ドラゴンボール超 ビールを飲んだおっさんがダラダラと全王様になった話   作:北村 貴之

7 / 19
全王様となったビール好きのおっさんがダラダラとカプセルコーポレーションを見学する

破壊神ビルスから、地球人の大企業の令嬢を嫁に持つ王子から会社の電話番号を教えてもらい、ようやくあの「カプセルコーポレーション」の会社見学会へと来ることができた、全王となってしまったビール好きのおっさんである俺、善応寺冬彦。

俺は大神官とビルスとウイスを連れて、10月15日の快晴の空の下、このカプセルコーポレーションの前へとやって来ていた。

まるで東京ドームを思わせるような社屋が、いかにも大企業なのだということを教えてくれる。

俺たちは特におめかしなどはせず、普段の恰好でやって来ていた。

俺たちの他にも数名、一般のお客さんや、よその企業の方々がいた。

神様である俺たちはやけに目立つが気にしない。

「しかし…。神族である僕たちがまさか地球の会社の見学をすることになるなんて」

ビルスがやれやれという表情で、ドーム状の社屋を見つめていた。

「いいじゃないですか。地球をもっと知れるチャンスですから」

付き人のウイスがそう言って彼を励ました。

彼はビルスの付き人にして師匠という、すごい位置づけの人だ。

人というよりは天使なのだが。

俺たちをみてこそこそと話をする人はいなかった。

ある意味化け物とでもいえる存在なのだが、性格が図太いのか気にはしていないようだ。

俺自身も、このカプセルコーポレーションには興味があった。

ドラゴンボールの作中の会社は一体どうなっているのか知りたかったのだ。

俺たちがわらわらと集う中、建物の正面玄関から、男性と少年が出てきた。

あの姿を見る限り間違いなく、サイヤ人の王子のベジータとその息子のトランクスだった。

実際に見るトランクスはまだ少年ながらもかなりのイケメンだった。 二人とも黒いスーツを着てキメている。 ベジータはかなりあわあわとした様子をしていた。

「おお、おっ、お待ちしておりました、全王様、ビルス様」

「おお…。出迎えごくろうさん」

ビルスがそう言った。

「うわっ!ブリッツボール!?」

トランクスが指をさして俺の方を見て驚いた。

全王の存在がいかに危険なのか熟知しているベジータはそれを見て大急ぎで俺を指す指を手で隠した。

「コラっ!全王様に向かって指をさすんじゃない!お前も挨拶するんだ!」

ベジータはそう言って、トランクスを無理やり頭を下げさせた。

「い、痛いよパパ…!」

当のトランクスは無理やり頭を下げられていたので嫌がっていた。 それを見た俺は…。

「こらこら。他のお客様もお見えになっているんだから、こんなことは控えなさい」

そう言って落ち着かせたのだった。

「ああっ…。申し訳ございません。このような公の場でお恥ずかしい姿をさらしてしまい…」

ベジータはそう言って頭を何度も下げて謝罪した。 俺は心が広いので、彼の謝罪を受け入れた。

「皆さま、本日はようこそお越しくださいました」

そうしていると、ブルマがやって来た。 見学会ということで彼女もおめかしをしている。

何万ゼニ―もしそうな白いドレスを身に纏っている。

「ああっ…。ブルマさんだ」

俺たちは彼女の方を向いた。

「本日はわが社に来ていただきありがとうございます。それではこの先は私がご案内いたします」

ブルマは俺たちを先導しようと前に出て案内を始めた。 俺とビルスたちはブルマ一家に連れられて見学会へと参加したのだった。

 

 

