新世代アーカイブ!   作:スカイブルーホワイトヘアー

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1-1親愛なる月の始まり

これは透き通るような学園生活から二十数年後の話

一人の魔王の手によって世界が滅亡しかけており、

それを止めるべく立ち上がった勇者がいた。

 

「魔王……遂に追い詰めたよ!」

 

「クックック……さあ勇者よ、かかってきなさい!」

 

「うぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」

 

道中の過程は省略するが様々な人の助けもあり

魔王の元に辿り着いた勇者は銃を構え突撃……

 

ーーブツンーー

 

する前に電源が切れたような音が聞こえ、先程まで

映し出されていた魔王決戦の景色は暗闇の彼方に

消えてしまった。そう、魔王など現実に存在する

筈もなく『ゲーム』の話にすぎないのだ。

 

「あーー!?」

 

プレイヤーである少女は目の前の光景が信じられず

頭を抱えて叫んでしまった。その後原因を作った

母の方を向いて抗議を始める彼女の名前はツキノ。

この春高校生になるちょっぴり身体が丈夫な

何処にでも居る普通の少女。

 

「あと少しでクリアだったのに!なんでいつも

大事な所で邪魔をするの!?」

 

「そうしないと入学式に遅刻するからだよ。

昨日あれだけ「高校デビューするんだー!」って

元気に言ってたのに台無しになるんだよ?」

 

「……そうじゃん!高校の入学式!もーなんで

そんな大事な事を言ってくれないの!?」

 

「何度も言ったよ。でも

「あとちょっとでクリアだから待って!」

って言ってたのは何処の誰?」

 

「うっ……」

 

「さっさと朝ごはんを食べて行ってらっしゃい」

 

「はーい……」

 

トーストにベーコンと目玉焼きを乗せた朝食を

口に咥えながら昨日寝る前に何度も試着して

シワがついた制服に着替え玄関へ。

 

「いっへひはふ!(行ってきます!)」

 

「ふふ、行ってらっしゃい」

 

母に見送られて一歩、また一歩と進むたびに

胸が高鳴る。まだ見ぬ高校生活に想いを馳せて

桜の雨が降る中駆け出し始めた。

これはかつて最大の神秘と呼ばれた生徒を母に

持った一人の少女、小鳥遊ツキノとその周りに

いる人達と紡がれる些細な日常の記録である。

 

 

 

 

 

 

 

「……電車に乗り遅れたー!!」

 

ツキノ、遅刻確定!!完!!

 

「初日から遅刻はまずいって!そ、そうだ今から

走って電車に飛び乗れば……」

 

「ん」ガシッ

 

「……ん?んんんん!?何々!?」

 

「遅刻はよくない。私が運んであげる」

 

「嬉しいけど誰!?」

 

「ん、砂狼シロコ。主人公だよ」

 

「シロコさんだったんだ。じゃあ安心ですね」

 

砂狼シロコ。クールな性格とは裏腹に趣味で

銀行を襲うような過激な人。昔はよく英才教育

とか言って銀行強盗に付き合わされそうになって

普段温厚な母に説教されていたのをよく見た。

口癖は「ん」と「私が主人公」どちらも意味は

よく分からないけれど自分に自信があるんだなと

少し羨ましくなるような人だ。

 

「運んでくれるのは助かりますが……何故私の

頭を掴んでいるのですか?」

 

「ん、私のロードバイクは一人用。だから無理矢理

運ぶならこうするしかない」

 

「せめてもっと安全な方法でお願いします!」

 

「ん、じゃあ後輪部分に乗って。このロードバイク

は二人用だから」

 

「さっき一人用って言ってましたよね!?」

 

「じゃあ行こうか。行き先はシャーレ……

じゃなくてSHL統合学園でいい?」

 

「そうですけど……何で知ってるんです?」

 

「ホシノ先輩に嫌と言うほど聞かされたから」

 

「……うちの母がごめんなさい」

 

 

「着いた……ここがSHL統合学園……ここから

私の高校デビューが始まるんだ!」

 

SHL統合学園。かつて連邦生徒会と呼ばれる組織が

利用していたビルを改造して新たに作られた学校。

入り口に子供が書いた落書きをそのまま像にした

ような不気味なものが建てられている事以外は

至って普通の学園だ。……いや普通なのかな。

これもしかして昔は流行ってたモモフレンズの

仲間なのかな?ちょっと不気味だし……

 

「そちらの銅像が気になりますか?」

 

「ぴぇ!!誰!?」

 

唐突に話しかけられてつい変な声をあげてしまい

恥ずかしさを感じつつ声をかけてきた白髪の教師

のような振る舞いの女性に目を合わせる。紫色の

綺麗な瞳からはミステリアスな雰囲気を感じ、

全てを見透かされているような気もする。そして

何故かこの人は怒らせたらいけないと本能で感じ

冷や汗をかきはじめていた。

 

