ドラゴンボール超 ビールを飲んだおっさんがダラダラと全王様になった話   作:北村 貴之

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全王様になったビール好きのおっさんがダラダラと「精神と時の部屋」を視察したお話

皆さんは「精神と時の部屋」というものを知っているだろうか。

「ドラゴンボール」に登場する、とんでもなく広い空間だ。

中に入れば真っ白で何もない空間であり、物はひとつも存在していない(一応風呂や便所は設置されているそうだが…)。

カカロットこと孫悟空たちはここで修行をしていたらしい。

この部屋、なんと、部屋の中の1年が外界の1日に相当している。そのため、例えばここで2年分みっちり修行を積んでも実質2日しか経過せず、ここから出て来た時には2年分のパワーアップが期待できるのだ。

この話を聞くと締め切り間近の漫画家や、レポート・論文の提出の期限が迫り焦る大学生、受験を控えている受験生なら一度は欲しいと思った、まさに「夢の空間」といえる。

 

俺、善応寺冬彦はある日、目覚めると全王になっていた。

そう…。ドラゴンボールの世界へと来てしまったらしい。

普段から仕事熱心だった俺は、改めてこの世界を満喫し、「全王休暇」として楽しむことにしていた…。

 

 

ある日の出来事だ。

俺は大神官を連れ、この「精神と時の部屋」のある神殿へとやって来ていた。

この神殿は空に浮かんでいるようで、まさにドラゴンクエスト4の天空城を髣髴とさせる。

だが、マスタードラゴンはどこにもいない。

マスタードラゴンはいない代わりに、ドラゴンクエスト6より登場した「ランプのまおう」にそっくりな魔神「ミスターポポ」がいた。

うっかりカダブウとかキクモトとか言ってしまわないかどうか不安だ。

「全王様…。何故ここへ…?」

ミスターポポが冷や汗をかきながら俺の方を見ている。

俺は神族にとってかなり偉い存在なので、こんな顔をされるのは当たり前だったようだ…。

ちんちくりんな背にブリッツボールのような顔でも、偉大な存在らしい。

俺には自覚がなかった。そりゃあ、人間ですからね…。

「いや、この精神と時の部屋を見に来たんだよ」

「…」

ポポは俺の顔をまじまじと見ている。

さてはこいつ、中身が俺ということに気づいているのだろうか…。

どうだったっけ、こいつって何か見抜く力でもあったっけ?

まあいい。あの空間を見れるんだから、ありがたく入らせてもらおう。

「この中はどうなってるんですか?」

「何もないよ」

ポポが即答した。

「そうか。それならいいんだ。見守りご苦労さん」

俺は大神官と共に精神と時の部屋へ入ることにした。

 

中に入ると、そこには真っ白な空間が広がるだけであり、まるで何もないようだ。

「どっひゃ~。まじで真っ白じゃないか」

「孫悟空たちはここで修行をしていたようですよ」

大神官がそう言った。

一面に広がる、白一色の空間…。

まるで汚れひとつない画用紙のようだった。

まさに激しい修行をするのには適している。

設定上ではかなり過酷な空間らしく、普通の人間ではとてもではないが耐えられないらしいが…。

俺たちはそんなことはなかった。

体調が崩れたことはないし、ピンピンしている。

むしろ、この空間に一切なにもないのが心残りだったが。

 

「あいつらこんな何もなくて真っ白なところで鍛錬してたのか」

「みたいですよ」

「無駄がなくてすごいなあ…」

俺は感心していた。

「ここ…。何かに使えそうだな」

俺はしみじみとそう言った。

真っ白な空間の中に俺と大神官はいる。

「おや。何かお考えでも?」

大神官が反応した。

「ああ。ここなら大勢人を呼んでライブとか、お祭りとかできそうだなってね」

「確かに。これほど広ければ何千万人は入れそうですけどね」

大神官が辺りを見回してそう言った。白一色だけど。

「全王様。何かされるおつもりですか?」

ミスターポポが俺たちに聞いてきた。

「ああ、ここで人を呼んでダンスをしたり歌を歌ったりしたいなってね」

俺は答える。

それを聞いた大神官は笑いもせず、真顔でこう答えた。

「全王様は友好的なんですね」

褒められているのか馬鹿にされているのか…。俺にはわからなかった。

「イメチェンだよ。い・め・ち・ぇ・ん」

「はあ」

大神官は空返事をした。

「こんだけ広けりゃ修行のためにだけなんて…。もったいないだろ?」

俺はそんな素っ気ない大神官に、自分の考えを語り始めた。

「もっと有効活用できないかって思ってな」

「…具体的には?」

大神官が神妙な面持ちで聞いてきた。

「それはまだ企業秘密で言えないなあ。ま、お前も楽しめるように考えているから、楽しみに待っといてくれよ」

俺は大真面目に答えた。

どこか友達感覚で話しているようだが、距離が一番近いこいつとまずは仲良くなりたいためだ。

「さあ、出ようか」

俺はそう言って、大神官と共に精神と時の部屋を後にするのだった…。

 

ミスターポポが入口付近にいた。

どうやらお出迎えのようだ。

「おお。お前か」

「…」

俺の言葉に反応しないポポ。恥ずかしいのかそれとも俺がうっとうしくて話すのが嫌なのかわからないが無言だった。

「いい物を見せてもらったよ。ありがとう」

「私もです」

大神官もお礼を言った。

相手にはきちんと敬意を払い、言葉を発して現すことに俺は安心した。

「なあ、ミスターポポよ。時間があるなら下界で飯でもどうだ」

俺はなんと、こいつを飯に誘っていた。どういうわけだ…。

「好きなものがあれば何でも食わせてやる」

それを聞いたポポは、

「私、いい。あなたたちふたりで行ってきて」

と、素っ気ない態度で返してきた。

忙しいのだろうか…。

「わ、わかったよ。機会があればまた、な。元気でやれよ」

俺はそう言うと、ポポに別れを告げて大神官と共に神殿をあとにするのだった。

 

 

 

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