まず俺たちが連れてこられたのはカプセルコーポレーションの代表商品「ホイポイカプセル」の製造工場である。

初めに原材料である鉄と思わしき物質を保管している倉庫へと来ていた。

「これは…。鉄鉱石ですか?」

大神官が聞きに行く。

「ええ。鉄鉱石のほかにもミスリルも使ってるんですよ」

ブルマが答えた。

「ほお。ミスリルとは珍しい。ちなみにそれはどちらから?」

「北の国のドワーフが採取したものなのですが、それをいただいて加工してるんですの」

なんとこの世界にもミスリルはあるようだ。

しかも、ドワーフの存在があったとは…。

俺も驚いていた。

そして、次に来たのは先ほどの鉄鉱石やミスリルを溶かす溶解炉のあるエリアだった。

ここで鉄を溶かして加工するようだ。

「ここで原材料の鉄を溶かしているんです。そして、溶かした鉄でカプセルを作るわけです」

ブルマはそう言ってから溶解炉のある部屋から出て行った。

次にブルマたちは「ホイポイカプセル」の製造ラインへと案内してくれた。

ここでは1つのラインに50人ほどの従業員が働いている。

1日当たり、1人当たり数十個ずつ作っているのだとか。 工場見学では一人一人交代で実際に作業を行っているところを見せていた。

ビルスが興味深そうにそれを眺めている。

当初は嫌がっている素振りを見せていたが、会社を見回っているうちに興味を持ったようだ。

不機嫌な様子を見せることなく、製造の工程を目を光らせて見つめていた。

「ほお。お前も働きたくなったか」

そんな様子の彼に俺は声をかけた。

「わっ!びっくりしたあ」

ビルスが不細工な驚き顔を見せた。猫らしいのだが芸人がものまねしたウサギにも見える。

「そんなに驚くなって…。ま、お前にとっちゃいい意味でカルチャーショックだよな」

「は、はぁ」

ビルスは悟ったように頷いた。

「ここで働いている人たちはみんな楽しそうに働いてるだろ?それはどんな工夫でそうなっていると思う?」

俺は尋ねた。すると彼は少し考えた後にこう言った。

「うーん…。この工場では1日何個も作ってるって言っていたし、どんどん生み出されてるからじゃないんでしょうか」

「おっ、いい着眼点だな」

俺はビルスの答えにそう答えた。

ブルマとトランクスは感心したように頷いている。

神族のしゃべりがきになっているのだろうか…。

そして場面は変わりラベルの貼り付け・検品・段ボールの梱包エリア。

ここまでくれば仕上げの段階だ。

ブルマが懇切丁寧に解説してくれるおかげで、俺とビルスも大神官もウイスも見学を楽しめていた。

「こうして完成品の箱にラベルを貼って出来上がりです。あとは他企業に売り渡してそれを販売してもらうというわけです」

ブルマがそう説明した。

どうやらこの会社は日本にある一般的な企業と変化はないようだ。

そんな会社で俺はどこか安堵していた。

しかし、それとは対照に、ブルマのボディガードとしてついてきていたであろうベジータはまごまごしていた。 終始口を閉じていたがどこか落ち着きがなさげな様子だった。

俺とビルスがいるせいか、辺りをキョロキョロしたり、トランクスを落ち着かせる様子を何度も見せていたりととにかく忙しそうな様子だった。

そんな彼に俺は声をかけることにした。

「あっ、王子」

「ヘアッ!?」

全王(俺)に声をかけられたベジータはビクッ、と身体を硬直させた。

「何をそんなにビクついてるんだ。俺たちはこうして大人しくしてるのに、硬くならなくてもいいじゃないか」

「あっ、は、はい。申し訳ございません」

ベジータはどもりながらも返事をした。そしてブルマを気にしながら小声で話し始めた。

「あ、あの…。私は全王様とビルス様がカプセルコーポレーションの見学会に来られることを知らなかったので…」

「他の客も見ている。今はそんなよそよそしくしなくていいぞ」

「は、はぁ…」

ベジータは頭を押さえながら小さく返事した。

 

「それでどうだ?会社見学は」

俺は大神官に聞いた。

「ええ。地球の企業がこんなにも面白い事業を展開してるなんてね」

ホイポイカプセルの製造工程をみて、すっかりなじんでいるようだった。

仏頂面の表情は相変わらずだったがどこか興味を持ったようで、目を見るとどこか満足そうだった。

「俺もだ。お前と意見が合うなんてな」

俺は笑いながら彼にそう返した。

 

そして…。

俺たちはブルマに連れられて他の製造部門も案内された。 様々な機械を製造する場所や、社員食堂、その他諸々。 そして、数時間が経った。

俺たちは今、大きな研修室にいた。 今から行われるのは各種質疑応答だった。

「それでは…。なにか聞いておきたいことがあれば何なりとおっしゃってください」

ブルマがマイクを持っていた。

俺はまだ行っていない場所があった。

そう。営業部門だ。

人間だったころは営業部で仕事をしていたものだから、他企業の営業部がどんなものなのか、興味をもってしまっていたのだ。

俺は我慢できなかったのか、こう言ってしまった。

「すみません…。営業部門をお見せすることはできませんか?」

「えっ…?」

俺の言葉を聞いたブルマが戸惑ったような顔をする。

当然だろう…。

しかし、それを見ていたベジータが慌てた様子で妻の元へと駆け寄り、コソコソ、と耳でなにやら話し合っていた。

ブルマがベジータから何かを聞いた後に俺の方を振り向いた。

「そうですわね…。全王様たちには特別に、営業部にご案内致しましょう」

ブルマは嫌がることなく、笑顔で俺に承諾してくれた。 そんな彼女を見て俺は驚いた。

旦那の耳打ちもあったと思うが、こうもあっさりと営業部を見せてくれるのは以外だった。

そんなこんなで、俺たちは営業部門へと案内された。

 