「あら。驚かせちゃいましたね。そうですね……

では軽く自己紹介から。生塩ノアです♪歴史の

授業を担当しています。よろしくお願いしますね」

 

「よ、よろしくお願いします!私は……」

 

「小鳥遊ツキノちゃん、ですよね」

 

「えっ……どうして私の名前を?」

 

「教え子達の顔と名前は記憶しているので♪

私は結構記憶力が良いんですよ」

 

「そうなんですね……」

 

「さて、自己紹介も済んだのでツキノちゃんを

教室に案内しましょうか。その銅像については

また今度話すという事で」

 

「あっ是非お願いします!」

 

「ふふ、良い返事ですね♪」

 

ノア先生は笑顔で微笑んだ後に校舎の方へ歩き始め

私を教室まで導いてくれるようだ。途中外が見える

大きなエレベーターに乗ったり見たことがある子と

すれ違ったりアビドスとは違う近未来的な雰囲気を

感じる校舎内に目移りしていた。……ちょっとだけ

ダサいロボットが徘徊してるのにはノーコメントで

 

「ここがツキノちゃんの教室、N組です。あと10分

くらいで入学式が始まるのでそれまでは教室内で

ゆっくりしていてください」

 

「はい。ありがとうございます、ノア先生」

 

「いえいえ。それでは失礼しますね」

 

私を教室まで案内し終えるとノア先生は踵を返して

来た道を戻って行った。多分私のように迷っている

子達を迎えに行ったのかなと思いつつ目の前にある

教室の扉を勢いよく開けて中にいるクラスメイト達

全員に大声で挨拶をしようとした。

 

「……けどどうしよう。第一印象って大事だし

いきなりうるさくしても迷惑かも……ううん、

私の高校デビューはここから始まるんだから!」

 

息を吸って吐いて深呼吸をして準備万端!

覚悟を決めて教室の扉を開けて元気な声で皆に

聞こえるように挨拶をした。

 

「おっはよう!」

 

すると一斉にこちらを向いて静かになる教室。

……あれ、失敗したかな?私の高校デビューは

砂漠のオアシスのように消失したのかな?と

馬鹿なことを考えていると一人、また一人と

「おはよう!」「よろしくね!」と声を返して

くれた。よかった、私の高校デビューは華々しい

スタートを飾れたみたいだよお母さん!その後は

クラスメイト達と軽い自己紹介をしながら時間を

潰していると入学式の時間が迫ってくると同時に

担任の先生っぽい人が入ってきた。

 

「皆さ〜ん。おはようございます☆」

 

「……えぇ!?」

 

その担任?の姿を見て驚いてしまい素っ頓狂な声

をあげた。何故なら何処からどう見ても……

 

「十六夜ノノミで〜す♪今日からN組こと

ノノミ組の担任です♧よろしくお願いしま〜す」

 

母の後輩であるノノミさんだった。どうなってるの

この学園。どうして私の担任がノノミさんなの?

嬉しいけどなんで?確かに優しくて好きだけど担任

になるなんて聞いてないよ。

 

「早速ですが入学式が始まるので一緒に体育館に

行きましょうね〜☆」

 

「ノノミさん!」

 

「あら?……ツキノちゃんじゃないですか♪

もしかしてN組の生徒さんなのですか?」

 

「そうです。ってそれよりもなんでノノミさんが

先生になっているんですか!?」

 

「まあまあ。それは後でじっくりと話すので今は

体育館に行きましょうね〜♪」

 

「約束ですからね」

 

色々気になる事が多すぎて脳がおかしくなりそう

私の高校デビューに支障がなさそうだから問題は

ないんだろうけどさ……とにかく入学式!そして

自己紹介!その先にあるのは楽しい高校生活!

考えるのはその後にしよう!そう意気込んで

体育館に集められた後始まった入学式。

一言で表すなら想像通りの内容だった。

在校生の言葉やら先生の紹介やら、ありがちな

内容の式は滞りなく進んでいき……

 

『最後に校長先生からのお話です』

 

『うへーい。今行きまーす』

 

「あれ、この声って……そんなまさかね……」

 

『やあやあ若人達。校長でーす。……名前?

小鳥遊ホシノだよぉー宜しくねー』

 

「……お母さん?えっ?な、なんで?校長?

何これドッキリなの?えっえ?」

 

……あれ、校長先生の話が最後に来るなんて

これは珍しいかも……?なんて悠長に考えていた

自分にドロップキックをぶちかましたい。

母親が校長なんて誰が予想できるのだろうか?

……出来るわけないでしょうが!?

私の青春はどうなっちゃうのーー!!??




ここまで読んでいただきありがとうございました。

いつか続きをあげる予定です
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