付けてあげていたことを…。

「今日からお前は…。ウーン、大須?熱田?それともだな…」

「…」

大神官は俺の顔を怪しむように見つめていた。

名前くらいさっさとつけてくれといわんばかりの顔つきだ。

「すみません。名前を付けてくれるのはありがたいのですが、私は大神官がしっくりきますので」

「は、はぁ」

流石に勝手に名前を決めるのはだめだったようだ。そりゃそうだ。

俺は落胆したが、すぐに現実を受け入れた。

「わかった。お前は変わらず『大神官』と呼ばせてもらうよ」

「それでいいんです」

あっさりした回答をいただいてしまった俺。本物の全王様よりも威厳がないような気が…。

 

 

「大神官よ。お前は好きな食べ物とかあるのか?」

「はい?」

俺は大神官に基本的な質問をしてみた。

まずは食べ物からだ。子供なら「ラーメン」やら「ハンバーグ」やら回答が来ると思う。

しかし、神族であるこいつは何を食べているのだろうか。あと何が好きなのか…。

俺からの質問に大神官は困り気味だった。

いきなり性格がかわったのに違和感を感じているのが顔つきでわかる。

俺の好きな食べ物はラーメンだ。

休みの日には大須のスガキヤや一風堂でとんこつラーメンを嗜むことが多い。

名古屋駅でもよくラーメンは食べることがある。最近は…。北海道の醤油ラーメンだな。

ビールが大好きなおっさんの俺でも、好きな食べ物はあるのだ。

「好きな食べ物ですか。…そうですね」

大神官は深く考え込んでしまった。彼の考える時間はそれほど長くはなかった。

神族というのは食事も必要なさそうな気がする。

というか、ドラゴンボールの世界の神様が食事しているシーンってなかった気がする。

特に超以降は…。

「実を言うと、私たち神族は食事をとらないと飢えて死ぬなんてことはないんですよね」

(は?質問に対する答えじゃないぞこれ)

俺は困惑した。いきなりとんでもない回答をもらった気がしたのだ。

大神官は続ける。

「そ、そうなのか?じゃあ、好きな食べ物はないってわけなのか?」

「残念ですけど」

(仕方ないな…。もしこいつを日本に連れてきたらビールやラーメンをしこたま食わせてやりたいがな)

「ただ、まったく何も口にしないということはないんですよ」

「そ、それはよかった…」

俺は質問の答えを期待するつもりが、いつしか大神官の食事事情の方に興味が移っていた。

神族だからといって、食事をとらないと死ぬということはないらしい。

俺は勝手にほっとしていた。

 

俺はその次にとんでもない質問をしていた。

「な、なあ。大神官よ…。お前はげんじぶは好きか?」

「聞いたことがない名前ですね。それは何ですか」

「あちゃ、知らんか?」

げんじぶというのは日本ではかなり有名なダンスボーカルユニットだ。

兄の娘(つまり俺の姪っ子)がドはまりしており、自宅にポスターもしっかりと貼られている。

なぜか俺と両親が暮らす自宅にもメンバーのひとりのポスターが貼られている。

姪が勝手に貼ったのだが、剥がすにも剥がせなかった。

理由として姪の機嫌をとることだが、あと一つとしてはそのメンバーの青年を我が家の「守り神」のような存在として受け入れてしまっているからだ。

中性的な顔つきが特徴のイケメンで、最近では仮面ライダーにも出演していた。

世代が比較的古い俺や両親も姪の布教ではまっていた。あと、別居中の弟も。

善応寺一族でライブにも行ったことがある。

「まあ、あれだ。男性アイドルグループだよ」

「男性?男性のアイドルグループですか…。全王様っていつからそんなものに興味をもたれたんですか?」

「お、おう…」

(ま、まずい質問をしたなこれ)

そういえばこいつは別の世界の存在だった…。

それも人間じゃなくて神様だ。

知らないのは当たり前だろう。

「わ、悪い。変な質問をして」

「なんかちょっと面白くなりましたね、全王様」

褒められているのかからかわれているのか俺にはわからなかった。

 

 

その数時間後。俺は暇だったので、大神官と遊ぶことにした。

「なあ、大神官。俺と将棋をやらないか」

「将棋ですか」

「ああ。ルールは知ってるよな?もしわからんのならババ抜きでも…」

「よろこんでお受けしましょう。おい、お前たち」

大神官は俺…。つまり全王の側近にまた声をかけた。

すると側近は数秒で、将棋セットを出してしまった。

これは魔法なのだろうか。細かいところは突っ込まないが…。

「聞くまでもないようだな」

「全王様とて、容赦はしませんよ」

こうして、俺は大神官と将棋を一局うつことにした。

 

最初は俺の方が優勢だった将棋。しかし、数分後…。

(くそっ、俺が押されてる)

俺は将棋で大神官に押されていた。

俺は将棋はプロ級に上手いことで地元では有名だった。

しかし、学業や仕事の都合でプロになることはなかった。

そんな俺だが、異世界の神様に劣勢となっていた。

「先ほどの威勢はどこへやら?」

「う、うるさい!何も聞かないでくれ」

焦った俺は、忘れていたようだ。熱くなると将棋は弱くなることを…。

 

結局俺は敗北した。

異世界の存在に俺は負けてしまったようだ。

だがこれも現実だった。

俺は受け入れるしかなかった。神の王とて、万能ではないようだ。

中身がこれなら、なおさら…。

 

「ふぅ…。いい試合だった」

「私も楽しかったですよ」

「そりゃあ、光栄だねえ…」

俺はそう言って笑っていた。

こちらも楽しかったのは事実だ。

久々に将棋をしたので、気分転換にもなった。

仕事漬けの毎日から解放されたそんな気分だ。

…いや待て。これ、もしかして「休暇」なのか?

いわゆる「神様休暇」とでも言っていいのだろうか?

そんなことが脳裏に浮かんだ俺は、全王として、このドラゴンボールの世界を満喫することに決めたのだった。

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