 

「はい、こちらが我が社の営業部ですわよ」

ブルマが、営業部の部屋のドアを指し示しながらそう言った。 そして、彼女はドアをノックした。

「ごめんなさい、忙しい中。ちょっと見学したい方々がいますので。お邪魔しますね」

ブルマがそう言った。

近くにいたベジータはまごまごしながら、俺たちの方をチラチラと見て大量の汗を額から流している。

まだ夏でもないのに、結構な量だ。

「しかし、全王様たちが営業をご覧になられるとは…」

こっそりとそんなことを呟いていた。

ブルマがドアを開け、彼女に催促されて俺たちは営業部の部屋へと入った。

中は一般的なオフィスだった。

俺が勤務していたオフィスとほとんど変わりない。

パソコンがあり、資料がところせましと置かれてある。 部屋の中には女性が数名、パソコンの前でデスクワークをしていた。

くそっ、俺のいた営業部門には女がいなかったぞ。

「こちら、今日のお客様の全王様とビルス様、そして付き人の方々よ」

ブルマが俺達を紹介した。

「はじめまして、全王です。全ちゃんとでもお呼びください」

全王の姿で俺は頭を下げて挨拶した。

ある意味異形の存在である俺達を見て、女性社員たちは驚くのかと思った。

しかし、以外にもそんな反応は一切なかった。なぜだ。

「最近の神様って地球人の仕事に興味を持ってるそうよ。時代の流れってやつかしら?」

ブルマはそう言った。

俺はそんな彼女の言葉を流し、オフィス内を見回していた。

なんだろうか、どこか懐かしくて落ち着くぞ。 元人間だからなのか、そういう気分になってしまっていた。

「おや、全王様。何か気になるものでも?」

大神官が話しかけてきた。

「なーんか落ち着くんだよなぁ…」

「ほお」

大神官が俺にそう返した。

「ふふ、全王様って案外地球の文化に興味をお持ちですのね」

ブルマがそんな俺に笑いながら声をかけてきた。 声からして歓迎してくれているのは明らかだった。

「あっはっは、なんだろう、どこか懐かしく感じてしまって」

俺はそう言いながら、頭をかいた。

一方のビルスはというと、オフィス内の社員のパソコンを覗き見していた。

その様子はどこか落ちつきがない。

まるで子供のように、キョロキョロとしていた。

そんな様子に女性社員たちは不細工なウサギ耳の怪物に目もくれなかった。

ブルマがビルスに話しかけた。

「あら、ビルス様。社員のパソコンに興味がおありで?」 ブルマの問いかけに、ビルスはハッとして彼女の方を振り返った。そして目をそらしながらこう答えた。

「そっ、それはその…。なんていうか…」

そんな彼の様子を見てブルマは何かを察したかのように笑みを浮かべた。

そして彼女なりのフォローなのか言葉を続けたのだった。

「全王様もご興味をお持ちなら、あなたも興味を持ってるのね」

「そ、そうですね…」

照れくさそうにビルスは答えた。

「わ、悪いな。ツアーの予定にない、こんな場所に案内させて…」

俺はブルマに詫びを入れた。

「お気になさらないで。こっちもいい経験になったから」

彼女はそう答えた。

こうして、営業部門で数分、俺たちは仕事を見せてもらっていた。

 

 

 

他の客が帰った後。

俺、大神官、ビルス、ウイスはブルマ一家によばれてお食事をご馳走になっていた。

ブリーフ博士の夫人が腕によりをかけて作った料理に俺たちは舌鼓をうっていた。

霜降り肉を使ったステーキ、巨大魚を使った海鮮料理、黄金色に輝く五目炒飯、明太子など…。

俺たちはそんな料理を一心不乱にがっついていた。

「いやー、美味い!地球人はこんな料理を作れる奴がいるなんてな」

緊張気味だったビルスは料理を食べてご機嫌の様子だった。

「ビルス様、この五目炒飯なんて絶品ですわよ。まるで口の中ですべての素材が踊っているようで…」

ブルマはビルスをもてなすかのように彼に料理の説明をしていた。

「俺もいただこうか」

俺は五目炒飯を皿によそった。そして一口食べる。

うん、美味い!いい味だ! ひとつひとつ、無駄がない。 ブルマはこんな人物を母親に持てて幸せだっただろうな。 俺はそんなことを思った。

「みなさん、本当に美味しそうに食べますのね」

ブルマが俺たちの食いっぷりを見て笑っていた。

そんなとき、ふとビルスがこんなことを言った

「うーん…。なんか、お腹いっぱいになってきたな…」

彼は自分の腹を摩りながら言った。

どうやら食事は満腹まで食べたようだ。

こうして、神族も参加した会社見学会は幕を引いた。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。